1995 ホビー・データ『クレギオン#5 バビロンの紋章』

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[プレイング・マニュアル]

キャラクター

設定

[アルファ・ウェストシード]

名前
アルファ・ウェストシード
職業|性別|年齢
合衆国パイロット|女|22歳
好きなもの|大切なもの|嫌いなもの
読書、かわいいもの|権利と義務、母国、家族|責務を放棄する奴、散乱状態
性格
気さくなおねーさん。根はまっすぐで曲がったことが嫌い。ちょっと潔癖症気味。
自由設定
  • 仕事・職務に関して極めて厳しいが、それ以外のときはとても奔放。
  • 大柄な自分の身体に対するコンプレックスのためか、女性的なことを強く意識する傾向がある。
技能
技能
区分名称LV
職業キャヴァリアー操縦4
職業キャヴァリアー整備2
職業射撃4
個人整理整頓得手
個人方向感覚得手
個人護身術得手
個人料理得手
個人飲酒不得手
個人貯蓄不得手

キャヴァリアー

[バベル]

名称
バベル
特性値
特性値
特性
機動力1
装甲2
火力20
格闘力1

説明

『クレギオン#4』に参加していたころ、ギャグブランチである『ドビッシュー超科学隊』に「デトロイト・モンスーン」という名前の火力偏重キャヴァリアー(元ネタは『超時空要塞マクロス』のデストロイド・モンスター)とその搭乗者を登録しようと考えていた時期があります。最終的には『ドビッシュー超科学隊』ではなく、悪の組織の戦闘員を登録することになったのですが、『クレギオン#5』にてその亡霊が復活し、上記のとおり、火力偏重のキャヴァリアーを登録することになりました。

火力偏重と言いながら、装甲を「1」ではなく「2」にしてしまったことについては、

利根川「真の兵なら‥‥ここは「1」まで装甲を落とす‥‥‥‥‥!」

カイジ「ええ‥‥?」

利根川「シナリオも‥‥他のキャラクター設定も分からない今‥‥特徴は限界まで尖らせなければならない。なのにカイジくんは「2」という‥‥‥‥‥。この余分な「1」の分‥‥‥‥これは、カイジくんの心の贅肉‥‥‥見栄というもの‥‥‥‥‥‥!」

カイジ「ぐっ‥‥‥! ‥‥‥‥‥」

利根川「くくく‥‥‥、没るぞっ‥‥‥! その見栄が‥‥‥‥‥後々‥‥‥カイジくんの首を絞める‥‥!」

などと登録後に後悔していたのですが、リアクションでその特性値に言及されることは殆どなく、かてて加えて、普通に敵の攻撃を躱したり、弾いたりしていたものですから、ちょっと悲くなった次第です。

キャラクターについて当初考えていたのは、「普段は天然ボケだが、パイロットスーツを着てヘルメットを被ると戦闘の鬼になる」という二重人格的キャラクター。しかし、当時視聴していた『新機動戦記ガンダムW』に眼鏡の有無で人格が激変するレディ・アンが登場したため、「やめだっ、もう二重人格はやめだああっ」となりました。

シナリオに関しましては、初回からずっと小競り合いが続き、何の盛り上がりもないままに迎えた終盤にて、全長10万kmという土星並の大きさの超巨大戦艦が出現。これは、全長30m程度のキャヴァリアーではいくらレベルを上げて物理で殴っても効果はないだろうと考え、精神攻撃(説得)に出ましたところ、なんとか成功。取り合えず、「終わり良ければ全て良し」ということにしたいと思います。

項目

第01回 SA4『亡国の戦士』(如月正彦マスター)

リアクション

フォール・アウトした先には、小惑星があった。

100機以上のキャヴァリアーがひしめいている。みな、仲間の存在に安塔し、早速小惑星へ向かって飛んでいった。セレネの機体に向かって、小惑星から一機のキャヴァリアーが飛び立つ。クロノスだ。

「お待ちしておりやした」

クロノスが言った。

「あの3人に、あそこにフォールドするよう言ったのはお前か」

セレネは訊いた。

「お役に立てたようで……」

「フン、礼を言っておこう。ラルフは何処だ?」

「案内しやしょう」

クロノスは言って、セレネを促した。

「ラルフか」

呼ばれて、ラルフは振り返った。金色のキャヴァリアーが視野に飛び込む。

「おお、セレネか。生きてたか。悪運の強い奴だ」

「お互い様だ。これからどうするつもりだ」

「全員で、補給に向かう。補給先は見つけてある。手はふたつある。友好的に穏やかに接して、補給をお願いする方法と、強圧的に俺たちの力を誇示して補給を『お願い』する方法だ」

