2002 マルチプル・ウェーブ『エテルーナ魔法学園』

official illust

[パンフレット][エテルーナ魔法学園 スターティングブック]

キャラクター

設定

[柚木凛]

名前
柚木凛(ゆうき・りん)
性別|年齢
女|14才
第一印象
明朗、快活、ローラーブレード
性格
  • 明るく、誰とでも物怖じせずに話ができます。
  • 好奇心旺盛で色々なことに首を突っ込む傾向があります。
所属団体
  • 風紀委員
  • 合気道部
選択科目
科目開始LV終了LV
秘技魔法科[神道魔術]117
格闘科[移動術]925
自由設定
  • 屋外ではいつも、ローラーブレードを履いています。「他のでも風を感じることはできるけど、これだと風そのものになれるんだよね♪」(←『あいしてる』ネタをわかる人が果たしているのか。)
  • 密閉恐怖症です。それと、空気の流れがないところが大嫌いで、自室には季節を問わず扇風機が置いてあります。
  • けじめを大切にしていて、遊ぶときは遊ぶ、学ぶときは学ぶ、と切替が早いです。風紀委員として活動するときは、腕章とホイッスルを身に付けます。
  • 幼い頃に事故で両親を亡くし、以後は祖父の家(合気道場)で育てられてきました。学園に入学してからは、紅葉寮に住んでいます。

説明

元気で前向きな女の子をプレイしようと、『あずまんが大王』の滝野智のイラストを横に置きながら作成したキャラクターです。名前は、トレードマークであるローラーブレードから「ローラーブレード→ローラースケート→とんでも戦士ムテキング→遊木リン→柚木凛」となっています。

当初は、第1回アクションは一人称、第2回は三人称、第3回は極めて簡潔な文章、第4回は極めて詳細な文章……といったようにアクションの書き方を毎回変え、アクションに試行錯誤する初心者プレイヤーを装うことを考えていました。そのため、他のウェブサイトやメールでは「須賀和良」ではないHNを用いて交流を始めたのですが、Googleで『エテルーナ魔法学園』を検索したときにこのサイトが検索結果上位に表示されることが分かり、その計画は第1回開始前に瓦解することになりました。

その代わりというわけではありませんが、アクションでは「キャラクターの目的」と「プレイヤーの目的」とを意図的に乖離させることに挑戦しています。前半は色々と試みることができて楽しかったのですが、後半はシナリオ上の立ち位置が確立されてしまったため、尻すぼみな結果となりました。立ち位置が確立されますと、「どのような結果をもたらすか」ではなく、「シナリオ上期待される結果をどのようにもたらすか」がメインとなってしまうのが辛いところです。

話は全く変わりますが。

このゲームの『ファイナル・ファンブック』に各シナリオの後日談が掲載されており、基本的に全てのプレイヤーキャラクターが登場しているとの話を耳にしました。このキャラクターがどのように登場しているのかを御存じの方がいましたら、教えていただけますと幸いです。

reference

項目

開始前

日記からの抜粋

2002.6.28 fri

『メルるん(偽)』にて、ぱう氏から紹介があったマルチプル・ウェーブのサイトを覗いてみる。

8月から始まるPBMのタイトルは『エテルーナ魔法学園』。いきなり好みから127度ほどズレたマンガ絵の出迎えを受けて一瞬たじろぐも、脳内絵柄補正を行い強行突破。料金体系などを確認した後、「『このページをどこで知りましたか?』? 『メルるん(偽)』って、PBMサイトに入るのか?」などとアンケートに対する自分の回答に疑問を抱きながらもパンフレット請求のメールを送った。

ちなみに、投入する予定のキャラクターは既に決まっている。参加ゲームを決める前に投入キャラクターが決まっているってどうよ? とか思うのだが、それはさておき。

基本は、ローラーブレードを履いた元気系女の子。と言っても、サクラたんハアハアなどという「それでも男ですか、軟弱者!」とセイラさんに叱られるような理由からではない。より鮮烈なイメージ、そして野望があるのだ。

そう、『激走戦隊カーレンジャー(フルアクセルバージョン)』と『ローラーヒーロー・ムテキング』がイメージソングとなるようなキャラクターをプレイしたいという大いなる野望が。

しかし、「なぜ女の子なのか?」という根本的疑問に対する明快な回答はまだ得られていない。

2002.07.01 mon

『エテルーナ魔法学園』のパンフレットが届いた。早い。

中身は表紙を除くとA4で3ページだった。薄い。

[『エテルーナ魔法学園』]

ゲームに関する情報は、費用対効果を考えれば当然のことだが、サイトの方が充実している。パンフ専用の記事といえば「特定商取引に関する法律に基づく説明」くらいのもので、正直なところ、パンフを取り寄せたというよりは、振込用紙を送ってもらったという印象の方が強い。

ちなみにその説明だが、最後に下記のような項目がある。

サービスの中止について

サービス開始時点までに参加申込が一定の人数に至らなかった場合は、やむなくサービスの開始を中止することがありますことをあらかじめご了承ください。

可能性、高そー。

というか、パンフやサイトを見ていて一番気になったのは、この会社が一体何を期待してメールゲーム事業を立ち上げたのかが全く見えないということだったりする。

2002.07.10 wed

「いかん、メイルゲーム分が不足してきた」

というわけで、ぱう氏に「やるき~でろ~」と呪いを掛けられたこともあるので、『エテルーナ魔法学園』に入金することにした。しかしあいにくと、外は台風の接近により雨。こんな中、傘を差して郵便局まで行くのは少々気が引ける。

やっぱり中止。

と思ったのだが、偶然にも課長を県税事務所まで送る役を仰せつかったので、そのついでに事務所からさらに1kmほど先にある郵便局まで行くことに決定。記入済みの振替用紙を内ポケットに秘め、車を運転している最中、私は思った。

ぜってー、事故れねー。

P.S.

「呪い」を“まじない”ではなく、“のろい”と読んだ人は、心が病んでいます。

2002.07.15 mon

♪ 6月 いちばん雨がふる (雨がふるー雨がふるー)

という歌からは、一月遅れての大雨。先週に引き続き、再び非常配備が掛かりそうな勢いである。しかし、私は明日明後日と研修で出張の身。もし非常配備が掛かったとしても、そのような状況になったならば、こちらに帰ってくること自体、不可能であろう。

現在、私が心配しているのは郵便物である。

『雑草記』『PBM系』の掲示板を見るに、『エテルーナ魔法学園』のマニュアルが届き始めているらしい。今日辺り私の所にも届くかもしれないが、こんなときに限って新聞を郵便受けから取るのを忘れていたのだ。下手に郵便受けの窓が開いていたりしたら……想像するだに恐ろしい。

退庁時間を迎え、一直線に自宅へ急行。

……ビショ濡れでした。

♪ だーからいちばん そしていちばん つまらないー月ー

――とかいう日記を書こうと思っていたのですが、今日は新聞は休みで、マニュアルも届いてませんでした。企画倒れ。

2002.07.18 thu

『エテルーナ魔法学園』のマニュアルが届いた。

PC番号は500番台。もしこれが1番からの連番だとしたら、思っていた以上に参加者が多いことになる。というか、ひょっとすると最近のホビー・データのゲームより多いんじゃなかろーか。しかし、第1回登録締切が来週に迫っているのに、まだ『Google』で1サイトもヒットしないという現実もあるため、油断は禁物だ。

8つのDivの初期情報が全て載っているのも◎である。だが、参加者が600人程いるとなると、1Divあたり7~80人となるわけで……少々多いような気がしないでもない。

「なんか、戦闘志向というか、コンピュータゲーム的な魔法が多いな」などと考えながら、パラパラとマニュアルを捲っていき……年表に書かれている1つの事件に目が止まった。

『1999年 伊豆ベルゼパブ召喚事件』

それはひょっとして、『シークレットサービス』の仕業ですか?

参考資料(シークレットサービス)

『シークレットサービス』の広告

来たる98年12月24日、大悪魔バールが地上界に君臨!

怒号の巨大霊力が日本列島に荒れ狂い、世界の聖夜は妖気で染まる!!

来たる98年12月24日、2大悪魔崇拝教団「O.K.O」と「ブゥール・ゼブブ奉賛会」による一大霊的イベント「悪魔召喚儀礼」を国内某所にて執行いたします。召喚の対象となる悪魔は、地獄界の偉大なる王であられるバール大魔神様で、新しく迎える1999年があなたにとって最高の年となりますように、バール大魔神様から絶大なる御加護と願望成就を助太刀していただく事を目的として実施されます。

お申し込みいただいた方に水晶玉を送付し、召喚儀礼当日にバール大魔神様のパワーを遠隔にてチャージいたします。チャージされた水晶玉は恋愛運や金運など運勢全般に効果を発揮しますが、特に叶えたい願望がある場合は、水晶玉に向かって祈願儀礼をしていただきますと、バール大魔神様からの強力なバックアップが得られます。

「チャージなどさせるか」

じゃなくて、確かこの前年だか翌年がベルゼバブの召喚だった気が。

2002.07.19 fri

「あった! キャラクター作成の方法が! できるのか? 健脚シフト、ローラーブレード全回路接続……」

というわけで、『エテルーナ魔法学園』のキャラクターを作成開始。ちなみに私は、いつも下記のような手順でキャラクターを作成している。

  1. 大まかなキャラクターイメージを考える。
  2. 上記のイメージをもとにイラストを描く。
  3. イラストを見ながら細かい設定を考える。

イメージは既に固まっているので、レポート用紙を取り出し、早速10~12才の元気系女の子を描き始める。

描き描き描き。

消し消し消し。

描き描き描き。

消し消し消し。

描き描き描き。

消し消し消し。

描き描き描き。

消し消し消し……

「やめだ、やめだっ! もう元気系女の子はやめだぁぁっ!!」

描いた絵が、頭の中のイメージにかすりもしないですよ。

最近、絵なんて殆ど描いてなかったので、スキルが落ちまくっているのか……。いや、スキルは変わらず、あくまで自分の下手さを冷静に見ることができるようになっただけなのかもしれない。

「人工知能メルキオールより、年齢上昇が提訴されました」

〈否決、否決、否決〉

2002.07.28 sun

『ラグナロクオンライン』の実際のプレイを見せて貰うため、忍者氏宅に赴いた。

忍者氏のキャラクターが洞窟で戦闘する様子を後ろから見ていたのだが、なんとゆーか、初めて見る者にとってはかなり異様な光景だった。忍者氏のキャラクターがモンスターと殴り合っている一方、その場にいる何人もの他のキャラクターは、地べたに正座してHP&SPを回復しているのである。他の人が戦っているモンスターを攻撃するのは「横殴り」とされ、経験値泥棒となってしまうシステムゆえのことであろうが、それって「ロールプレイング」としてはどうよ? という気がしないでもない。

とりあえずは、今度、新たなパソを購入する予定がなきにしもあらずなので、そうしたならインストールしてみようかと思った次第である。

その後は、『2次元ドリームマガジン』や『エイケン』を読んだり、『MTG』をしたりとお決まりの時間を過ごし、9時前に焼き肉屋へと赴いた。そこで私は『エテルーナ魔法学園』でやろうと企んでいる秘密計画を打ち明けたのだが、「ですますと、だであるを混在させる」「むしろルーズリーフ」「打ち出しなら明朝体」など、色々と貴重なアドバイスを頂いた。やはり、複数で考えた方が計画はより強固なものとなる。そして11時前、忍者氏を家に送った後、帰途へと付いた。

今日もフラグが立つ選択肢が見つかりませんでした。

2002.07.30 tue

キャラクター登録&アクション締切まであと1週間。

というわけで、『エテルーナ魔法学園』のキャラ作成をさっさと済ませてしまうことにする。とは言っても、あいかわらずキャラクターイラストは描けてないし、『痕』をプレイしたために「相田さん、ぼえー」「千鶴さんは、口がいいな~」とか妙な影響を受け始めていたりして、基本コンセプトがちょっと揺らぎつつある今日この頃。このまま描けないものを引きずっていても仕方がないので、既存のアニメやマンガキャラクターを代打として借用することにした。

とりあえず、元気系ということで『あずまんが大王』の4巻をディスプレイに立て掛け、智を見ながらキャラ設定を書き込んでいく。時折、『ムテキング』の歌詞を読み返したり、タツノコプロのサイトでビジュアルを確認したりしながら作業を進め、自由設定を1つ残し、作成を終える。この最後の設定はシナリオに絡むようなものにしようと考えているのだ。

しかし、ステレオタイプなキャラクターにしようと思っていたのだが、コンセプトが固まりきれていないは、文章力が不足してるはで、どうも方向性が明確ではないように思える。困った問題だ。

だが、最大の問題は『タツノコ』のサイトにいた小麦ちゃんがその……なんてゆーか……(・∀・)イイ! って感じで、このままこれに影響受けまくったキャラクターに変えちゃおうかなー、なんて考えたりしてるんだけど、それはやっぱりj:e1k94ugt@r.0:w@<q@;t<-@hfs@4dqoeekt6d5whq@xewywy>

壊れた。

2002.07.31 wed

昨日のキャラクター作成に続き、今日は参加シナリオを考えます。

ちなみに、プレイングマニュアルに載っている初期情報は下記の8つです。

Div予定されるジャンル活躍期待度
魔術士召喚士闘術士
アクション、コメディ、寮433
アクション、コメディ、探索334
アクション、コメディ、陰謀334
アクション、コメディ、巫女433
アクション、ドタバタコメディ、怪盗344
アクション、ドタバタコメディ、メイドさん433
アクション、捜査、探索、ドジっ娘343
ホラー、オカルト、推理631

……いくらなんでも、ジャンルが偏りすぎではないでしょうか。

須賀和良は「アクションキャラクターが、アクションシナリオに行っても仕方がない」「コメディキャラクターが、コメディシナリオに行っても埋没するだけ」という考えを持っていますので、行き先は魂Divに決定です。というより他に選択肢がありません。

