1994 ホビー・データ『クレギオン#4 ロスト・プラネッツ』

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[スタート・ブック]

キャラクター

設定

[セーラ・ハールストン]

名前
セーラ・ハールストン
サイド|職業
近地球圏|警官
性別|年齢
女|18歳
性格
気さく、活動的、積極的
好きなもの|大切なもの|嫌いなもの
お料理、お風呂|約束、評判(自覚なし)|他人のことを考えられない人
自由設定
  • 父は軍人でたまにしか帰ってこず、母は離婚&再婚でどこかに行ってしまった。このような家庭状況のため、家族全員が一緒になって暮らす生活に憧れており、また、人との触れ合い、付き合いを人一倍大切にしている。
  • 趣味で、野菜や果物、怪しげな香辛料などを家で栽培しており、近所の人や署の人によく御裾分けをしている。
技能
射撃、土地勘、料理、家庭菜園

説明

当初はオルラント帝国の片田舎に住んでいる貴族の娘にする予定でしたが、理由はもはや覚えていませんが、最終的には、上記のとおり、近地球圏の片田舎に住んでいるお巡りさんになりました。なお、サイドと職業以外の設定は、当初の貴族の娘からほとんど変更していません。

シナリオに関しては、正直なところ、キャラクターのレベル(田舎の青年団員)と題材(テラフォーマー:超テク)との釣り合いが取れていないように感じられ、あまり楽しむことができませんでした。楽しめなかったゲームに関しては、「あそこでああすれば良かった、ここでこうすれば良かった」と後悔することが多いのですが、このシナリオに関しては、何をどうすればより楽しむことができたのか、今もって分からない状態です。

第01回 O1『イーツクの町は今日も平和』(大野量樹マスター)

リアクション

「んー、今日もいい天気」

セーラ・ハールストンが交番の中から伸びをしながら出て来た。交番といっても、その外壁には壁の色も分からないほどツタが絡まり、出入口の回りには植木鉢が所狭しとならべられ色とりどりの花を咲かせている。ぱっと見では、まるで古びた花屋のように見える。

ツタの間から、かろうじて突きでている赤いランプとセーラの制服だけがそこが交番である事をものがたっていた。

「こんにちわ。」

伸びをしていたセーラにあいさつしたのは私立探偵のナルーノ・ラップワースだった。ナルーノは交番を見て言った。

「相変わらず凄いですね。ここは……」

「凄いはないでしょ。凄いは。あたしが精根込めて育てたのよ」

セーラは交番をここまでにした張本人だった。セーラの趣味は園芸である。家で育てきれなくなった植物を仕事場に持ち込んだ結果、交番はこのような姿になってしまったのである。

「で、ナルーノさん。今日は何のお仕事? また引っ越しの手伝い? それとも水道工事?」

「ひどいなぁ。こう見えても私は私立探偵ですよ。し、り、つ、た、ん、て、い」

ナルーノは3年ほど前、ここイーツクに探偵事務所を開業したのだが、持ち込まれる依頼は屋根の修理やらスズメ蜂の巣の撤去など、ほとんど町の便利屋状態であった。

「じゃあ、今度の仕事は探偵らしい仕事なのね。良かったじゃない!」

セーラは自分の事のように喜んだ。

「え、まぁ、それは……」

「えっ、違うの?」

「今日は、青年団の手伝い……」

「……」

「それで、ジョンさんいるかな?」

ナルーノは意味もなく笑って言った。セーラは交番の奥にいるジョンに呼びかけた。

「ジョン。お客さんよ。しりつたんていのナルーノさん」

「んあ……」

交番の奥から寝ぼけ眼のジョン・ジョゼアノフが出て来た。ジョンは日課である居眠りの最中だった。

「わたしのこと、呼びましたか?」

目をこすりながらジョンは言った。

「やぁ、ジョン。これから青年団の手伝いに行くんだけどいっしょにこないかい?」

「え、でも……勤務があるから」

と、言ってセーラの方をチラッとうかがう。

「あたしは、別にいいわよ。それに、付近の住民とのふれあいも仕事のうちだもの。それに、ここにいても昼寝してるだけでしょ」

「うーん。それじゃぁちょっと行って見ようかな」

「何かあったら、無線で連絡するから」

もっとも、ここイーツクではシーズン中ならともかく今のようなシーズンオフの時期はたいした事件はない。セーラはジョンとナルーノを見送るとホースを水道につないだ。

「さて、お水あげなくちゃ」

第02回 O1『始まりはいつもハプニング』(大野量樹マスター)