「お前らしいな。合衆国へも、偵察を出すんだろう」

「ああ、Dスペースだ。敵についての情報が少なすぎるからな。俺も行く」

「私も行こう」

「それは心強い」

「お前だけでは不安だからな」

「相変わらずだな、セレネ」

ラルフはあきれた口調で言った。

「それもお互い様だろ」

セレネもやり返した。その様子を、クロノスは(なんだろね、まったく)と溜息を付きながら眺めていた。

その場に居合わせたアルファ・ウェストシードがクロノスの機体に彼女の機体を接触させ、他人には聞こえない接触回線でこっそり聞いた。

「クロノスさんて、ラルフさんが嫌いなの?」

「そーんなことねえぜ」

クロノスが軽く応えた。

「知ってるんですか、ラルフのことを」

アルファが訊く。

「知ってるって言えば知ってるけどよ」

何だか良く分からない応えをクロノスは返す。

「ふーん」

アルファは言った。

第08回 SA4『戦士達の終結』(如月正彦マスター)

リアクション

フラック・フォルネウスと死闘を繰り広げている ゼン・マエダを支援するために、アルファ・ウェストシードとヴェラーナ・ヴァルディアスはキャリアの元へと急いでいた。仲間同士が戦うこと、その無意味さを伝えるために……。

陽が昇った。その、山際からの最初の光線が、深緑のフラックの機体“パイドバイパー”を朱く照らし出した。

一瞬動きを止めていたフラックは、再びスラスターを噴射。サイドに機動しながらレーザーを撃ち込む。視界の微かな輝点が下に動いた。続いて、レーザーの応戦。ゼンの“ミズチリュウ”だ。

2機は対等の、そして名勝負を演じていた。もしこれが闘技場での『試合』なら、歴史に残る戦いとなったであろう。だがこれは実戦である。僅かな油断は即、命取りにつながる。

どれだけ時間が経ったのか、もはや分からない。

フラックは戦闘方法を変えることにした。スラスターを最大噴射、格闘戦に挑むポーズを作る。ゼンは乗ってきた。迫るミズチリュウ。

高速で擦れ違うその瞬間、フラックはゼンの下方、キャリアめがけてレーザーを放った。当然、ゼンはキャリアを護る筈である。その隙を突くつもりだった……だが、フラックは読み違えた。ゼンはキャリアを護る機動を見せず、格闘戦を仕掛けた。

一瞬の殺意。ミズチリュウのビームナックルがパイドバイパーを直撃した。

(ばかな……)

フラックはそのまま、意識を失った。

フラックの撃ったレーザーは、命中の寸前に電磁バリアに弾き返された。アルファとヴェラーナがバリアを展張、キャリアを護ったのである。ゼンは仲間の救援を信じていた。必ず、助けに来てくれると……その事が、ただ一つ、仲間を信じるというその事だけが彼の勝利を生んだのであった。

「殺したの?」

戦いは終わった。電磁バリアを収納しつつ、問うアルファ。彼女はやるせない感情に襲われていた。

何一つ、未来への明確なビジョンを持たなかった天覇帝国。そして、その帝国へ寝返った者たち。死んでいった多くの仲間達。そしてまた一人、死者が出たのか?

「……いや、殺せなかった……」

ゼンは呟いた。最後の瞬間、彼は妹のことを思い出し、とどめを刺せなかったのである。

「それでいいのよ」

ヴェラーナが言った。無益な殺し合いは止めることが出来た。後は、Dスペースを消滅させ、祖国を取り戻す。もはや、取り戻せないのかもしれないが……ならば、新しく築けばよいのではないか? その考えが、天覇帝国には無かったのではないか? ヴェラーナはふと思う。

フラックを始め、離反者達はキャリアに拘禁され、そのキャヴァリアーはキャリアに搭載された。考えを改めてくれることを願って。

前方に明かりが見え始めた。更に接近すると、それは戦闘宙域であることが判明した。

彼らを待っていたのは。分裂を始めたエルメス・ダレスであった。その、天覇帝国最終防衛拠点である要塞は、あまりの巨大さ故に肉眼では全景をつかめない。その巨大な人工建造物が分裂したのである。