それと、特筆すべきは魂Divの活躍期待度でしょうか。他のDivが『セガサターンマガジン』のレビューの如く、「最低点は3点」という縛りがあるかのような配分になっているのに対し、魂Divの闘術士はわずかに1点。まるで帝王の座をほしいままにした『デスクリムゾン』の様な扱われ方です。須賀和良のキャラクターは闘術士ですので、若干の不安を抱かずにはいられませんが、逆に競合キャラクターが少なくなるかもしれないと、ポジティブシンキングで行こうかと思います。

などと言いつつ、既に須賀和良の興味は本日GMさんのサイトで発表があった『デモンスリンガー2~八葉姫の帰還』に移りつつあったりするのですが。

須賀和良は、心の片隅で『エテルーナ魔法学園』を応援しています。

というか、店頭で見かけた『ちゆ12歳』をつい買ってしまって、すみません。

2002.08.01 thu

再び、公営プールに泳ぎに来ました。

あいかわらず利用者が少なく、またも税金の無駄遣い1コースを貸し切り状態です。さらに今日はお姉さんが何人か来てましたので、時折ゴーグルを外して目の保養を行うこともできました。全員、子連れでしたが。

さて。

ただ平泳ぎをしているだけでは時間の無駄なので、『エテルーナ魔法学園』のキャラクター設定とアクションを考えることにします。参加シナリオは昨日決定したので、まずは残りの自由設定です。シナリオに絡みやすくするにはNPCと所属を同じにするのが一番簡単ですので、初期情報をチェックしてみます。

名前専攻部活動備考
佐倉真奈美 紅葉寮 秘儀魔法 転入生、現時点最重要NPC
元坂千春  紅葉寮 秘儀魔法 陸上部 紅葉寮の寮長
清美 テニス部 意識不明で入院
佐々木智子 テニス部 清美の第一発見者
謎の声

まず寮は、問答無用で『紅葉寮』に決定です。専攻はさすがに「格闘」から変更することができませんので、後は部活動。陸上部とテニス部とでは、キャラクターに合うのは前者でしょうか。せっかく陸上部にするのなら、『痕』の日吉かおりの嗜好を加えるのもいいかもしれません。その場合、千春を梓に見立てれば、

「あ……」

「先輩ったらこんなにして、本当は期待してたんじゃ……?」

「そ、そんなこと……」

「先輩……かわいい♪」

「あ……凛……。私……怖い……」

「大丈夫、やさしくするから……」

「あっ……。ああっ……」

「先輩……」

「ん……んんっ……」

「気持ちいい……?」

「き……気持ち……い……」

プールから上がれなくなるので、この辺でやめておきます。

ところで初期情報には、千春が真奈美を見て「世の中にはこんな絵に描いたようなきれいな女の子もいるのか」という感想を抱いてほけーっと見とれる、というシーンがあります。これはつまり、マスターとしてはこう言いたいのでしょうか。

「紅葉寮や陸上部に清楚系美少女はいない」

「間違っても、そんなキャラ入れるな」

「つーか、入れても無視する」

須賀和良は、キャラ設定を狭める初期情報に反対しています。

2002.08.03 sat

昨日から『エテルーナ魔法学園』のアクションを考えています。

参加シナリオは魂Divで、RAは「お祭りに行く(神社)」というところまでは決定しているのですが、決め打ち的な登場シーンばかりが頭に浮かび、そこから先が思うように進まないのです。しばらくの間、モニターとにらめっこしたり、ベッドに横になったりということを繰り返した後、初心に戻ってマニュアルの記入例を見てみることにしました。

目的

横浜魔法街でレアなアイテムを買い占める。

動機

夏休みにどこに行く訳でもなく暇なので。

行動詳細

十六夜咲耶が横浜に行くことをどこからか聞きつけ、無理矢理にでも一緒についていく。

魔法街では基本的に咲耶と行動を共にしますが、何か召喚系のグッズを見つけた場合は、それらの獲得に走ります。特に召喚獣と仲良しになれるようなアイテムがないかどうか店の人にきいてまわる。

……誰ですか、このダメダメなアクションを書いたのは。

動機は無いに等しく、目的は自分にのみ意味のあることで、行動詳細は『です・ます』と『だ・である』が混在しています。こんなものが本当に記入例なのでしょうか。そう思ってアクションに関する注意事項を探して見たところ、

ありませんでした。

「自分にだけ意味のある行動ではいけない」といったホビー・データで言う「プロット5原則」的なものが何処にも書かれていません。逆にあるのは次のような文章です。

学園全体を巻き込むような大事件に関わって目覚ましい活躍をするのは気分のいいものです。

また、そんなことには目もくれずに恋人とのラブロマンスやクラブ活動に終始するのも悪くありません。

事件に関わらず恋人といちゃついてるだけのアクションをマスターがどう処理するのか大いに興味のあるところですが、とりあえず某暗黒神様の如く「汝の為したいように為すが良い」ということでしょうか。このゲームならば、病院でカレーを食べたり、永久凍土で大根を作ることも可能かもしれません。

須賀和良は、やりたいと思いませんが。

2002.08.04 sun

引き続き『エテルーナ魔法学園』のアクションを考えています。

10分でやめました。

どうも締切直前ギリギリの状態に追い込まれないと、一歩進んだ考えは浮かばないみたいです。追い込まれたら追い込まれたで「くっ……何も浮かばねぇ。くそったれぇ、オレの力は、こんなものなのかよ……」とか言う事態になる可能性も多々あるわけですが、とりあえず先に『帝都双月魔術陣』を片付けることにしました。こちらは明日が締切ですしね。

10分で書き終わりました。

アクション権自体が引き出しの奥から見つかった1000円札的なものだったため、読参的に気楽に考えたのが良かったのかもしれません。早速プリンタの設定を調節し、アクションハガキに打ち出します。続いて表に住所氏名を……って、その上にシナリオタイトル『ようかい☆ティーチャー』って書くの、物凄く恥ずかしいんですけど。

しかし、こんなことで恥ずかしがっていては、とても『ももいろ交差点』やることはできません。あちらは18禁な行動をハガキに書かなくてはならないのです。この程度のことに怯んでいては忍者氏に笑われてしまいます。須賀和良は勇気を振り絞って自分の弱い考えに反逆し、シナリオタイトルのみならず、表のメッセージ欄にキャラクターイラストまで描き込みました。

10秒で消しました。

須賀和良は、負け犬です。

2002.08.05 mon

いよいよ明日が『エテルーナ魔法学園』の締切です。

なんとかかんとかアクションの方は書き上げたのですが、不安なことが1つだけあります。それは参加人数がわからないままにアクションを書いたということです。「参加キャラ××人中、×割の人がこの選択肢を選ぶだろうから……」という感じでアクションを考える須賀和良にとって、メタを想定できないというのはかなり辛いものがあります。

『エテルーナ魔法学園』の参加者については、7月18日の雑記に「PC番号は500番台。もしこれが1番からの連番だとしたら、思っていた以上に参加者が多いことになる」と書いたわけですが、どうやら連番ではなかったようです。凛の個人番号は「L0553」ですが、他の方は「H5201」「M6271」「F2420」といった感じで、全く参加人数が読めない、というか読ませない付番になっています。もしかすると『鳳凰の翼』や『神々の黄昏』に匹敵する規模なのかもしれません。

ちなみに『鳳凰の翼』SY5ブランチの第1回リアクションはPC数が5人でした。

SY5ブランチはその後順調に参加者を増やしますが、とうとう2桁に届かないまま全10回中の第5回でゲームは中断となってしまいます。内容そのものは個々人に割り当てられた役割が大きく、久々に他ブランチのリアクションを読むのが面白いゲームだっただけに、社内の人間関係が原因で中止となってしまったのは返す返すも残念です。いえ、これはあくまで噂にすぎないのですが。

「市民、噂は反逆です」

・・・・・・zap zap zap

どうも、先程は失礼しました。

それと『エテルーナ魔法学園』については、住所非公開にし、別のHNとメールアドレスを使ってプレイしていこうと思っています。ですので、もし他のサイトで名前を見かけても知らないフリをしていただけると助かります。

「コンピュータ、以上の発言からも、市民須賀和良の反逆的性向は明らかです」

・・・・・・zap zap zap

2002.8.6 tue

『エテルーナ魔法学園』のアクションを投函した後、あることに気付きました。

魂Div以外の初期情報、1行も読んでません。

2002.08.14 wed

3週間ぶりに『エテルーナ魔法学園』をGoogleで検索してみました。

以前はファンページはおろか公式サイトさえもヒットしない状況だったのですが、今日は9つのページが見つかりました。と言いましても、その殆どが日記とリンク。コンテンツとして『エテルーナ魔法学園』があるサイトは、須賀和良が知っているだけでも5つあるのですが、残念ながらまだそれらは登録されていないようです。

というか、ここが4番目に出てくるのはどういうことですか。

これでは別HNでプレイするという面白秘密計画が台無しです。このことあるを予測して、PBMのページにはロボット検索避けを導入していたのですが、よりにもよってトップページに書いた日がキャッシュに記録されてしまうとは。やはり浅はかな陰謀がコンピュータの情報網から逃れることなど、できはしないのでしょうか。

既に某サイトの掲示板で「魂Divにローラーブレードキャラクターを入れる」と明言してしまいましたので、日ハム並に終わっているような気もしますが、ひとまずPBMのページを隔離しました。何かの間違いで『エテルーナ魔法学園』関係でいらした方については、気付かなかったフリをしていただけると助かります。

須賀和良は、Googleのキャッシュ機能に殺意を覚

・・・・・・zap zap zap

2002.08.17 sat

アクセス解析の結果、既に『エテルーナ魔法学園』関係でいらした方がいることが判りました。

「引かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」の精神で頑張っていきたいと思います。

……もう死んでますか?

第01回 魂『祭の夜に』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

preface

当初は初心者を装うことを考えていたのですが、プレイヤーシートに『メールゲーム参加回数』欄があることに気付き、断念しました。と言いますか、あの記入例には、とても太刀打ちできません。

「……老いたな、父上」

アクション

アクションno.

魂-1「お祭りに行く」

目的

佐倉さんと色々話ができる場を作りたいな、と思います。

動機

佐倉さんに寮の人達と打ち解けて欲しいため。

行動詳細

寮長と佐倉さんがお祭りに行くという話を聞いて、自分も一緒に行くことにします。また、ちょっとした歓迎会も兼ねることができないかなと思い、寮の他の人達も誘ってみます。それと、シロも(^_^)。

佐倉さんは、どちらかというと、自分から他の人に話しかけるタイプではないように見えますので、こちらから話題を振ったり、出店に引っ張って行ったりしようと思います。

祭りの中で、もし、未成年なのにお酒を飲んでいるような人を見かけたら、風紀委員として活動します。

「今から10秒後に風紀委員として活動するからね。その手に持ってるのを捨ててこないと、明日からなが~い掃除当番が待ってるぞ☆」

マスターへの私信

はじめまして。これから8か月の間、どうぞよろしくお願いいたします。

凛は、私自身とはだいぶ違う性格設定(^^;)にしたものですから、きちんとプレイしていけるか不安なところもありますが、いつも前向きで明るいキャラクターを演じていくことができればなぁ、と思っています。

それでは、第1回のリアクション、楽しみにお待ちしています。

アクションの補足

ミッション失敗。(早ッ)

初々しいというよりは、単に丁寧なだけになってしまった気が。

リアクション

「ねえ、みんな知ってる?この神社のいわく話」

「え。なになに、ボクは知らないな、教えてよ」

その話題に真っ先に飛びついてきたのは、ローラーブレードを履いた風紀委員の少女、柚木(ゆうき りん)。なにしろ明るく快活な彼女は、怖い話というものに対しても積極的であるようだ。

そのの隣には、半ば無理やりという形で連れてこられた真奈美が、セーラー服姿で静かに歩いていた。特に誰かと親しくする訳でも無く、ただ皆の後からついて来ているだけといった感じだった。

「この豊水神社にはねえ、大きな石が奉じてあるんだよ。実はその下には、昔々の悪い龍が封じ込められていて、その岩に触れたものは、全員不幸になるんだって。友達から聞いた話だと、知らずに岩を傷つけてしまった生徒たちがいてね、その生徒たちは、全員普通では考えられないような水の事故で死んじゃったんだって…」

「たとえばどんなことがおきたんですか?」

使い捨てカメラで、パートナー召喚獣のマーメイドのみなもが、紫陽花柄の藍色浴衣を着ている姿や、故郷の島には見られない屋台等のお祭りの風景を撮影していた男子生徒の真野 天海(まの あまみ)も、どうやら先程の話はしっかり聞いていたらしい。改めて聞いてきた。

「うーん、あのねえ・・・たとえば・・・」

小春は思い出し思い出し、寮生たちに語り出す。

「初めの一人は、清掃中のプールで排水溝に足をとられて、わずか10cm程の水深のところで溺れて死んだの。二人目の人は、突然行方不明になって、次に見つけ出されたのは、それから半年も経った後で、学園の屋上にある貯水タンクの中だったの。三人目は、寮の布団の中で死んでいたの。周りは全然濡れていなかったのに、死因は溺死だったらしいわ。そして最後の一人は・・・」

しかし、天海のパートナーのみなもが、乗っかっていた天海の黒髪に顔を突っ込んで、いやいやとし始めた。召喚獣であるが、彼女は怖い話が苦手らしい。その姿に、ついつい小春もわざと意地悪なことを言ってしまう。