リアクション

ラジオ局の1室にセーラ・ハールストンがたずねて来た。

「やっほー。シャルロット調子はどう?」

机につっぷしているシャルロット・ルエンテーヌに向かって言った。

「ぜーんぜん。だめだよぉ。録音機材とかはいいんだけど。肝心の音楽やってくれる人がいないのよねぇ」

シャルロットはDJという職種を活かして音響担当に立候補したのだ。シャルロットは体をおこしてセーラの方を見る。

「……どうしたのぉ! その格好」

セーラはド派手な化粧にド派手な服装をしていた。始めて見た人なら警官をやってるなんて思いもしないだろう。

「あたし、自分より歳上の役やるよね。だから普段から大人っぽい格好しようと思って。綺麗でしょ?」

「それじゃあ『綺麗』っていうよりぃ『凄い』よぉ」

「そうかしら?」

「シャルロット! いたよ、いたよ。音楽やってる……うわぁ!」

ヨーゼフ・アッシャーが部屋に入って来るなりセーラを見て驚いた。

セーラか。脅かすなよ。何の仮装だ?」

「ひどーい」

セーラはふくれた。

「違うのよぉ。役にあわせて大人っぽい格好したんだって」

「なるほど。確かにシャルロットより大人っぽく見えるよ」

「ぶー」

今度はシャルロットがふくれた。

「それよりさ。音楽やる人が見つかったんだ」

「誰?」

「この前越して来たフォトラさん」

「じゃあ、さっそく行って見ましょう」

「その前にセーラはお化粧落としね」

ウッドタウンにあるペンション『エリウ』がフォトラ・ブレナンの家だ。フォトラは父親のマクレール・ブレナンとともに、先月イーツクに越して来たばかりだった。『エリウ』に着いたヨーゼフたちはマクレールの案内でフォトラの部屋へと招かれた。部屋からはアコーディオンの美しい、それでいてどこかせつない曲が聞こえて来た。

「こんにちは。フォトラさん」

「あ、いらっしゃい。みんな」

フォトラは演奏の手を休める。

「上手ですね」

ヨーゼフが言った。

「なんか、トレリーの曲ににてない。トレリーの方がもっとポップだけど……」

DJをしているシャルロットは音楽には敏感だ。

「あの人の曲もルーツは同じなんですよ。コスカーに伝わる昔からの音楽。私のは向かしながらの曲。ちゃんと歌詞もあるんですよ」

「わー、聞かせて聞かせて!」

「僕も聞きたいな」

「シャルロットもお」

「じゃあ1曲」

そう言ってフォトラは演奏を始めた。

私のうえに町を作りなさい

私のように

私のうえに海を作りなさい

私を忘れないように

けれどあなたたちは来てはいけない

私のもとに

私はもうあなたたちには必要ないから

「なんか、悲しい曲ね」

演奏が終わるとセーラが言った。

「私は強く生きていきなさいって事だと思う」

フォトラが言う。

「素晴らしい。ぜひその才能を僕らの映画に役立ててくれないかな?」

「映画? ああ、その話ならケイラムさんに聞きました」

「へ? ケイラム? そっか、ケイラムにねぇ」

ケイラムもなかなかやるなとヨーゼフは思った。

「それで、どう?」

シャルロットが開いた。

「ええ、よろこんで」

第03回 O1『新たな問題』(大野量樹マスター)