そして、心強い友軍も彼らの到着を待っていた。

かつてエスキリアで行動を共にしたカオスアベンジャーズのタイタン隊、そしてユニコーン率いるファイタースフィアーズである。

彼らは既に、戦火の中にいた。エルメス・ダレスを守る対空砲や警備隊と交戦中だったのである。

戦闘に加わるセレネ隊。間もなく、ティア隊とラルフ隊も合流した。そして、その時……巨大要塞の表面に光の亀裂が入った。光は瞬く間に要塞全土を裂いた。エルメスダレスは墜ちた……誰もがそう思ったその時、要塞は分裂し、その破片が形を成し、彼らに襲いかかったのである。

エルメスダレスは、小賢しい蠅共を叩くために、積極的にその姿を変えたのである。

全長10万キロは越える巨大な蛾が、ファイタースフィアーズとカオスアベンジャーズに襲いかかった。

「高エネルギー波を感知!」

誰かが叫ぶと同時に、蛾の頭部から大出力のエネルギー砲が放たれた。セレネ隊はかろうじてそれをかわしたが、ファイタースフィアーズの数十機のキャヴァリアーが光の渦に飲まれた。光の消えたその宙域には、何も残っていなかった。

「戦艦だ! 全機、射線上より待避!」

叫ぶセレネ。そして、唇を噛みしめる。彼女の機体と同じ名を持つその戦艦は、ぬらぬらと光を反射する緑色のゼリーに覆われている。ゼリーはレーザーを反射し、物理兵器を受けとめ、外部からの攻撃を全て無効化する。

ゼリーが動いた。ぶくぶくと泡立つそれは、無数の砲台を形作った。放たれる対空レーザーの嵐。

「何だあれは……」

呟くセレネの目前で、戦艦の後部に灯が点った。推進機……そう気付くより早く、戦艦は爆発的な加速で散開するキャヴァリアー群を蹴散らす様に速力を上げて彼らの中央を突破した。

「隊列を整えろ! 戦艦を追う!」

残存兵力を結集させて追うセレネ隊。その後を、ティア隊・ラルフ隊が続いた。戦艦は、さらに分裂した。羽がもげ、艦首と艦尾が分裂した。ラルフ隊、ティア隊、セレネ隊が艦首を追い、ファイタースフィアーズが羽部分を、タイタン隊が艦尾を追っていた。

執拗に狙うレーザー攻撃を、アルファは電磁バリアで弾き返した。無数の対空レーザー砲台が彼らを狙う。さらに、20数門の大出力粒子砲と艦首に信じられないくらい高出力のエネルギー兵器を備えている。

アルファ、ヴェラーナ、いや、すべての戦士たちの頭に、突然映像が流れ込んだ。

(ころす、ころしてあげる……)

少女のイメージだった。金髪の、全裸の少女が、そう呟いている姿が感じられた。PLSの作用かもしれない。

「あれが、フュアリーズ? 破壊と殺戮のために生まれた、機械生命体……」

ヴェラーナは呟いた。そして……悲しすぎた。生命を持ちながら、その喜びを知らないあの少女が。天覇帝国のやり方に、怒りが燃えた。

直後、ラルフ隊から通信が入った。そして、あの戦艦が通常空間へ出れば、合衆国のあった空間は急速に重力崩壊を起こし、NWFもオルラントも、すべての星がブラックホールに飲まれると言う事を伝えた。

激戦の合間をくぐって、ティア、セレネ、そしてラルフの各リーダーは集まり、手短に話をした。

情報として、スターゲートが起動されたこと。Dスペースはすでに閉じ始めていること。閉じる前に脱出しなければ、永遠に通常空間に戻れないこと。

確認事項として、あの戦艦“フュアリーズ”は外部からの攻撃を受け付けないことと、それを絶対に通常空間に出してはならないこと。そして、決戦であること。

{砲台を破壊、あるいはそれを引きつける部隊、そして内部に突入する部隊で攻撃をかける。……死力を尽くす。以上だ}

総指揮官であるラルフからの最終通信は短かった。

ふと、アルファは友軍ティア隊の指揮官であるティア機に、ラルフ隊のイリア機が寄っているのを見た。通信回線を開くと、ふたりはフュアリーズを救うにはどうすればよいかを話し合っていた。

(フュアリーズを、あの戦艦を、救う?)