「あ、そう? それで今ではその岩の表面には、その生徒たちの死んでいった時の苦悶の表情が浮かぶようになったんだって・・・見に行くなら案内するけど?」

ますますふるふると頭を振るマーメイド。今にも泣き出しそうになったので、小春も多少ばつが悪くなり、ごめんねとその頭を撫でて、早々に話を切り上げてしまった。

は気分を変えようと、小春の後を引き継ぐようにして皆に呼びかけた。

「ね、みんな。携帯番号交換しない? せっかく同じ寮に入ったんだからさ!」

「ええ、ワタクシかまいませんわよ」

一番初めに沙雪が、続いて次々に他の生徒たちもその交換に応じた。ただ、真奈美だけがいつまで待っても、話の輪に加わろうとはしない。そわそわと、が尋ねる。

「交換、したくない?」

「・・・私、携帯電話持っていないから・・・」

しまった。それは誤算だった。ちょっとがっかりのだったが、そこは前向きな彼女のこと、すぐに思考を切り替える。

「うん、じゃあさ。今度携帯プレゼントするね。それ使ってくれればいいし・・・」

そこまで言ったとき、向こうの方から、を呼ぶ声がした。

柚木さん、ちょっと一緒に来てください、風紀違反の生徒がいますよ」

「あ、乙月さんだ、いけない、みんな、御免ねっ!ちょっと席外すよ!」

隠し持っていた腕章とホイッスルを装着し、ローラーブレードで石畳を蹴って、彼女は人ごみを巧みにすりぬけると、あっという間にいなくなってしまった。

「よーし。もっと飲め、飲め」

「うおー。じゃんじゃんいくぜ~」

屋台のすぐ近くで、数名の男子生徒がビールの空き缶を散らばらせて騒いでいた。

それを見つけた風紀委員の乙月 友樹美は、金魚や綿菓子、焼きイカなど、買い込んでいたそれらを、ひとまずその辺にいた通行人に預けて、彼らに呼びかけることにした。

「そこの一団! あなた方がやっていることは、公共良俗に反しています。即刻退去しなさい。さもないと・・・」

「ボクたちが10秒後に、風紀委員として活動するからね! その手に持っている酒を捨てないと、明日から長~い掃除当番が待ってるぞ!」

ローラーブレードで現場に駆けつけたが、友樹美の後に続く。

その忠告は、酒を飲んで騒いでいた彼らにとっては、とても有益だったことは間違いない。しかし、惜しむらくは彼ら自身がそれを理解出来る頭を持っていないことだった。

「うるせーんだよ!」

「誰に向かってもの言ってんだよ、馬鹿女ぁ!」

こんなことを言うようでは、むろん彼らの未来は明るいものでありえるはずがない。

「殺っちゃいますか?」

「そうしましょう」

の言葉に、弓をつがえた友樹美の目は、もちろん本気であった。こうして酔っ払い集団は、全員あえなく御用となったのである。

(やっぱり、ただの人間なのかな)

クラウンペンギンを足元にまとわりつかせて、秋山 陵一は一人考えていた。クラウンペンギンに、ちょっとしたいたずらを仕掛けさせて、彼女の正体など探れないかと思ったのだけれど・・・。その耳に威勢のいい者売りの声が聞こえてくる。

「ひよこ、ひよこ釣りはどうかね。かわいいよ。赤も青も、紫もいるよ。ピンクのぶちもいるんだよ」

金魚すくいと並んで、人気の高いのはひよこ釣り。細い紐についた釣り針に練りえさがついたものを買って、それをぴよぴよと鳴いてすし詰めになっているひよこたちの間にぶら下げる。

ひよこは、どれもこれも、黄色いだけでは飽き足らずに、緑や青やに塗られていた。不自然な姿ではあるのだが、それがまた、にぎやかで受けるのだ。もともとあんまり餌もやっていないに違いなく、雛たちは先を争って、すぐさまぱくりと食らいつく。それで、吊り上げられれば自分のもの。餌だけ取られればもう一回・・・。

「やりたい、あたしやりたーい」

「駄目よ。もう、どうせなら金魚すくいにしておきなさい。お母さんは駄目だからね?」

「えー、なんでえ、したい、したいよう」

お母さんに手を引っ張られて、浴衣姿の少女が連れて行かれる。

お祭りと言えば、カラーひよこ、ピンクのひよこ・・・。そんな符号が陵一の頭の中にちらついていた。

「よう、にいちゃん、ひよこ好きなのかい?」

「え、あ、いや、ぼくは買うつもりないし・・・」

「いやまあ、そう言うな、どうせ余りものだし」

そういいながら、店主が示したのは、隅っこに小さくうずくまっているピンク色のひよこ。餌を取りはぐれてしまったらしい。それをむんずと掴んで、男は無造作に陵一に投げてよこした。

「肉もねえから、二束三文なんだ。やるよ」

そう言い残して。彼はさっさと荷物をまとめ、帰ってしまう。残された陵一の手には、ピンク色のひよこが一羽。そこに、仕事を終えた柚木が通りがかった。

「わー、ひよこだ、ひよこ。かわいいね。これ、飼うの?」

「いや・・・その・・・いるんなら、あげるけど?」

えっ。本当。思いがけない幸運にの声が弾む。彼女がそれをそのまま譲ってもらったのは、いうまでもないことだった。

もらったその翌日、ひよこは箱の隅っこで小さくなって、冷たくかちかちに固まっていた。もともと、病気だったのかも知れない。

「死んじゃったんだ…」

悲しい気分で、は寮の裏庭に、朝から小さなお墓を掘るはめになってしまった。日はまだしっかり昇ってはおらず、あたりは薄霧に包まれている。

すっかり埋めて、小さな土饅頭を作ってやると、もうすることがない。はあ、とため息をついて、部屋に戻るだけ。

3階まで外階段づたいに戻ったところで、なんとなく後ろ髪をひかれて、くるりと振り返る。と、そこに、黒髪の少女がいた。

彼女はじいっと、その土饅頭を眺めて、そうしてその上に、そっと何か置いたようだった。話しかけてはいけないような気がして、そのままじっと眺め続けている。彼女が消えた後で、戻って見てみると、それは寮の裏庭に自生している、早咲きのコスモスの花、一輪であった。

日記からの抜粋

2002.08.24 sat

『エテルーナ魔法学園』魂Divの第1回リアクション(ノベル)がメールで届きました。

本来ならば昨日届く筈だったのですが、マシントラブルのため処理が遅れてしまったそうです。ちなみに届いた時刻は午前2時48分。きっと、昼からこの時間まで復旧作業をされていたのでしょう。どうもおつかれさまです。

魂Divの参加人数は18人でした。『エテルーナ魔法学園』のDivは全部で8つですので、全体では150人程でしょうか。多いのか少ないのか、ちょっと微妙な数字です。とりあえず『鳳凰の翼』は超えたようですが。

さて、リアクションの内容ですが、残念ながらアクションは没でした。いえ、アクションに書いたことの殆どは採用されたのですが、私が一番やりたかったことができなかったのです。それは「夏祭りにシロを連れて行く」ということ。寮で飼っている雑種犬のシロはNPCの真奈美に対して何かを感じているらしく、彼女が最初に寮に来たときに吠えるという行動に出ています。このシロと真奈美とを引き合わせることで「真奈美には何かがある」というプレイヤー情報をキャラクター情報に落とす計画だったのですが、何か問題があったのか、この部分だけ綺麗に無視されてしまいました。これ以外の部分はストーリー展開には寄与しないキャラクターのイメージ固めにすぎなかっただけに、ちょっと残念です。

っていうか、そんなのひとっ飛びで行動されてる方が何人かいらっしゃるのですが。

魂Divの初期情報をまとめると、「舞台は8000人の生徒が住む学園都市。ある夏の日、紅葉寮に佐倉真奈美が入寮してきた。その一方、テニス部の部室では、在原清美が意識不明になって倒れていた」となります。この状況から、「真奈美は昏睡事件と何かしらの関係がある」とか「真奈美は吸血鬼かも」とかいう推測を立てるのは殆ど不可能というか、電波入っているとしか思えないのですが、どうでしょうか? とりあえず凛には次回のアクションでこの辺りのことを小一時間問い詰めさせてみたい思います。

須賀和良に、初心者偽装は無理でした。

2002.08.26 mon

『エテルーナ魔法学園』の情報誌と物理リアクションが届きました。

「分厚っ」

それが須賀和良の第一感想でした。情報誌はわずかに12ページですので、普通郵便で届いた『クリエイター』並に薄いのですが、リアクションが印刷してある紙がやたらと厚かったのです。印刷用紙というよりもむしろ、薄いケント紙といった方が良さそうな雰囲気です。他にも、キャラクターのデータシートに色紙を使用していたりと、好感が持てる内容なのですが、果たして最後まで保つのかちょっと不安にならないでもありません。

続いて情報誌ですが、第1回ということで学園内の施設が紹介されていました。なぜマニュアルに載せなかったのかと小一時間問い詰めたいところですが、新たに投稿規定が掲載されていたことを考えますと、詳しい説明を求める声が多かったのかもしれません……とか、無理矢理好意的な理由を考えてはみたのですが、やっぱり「毎月の情報誌用のネタとしてとっておいた」というのが一番可能性が高くて納得できる理由のような気がします。

投稿には、早くも交流誌の参加者募集がありました。この交流誌については、某掲示板に書かれていたため、存在自体は知っていたのですが、2月以降の忙しさを考えると参加が中途半端になってしまう可能性があったため、参加表明を保留していたのです。しかし、改めて募集記事を見ていたら、参加したいという気持ちが強くなってきましたので連絡することに……って、ひょっとしてこの主催者の方って7年前に『朧月都市』で交流があった方じゃないですか?

須賀和良は、初心者を装ったメールを送ったりしないで本当に良かったと思いました。

2002.08.27 tue

交流誌の主催者さんから驚愕の事実を告げられました。

「ローラースケートを履いていて、タコ嫌い」という『ムテキング』が元ネタのキャラクターを4年前にプレイしていたというのです。なんということでしょう(声:増岡弘)。須賀和良が居る場所は、既に氏が4年前に通過した場所だッッッたのです。

さらに今回の交流誌は第4代目になるそうなのですが、そのキャラクターは第2代目のパーソナリティを務めていたとのこと。これは問題です。以前から交流誌に参加している人から見れば、私のキャラクターは二番煎じにしか見えません。こうなったら、もう1つの元ネタである『激走戦隊カーレンジャー(フルアクセルバージョン)』をより前に押し出すしかないでしょう。もっとも、こちらはこちらで須賀和良は『カーレンジャー』を観たことがないという別の問題を多分に孕んでいたりするのですが。

須賀和良は――――(30分経過)――――ショックでオチが浮かびませんでした。

2002.08.30 fri

『エテルーナ魔法学園』のオフィシャルサイトには、各リアクションの発送状況を知らせるページがあります。それだけなら同じ事をしている会社が他にもありますが、なんといっても凄いのはアクション未着のお知らせまで載せていることです。このページで郵便事故がわかった場合にアクション再送を認めるのかとか、インターネットを利用できない人は2週間近く晒し者になるだけなのか、といった疑問はありますが、それを差し引いてもこの丁寧さは特筆ものです。参加人数が少ないからこそ、できることでしょう。

さて、このページに載っている8つのDivですが、炎Divの発送日だけが2日遅れの26日になっています。ホビー・データの遅刻に比べればかわいいものですが、他と比べてリアクション作成が難しい話だったのでしょうか。初期情報から、このDivの概要を端的に示す部分を抜き出してみましょう。

「何だこれは!? 生徒会のやつら、ふざけているのか?」

今年の6月から来年の3月までの間に、月一回のペースでクラブ対抗戦が行われ、その戦績によって来年度の各クラブの予算を決定するという旨の通達がなされていたのだ。

各クラブの出場者達は、毎回チーム分けがなされ、そのチーム単位で勝利を目指すことになる。今回の第1試合では、野球部とサッカー部は同じ“TEAM BLUE”に所属することになっていた。

ちなみにこの通達を出したのは、アンドリュー・倉崎という学歴優秀で品行方正で独善的でナルシーで眼鏡な生徒会長です。Divのジャンルが『アクション・コメディ・陰謀』となっていることを考えますと、彼は何か秘密の目的をもってこの対抗戦を仕組んだと思われます。

しかし、これは確かに参加人数が少ないとマスタリングが難しい話です。初期情報で各クラブが4つあるチームの何れに属するかも書かれていますので、下手するとチーム人数に大きな偏りができる可能性も否定できません。

で、第1回リアクションのPC数ですが……5人だったそうです。

いきなり、『鳳凰の翼』SY5とタイ記録です。リアクションを読んでいないのですが、いったいどんな内容になったのか興味を抱かずにはいられません。というか、既に崩壊してませんか、それ? 情報誌の『学園トピックス』(各Divのダイジェスト)では、炎Divに一番大きなスペースが割かれているのですが、果たしてどれだけ効果があるのか……というか、この参加人数の事実を知った後では、この扱いにもただただ涙が出てくるばかりです。

須賀和良は、生徒会長を女性にしていればもっとPCが集まったのではないかと思います。

第02回 魂『二学期』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

preface

当初の予定では、毎回ミッションを立て、“初心者から少しずつ脱皮していくプレイヤー”を演じることで、普段とは違うプレイングをしようと思っていたのですが、Googleのキャッシュ機能の前にすべての計画は水泡と帰しました。

もっとも、「アクションの成功・失敗に関わらず、ストーリーの進展を促す可能性が極めて低い」という点では、十分、普段とは違うタイプのアクションだと言えるのですが。

アクション

アクションno.