リアクション

「あれ? 二人ともどうしたんですか? 制服なんて着ちゃって。警官の役なんてありました?」

ギルバート・ノーウッドがジョン・ジョゼアノフとセーラ・ハールストンに問いかけた。

「そ、それはですね」

荷物を運んでいたジョンが答えようとしたが重さでよろける。

変わってセーラが答えた。

「違うのよ。この格好してればあの二人組みだって手、出しにくくなるでしょ」

「ほんとの所、似合わない化粧するよか普段のままのがいいってみんなに言われたからなんですよ」

セーラはジョンをにらんだ。理由はともかくとして制服の効果があったのか、アルカディアの撃退が効いたのかはわからないが、あれ以来二人組みは姿をあらわさなかった。撮影も順調に進み、今日はウッドタウンの森の中にある崖下でロケを行う予定だ。

「しっかし、よくこんな場所見つけたな」

ケイラム・オーバンが感心した。

「ここなら二人組も気付かないと思うよ」

このロケ地を探して来たジョゼフ・ベイカーは言った。

「やあ、いたいた。君達かね? 映画を撮っていると言うのは」

「そうですけど? なにか」

「私はこういう者でね。電車から看板をみたんですが、どういう物か見てみたくなりましてね。見学してもいいかね?」

そう言って名刺を渡す。名刺には『クランシィー・コーポレーション 社長 レオン・クランシィー』と書いてある。

「ええ。かまいませんけど」

その言葉を聞くとレオンは適当な場所に腰を降ろした。

「ケイラムさーん。準備できたわよー」

撮影場所からセーラが呼ぶ。

ケイラムがカメラの所にやって来るとバオ・バングが興奮した顔で自分のカメラのシャッター押していた。

「バオ。何撮ってるんだい?」

「凄い。凄いですねここの自然は。僕のすんでた所なんて公園の花壇が精一杯だよ」

「そう言えばバオ。おまえどっから来たって言ってたけか?」

「NWF。NWFから同行したんだ」

「そんな地名聞いたことねーな。ま、いいか。始めるから位置についてくれ」

「よーい。スタート!」

ケイラムが出演なので、ジョンがスタートをかける。

『この崖の向こうにあいつは待ってるんだ』

ケイラムは崖を見上げる。

『行っちゃダメ! 行ってしまったらカディ、あなたは……』

セーラがケイラムを止める。さすがに制服は着替えている。

『それでも、俺は行かなきゃならないんだ』

振り向いてセーラを見つめる。

『……ぷっ』

「きゃはははは」

「カーット。カット」

「何だよ、セーラ。せっかく調子良かったのに」

「だって。ケイラムさん、あたしの顔、真剣に見つめるんだもん。ひょっとして惚れた?」

「馬鹿いえ。俺はだなあ」

「そう言えば。フォトラさんとはどうなったんですか?」

突然ギルバートが首を突っ込む。

「どうって……どうでもいいべ。そんな事」

顔が赤くなる。

「何なら私が占ってさしあげましょうか?」

「いいよ。別に」

「いや、遠慮なさらずに」

「いいって言ってんべ!」

「危ない!」

見学をしていたレオンが突然立ち上がって叫んだ。ケイラムがレオンの視線を追うと崖の上でぐらついている岩が見えた。その瞬間、岩がケイラムたちめがけて転がり落ちて来たのである。とっさに行動をとったのは警官であるセーラだった。固まっているギルバートとケイラムを突きとばすとセーラは横に飛ぶ。岩がどすんと地面に落ちる。みんなが駆け寄って来る。

「大丈夫ですか?」

セーラしっかりしろ!」

ジョンがセーラを抱き起こす。が、セーラはぐったりしている。

「う、うん」

セーラが目を覚ます。みんなが安堵の息をもらす。

「大丈夫? けがは?」

「大丈夫よ。それよりギルバートさんたちは?」

「無事だよ」

「良かった。痛っ」

「どうした?」

「足。挫いたみたい」

みんながセーラを取り巻く中。ケイラムはしりもちをついいたまま茫然とその情景を眺めていた。

「同じだ……あの時と……」

そしてのろのろと立ち上がると力無くみんなに言った。

「やめよう。こんな事はもうやめにしよう。死人が出てからじゃ遅い……」

ケイラムは生気のない顔でシータウンへ続く道を降りて行った。

第04回 O1『心の壁』(大野量樹マスター)