彼女には、それは確かに『正しい事』に思えた。

だが、現実的な事とはとても思えなかった。

第09回 SA3『最後の戦い』(如月正彦マスター)

preface

リアクション内に「この空間を支える意志が古典物理学を知らないの?」という台詞がありますが、これは、第8回リアクションにおいて全長10万kmの超巨大戦艦が爆発的な加速で散開するキャヴァリアー群を蹴散らす様に速力を上げて彼らの中央を突破」していたため、私信に「全長10万kmの蛾……1秒間に体長の3倍以上進んだら、光速を超えますね」と書いたことに対するものだったりします。

リアクション

巨大な戦艦、フュアリーズの緑色の艦体。その後部にあるメインエンジンに火が入った。

(あれはフュージョンドライヴエンジン?)

先頭を切って職艦を追うセレネ隊。隊列中央のアルファ・ウェストシードはふと疑問に思った。

(どうしてあんなに速いの? 光速に近い)

アルファの機“バベル”は最大戦速で追撃している。推進機構が悲鳴を上げているのが感じられる。

こんな無茶を続ければ無限のエネルギーを供給する超テクジェネレータもただではすまないだろう。

対する戦艦のエンジンはその青白い噴射炎から見てごくふつうのフュージョンドライヴだ。しかし その加速力は爆発的だった。光速に近くなっても光の偏異現象は起こらなかった。

(この空間を支える意志が古典物理学を知らないの?)

ならば……勝機も見いだせるのでは無かろうか。この空間の特性を利用すれば。

セレネ隊は推進機への負担を意識しながらも更に加速度を上げた。次第に、距離は縮まりつつあった。

{フュアリーズ……}

アルファ・ウェストシードが言葉に出さず、思念でフュアリーズに呼び掛けた。

少女は応えない。

{フュアリーズ、敵意じゃない感情が私たちの中にあることに気付いて……あなたを想う心が……}

{……想う心?}

フュアリーズが微かな思念波で問い返す。

{そう、誰もあなたを倒そうとは思ってないわ。あなたを助けたいそう考えているの}

{助ける?}

{生きることの意味を知ってほしいの。あなたは、全てを破壊しようとしている。自分自身すらも。そんなことをして何になるの?}

{……}

{生きる喜びを、救えてあげたいの}

{……}

{フュアリーズ、あんたが孤独なら、ひとりぼっちで寂しいなら、あたいがずっとここにいてあげる}

思念のみがとびかう空間に、ヴェラーナ・バルディアスの意志がゆっくりとフュアリーズを包み込んだ。

{ずっと?}

{そう、ずうっと。永遠に……}

この戦いが終われば、セレネやクロノスが新たな祖国を築いてくれるだろう。ならば……あたいはずっとフュアリーズと一緒にいてあげてもいい……この哀しみを背負った少女のためなら。

{大丈夫、ここはDスペースだ。ここでは精神的意志が物質に作用する。ならば……フュアリーズ、きみは望めば人間に成れる。俺たちと一緒に行こう、フュアリーズ。君がいれば、娘のアリサも喜ぶよ}

カルヴァン・シュタークの想いがフュアリーズを迫う。

{一緒に行こう}

{一緒に……}

アルファの、ヴェラーナの、カルヴァンの想いがフュアリーズを包み込む。そして彼女の氷に閉ざされた心を溶かす。

戦艦が、金色に発光した。

目も眩む発光が収まると、彼らの眼前に、泡に包まれた全裸の少女が漂っていた。歳の頃は15、6で、その精神よりもずっと大人だ。黄金色の髪の毛がきらきらと乱反射している。

「早く!」

アルファに急かされてカルヴァンは慌ててその少女をキャヴァリアーの無骨なマニュピレータで受けとめた。あまりにも無垢で、純真な少女。

それを自らのコクピットに納めると、突然周囲の壁が崩れ始めた。

{脱出しろ! 支える力を失った戦艦が吹き飛ぶぞ!}

融合者ブライアンの声だった。

「全機、脱出します!」

ティアが叫ぶ。崩れ落ちる壁の中、青白いスラスターが点火される。

バラバラと降り注ぐ破片を縫って、突入隊は脱出のために出口へと急いだ。

第10回 SA2『戦士たちの旅立ち』(如月正彦マスター)