魂-1「学園生活を満喫する」

目的

佐倉さんが自分から気軽に挨拶・話ができるようになればと思います。

動機

独りでいるよりも、友達がいた方が楽しいと思うからです。

周囲から孤立しているように見える佐倉さんに、事故で親を亡くし、転校したばかりの頃の自分の姿を重ね合わせている部分があります。そのとき立ち直るきっかけを作ってくれたのが、声を掛けてくれたクラスメイトだったので、自分もそういうことができれば、と思っています。

また、ヒヨコのお墓に花を添えたのを見て、とても優しい人なのだと思っています。そして、それと同時に、「死」に何か特別な感情を抱いているのかもしれないとも考えています。

行動詳細

寮の内外を問わず、買い物や食事や宿題(^^)など、積極的に話し掛けるようにします。自分自身、まだ入学して5か月しか経っていませんので、学園のことにそんなに詳しいわけではありませんが、公共施設やお薦めのお店などは案内できると思います。

佐倉さんは2学期から授業を受けることになるわけですが、1学期部分は、どこか他のところで勉強してきたのかを尋ねます。専攻は秘儀魔法ということですが、自分は秘儀魔法がかなり苦手なので、一緒に教えてくれる人を探せればと思います。

「やっぱりボクも、補修を受けた方が良かったかな~」

もし、意識不明事件と佐倉さんとを結びつけて考えるような話を耳にしたら、どうしてそんな考えになったのかを問いただしたいと思います。

アクションの補足

自分が読んで恥ずかしいアクションというのは、どうしたものでしょう。

それはさておき、今回のアクションは当初の予定からかなり離れたものになっています。第3~4回までは単純に元気なキャラクターとしてアクションを掛けることで、マスターに紋切り型のイメージを定着させておき、中盤を過ぎた頃に、実は「元気なキャラクターを演じている」キャラクターだったことを明かす、という予定だったのです。心情描写は極力抑えて、具体的な行動のみを記入すれば良かったのかもしれませんが、アクション記入欄の大きさ(最大8000文字)に負けてしまいました。やっぱり私は『デモンスリンガー』程度の記入欄が好みです。

リアクション

朝。寮の壁にからまる、早くも端のほうが赤く染まり始めている蔦の葉にも、冷たい朝露がつく時間帯。二学期の始まり、その第一日目の登校を始める生徒たちの様子は、なんとも賑やかなものであった。朝日が差し掛かってくる中を、皆はどたばたと動いている。一日のうちでも、まず一番に活気にあふれた時間帯だ。その中でも顔色が青白いのは、やっぱり真奈美だ。半病人と形容してもおかしくないような雰囲気である。が、その病弱そうなあたりも、男たちは見損なわない。彼女のことは、寮に入った当初あたりから、段々と口コミでうわさにもなっていた。まるでかげろうのようにはかなげな、薄幸そうな美少女。そういうものに男は結構、いや、かなり弱い。

「どれだどれだ」

「お、あれだよ。うわあ、肌白いなあー。目なんか真っ黒だよ」

「大和撫子って感じだなー。いいなあー。いいよなー。かわいいよなー」

「はいはい、お掃除です。そこ、どいてくださーい」

乙月 友樹美(おとづき ゆきみ)は、そうやって群れている数人の男子に、ばばばばばと箒で砂をかけて追い払いにかかった。毎朝、寮の周りを竹箒で掃除するのが、彼女の日課である。もちろん、雨の日以外の話だが。その甲斐あって、なんだよう、といいながら、男子生徒たちは退散していった。全く、男というのはどうしてああも単純というか、みえみえなのか。軽い憤慨を覚えつつ、友樹美はまたそのまま掃除を続けた。が。

「ぎゃーおう!」

「わあああおっ!」

駆け込んできた黒猫のドゥナ・エーと野良猫の争いによって、せっかくはきためた落ち葉などが、目の前でぐちゃぐちゃに散らかされてしまう。憤りを隠さない、いや、隠せない友樹美は、ぶんっと箒を振り回して、その二匹を追い払った。

「もうっ!なんなんですかッ!」

ばちいんと箒で壁を叩く友樹美。ちょっと朝から荒れている。

「どしたのー、友樹美ちゃん」

そこに、また運悪くローラーブレードを履いて、登校しようとしていた柚木(ゆうき りん)が通りがかる。そうして、たまたまなのだろうが、また履き集めていた落ち葉をふみつけて散らしてしまった。きっ、と友樹美は彼女に視線を向ける。そうして、もう一本の竹箒を彼女に手渡す。え? かなり戸惑った様子の。なんでボクがこんなものを渡されるんだろ・・・。お先に失礼。そんなことを言いながら通り過ぎて行くのは・・・都雲ちゃんだよ・・・。

「一緒にお掃除してください。お掃除すると心がきれいになります」

「え? いや、でも」

「してください」

真奈美ちゃんと一緒に、登校しようかと思ってたのに。なんか、それも出来ないみたい。ああ、阜ちゃんみたいに天足呪使えたらなあ。走って逃げられるのに。

「それでここがね、召喚実験室だよ。あの向こうが売店でー、焼きそばパンがおいしいんだよ。でも、すぐ行かないと、売り切れちゃう」

銀杏の並木の枝が、落ち葉を散りこませる吹き抜けの廊下。だんだん黄色くなっていく緑色の姿は、やはり初秋であることを感じさせずにはいられない。ローラーブレードを履き、先頭に立って得意げに校内を案内しているのは柚木である。後、阜の学校案内に付き合っているのは、真奈美に学校案内しようとこちらも思っていた小春と、別に誰も呼んじゃいないが小春にくっついてきた秋山 陵一に加えてクラウンペンギン。

あまり速く行きすぎて、真奈美たちを置き去りにしないように気を使いながら、柚木が声をかける。

「でも、佐倉ちゃん、一学期は普通の高校に通っていたんだね。ボクもさ、秘儀魔法が苦手だから、佐倉ちゃんと一緒に教えてくれる人を探そうなって思うんだけど、どうかな?」

「う・・・うん・・・」

相変わらずの生返事の真奈美。もともと案内しようと思っていた阜は、自分の喋りが上手くないことも自覚しているので、ある程度はたちに任せてしまうことにしていた。しかし、さっきから見ていると、やれケーキ屋だ、売店だ、アイテムショップだ、体育館だ、温水プールだと、なんかそっち関係ばかりだ。もっと彼女に必要だろうと思われることを教えておきたいのだが。しきりに思う阜。が、その機会は突然にやってきた。ほとんど何の前触れもなく、いきなり真奈美が倒れたのだ。

「さ、佐倉さんっ!?」

悲鳴じみた声を上げる小春。反射的に、後ろにいた阜は彼女の背中を支えた。頭でも打ったら大事になってしまう。顔を覗き込んでみると、やはり真っ青だ。貧血でも起こしたのかもしれない。

「わ、わ、大丈夫っ!?」

「静かに。頭は打ってないから・・・気分がわるくなったんだよ」

慌てて駆け寄るに、静まるように言い渡す阜。心配げに、は細い彼女の首元辺りを眺める。と、その視線が少し止まった。彼女の首に、銀色の細い鎖が見えたのだ。今まで気がつかなかったが、ペンダントかロケットか。そんなものをつけていたらしい。気がつかなかった。

「どうしよう。保健室、ちょっと遠いよ」

「大丈夫。そこに男手がいるから」

え。ぼくですか。いや、ぼくですね。男って他にいないし。一人突っ込みを心ですませた陵一は、頭をかいて、真奈美を背中に負うた。びっくりするぐらい、軽いようにも感じる。それに、体温も低くなっているし。一瞬本当に生きているのかどうか、顔を確かめてしまった。しかし、眉根をよせているところを見ると、確かに生きているらしい。当たり前だが。でも、本当に軽いな、彼女。思い思い、彼は皆とともに保健室まで走っていく。

「早く、こっち」

「あ、はいっ」

小春のほうに気をとられていた彼は結局、その時が見たペンダントらしきものには気づかずじまいだった。

「くえくえくえくえくえくえくえくえくえっ」

足の短いクラウンペンギンは、しばしよちよち歩いてそれを追いかけようとしていたものの、追いつけないと悟ったのか、腹を廊下につけて滑り始めた。そうして地面で床を蹴って、力強く滑り出す。しかし、一度滑り出すと方向修正が効かず、数人の生徒がボウリングのピンのごとく、なぎ倒されてしていった。

「貧血ね」

「あ、やっぱり。よかった」

保険医の紫藤 遥が、運び込まれた真奈美にヒールライトなどを施して出した結論に、一同はほっとした。

「この子、体が弱いみたいね。注意してあげないと」

「はい」

保険委員の阜は、ベッドの上に寝かされている真奈美の横顔を眺めた。やはり顔色はよくない。あんまり連れまわすのも駄目かな・・・と思って、少しずれた毛布を掛け直そうとしたときに、彼女はその胸元からこぼれているペンダントを見つけた。銀色で、なにか細かな彫刻が施してあるみたいだけど。なんだろう。ここから見ていると薔薇の花のようにも見えるけれど。しかし、普段彼女からは、こんなもの見られなかった。ということはだ、隠しているということだ。意図的に。とすると、大事なものらしい。

(だったら、誰かに見られるのはいやだろうな)

と思い、阜は彼女の胸元にそれを、誰にもわからないように押し込んだ。どんな人間にとっても、隠しているものをさらされるのは嫌なものだから。そこで、真奈美が少し身じろぎして目を覚ます。どこかうつろで、ぼんやりしているようだった。しかし、貧血からさめた後というのは、大概こんなものだから怪しむには足りない。

「目が覚めた? 驚いたよ。例の意識不明事件かと思った。真奈美さん、体調が悪いんだったら、ちゃんと言ってほしいんだ。我慢して倒れたりしたら、かえって危険だからね。それで、ここが保健室だから。気分が悪くなったりしたら、すぐに来て」

真っ白なベッドが何組か置いてある保健室の中を指差して、阜はそう言った。

「真奈美さん、いつも貧血の気とかある?時々、顔色がすごく悪いときがあるけど」

それに返ってくる答えも、また生返事だった。しかしとにかく、保健室の場所はちゃんと教えておかないと。彼女が落ち着いてから。

「ごめんね、無理させちゃったみたいで」

小春がすまなさそうに真奈美にわびた。その気持ちはも同じである。佐倉さんは病気がちなんだ。こっちが気をつけていないと。自分たちと同じように考えていたら、いけなかったんだ。彼女は、すごくやさしい人なんだと思う。ひよこのお墓に花をあげていたし。いつも、ちょっと沈んだように見えているのだって、周りから浮いているせいかもしれないし。ボクも、転校してきたばっかりの時は。そうだったから。

「ごめんね」

「ううん・・・いい・・・」

小さな声で呟く真奈美。しかし、その抑揚のなさからは、どういう感情がこもっているのか、陵一には掴み取れなかった。ぼうん。ぼうん。ぼうん。壁時計が、丁度正午を告げた。薬臭いこの空気がイヤなのか、パートナーはしきりと硬い翼で鼻をこすっている。

日記からの抜粋

2002.09.20 fri

『エテルーナ魔法学園』第2回リアクションがメールで届きました。

アニメ版『あずまんが大王』を見て「ホントは、外面上は智みたいなキャラクターにする筈だったんだよな~」という思いが強くなっていたり、「あぁっ、俺、なんでこのことアクションに書かなかったんだろう!?」ということを1つ思い付いたりしていて、ちょっとテンションが落ちていたりするのですが、それはさておき。

アクションの結果については、「1回分無駄にしてしまったなー」というのが正直な感想です。何人かのPCさんが真奈美(NPC)に対して不信感を抱いていますので、それとは逆の立場で話に絡んでいこうと思っていたのですが、残念ながらその立場を殆ど確立できていません。NPCとの関係は何回か掛けて作り上げていくべきものなのかもしれませんが、「その場その場でNPCにちょっかいを掛けて、ストーリーがどう動くかを楽しむ」というのが基本パターンの須賀和良には、どうやらそーゆーのは向いていなかったようです。しかし、ここで方針転換をして以前と同じようなことをし始めたら、新たな道は開けません。明日のために今日の屈辱に耐えるというのも男でしょう。デスラー総統もこう仰られています。

「我々も苦しいが敵も苦しい。勝利はこの一瞬を頑張り抜いた方に訪れるのだ。諸君、もう一息だぞ」

敵って誰だ。

2002.09.24 tue

『エテルーナ魔法学園』の物理リアクションが届きました。

このゲームは技能LVが毎回1ずつ上昇するのですが、それとは別に「良いアクションをかけたキャラクターはボーナスでさらに+1される」という制度があります。キャラクターの成長がマスター裁量に大きく依存する辺り、『エルハーダの秘宝(初代)』や『退魔戦記(初代)』が思い出されるシステムです。実際、マスター毎に取扱いが違うらしく、第1回では、全てのキャラクターがボーナスを得ているDivもあれば、バラバラだったDivもあったようです。

ちなみに私が参加している魂Divは前者のタイプでした。前回、今回ともに殆どシナリオに貢献できなかった……というよりも「ただ、いただけ」と言ってよい状態だったのですが、LVが上昇しているからです。それはそれで確かに嬉しいのですが、やはり御褒美は御褒美であって欲しいとも思うわけです。

いや、ひょっとすると、もしかして。

このボーナスは、「活躍はできせんでしたが、貴方はこのままこのタイプのアクションを掛けていってください」というマスターからの無言のメッセージなのでありましょうか。そう考えれば、納得できます。きっとマスターは、各キャラクターの物語上の役割を既に設定済みなのでしょう。ならば、あとは『KUNIE-パンゲアの娘-』のように「風呂敷を広げきったところで終わり」とならないことを祈りながら、この道を突き進むだけです。

……なんてことを書いてると、次回あたりボーナスがなくなっていそうな気もしますが、こと『エテルーナ魔法学園』に関しては、できるだけオープンで行こうと思っていますので、どうぞ御理解のほどを。

いえ、あくまでこのサイトだけの話ですが。

2002.09.26 thu

『エテルーナ魔法学園』の交流誌『方舟教室』が届きました。

「分厚っ」

それが、須賀和良の第一感想でした。確かに今回は名簿も兼ねていますので、それなりに厚くなることは予想していたのですが、それを遙かに上回る大きさです。っていうか、この封筒、なんか中身が硬いんですけど? 自室に戻り、開封してみたところ、42人分のキャラクターシートがクリアファイルに入っていました。

私自身、「製本後に遅刻のシートが届いて涙する」という事態を避けるためにルーズリーフ形式の名簿を作成したことがあるのですが、ファイルまで添付したことはありません。1冊300円としても、50人で1万5千円になりますし、その分郵送料も跳ね上がるからです。かなりの赤字になっているのではと心配になる以前に、その漢っぷりにただただ感服するばかりです。

「また、いっしょにプレイしてくれるよな」

「ゲームあるところ交流が起き、その交流は必ず俺を呼ぶ」

「アンタ……。アンタ、格好いいよ!! 嗚呼……ッ!」

なぜか絶叫する須賀和良でした。

ところで、参加者42人という時点でゲーム参加者の1/3が参加していることになりまして、どのDivよりも参加人数が多いのですが、何か世の中間違っているような気がしないでもありません。

2002.09.27 fri

『エテルーナ魔法学園』のリアクションを読み返すにあたって、まず昨日届いたキャラクター名簿に目を通すことにしました。外見や性格設定が頭に入っていた方が各シーンをより鮮明に思い描くことができるようになるからです。

「ひとまず魂Divの人を」と思ってパラパラめくっていたら、別Divに見覚えのある方がいました。いえ、本当のことを言うと、募集要項と一緒に届いたプレイヤー名簿を見た時点で気になってはいたのですが、以前と住所が全く異なっていたため同姓同名の別人である可能性を捨てきれなかったのです。しかし、キャラクターイラストを見て確信しました。

9年前の『クレギオン#3』で同ブランチにいた方です。

果たして、氏は私のことに気付いているでしょうか。私の絵柄は当時と比べてだいぶ変わったと思いますので、イラストから推測されることはないと思うのですが……ひょっとすると、変わったと思っているのは自分だけで、他の方から見たら頭部に角があるかないか程度の違いなのかもしれません。

使用前使用後

というか、「昔の絵柄の方が遥かに描きやすい」のはいったいどういうことですか?