リアクション

(不登場)

第05回 O1『映画の意味』(大野量樹マスター)

リアクション

ベイカー電気店の軽トラックがケイラムの家へと向かっていた。荷台には電線や工具の代わりに人が乗っている。

「確かに映画の中の出来事は現実じゃないさ! でもそれを作ってる僕たちは一体何なんだ!」

フォトラから話を聞いたバオ・バングが言った。

「まあ、そう怒りなさんな」

ノーザン・ポラリスがバオをなだめる。

「でも、理由も言わずに止めるって言いだすなんて納得できないよ」

運転席からジョゼフ・ベイカーが言った。

「誰にだって言いたくない事はあると思うな」

セーラ・ハールストン

「そのためにコイツを持って来たんだ」

ノーザンは片手でコンビニの袋を持ちあげる。

「なにそれ?」

映画の進行状況を伝えるために同行したアルカディア・ストームが言った。

「スパルタス98とポカルスエット。このアルコール度98%の酒をポカルスエットで割る。どんな奴も一発で酔えるぜ」

「それで、一体何人の女の子を泣かせたの? 場合によっちゃ逮捕するわよ」

セーラが冗談めかして言う。

「へへー。それだけは御勘弁を、御代官様ぁ」

「所でアルカディア。映画の状況は?」

「うん。シャルロットさんが監督代理でケイラム抜きでも撮れる所だけ撮ってる。レオンさんのパンフレットも順調だし。結構いい物が出来ると思うよ」

「あたしね、ホントは映画なんてどうでもいいんだ」

セーラがぽつりと言った。

「どうして?!」

「完成度なんかどうでもいいって事。みんないい映画撮るって必死になってるじゃない? あたしはみんなでわいわいやって撮ってる時の方がよっぽど楽しいな」

「着いたよ」

みんなが何か言う前にジョゼフがケイラムの家についた事を告げた。

「ケイラムさん。いる?」

アルカディアがドアをノックする。しばらくしてドアが開き、中からケイラムが顔を出した。

「なんか用?」

「なんか用はないだろ。せっかく心配して来てやったのに」

ノーザンは言うなり部屋に入って行った。みんなも後に続く。

「嫌な事があった時は飲んで忘れるに限るぜ!」

ノーザンはそう言うとケイラムにコップを渡しスパルタス98をついだ。ケイラムはコップをじっと見ていたがやがてつがれた酒を一気に飲み干した。

「そう来なくっちゃ」

出来上がるのに時間はかからなかった。

「ケイラムさぁん。理由を言ってくださいよぉ理由をぉ」

ジョゼフがケイラムにからむ。ケイラムは黙々と飲んでいる。

「いいぞ! ジョゼフもっと言ってやれ!」

ノーザンがはっぱをかける。

「やめなさいよ、二人とも。バオさんたちもなんかいってやってよ」

あまり飲んでいないセーラが言ったがバオたちはすでにつぶれていた。

「まったく。しょうがないんだから」

「昔、死んだんだ……俺をかばって、落ちて来た照明の下敷きになって……」

ケイラムがぽつりと言った。

「えっ?」

「仲間は俺を責めなかった。だけど俺は無言で責められているようで……それでみんな俺を避けるように離れて行った」

「また、離れてくぜ」

「ノーザン!」

「そいつらは本当に前にケイラム、あんたの事を心配してたんだ。だけどな、おまえがいつまでも悲劇のヒーローを気取ってるから愛想つかしたのさ」

ノーザンは立ち上がる。

セーラそろそろ行くか? コイツらもつぶれちまったしな」

「うん」

その時ドアがノックされた。

「ケイラムさん! いますか!」

ドアを開けるとそこにはマクレール・ブレナンが立っていた。顔色が悪い。

「娘が。フォトラが……」

マクレールはフォトラの名前をきいて出て来たケイラムに一枚の紙を渡した。そこにはきり抜きされた文字でこう書いてあった。

『フォトラ あずかった 返して欲しければ ケイラム 秘密 よこせ ビトー」

「これは……」

「もしかしてあの二人組!」

セーラが言うと同時に悲鳴が響いた。

「キャー! ケイラムさん! 助けて!!」

フォトラだった。ケイラムは部屋を飛びだす。ノーザンとセーラも続いて部屋を飛び出した。

外に出ると派手なバイクが見えた。そのタンデムシートにはフォトラが乗っている。そしてバイクは急発進する。ケイラムは急いでベイカー電気店の軽トラックに乗りこみエンジンをかける。荷台にノーザンとセーラが飛び乗る。軽トラックはバイクを追って発進した。