リアクション

「さ、アリス、こっちよ」

ぶかぶかのパイロットスーツを着た金髪の少女をアルファ・ウェストシードが促す。

アリスと呼ばれた少女は自分が呼ばれたことにすら気付いていなかった。

「アリス!」

「あ、っはーい!」

少女が元気に応えた。その顔には、かつてのフュアリーズの憂いはなく、屈託のない笑顔を見せていた。

少女の手を引いて、アルファは建物の中を歩く。出口の所でカルヴァン・シュタークが待っていた。

「どうだった?」

「健康そのもの、よ」

アルファは微笑んだ。

彼らはアリス……かつてのフュアリーズに医師の診断を受けさせたのだ。そして、全く問題はなかった。

街路を歩く3人。風にそよぐ街路樹に、カルヴァンは感動を覚えた。ここには、全ての物が揃っている。カークの最上層は丸どと都市なのだから。人影がほとんど見えないことを除けば、ここは全く平和な世界であった。

「どうしたの?」

アルファが物思いに沈んでいるカルヴァンに声を掛けた。

「あ、いや……アリスに服を買って上げなきゃね」

「そうね」

アリスは歩くこと自体が楽しそうに街路を駆けて行く。その姿に、カルヴァンは一瞬我を忘れそうになる。まだ、旅はこれからなのだ。家族を必ず見つけなければならない……。

残念ながら、カオスアベンジャーズの身内の人間はカークには一人もいなかった。だが、希望はある。このカークのように、宇宙のどこかで平和に生活しているかもしれない……。

「家族に見えるかな?」

何気なく、カルヴァンは咳く。

「……私は7歳の時にアリスを生んだの?」

アルファは吹き出した。

「あ、いやそーいう訳じゃ……あ、これからどーするつもり?」

力ルヴァンは話題を変えた。

「……そうね。ここを拠点に移民船団探しでしょう? アリスに、料理でも教えてあげようかなっ、て」

「そうだね……」

カルヴァンは、はしゃぐアリスを見ながら頷いた。本当の、自分の家族を取り戻すのだ……と。

みたび、同じビルの屋上。今日はセレネ隊とティア隊が出発する日である。セレネ隊は未探査宙域ヘ、ティア隊は取り合えずこのカークと近地球圏・NWFとの国交を確立するために外交交渉に行く。その存在が社会的に認知されない限り、人は人として生きているとは言えないのだ。

ゆっくりと瞬きながら移動するたくさんの星……キャヴァリアーの噴射炎を眺めながらジュゼッぺは溜息をついた。

「行っちまったか」

「ああ。我々も明日出発だ」

今や人間として再びその生を歩き始めたブライアンが額いた。ラルフ隊の探査も明日、出発である。

アルファがすっとその髪を掻き上げ、息を漏らした。傍らにはカルヴァンとアリスもいた。

「まったく、何だったのかしら」

アルファが呟く。彼らにとっては数日間、現実空間では1年の間に彼らを巡る情勢は急変した。平凡な日常を送っていた彼らが天覇帝国の急襲を受け、祖国は壊滅。苦雄の末に天覇帝国を打ち砕いたものの、彼らは流浪の民になってしまった。

「さあ、ね」

カルヴァンが応える。家族のことは心配だ。しかし、焦ったところでどうにもならない……宇宙は、ミクロの点に過ぎない人間の事など無視して自分の都合で動き続けているのだ。

しかし、その点に過ぎない人間にも、未来を創り出すがある。現に彼らの眼前には彼らの手に入れた結果があった。

「救えたのはアリスだけか」

すっと、カルヴァンはアリスの頭を撫でた。アリスは今日は妙におとなしい。

「まだわかんないわよ、あたしたちの家族だって、どこかに」

アルファが言う。

「そうだね」

カルヴァンは頷き、上を見上げた。大宇宙から見れば点に過ぎない恒星。その恒星が微かに瞬く。星もその命の炎を燃やしているのだ。

キャヴァリアーがその空を、ゆっくりと横切る。光の尾を曳いて。未知の、しかし努力によって掴み取れる『未来』を乗せて……。