いや、気付いていたよ、烈海王。今の絵柄は無理して作っているものだってことに……。

2002.09.29 sun

さて、『エテルーナ魔法学園』の第3回アクションです。

シナリオ傾向が「ホラー・オカルト・推理」ということでしたので、対立的に明るく活発なキャラクターにしたわけですが、何を何処でどう間違ったのか、第1回・第2回ともに完璧に日常アクションとなってしまっています。さすがにこのままではまずいように思えますので、ちょっと積極的に動かしてみることにしました。

とはいいましても、既に事件に関わるきっかけを失っていますので、なんとかかんとか日常行動の中で情報を引き出すことにします。普段はスペースの関係もあり、プレイヤーの目的は隠してアクションを書くのですが、第1回でものの見事に玉砕してしまいましたので、今回は全てを伝えることにしました。「マスターはこの意図に気付いてくれるかな?」「どんな結果になったかな?」という楽しみは減ってしまいますが、1回くらいネタバラシをしておいた方が、以後、スムーズにアクションを掛けることができるように思えるからです。

以降、何でもない行動まで「何か裏の意図があるのではないか?」とマスターが深読みしてくれるようになれば、勝ちです。

第03回 魂『竜と少女と魔女』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

preface

前回に引き続き、日常的なアクションとなっていますが、第1回の「それと、シロも」のように、それぞれの行動にプレイヤー的意図を持たせるようにしています。

アクション

アクションno.

魂-1「勉強会に参加する」

目的

中間テスト対策です(^^)。それと勉強を通して、佐倉さんの以前の学校の話ができればと思います。

動機

秘儀魔法については、最近コツが掴めてきたところですが(LVが1→3→5と上昇していますので)、それでもまだ、ようやく他の人達の背中が見えてきた状態ですので、また取り残されないように頑張りたいと思います。

行動詳細

一般教科については、国語・数学・科学といった理論的なものは得意なのですが、社会や英語といった記憶力がものをいうも教科が苦手なので、前年、前々年のテスト等を見せて貰って傾向を分析し、しかる後に対策を固めたいと思います(^^)。

勉強への集中力が落ちてきたら、風に当たって気分転換をしたり、世間話をしたりします。

  1. 途中で転校してきた理由と専攻科目について

    「佐倉ちゃんって、秘儀魔法のうち、何を専攻するの? 銀のペンダントを付けてるみたいだけど、やっぱり西洋系?」

    • PC:純粋に好奇心から。
    • PL:佐倉さんの過去とペンダントに関する情報を他のPCさんと共有したいと思います。
  2. ヒヨコのお墓に花を添えてくれたことへのお礼

    「そういえば、佐倉ちゃんって早起きなんだよね。この前も、お墓にお花を添えてくれたし」

    • PC:感謝の気持ちと佐倉さんの一面をみんなに知って貰いたいという思いから。
    • PL:ヒヨコが死んだことをどうやって知りえたのか、ということを探りたいと思います。
  3. 意識不明事件について

    「何かあったら、すぐ携帯で呼んでね。すぐに駆けつけるから♪」

    連続3回で秘儀魔法科の女生徒が被害にあっていますので、できるだけ1人にならないよう一緒に登下校しよう、といった話をします。特に佐倉さんは1人でいることが多いように思えますし、それでなくても貧血で倒れる可能性がありますから。

    「でも、普通、連続で3人も同じような人を狙ったりするかなー? 実は、同じタイプしか狙わないんじゃなくて、狙えないんだったりして。もしくは、自分でコントロールできてないとかね」

    • PC:佐倉さんが心配なため。
    • PL:佐倉さんの事件についての反応と、携帯電話の音色の確認ができればと思います。

勉強を教えてもらう人には、“成績優秀な高橋仁美さん”の真上の成績で、ESIDに所属していて最近の事件にも詳しい、ということを考えますと、赤坂さんが適任かもしれないですね。

リアクション

「小春ちゃんと仲良しになりたい人、真奈美ちゃんと仲良しになりたい人は、こう、男女ともわけへだてなく呼ぶべきだと思うんだがね」

「えー。私はいいよ。そりゃ真奈美さんにも来るだろうけど、あの子もそういうのあんまり好きそうじゃないし・・・第一、勉強するために集まるんでしょう?そんなんじゃ、身が入らないんじゃないの?」

そりゃそうだ。心のうちで思う提案者の子猫。しかし、彼女にとって勉強会についてというのは、その本題からだらだらともつれ込むお茶会についてのことなのである。

で、ある以上、手焼きのスコーンやパウンドケーキは必須だし、それから人員についてもある程度は増やしたいのである。成績優秀なメンバーはもちろんのこと、遊んで楽しめるような人員も確保したい。更に言うなら、ちょっとしたおせっかい心もあったりしてしまう。

やっぱり学生生活には、恋愛がつきものである。それが出来るならいいことだと思うからだ。悪くはない。少なくとも。

柚木さんはどうだがや?」

「え?うーん、そうだなあ・・・まあ、成績優秀な高橋仁美さんの真上にいつもいる、阜ちゃんなんていいんじゃないかって思うんだけど」

柚木(ゆうき りん)の目から見て、絶対にあせっておらず、いつもと変わらないそぶりを見せている彼女は、とても頭が良さそうなのだ。学園祭では茶道部に行くらしい彼女。来てくれるかどうかは、まだまだ未知数なのだが。しかし、外せない人材だ。どう考えてもこれだけは。後、出来そうな人たちと言えば、誰だろうか。

そうやって彼女らが考えているところに、くえくえと鳴きながら、クラウンペンギンがやってきた。この立派な眉毛とまるまるした体には、ちょっと見覚えがなくもない。

ほほうほほう。ほほうほほう。

どこからともなく、ふくろうの声など聞こえてくるそんな夜。紅葉寮の元坂 小春の部屋は、中間テストのための勉強会によって、いつになくにぎやかだった。佐倉 真奈美、柚木、赤坂 阜、気吹 瀬津、常滑 子猫、それから秋山 陵一と真野 天海(まの あまみ)が参加者である。

「シュリンプ・・・ってなんだったっけ、阜ちゃん」

「海老だよ。小さな海老のこと。大きな海老はロブスターだよ」

「ああ、なるほど」

かりかりと、ノートに柚木はその旨を書き込む。それにしても、本当にテストに出るんだろうか、こんな言葉。いやまあ、英単語の中に何故だか入っていたから、覚えないわけにはいかないんだけどね。

シュリンプ・・・そういえば思い出すなあ、四万十川で川海老を取ったときのこと。いつも後ろに逃げられて、それはそれは悔しい思いをしていたっけ。と、それはいいんだそれは。勉強しないとテストがやって来る、テストが。

そのまましばらく勉強会の趣旨に沿うような行動をしていた。しかし、おのずと限界がやってきた。国語、数学、科学。こんなのはなんとかなるんだよ、なんとか。社会とか英語とか、苦手なんだよね~~。覚えるものが多くって。あーでも駄目だ。集中力なくなってきちゃった。

「・・・ねえ、佐倉ちゃん、聞いてもいい?」

小春や子猫にさそわれて、なんとかこの場に顔を出してきた転校生も、最近少しは顔色が良くなってきたようである。時折、屈託ない笑顔も見せるようになってきた。そんな彼女には、口火を切って話しかける。

なんといっても、気分転換しないともたない、これは。そんな思いから出た言葉ではあった。

「何?」

「どうしてここに転校してきたの?」

「・・・親の都合だったの」

彼女はそういうふうに短く答えた。その後、母親は自分が小さい頃に死んでいるけどという言葉も少し付け加えた。しかしそれ以上はあまり言いたくないらしく、口が重い。は別のことを聞き始めた。

「あのさあ、佐倉ちゃんって、秘儀魔法のうち、何を専攻するの? ペンダントとかつけているときもあるし、やっぱり西洋系?」

「え・・・あ」

とっさに、胸を抑えるような仕草をする真奈美。阜は何か言おうかとも思ったが、やめておいた。彼女が再び話し始めたからだ。

「ホワイトマジックを専攻しているの。女医になって、一人でも多くの命を助けたかったからって思っていたの」

隠している様な素振りのペンダントについては、やはりあまり多くを語りたがらなかった。しかし、はいつになく真奈美が話を続けてくれるので、すっかりうれしくなってきた。

「でも、ほら、真奈美さん早起きだよね。この前も、ひよこのお墓にお花を供えてくれたでしょう?」

このことはそのまま秘密にしておこうかとも思ったけれど、はやっぱり言うことにした。真奈美さんがとても優しい人だということを、みんなにもよく知ってもらいたいのだ。そうすれば、あの事件に関係あるかもなんて、見られないんじゃないだろうか。そうあって欲しいのである。

彼女が実は悪いことをしているなんて、どうしても思えなかった。

「あの・・・知っているの?」

「うん。言ったらまずかったかな? でも、ボクはとてもうれしかったから。ありがとう」

その言葉に、少し赤くなってうつむく真奈美、その姿は、まことに恥じらいを見せる少女そのものであった。やっぱり、悪いことなんかできそうにない、甘いって言われるかも知れないけれど、ボクはそう思っているんだ。

「そういうの・・・好きじゃないから・・・誰も死んでほしくないから・・・」

「そんなことがあったの? 知らなかったなあ。やさしいんだ、真奈美さん」

小春もその話は快く思ったようで、にっこりとした。はますますうれしくなる。が、ふと、女医という言葉で、まだ病院で寝たきりの被害者たちのことを思い出した。

「ああ、あれ。まだ解決してないんですよね~~」

ちゃっかり会話の輪に加わっている秋山 陵一は、この中で数少ない男子ではあるが、彼女らには大して意識もされていないようだ。そうなんだよね、は頷く。

「でも、普通連続で3人も同じような人を狙ったりするかなー? 実は、同じタイプしか狙わないんじゃなくて、狙えないんだったりして。もしくは、自分でコントロールできないとか・・・佐倉ちゃんも、何かあったらすぐ携帯で呼んでね。駆けつけるから」

「私・・・持っていないから・・・」

「うーん、それじゃあ、ボクがプリペイドプレゼントするまで、登下校の時に送り迎えするよ」

真剣にそう告げるに、真奈美は少し笑って、自分はきっと大丈夫だからと遠慮する一方だった。なんでも、秘儀魔法の成績が悪いからというのがその理由であるらしい。やや、冗談ぽい口調ではあったものの。

しかし、それでそうですかと納得するようなではなかった。

「だって、貧血起こしたらどうするの。やっぱり送り迎えするよ。いいでしょう?」

何度も何度も、熱っぽく彼女は言い続けた。そうして、とうとうしまいには、真奈美も断りきれなくなってしまったのだろう、小さくありがとうと言ったのだ。そのやり取りに、周りも少しほっとする。ことに、彼女が転校してきてからずっと気にかけている小春は、それが顕著であるようだった。

「ねえねえ、そんなことよりさ、あたしの服見てよ、あたしの服―っ」

気吹 瀬津のグレムリンの摩利は、場の雰囲気などおかまいなしに、瀬津とおそろいの服を、みなに見せたくって見せたくって仕方ないらしい。おとなしくしていなさいという主人の言葉も知らぬげに、かばんから飛び出てきた。菫色の服に、黒いスカートとカーディガンである。(ちなみに瀬津のそれは、若草色で出来ている)

そして、部屋の奥に飾ってある、服のデザインのもととなった、小春のあのオルゴールを見つけてはしゃぎだした。

「わー、イヴ、あれあれ。あのオルゴールだよー」

ぶんぶん飛び回って、気が散るったらないが、これでも二人っきりでいるよりはましである。瀬津はごめんねとみんなに断ってから、すばやく摩利を捕まえてカバンに押し戻した。