「まって!」

「なんだ?」

「これが、目的だったの?」

岩を指差して言った。

「これって。この岩か?」

「これ、テラフォーマーかも知れないんだ」

サンディの眉がつり上がる。

「なるほど。レジャーランドにしてはおかしいと思ってたが、テラフォーマーとはね」

「手を切って正解だったかもな」

「まあ、俺たちにゃ、もうかんけいねいこった。行くぜデリッ……なんだ?」

サンディの目に岬に向かって突進して来るバイクがうつった。軽トラックが後を追っている。

「あぶねぇ!」

サンディが叫ぶと同時にバイクが転倒する。乗っていた二人は投げだされて地面を転がる。バイクはそのまま地面を削りながら岩にぶつかって止まった。軽トラックがタイヤを鳴らして止まり運転席からケイラムが出て来る。ケイラムが倒れているフォトラを抱き起こす。

「フォトラ!」

「ん……うん……」

フォトラの意識が戻るとケイラムは安培の息をついた。

「うげぇ」

「気持ち悪い……」

荷台からノーザンとセーラが降りて来る。セーラはサンディたちに気付くと言った。

「やっぱりキミたちね」

「なんのことだ?」

「しらばっくれないで! フォトラさんを誘拐してどうするつもりだったの?」

サンディとデリックに視線が集中する。

「まって! 違うの!」

そう叫んだのはフォトラだった。

「ごめんなさい。私……モンパルナスさんに協力してくれって言われて……ケイラムさんを立ち直らせるためだって言われて……」

「モンパルナス?」

ジンは倒れているツナギの男のヘルメットを取った。

そこには目を回したモンパルナス・ナカハラの顔があった。

この誘拐はモンパルナスとフォトラの狂言だったのだ。

「ごめん」

謝ったのはケイラムだった。

「俺がいつまでもくよくよしてるばっかりに……」

「ケイラム……」

「でも、映画の方はちょっとまってくれ。やっておきたい事があるんだ。必ず行くから。それまでまってほしい」

「皆さん! 来てください!」

ケイラムが言い終わると同時に岩に方にいたギルバートが叫んだ。みんなが岩の周りに集まる。バイクの衝突によって岩の表面がはがれ落ちその下から白っぽい物が覗いている?

「やっぱりテラフォーマーだったんだ!」

「いや違う、これも石だ」

それは石碑だった。よく見ると文字が書いてある。そこにはこう書かれていた。

もし彼にあいたければ

私を使いなさい

もし彼が許されれば

私を使いなさい

彼は私達の前にあらわれるでしょう

その詩を読んだフォトラはつぶやいた。

「禁断の歌……」

リアクションを読んで思いついたネタ

ノーザン「おい、仮にも現役の警察官1名を乗せてるんだからさぁ!」

ケイラム「奴の動きの方が早かったよ。フォトラさんを誘拐したバイクが一台、エリウを発進して南下中だ。約20分後に岬に到達する」

第06回 O1『あなたの場所はここ』(大野量樹マスター)

リアクション

「全然わからん」

撮影現場の片隅でジン・ミナツキが言った。

「そもそも『私』って言うのは誰なんだ? あの石碑の事か」

とブルーノ・ラップワースは石碑を指差して言った。今日の撮影は岬なのだ。

「じゃあ 『彼』は?」

ベンジャミン・トイランドが開いた。

「テラフォーマー……かな?」

「おいお前ら。サボってるとシャルロットに怒られるぞ」

「ちょっとまて。今、歌の謎をといてる所……」

聞き覚えのある声にジンが顔をあげると、そこにはケイラムが立っていた。

「ケイラム! 戻って来たのか!」

「ああ、迷惑かけたな」

「僕、みんなを呼んで来る」

ベンジャミンは走って行った。数分もしないうちにケイラムの周りにみんなが集まる。

「一体どこいってたんだよ」

「墓まいりもかねてちょっと昔の仲間にね。映画の方はどうなってる?」

「もう大変よぉ。監督代理はとっても優秀だから」

セーラ・ハールストンはシャルロットの方を見ながら言った。

「所でケイラム、あの石碑の事も映画に取りいれられないかな? もし本当にテラフォーマーがあって、それが動いたら何百年後かにはコスカーが緑の星になるって事でしょ。それって凄い事じゃない!」

「僕もそれは考えてた。撮影をしながらイーツクの謎に迫るなんてロマンだよなぁ」

ヨーゼフ・アッシャーもセーラの意見に同意する。

「その事なんだけど。これ見てくれ」

とケイラムは持っていたジェラルミンケースを開ける。そこには数台のカメラが入っていた。

「これは?」

みんな、もうカメラは使えるようになったよな。そこでだ、このカメラを使って、みんなに好きな物を撮ってもらおうと思ってね。根詰めて撮影するだけじゃ疲れちゃうしね」

「じゃあ僕は撮影してるとこ撮ろうかな」

ベンジャミンがさっそくカメラをまわし始めた。

「なんか、怪しいわね。なにか企んでない?」

セーラ

「どうかな。それより撮影再開だ! で、あの石碑だっけシナリオに取りいれたいのは」

「でも石碑だけってのはさみしいな。おれのカンだとコスカルムに秘密があるとにらんでるんだ」

ジンが言った。

「ジンだけじゃないよ、私だってそれは同じさ」

負けじとブルーノが言う。

「そこでだ。フォトラさんに石碑の前で歌ってもらうってのはどうかな?」

「わ、私ですか?」

いきなり名前を出されたフォトラは驚いた。

「謎の石碑の前で歌うミステリアスな美女。こりゃいいかもしれないな」

ヨーゼフが言った。

「そうと決まればさっそく撮影だ!」

ケイラムは張りきって言った。

「よーい、スタート!」

久しぶりのケイラムのスタートがかかった。そしてフォトラが波の音に合わせて静かに演奏を始める。

もし彼にあいたければ

私を使いなさい

もし彼が許されれば

私を使いなさい

彼は私達の前にあらわれるでしよう

「カーット! OK! ばっちり。次はどのシーンだ?」

ケイラムが言った。

「えーと、次の撮影は……」

ヨーゼフがペラペラとページをめくっていると大粒の雨が降り出して来た。

「あ、雨。変ね、今日の天気予定は一日晴れだったのに」

セーラがそう言っている間にも雨はどんどん強くなっていった。

撮影中に降り始めた雨は、テレビやラジオでは気象システムの故障で1日で回復する見込みだと報道していたが、2日立ってもやむ様子はなく日増しに強くなる一方だった。

第07回 O1『嵐が持ち去った海』(大野量樹マスター)