しかし、今ので、小春にオルゴールについてのことを話しやすくなったのは確かだ。

「あれー、あのオルゴールと同じ柄にしたんだ、気吹さん」

「うん、そうなんだよー。ボク、ずっと気になってたんだ。もし都合が良かったら、今度聞かせてくれないかなあ」

「え、なんの話だがね?」

子猫は、小春のオルゴールの話に興味をひかれ割り込んだ。見てみると、なるほど、確かに可愛らしい人目を引くようなオルゴールが飾ってある。

「あそこに飾ってあるのがそうだがや? なんか可愛いがね。ね、ね、どこで売ってるんだがや?」

「ああ、そのこと。自分で買ったものじゃないから、どこで売っているのかは知らないのよ。古い物だから今でも手に入るのかどうかわからないし・・・」

「ごめんね、わざわざ呼んじゃって」

「いや、いいよ。どうせ近いしね」

街灯のうす白い明かりが、どこか物悲しい。勉強会も滞りなく終わった一同のうち三名が、別の寮生である赤坂 阜を送っていた。

最近は何かと物騒なので。送られる彼女自身は別にそんなこと、と最初は断ったのだが、意外にもそのことに一番熱心だった真奈美に説得される形で、彼女と瀬津、それからに送ってもらうことと相成ったのである。

「じゃあ、みんなも気をつけてね」

「うん、じゃまた明日―」

赤坂 阜は、皆に送られて彼女の寮の扉の奥へと消えて行った。

そこから真奈美と瀬津との三人はまた引き返して、紅葉寮に戻っていく。

しかし、一人人数が減っただけでも、また随分と寂しくなってしまうものだ。この時刻になると、ショッピングモールなどはともかくとして、寮の周辺は人通りなどなくなってしまうのが普通だ。まして、今日は肌寒い。寒くなると外などには出ていきたくなくなるのが、人情というものである。特になにか催し物があるというのでもなし。

りーりー。りーりー。

ささやく虫の声も、いささか元気がなくなってきているようだ。

世話好きなためか、怖いくせに皆について来ている瀬津は、この間のこともあって、こういうムードにはかなり過敏になっていた。平たく言えば、怖いのである。なもので、景気付けにと歌を歌い始めた。

「ぼっくらはみんないーきているー、いきーているからうれしいんだー」

「イヴ・・・どうかしたの?なんかあやしいしさ、やめない、それ? みんな気持ち悪がってるしさ、恥ずかしいよ」

ひらひらとスカートを翻して、摩利が実に嫌そうな視線を向けた。が、瀬津は極力気にしないようにますます大声で歌う。二人がやや、いやむしろかなりひいているみたいだが、この際そんなことはかまわなかった。

ただ、怖いからやっているのだ。仕方がないではないか。この間みたいなストーカーまがいの怪しいものに、追いかけられでもしたらと思うと、気が気ではないのだから。それは摩利はいいだろう。別に狙われていたわけじゃないし。しかし、このボクは狙われていたんだ間違いなく。今度はそうならないためにも、自分の存在を主張しつつ行くしかないじゃないか。

「大体さ、いい年してそんなの歌ってるとさあ、精神年齢疑われるよ。やめない? 同じ童謡でもさあ、いまどき流行っているもの歌ったほうが違和感なくていいんじゃないのぉ?ほら、あの大きなのっぽななんとか時計とかさあ」

「うるさいよっ、摩利っ! そんなんじゃみんな驚かないでしょっ! 今は迫力のある歌を歌わないと駄目なんだからほっといてよっ!」

主人の剣幕にやや驚いたのか、摩利はひょっと翼を翻して離れた。そうして、また憮然として彼女を眺める。どうかしてるよ、と呟いて。しかし、また彼女の肩あたりに戻ってきて、ちらちらと横目で様子を伺いながら、こう述べた。

「あのさあ、そりゃあ、歌のお姉さんみたいな人ならいいよ。別にあたしも文句言わないんだけどね。でもさあ、イヴは歌のお姉さんと言うよりはむしろ・・・」

じろじろと頭のてっぺんから靴の先まで眺めて、彼女は嘆息した。その様子があまりにも大げさだったので、わが道を行っていた瀬津もちょいと気になり、一応は足を止めて、口も止める。

右手にぶら下げている、持って来たカバンの取っ手が、ちょいと食い込み始めているので、持つ手を変えた。

街灯ははなはだ明るくともって、光を道にばらまいている。銀木犀の花が、しらしらと夜に浮かび上がっていた。道に突き出したその枝の上にひょいと乗っかるグレムリン。

「むしろ何?」

「・・・紅葉寮のゴッド姉ちゃんて感じ? だからこう、こういう歌を歌ったほうが合うんじゃないのかな?」

言うなり、彼女は振り付けを交えて、高らかに声を張り上げ始めた。

「Nomoreなっやっみ無用~~あなーたーの髪きっと生えてくるうー。信じてよろこびーだきーしーめーよぉー」

直後に瀬津が怒り出したのは言うまでもなく、グレムリンが追いかけられたのは言うまでもない。ので、そこから後は歌なしでの、カバンぶんまわしである。もっとも、それこそが摩利の思う壺だったのかも知れないが、そこのあたりは誰にも分からないことである。

「ああっ、ちょっと、せっちゃんっ」

彼女らが走り去った後、銀木犀の枝はゆらゆらと所在投げに揺れて、それからまた静かになった。

その匂いは相変わらず、夜を包んでいる。街灯に群がる蛾も羽虫も、もう姿はめったに見かけない。たまに弱弱しく、葉の裏などで羽を震わせているのが目に付くだけで。

「降りて来るんだよっ、摩利っ!」

「イヴのおこりんぼーっ」

彼女らの様子に、戸惑っているらしい真奈美。も当然そうだったが、その時ふと、彼女は自分たちを見つめている視線に気がついた。

誰かがいる。は首を動かさずに、眼球だけを動かして、その方向を眺めた。すると、電信柱の後ろから、ふっと人影が引いた。ような気がした。反射的に、彼女は縮地を使って移動する。目にも留まらない速さで。

いきなり目前に相手が現れた、といった感じになった人影は、慌てて逃げようとする。それとて決して遅いものではなかったが、なにしろは移動のエキスパートでもあるし、ローラーブレードも持っているしで、短時間のうちに取り押さえられてしまう結果になった。

しかし、捕まえたその犯人の顔を見て、彼女はぎょっとする。それは、全くよく知っている相手だったからだ。

「は、服部君!? な、なにしてんのさっ! キミ!」

「ま、待て、落ち着けって、!」

「落ち着いていられるわけないでしょーっ! なんでストーカーなんてやってんのさっ!」

「だから違う、違うんだって! とにかく聞けよ! 俺は真奈美をだな・・・」

その名前が出た時点で、はますます疑い深そうな目つきになった。

「佐倉ちゃんがどうしたのさ。まさか、なんか変な疑いかけているんじゃないよね」

正直そう思っていたとして、はいそうなんですとここで答える人間もいないだろうが、とりあえず服部 源太はそれだけは否定しておいた。シロに聞き込みに行ったことはひた隠しにしておいて。

「いや、だからな、今日の昼間、庄野先生んとこ行ったら頼まれたんだよ」

「なんで行ったの」

「いやそりゃあ、彼女が病弱だとかなんとかそういう話をしにだよ。そうしたらだな、『彼女は元々身体が弱くてよく貧血を起こすらしいから、いつも側にいて彼女を見守ってやってくれ』って頼まれたんだよ俺は。だから心配になって、ついついこうやってついてきたんだよ。いや、こそこそしていたのは悪かったけどな、こんな風に影ながら見守っていることあの子が気付いたら、変な気を遣わせちまうだろう?」

彼が口を閉じて、そのまま一分ぐらいが経過する。そうして、全面的にではないが、その説明に一応納得して見せたは、この場は自分たちが引きうけるから、と彼に告げた。

「そしたら寮で待っててよ。あんまりここで長いこと話してると、怪しまれるからね」

頭を振りながら、ああ、と源太は答えた。どこに隠れていたのか、フェアリーがひらひらと羽を動かして現れる。

「なんか損な話だったなー」

「うるせえよ」

彼の冷やかしに、源太はじろりと視線を向けた。

「どうしたの? なにかあったの?」

「ああ、佐倉ちゃん、なんでもないよ。ただ、見間違いしたみたいなんだ」

皆の元へ戻った柚木は、そう言って場を取り繕った。本当のことを告げても、彼女が気にするだけだと思って。そんな2人をよそに、瀬津はまだ、電灯の下で摩利と言い争いをしていた。

「お疲れーっ。お風呂が沸いとるがね」

寮に戻ってきた3人を待ち構えていたのは、子猫の第一声だった。どうやら、いろいろとしていたらそんな時間になっていたらしい。一にも二にもなくそれに快く従ったのは、と瀬津。真奈美は、流石にそれはと断ろうとしたものの、小春がすでに大きなバスタオルを用意していたので、無理やりといった形で連れ込まれてしまう。

「部屋のバスタブもいいけど、たまにはおっきい湯船に皆で入るのも気持ちいいよ」

などと言われながら。

風呂場の前には、いつからのものなのか定かではないが、大福帳を持った信楽のタヌキが置かれていて、男湯と女湯の間を分ける番をしていた。その回りは小さな一メートル四方ほどの坪庭になっていて、玉砂利がしかれ笹が生えていたりする。

横開きの扉を開けると、中からはほかほかと、暖かそうな湯気がもれ出ていた。と、湯殿のほうからふやけた感じのピピニーが出てくる。続いて、その主人である女子生徒も。

が、お風呂上りゆえか珍しくミラーシェードを外している彼女に向けて声をかけた。

「あ、山勝ちゃんも先に入っていたんだ」

「ああ、今からなの?」

涼んでいた彼女に、は元気よく頷いた。そして、それじゃあね、と続けて仲間とともに浴場に入っていく。

山勝 鈴蘭(やまかつ すずらん)は、コーヒー牛乳を片手に人数を確認するかのように、続けて入っていく人々の顔を蒼い瞳で眺めていく。小春、瀬津、子猫、それから、あの真奈美・・・。そこで、ふっと彼女は、かすかに何かの匂いを嗅いだ。

「・・・?」

しかしそれほどはっきりしたものでは無く、すぐに消えてしまう。勘違いだっただろうか。外の風に運ばれてきたにおいかもしれないし。

微かに釈然としない気持ちもあったが、彼女はとりあえず風呂場の外に出た。と、そこで妙なものを見つける。

「うー。うー」

「こらっ。しっしっ。あっちに行きなさいっ」

つんつんとピピニーにつつかれているのは、どういうわけか信楽タヌキの後ろに隠れて女湯のほうを伺っている男・・・秋山 陵一。

「・・・なにしてんだい、あんた」

「あっ。いやっ、いえナニモッ・・・失礼いたしましたっ」

鈴蘭に冷たく睨まれて、早々に退散していく彼。クラウンペンギンは短い足で、その後ろをてててててと追いかけていった。

油断もすきもあったものではない。機会があったらああいうのはもっととっちめてやらないと。思いながら、また彼女は歩き出した。半分以上なくなっているコーヒー牛乳のビンをぶらぶらさせて。

(真奈美さんスタイルええがね・・・)

子猫は自分のナインペタンな体を眺めて、感嘆交じりにそう思った。湯船に半分顔を沈めて。こちらはまさに名前の通り、子猫サイズなのである。一方真奈美はと言えば、ほっそりしているものの、出るところはちゃんと出ている。肌は抜けるみたいに白いし、それがまた上気して桜色だしでなんかもう、同性としてえらく負けている気分でもある。

いやまあ、それはいい。それはいいとして、彼女の首には、やっぱり銀色の細いペンダントがかけてあった。さびたりしないのかな。人事ながらに、ちょいと気にはなってしまう。頭に手ぬぐいをのせたまま、子猫は泳ぐように彼女に近づいていった。

「な、そのペンダント、大事なものなんかね? 肌身離さずつけとるがね」

少女はその問いに対して、はなはだそっけなかった。硬い横顔をして呟くように答える。

「こんなの唯のおもちゃに過ぎない・・・全然大事なものなんかじゃないわ」

その声音の冷たさに、は訝しげな表情で彼女を見つめた。そんな風に言ってしまえるようなものでは、なかったと思ったんだけど。

なにか、ちぐはぐな印象も受けなくない、彼女には。明るくなるときがあったかと思えば、また急に元気がなくなったりして。

日記からの抜粋

2002.10.18 fri

『エテルーナ魔法学園』の第3回リアクションが届きました。そしてわかった驚愕の真実。

「シュリンプ……ってなんだったっけ、阜ちゃん」

「海老だよ。小さな海老のこと。大きな海老はロブスターだよ」

「ああ、なるほど」

かりかりと、ノートに柚木凛はその旨を書き込む。

それにしても、本当にテストに出るんだろうか、こんな言葉。いやまあ、英単語の中に何故だか入っていたから、覚えないわけにはいかないんだけどね。

シュリンプ……そういえば思い出すなあ、四万十川で川海老を取ったときのこと。いつも後ろに逃げられて、それはそれは悔しい思いをしていたっけ。と、それはいいんだそれは。勉強しないとテストがやって来る、テストが。

私のキャラクター、高知出身だったようです。

というか、「川海老を取ろうとして、後ろに逃げられる」の元ネタって、『はだしのゲン』?