リアクション

コスカードームではドームができて以来、初めての災害に直面していた。撮影中に降り出した雨は暴風雨へと代わり住民の不安を大きな物へとしていった。

それはイーツクでも同じであり、家という家では嵐に備えて補強対策が行われていた。

{……気象システムの復旧のめどは、いまだ立っていません。イーツク住人の皆さん、戸締りをして、くれぐれも外には出ないように。グリーンさんからのお願いです}

交番のラジオからはグリーン・ピクチュアの声が聞こえて来る。が、今交番ではその声に耳を傾けている暇な人はいなかった。

「ったく。何でウチの交番にはこう鉢植えがあるんだよ」

交番の戸締まりをしようとしていたジョン・ジョゼアノフは理由を知りつつ、ぼやいてみせた。

「何ですって?」

交番を植木だらけにした張本人、セーラ・ハールストンが言った。

「いえ。何でも……」

「ぼやいてる暇があったら、あたしの大切な植木たちをちゃあんと中に入れといてね。あたしちょっと出かけるから」

「出かけるって、どこに?」

「例の石碑」

「石碑って……危ないよ! もし波にさらわれでもしたら」

「大丈夫よ。一人で行く気はないから。それより植木頼んだわね」

ジョンが止める間もなくセーラーは交番を飛び出して行った。

「あーあ。行っちゃった」

ジョンはしかたが無く植木を交番の中へ入れる事にした。しかし、どう考えても全ての植木は交番の中には収まりそうになかった。

セーラはノブシゲ・ナルミをさそって岬へと向かった。腰から下げた携帯ラジオからは相変わらず情報を伝えるグリーンの声が聞こえる。

{……新しい情報が入りました。今まで伝えていた気象システムの異常ですが、システム自体に異常はないとの事です。新しい情報が入りしだいお伝えしますのでくれぐれも外出はなさらぬよう気を付けてください。以上、グリーンさんのお願いです}

「やっぱり、あの歌なのかしら?」

セーラが言った。

「歌って、フォトラさんの?」

ノブシゲがたずねる。

「そう、あの『禁断の歌』を歌ってからじゃない? 雨が振り出したのって」

「言われてみればそうだな。だからあの石碑を?」

「そうよ、なにもないなら、それにこした事はないんだけど……なんか気になって」

「まあ、行って見ればわかるさ」

ノブシゲとセーラが岬に着くと先客がいた。ベンジャミン・トイランドとギルバート・ノーウッドだった。ベンジャミンは何やら一生懸命に何かを言っている。

「ギルバートたちもきてたのか?」

ノブシゲが言った。

「ノブシゲさん。それにセーラさんも」

「キミたちも石碑?」

セーラが聞いた。

「ええ、でも波と風が強くて……」

ギルバートが言うと岩壁に打ちつけられた波が宙を舞った。

「所で、ベンジャミンは何やってるんだ?」

「女のフォトラさんが歌って嵐を呼んだんだったら、男が歌えば嵐がやむのかもって」

「で?」

「この通り」

嵐はおさまる気配はなかった。

「ふぇー。ぜんぜんだめだ」

ベンジャミンがそう言いながらギルバートの所にやって来る。その時、セーラの無線機がなった。

「はい、こちらセーラ」

{あっ、セーラさん? 今どこにいるんです?}

ジョンからだった。

「どうしたの?」

{それがエリウで人手がたりないって言うんで、いってもらえないかな? わたしも今から行くんだけど}

「マクレールさんの所ね、わかったわ。」

{以上です。それじゃあ、気を付けて}

ジョンが通信を切る前にセーラは言った。

「あっ、そうだ!」

{なに?}

「植木、大丈夫?」

ペンション『エリウ』では忙しそうに建物の補強作業をしていた。

「ケイラム そっちはどうだ!」

モンパルナスは言った。

「O.K.バッチグー!」

「こっちも終わったよ!」

バオが言った。

「それじゃぁ、いったん中へ入ろう」

ケイラムがそう言って玄関に向かうと、後の二人もそれに習った。

ケイラムたちがエリウの中に入るとバスタオルを持ったフォトラ・ブレナンがで迎えた。マクレール・ブレナンが熱いコーヒーを持って来る。

「どうもすみません。御迷惑をおかけしてしまって」

「いえ、これも青年団の役目ですから」

「うひょー。たまんねーなぁ」

サンディとデリックが入って来る。彼らは引き続きエリウに泊まっている。フォトラが二人にバスタオルを渡す。

「これで終わりかな?」

デリックが言った。

「しっかし。ドームで嵐なんてなぁ。開いた事ねぇや」

サンディが言った。

「それなんだけどな、やっぱり原因はあの歌じゃないかって……なぁ、セーラ

ジン・ミナツキはセーラに同意を求めた。

「うん、さっきもノブシゲさんに話したんだけど、石碑の前で歌を歌ったあとじゃない、雨が降り出したのって」

「図書館でも調べたんだけどな、結局よくわからないんだ」

と、ジン。

「禁断の歌の対になるような歌なんてないんですか? フォトラさん」

ブルーノ・ラップワースが聞いた。

「対になるような歌ですか……」

フォトラはしばらく考えたあとに言った。

「対じゃあないんですけど。『彼』が許されたなら使いなさいって言うのはあったと思う」

「『彼』か……やっぱりテラフォーマーなのかな?」

「まぁ、まぁ、みなさん。考えるのは後にして、今日はお疲れでしょうから、そろそろ休みましょう。部屋は開いてますので自由に使って下さい」

マクレールが言うと、その言葉がまるで呪文だったかのように疲れが襲ってきた。

「そうだな、マクレールさんの言う通りだ。もう寝よう」

ケイラムに反対する者は誰もいなかった。

翌朝、ケイラムは窓から差しこむ光に眼を覚ました。のろのろとベッドから出ると窓を開けようとした。しかし、外から打ちつけられた窓は開くはずもなかった。

突然ドアが開き、血相を変えたジンが入ってきた。

「た、大変だケイラム!!」

「嵐がおさまったのに、どこが大変なんだよ?」

大きなあくびをする。

「海が……海が消えた!!」

青い海があった場所は、黒々とした大地が広がっていた。多きな水たまりがあちらこちらに見える。それだけが、かつてそこが海であった事を匂わせるだけだった。

「なんてこった……」

みんなエリウの前で棒立ちになってその光景を眺めていた。

「ちょっとあれ見て」

最初にそれに気付いたのはセーラだった。岬の先端の更にその先に岩ではない何か大きな塊があるのが見えた。

「ここからじゃ、よくわからねぇな。行って見ようぜ」

サンディが言った。

ケイラムたちはマクレールから車を借りると丘を降て行った。

海岸と言われていた場所に降りて行くにつれ、その塊が何であるかがわかってきた。図書館のライブラリで見た物、それは紛れもなくテラフォーマーだった。

第08回 O1『人を動かす力』(大野量樹マスター)

リアクション

いつの間にか青年団の会合場所になってしまった『エリウ」では今後、青年団がどうするかと言う事が話し合われていた。

「それで、どうどうなんですか?」

ギルバート・ノーウッドは言った。

「それが本当だったんですよ。あの後上から『ビトー開発に協力するように』って命令が来ましてね」

ルーファスの同僚のジョン・ジョゼアノフが言った。

「わたし、どうすりゃいいんでしょう?」

「そりゃ、従うしかないわよね。一介の公務員なんだし。それに、あたしは専門家に任せた方がいいと思うの」

セーラ・ハールストン。

「任せるって奴等にか? 冗談じゃない!」

「それに、海も無くなっちゃったんだし……」

「ビトーが本当にレジャーランドを作る気なら土地は余ってるってことか」

ケイラム・オーバンが言った。

第09回 O1『そこに君がいる』(大野量樹マスター)

リアクション

上映が終わった。しかし、作品の出来は期待しすぎたせいもあってか、素晴らしい出来とは言い難かった。

「まぁ、こんなもんだろ。初めてにしちゃ上出来だ」

ノーザン・ポラリスが言った。

「そうだよ。それに面白いかどうかはお客さんが決める事、グリちゃんは出来ただけで大満足だな」

とグリーン。

「まぁ、なにはともあれ打ち上げだ!」

ブレーゼス・シースが言った。

打ち上げの会場は開店したばかりのサンディ・アーマンとデリック・ランバーソンのカウンターバー「S&D」だ。開店のお祝いとともに打ち上げもやる事になった。

「でも、意外だわ。二人にこんな才能があったなんて」

扇房で自慢の料理の腕を振るっているセーラ・ハールストンが言った。

「俺達も色々やったからな」

セーラの隣で魚をさばきながらデリックは答えた。

セーラから見てもデリックの料理の腕はなかなかのものだった。

「サンディはね。昔、シェーカー振ってた事もあるんだ。自分の作ったカクテルが歴史に残ったらなぁ。なんて言ってたっけ」

「へー。あのサンディがねぇ」

「これでよし。セーラ悪いけどこれ運んで」

「オーケー」

セーラはデリックの料理を持って扇房を出た。