2002.10.21 mon

ホビー・データから、パンフレットが届きました。

それはさておき、『エテルーナ魔法学園』の物理リアクションと情報誌が到着です。早速、LVアップ状況を確認してみたところ、今回もボーナスがありました。前回・前々回と比べて結構出番がありましたので、もし上がっていなかったらどのようなアクションが推奨されるのかと途方に暮れてしまうところだったのですが、ひとまずこれで一安心。これからもこの路線で進めてよいということでしょう。

と、それはあくまでプレイヤーレベルでの話。キャラクターレベルで見ますと、このLVアップはあくまで勉強の結果、又は才能があったということになります。7月以前は確定情報ではありませんが、今までの推移は下表のとおり。

魔法LV
移動術神道魔術
4月 3
5月 5
6月 7 1
7月 9 1
8月 11 3
9月 13 5
10月 15 7

「1か月に1LVアップ」が平均的な習熟速度だとしますと、移動術は明らかに突出しています。風紀委員会に合気道部と、授業以外は移動術と殆ど関係ない時間を過ごしていることを考えますと、これは素質があったと見なして良いでしょう。対して神道魔術は、最初はつまづきましたが、最近はコツが掴めてきたのか、なんとか皆に追いついてきたといったところでしょうか。

ちなみに神道魔術は、真奈美が秘儀魔法系統を専攻しているということで、「凛も1つくらい秘儀魔法を学んでいた方が絡みやすいだろう」とシート書き込み時に思い付いて修得させました。そのため、キャラクター設定とまるでリンクしていなかったり、使っている姿が全く想像できなかったりしますが、そもそもプレイヤーは、キャラクターの行動指針を決めているだけで、その思考・行動の全てを管理しているわけではありません。凛が神道魔術を学んでいるのも、きっと私が知らない彼女なりの考えがあってのことなのでしょう。

いえ、これは決してキャラクターに対する責任を放棄しているのではありません。事実、このゲームでは、魔法の素質や魔法に対する取り組み具合は、プレイヤーの思惑とは別のところで決定されます。いくら「魔法の素質がある」と設定したり、「猛勉強する」というアクションを書こうが、上がらないLVは上がりませんし、逆に「イメージに合わないから、この魔法はこれ以上LVを上げたくない」と思っても、上がるものは上がるのです。アクションの評価という全く別次元のところでキャラクターの成長が決定され、プレイヤーはその結果からキャラクターの素質や取り組み具合を毎回推定しなくてはいけないわけです。

生きたキャラクターというのは、プレイヤーの思惑を越えて動き出してくれるものです。そしてまた、キャラクターが自分の知らない一面を見せてくれるというのも、PBMの面白さの1つだと言えるのですから。

騙し通せたろうか?

2002.10.23 wed

皆さんはチャットをどのくらい利用されているでしょうか。

複数の話題を同時に進めることができたり、ログを見れば途中から参加した人もすんなり話題に入っていけるというメリットもあって、メイルゲームのアクション相談などにもよく利用されるようです。

一方、普通の会話なら5分で終わることに1時間以上かかって時計を見て愕然としたり、会話が止まってこまめに更新ボタンを押すクリック音だけが部屋に響いて寂しい思いをしたりもすることもありますが、まぁそれはさておき。

といった書き出しで始まると、なんとなく『ちゆ12歳』風に思えてくるわけですが、『エテルーナ魔法学園』関係でチャットをしました。1人より2人がいいさ、2人より3人がいい、とはよく言ったもので、会話を交わすうちに次々と新たな考え、推論が浮かんできます。「フフフ、よいものだな、こうしてチャットするのは。文明に依存せず、もんもんと独考しているものどもの気が知れぬな。チャットするの、久しぶりだがな……フフフ……」と気分はすっかり平口君です。

そしてその会話中に気付いた『エテルーナ魔法学園』における衝撃の真実。

黒板には、「正」の字がいくつも縦長につづられていて、数を競っている。その数の上に、燦然と色つきのチョークでつづられた文字は『ドリフのお化けコント』そして『喫茶店』。二企画の一騎打ちは、辛くも一票差で喫茶店が勝ったのである。

「ちっ」

その結果に悔しがっているのは服部源太。彼としては、お約束の「後ろ、後ろー!」がやりたかったのだ。

『エテルーナ魔法学園』世界には、ドリフターズがいます。

2002.10.28 mon

早朝。

「塩1年分を持って、イスカンダルに向かう宇宙戦艦ヤマトに乗りこんだら、同室の南部や相原と雑魚寝をするはめになった」という多大な精神的苦痛を伴う夢から覚めた後、昨夜に引き続き『エテルーナ魔法学園』のアクションを考えました。

しかし、結局何も思い付かないままに7時が到来。今回はこのまま日常アクションを掛けるしかないようです。

それにしても今月は、他の皆さんの動向が掴めません。先月は締切間際にメーリングリストのような状況でアクション相談が飛び交ったのですが、今月は0。次回、さらに人数が減る可能性があるということでしょうか。第3回からリアクション用紙の白色率を下げて微妙にコストダウンを図っていたり、突如として追加Divの参加者募集を始めたりと、幾分先行きに不安を感じるところがありますが、楽しいゲームですので最後までこの調子で進んでいただきたいところです。

などと考えていたところで、ふとあることに気付き、オフィシャルサイトをチェック。

……締切、来週でした。

2002.11.01 fri

『エテルーナ魔法学園』の交流誌『方舟教室』が届きました。

全110ページと、かなりのボリュームです。先月、原稿を書くときに感じたことなのですが、アンケートも含めて「参加させる作り」になっているのが大きな要因だと思われます。普段は執筆者のPCしか登場しないプラリアなんか読む気も起きないわけですが、アンケートに個別に感想欄がある以上、そういうわけにもいきません。いや結局、最初ですので、否定的なことは書きませんでしたけれど。

ちなみに私は今回、『現代文』(シュミ特)にのみ投稿したのですが、だいぶ没になっているものがありました。「元ネタ調べるの、結構面倒だったのに~」と思ったりもしましたが、投稿要項に「『分かる人にだけ分かる』ようなネタもあまり好ましくはないかと」という記述があるのを見て納得。なにしろ、下のような感じで15年程前の『ファンロード』を下敷きにばかりしていましたから。

「なにーっ!? 『方舟教室』で一番強ぇのは誰かだってーっ!? それはいい質問だ。わしゃあ『方舟教室』のことならなんでも知っておるかんね。まずはなんてったって風紀委員のアルベリッヒ=北条よ! アフロを自在に操り、全身の体毛も厚く、この人に並ぶ者はいやしねぇ!! そして続くは風紀委員の巨漢桃山命! パートナーとタッグを組ませたら天下無双の腕前だぁっ!! きれいな顔しているが御影雪枝もそりゃ強ぇぞ! 裏十字には誰もが折られちまうって話だぜ!! おっと、忘れちゃいけねぇのが宮本千代! コスチュームも派手だが、技の豪快さはハンパじゃねぇ!! 佐倉桜もそりゃすげぇ! 元陸軍将校ですら頭が上がらねぇという程の人物よーっ!!」

「い、いつまでたっても俺様の名前が出てこないじゃないか!」

「あの、もっと強い方を忘れていませんか?」

「もっと強い奴……!? ああーっ! 肝心なのを忘れてたーっ!!」

「やった~!」

「そ、それです! その方の名はーっ!!」

「麻生衣舞ーっ! この人のホウキを喰らったら、魔界の彼方までぶっ飛んで行くって話だぜーっ!!」

「ちょ、ちょっと、ふざけるなよ! 担の名前を知らないのか!?」

「担……? ワッハハハ。ありゃあ『方舟教室』の単なるお祭りキャラクター! 決して主役は張れないお笑いNPCじゃーっ!!」

とりあえず、次の「新婚さんネタ」を送らないで良かった、と思った須賀和良でした。

「いいニオイじゃない」「……まあ、君の趣味についてとやかくはいわないけどね……駄目だよ」「じゃあこれ、このおっきいのが欲しい」

2002.11.02 sat

『エテルーナ魔法学園』魂Divの方々とチャットをしました。

今週頭にアクションをどうするかでかなり悩んだわけですが、事態は全く進展していません。とある方にメールを送ったものの返事がなく、「ah、なしのつぶてですか……?」と黄昏れる毎日です。

そこで、今日のチャットの出番となるわけです。他の皆さんと色々話をしていれば何かいいアイデアが浮かぶのではないかという、おもいっきり他力本願なこの目論見。両頬を叩いて気合いを入れ、編集との打ち合わせに臨む漫画家のような気持ちでパソコンに向かいました。

結果、私のキャラクターは、学園祭で風紀委員として行動する際、体操服(ゼッケン付き)にスパッツ、ヘルメットに虫捕り網、そしてローラーブレードという「召喚獣対策係」のコスプレをすることになりました。

もうだめぽ。

2002.11.05 tue

魂Divの第3回リアクションのタイトルは『Memento Mori』といいます。

きっぱり意味不明ですので、英和辞典で調べましたところ、「Memento」が“記念品”“形見”ということが分かりました。しかし、残念ながら「Mori」は載っていません。英語でないとすると、もはやお手上げです。

このままスルーしても良いのですが、なんとなくルーザー気分を抜けきれないので、厚いオブラートで包んで「意味わからんぞ、ゴルァ( ゚Д゚)」と私信に書くことにしました。第3回まで私信に対する返事は頂けてませんので、答えは全く期待していませんが、アクションがアクションですので、「一応、シナリオについても考えているんだよ~」という姿勢を見せることが重要だと思えるからです。

私信を書き上げ、再度アクションをチェック。そして、いざ送信……の前に一応、『google』で検索してみましたら、出てくること出てくること。「Memento Mori」って、結構有名なフレーズだったのですね。ラテン語なんか知るか。この事実には少なからぬショックを受けましたが、これは『Mr.Children』と私の人生とに交差点がなかったからだと納得することにします。

急いで私信を修正し、今度こそ送信……しようと思ってメーラーを立ち上げましたところ、「他の方から情報を貰うことで、NPCに対して不信感を抱かせて、突っ込んだ行動をさせよう」計画の要の方からメールが届いてました。

急いで私信を修正しました。

2002.11.06 wed

「別HNの発言は表の世界、サイトの日記は裏の世界。己の裏だけは見せられぬ」

「見てぇなぁ、竜。その己の裏ってヤツをよぉ……」

まぁ、もともと思いっきり晒していたわけですが、それでも別HNのときは丁寧語だけで発言しようと考えていました。しかし、土日のチャットでその目論見も完全に崩れ去ったことに今更ながらに気付きまして、「こんなことなら、別HNなんか使うんじゃなかった」という後悔の念が《津波》のように押し寄せて《島》を破壊しましたが、まだマスター宛の私信ではよいこを演じていますので、もう少しガンバってみようかと思います。

いや、とっくにバレてるとは思いますが。

「……フッ、愚かなヤツ」

2002.11.11 mon

「PBMの競争はどこまで許されますか」という問題は、「競争に制限を掛けないと弊害が生じる」ということが前提になっています。そして、その弊害として挙げられるのは、「交流者と仲良くやる」「共に物語を作る」ことが妨げられる、ということです。

競争が激しくなる傾向が強いものに政治・軍事シナリオがありますが、こういったシナリオにおいては、上記のことが弊害としては問題視されることはさほどないのではないかと思います。PC同士の探り合いに騙し合い、そういったことも含めて楽しんでこその政治・軍事シナリオであると思うのです。

また、「ガチンコだけやりたいのならPBMである必要はない」という点は、逆に「交流者と仲良くやる」「共に物語を作る」ということにも当てはまります。たとえば、『エテルーナ魔法学園』を途中でやめたとしても、『方舟教室』に参加することで、それらを楽しめるのではないでしょうか。以前、同一プレイヤーが対立する勢力両方のキャラクターを受け持ち、掲示板を用いた掛け合いで物語を展開していく、という方式で遊んだことがありますが、十分楽しむことができました。「面白い話を作る」という共通認識さえあれば、判定役はおろか、障害役のマスターさえも不要になることがあるのです。昔の話ですが、ある勢力が「敵のPCをさらう」というアクションを掛け、その対象PCが「敵にさらわれる」というアクションを掛ける、ということがあったそうです。「共に物語を作る」という点を推し進めた結果だとは思いますが、もはやそれはマスターを必要とした“ゲーム”ではないように思えます。

私は「PBMの面白さはアクションのぶつかりあいにある」と思っています。交流誌が共に物語を“作っていく”ものだとするならば、対立し、競い合い、そして助け合うアクションの結果、物語が“生まれる”のがオフィシャルなのではないかと。

過度な競争の問題点は、本意でない場合も含めて「他の人に不快感を与える可能性が高くなる」ことだと思いますが、皆がそのことを認識し、「自分も楽しむし、相手も楽しませる」ということを意識してプレイできれば、競争はより面白い物語を生み出す要因になると思います。PBMという遊びにとって、交流は副次的なものだと思いますので、そのためにゲーム性を失わせてしまうのは本末転倒であるように感じられます。

……というかなり偏った意見を交流誌に投稿したわけですが、この中で一番書きたかったのは――そしてそれは「PBMの競争はどこまで許されますか」という設問を見て一番最初に思いついたものなのですが――次のパロディでありました。

「許す? 誰が許すんだ? 神様か?」

入れ忘れたーっ

第04回 魂『A CASTLE』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

preface

前回とはまるっきり逆で、裏がない素うどんのようなアクションです。

アクション

アクションno.

魂-3「学園祭を楽しむ」

目的

佐倉さんと学園祭の出し物を見て回る。

動機

佐倉さんは、こういった催し物が苦手なように思えますので、自室にいたままだったりしないかと心配なため。

行動詳細

全国的に有名な魔法学園祭。入学する前から、一度見てみたいと思っていましたので、普段見ることがない他のクラブ(一番の目当ては、当然演劇部)の活動も含めて、楽しみたいと思っています。

ただ、好奇心の赴くままに引っ張り回したら、学園案内のときのように佐倉さんに過度の負担を掛ける可能性がありますので、予め、佐倉さんの好みも加味しながら、ペース配分を考えたスケジュール表を作っておきます。

「えーと、その後、喫茶店で休んで……あ、そういえば、阜ちゃん、今度霊界通信部に入ったんだって。どんなことやってるのか、見てみたいよね」

学園祭関係

  • 学園祭の出し物については、合気道部の演舞に出ます。
  • せっかく一般の人が学内に入れる日ですので、祖父母も呼んで、自分の勉強の成果を見せたいと思います。
  • 学園祭中、風紀委員としても活動しますが、お祭りに合わせて、体操服にスパッツ、グローブにヘルメット、そして虫捕り網とローラーブレードと『召喚獣対策係』の格好をしています(^^)。

アクションの補足

「佐倉さんを色々なシーンに引っ張り回す役になれれば、登場シーンが多くなっていいなぁ」とか、姑息なことを考えています。本当は他のPCさんの出し物等を持ち上げるようにできれば良かったのですが、学園祭をメインにすると思われる方って少数派なんですよね。

リアクション

「龍穴っていうのはね、エテルナの流れのことで、どんな異世界にも道が通じる可能性を持っているんだって。思い通りの世界に道を繋げるには、その世界に関連する要素を龍穴の側に配置しなければならないみたいだけど。とにかくすごいパワーがあるらしいよ」

現在豊水神社のほうで、なにやら色々としている人々から聞きかじった話を披露しながら、柚木(ゆうき・りん)は佐倉 真奈美を伴って、昏睡事件の被害者を見舞いに行くところだった。

真奈美自身は、さして気が進まないようだったが、とにかく誘われるままにと連れ出って歩いていく。

11月に入って、黄金に染まった銀杏の葉も大分減り、その隙間から高い空が覗いている。箒でさっさと掃いたような雲が、いっそう澄み切った青を印象付けていた。

病院に行く足取りは、今までのように憂鬱なものではない。患者の体力を一時的に回復させる方法を発見したことを聞いたのだ。真奈美を伴ったのも、その関係である。何しろ彼女はホワイトマジック専攻である。そのあたりで、なにか勉強に、糧になるかもしれないのだ。

ただ、心配なことと言えば・・・。

(ボクだったら、体力あるからかなりいいとこまでいけそうなんだけどね・・・佐倉ちゃんは自分が倒れちゃいそうだしなあ)

そこのあたりである。この間の学校案内の件で、そこのあたりをもっと注意してあげないと、と思い知ったのだ。彼女の負担にならないように協力してもらいたい。

後、よりいっそう関係を深めていきたいというか。彼女からもっと話し掛けてくれるようになったら、プリペイドの携帯電話もあげようと思っているのだから。

「龍穴に清美ちゃんたちを運ぶっていうのは・・・駄目だよね。パイプとかで病院まで引っ張って来られたらいいのになあ。あ、そうそう、佐倉ちゃん。学園祭にもボクと一緒に行こうよ。こんな大きな学校の学園祭なんて、なかなか見られないよ。きっと楽しいよ。一緒に行こう? 今度はちゃんと、佐倉ちゃんの意見も聞いて計画立てるから、ね」

「え・・・あ・・・うん・・・」

「よし決まり。一緒に行こうね」

そう言って、にっこりと笑いかけてくるに真奈美はどことなく後ろめたそうな顔をしていた。

車や人が、わりと出入りしている感のある大病院の入り口までは茶色いタイルで歩道がつけられている。つげやつつじやケヤキがその街路樹として植えられていた。

茶色や赤の葉がぱらぱらと、思い出したようにそこに落ちては、風に吹かれてかさかさと飛ばされていく。

「あ、佐倉さん、柚木さん、こっちですよーっ」

そこに、高めの声が響いてくる。真奈美とは話をするのを止めて前方を見た。

出迎えに出てきた葉月が、大きく手を振っていた。マフラーを巻きつけたフィッシャーを連れて。

「あ、有難う葉月ちゃん。わざわざ出てきてくれたんだね」

「はい。入院されている皆さん重病人扱いですから、私が一括してナースステーションに説明しようかなと。ほら、丁度他の方々も来られたみたいですよ」

その台詞には振り向いた。すると、なるほど確かに自分たち以外にも、お見舞いにやってくる人々の姿が。どうやら考えるところは皆似たようなものだったらしい。

「病院についたら、全力で清美さんを回復させるよ! 血を吐くまで頑張る! だから智子さん、元気出してよ!」

「いや、血まで吐くほどにはしてくれなくていいんだけど」

オーミと、それから智子。

なんにしてもオーミのほうは、随分と張り切っているように見受けられる。

じゃ、行きましょうか。彼らが到着するのを待ってから、葉月はきびすを返して歩き始めた。目指すところは隔離病室である。道々、彼女は発見した魔法の説明など行った。

「トランスファーマジックパワー(仮)の詳細ですけど、今までに分かったところでは、基本的に自分の中に貯えられた魔力を被害者に移しているだけだったってことです。ずっと続けていると術者の方が疲弊して行くので、一人一日2時間が限度。特にホワイトマジックを使えない人は魔力の消耗が激しくなります。この魔法は、元気な人や、一般人なんかにはもちろん効果がありません」

「ふうん。じゃあやっぱり、根本的な解決のためにはもっと考えなくちゃいけないってことかなあ」

「でも体力が持ち直したんなら、もう一歩だよね、智子さん」

頭の後ろで腕を組んで歩くと、能天気とも言える意見を出すオーミ。智子は不安そうにしていたが、彼の言葉には励まされているようだった。

引き換え真奈美はと言えば、やはり暗い。病院に近づくに従って、その度合いが濃くなっていく。どうしたのかな。また気分が悪いんだろうか。

それとなく注視する。だが彼女は、病室の前まで来て、ガラス越しに横たわっている患者を見たとたん、ますます顔色が悪くなった。そして、いきなり走り去ってしまう。

その行動には、皆が唖然とした。しかしはその中でも真っ先に気を取り直して、彼女を追いかけることにする。

「ごめん、ちょっとボク話を聞いてくるから、また後でっ」

そう、葉月らに言い残して。

「ねえ、大丈夫?」

いきなり逃げ出した真奈美は、ひどく顔色が悪かった。は、とにかく彼女の体調を考えて、寮の部屋まで送っていくことにする。お見舞いが出来なかったのは残念だが、この調子では仕方が無い。

「・・・ごめんなさい・・・」

「いいよ、別に。具合が悪いんじゃしょうがないもんね」

そう言って慰めるものの、真奈美はひどく顔色も悪く、いたたまれないような様子だった。

合気道部の演舞に出場し、瓦を50枚割り賞賛を浴びて来た柚木は、体操服にスパッツ、グローブにフードのような羽の飾りの付いたヘルメット、そして虫取り網にローラーブレードという“召喚獣対策係”の格好にて校内巡回をしていた。もちろん、それは真奈美を誘って、一緒に学園祭巡りをするという目的が多分に含まれていたが。

しかし、それに都雲 沙雪も付いてくるとは考えていなかった。

「交霊会があるというのはどこですの? 私、それが見たいですわ」

ゴスロリ服のままで闊歩するというのも、かなり勇気がいるのではと思うのだが、沙雪の場合それは歯牙にもかからない瑣末事らしい。

ちなみに真奈美はそこまですることができなかったようで、が誘いに来たときには、ちゃんといつもの制服に着替えていた。

「え。あそこに行くの?」

あんまり乗り気ではなさそうな。沙雪は、ええ、それはもちろんと答えておいた。彼女の目的は、真奈美を連れ出し他の人間も混ぜて楽しむというものだった。以前、“関わってはいけない”と真奈美に言われたが、そんな理由はさし当たって信じられない。

しかし、彼女を疑っている人間が現にいるのである。が同じように誘いに来たのは幸いであったと言えよう。二人だけで行動するというのは、彼女をますます孤立させて、疑わせるもとになるかもしれないのだから。

沙雪にとって友人は、何にも率先して守りたいものなのである。

「まあ、阜ちゃんがいるだろうから、大丈夫かな。佐倉ちゃん、調子大丈夫?」

「あ、うん・・・」

交霊会・・・いきなり妙な儀式とか始めて、彼女をびっくりさせなきゃいいけど。そこのあたり心配してしまう

と、ウィル・オ・ウィスプのあかりさんが、ふわふわしつつ止まった。霊界通信部のクラブハウスについたのだ。しかし、そこには誰も受け付けがいなかった。

「あれえ。おかしいなあ・・・阜ちゃんいると思ったのに・・・」

「あきっ放しですわ。入れということですのね」

100%自分に都合よく解釈し、いの一番に勝手に中に入る沙雪。と真奈美は恐る恐る、その後ろから入った。

内部は薄暗く、ぽつんと置いてあるテーブルに蝋燭が燃えている。壁にかかっているのはあやしげな、ポリネシアか、はたまたアフリカかという仮面の数々。

なんかいやな雰囲気。思った瞬間、いきなりその仮面の一つが喋り始めた。

「入るときにはノックを忘れずに・・・」

「ひええええっ!? あ、ああ、びっくりしたあ」

紛らわしく顔を縫って、仮面の一つに紛れ込んでいたのはリンダ。沙雪は大してだったが、真奈美はかなり驚いたのか、手を胸の前に持ってきて体を硬くしている。

そんな彼女に向けて、リンダはおや、という視線を向けた。そして表情を曇らせる。

「これは珍しい。あなた、半分生きて、半分死んでいますね」

日記からの抜粋

2002.11.23 sat

メールにて、『エテルーナ魔法学園』の第4回リアクションが届いていました。

とりあえず、「合気道の演舞で瓦は割らない」と思いました。

2002.11.25 mon

ホビー・データから新作パンフレットが届きました。

それはさておき、『エテルーナ魔法学園』の物理リアクションと情報誌が到着です。今回は、他のPCさんに殆ど絡めず、真奈美嬢(NPC)にも今一つ突っ込めないという予想通りの結果に終わったのですが、何故かまたもLVアップボーナスを頂くことができました。正直、今回はダメだろうと思っていましたので、これは嬉しい驚きです。反面、本当にアクションを評価して貰えているのかと不安になったりしたわけですが。

そこで、第5回アクションで1つの実験をしたいと思います。

  • いいアクションが思い付いたら、文体を変え、私信も書かない。
  • ヘボヘボだったら、イラストを付けるなど、私信をいつもより多めにしてみる。

この結果、LVアップボーナスがどうなるかをチェックし、その評価基準がアクション内容(プロット)にのみ限定されているかどうかを調べようというわけです。

そんなことを実践してくれる素敵な御仁募集中。

2002.11.30 sat

チャットで『エテルーナ魔法学園』のアクション相談をしました。

否、アクション相談をする予定だったのです。しかし、Yさんが突然「合体必殺技をしてくれる人、募集~」と発言したことにより、話の流れは一気に特撮へ。私は『月刊OUT』から得ていた知識によりかろうじて付いて行けたのですが、今日が初チャットというMさんは「人、それを傍観と言う!」という感じで1時間くらいROM兄さんになってしまいました。というか、チャットに入って来た方にいきなり、

というわけで、合体必殺技をやりませんか?」

とか誘うのは、どうかなぁと思うわけです。しかも続きが、

「バイクロッサーのように、バイクに乗ってるだけでいいですから」

Yさん、あんた、鬼や。

ちなみに。

バイクに乗ってるだけの方を演じていた役者さんは交通事故で他界されています。

2002.12.01 sun

『エテルーナ魔法学園』のアクションを考えます。

第4回にて初めてプレイヤー的意図が成功し、その結果、引きが発生しましたので、リアクションを読み終えた時点でアクションの方向性は既に固まっていました。しかし、それだけではやはりつまりません。何がつまらないかと言いますと、プレイヤーとキャラクターの目的が一致してしまっていることです。

「プレイヤーとキャラクターの目的をズラす」

そう、それこそが至上命題だった筈で……ゲームを楽しむための手段だったような気がしますが、停車駅が終着駅になってしまうのはよくあることだと久米田氏もおっしゃってますので、あまり突っ込まない方向で。

というわけで、第4回にて誰からもアクションを掛けられずに一人寂しく青春を謳歌しているNPCを事件に関わらせることにしました。えぇ、引きずりこみますとも、マクー空間に。

ただ1つ気がかりなのが、「本当にこのNPCはキーパースンなのか?」ということです。第1回の事件発生時にアリバイがなく、キーアイテムらしいオルゴールを唯一持っているNPCである、と状況証拠は揃っているのですが、いかんせん以後の描写がちっとも怪しくありません。しかし現在のところ、魂Divにミスディレクションは見つかっていませんので、勇気を出して突っ込んでみようと思います。

「不正は隠せない」

「観察されていないものは存在しない」

魂Divがアイルの世界法則にあることを期待しています。

2002.12.03 tue

締切4時間前の風呂場でアクションの変更を思いつきました。

とは言いましても、変更するのはあくまで目的で、具体的な行動は殆ど変わらなかったりします。昨日までは「とうとうキャラクターの意識が事件の真相解明に向いてしまったか……」という状態だったのですが、そんなことは向こうの棚に置き去りにし、絶望的に楽観的な観測のもと行動させることにしました。『エテルーナ魔法学園』では「キャラクターは知らない」ということを物語上の利点としてアクションを掛けているのですが、その分、道化具合に拍車がかかったように思えます。

ただ一つ問題なのは、一昨日に書いたNPCに関わる動機が薄くなってしまったことです。殆ど補足のような書き方をしていますが、この部分こそが今回のメインで、それ以外は枝葉末節に過ぎません。締切ギリギリまで考えて、なんとか上手い理由を作り上げるしかないでしょう。

結局思いつかなかったので、私信に「ここが今回のメインです」と書きました。

第05回 魂『魔女』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

アクション

アクションno.

魂-2「真奈美に関わる」

目的

佐倉さんが事件とは関連がないことを確かめます。

動機

佐倉さんに関する噂が気になるようになってしまったため。

行動詳細

今までは、具合が悪くてその場で倒れることはあっても、走り去るようなことはありませんでした。そして、リンダさんの「半分生きて、半分死んでますね」という言葉。これらに今まで訊いた噂も含めて考えますと、「ひょっとして、本当は事件と何か関係があったりして?」という疑問がつい浮かんでしまいます。

このままでは、すっきりしませんので、直接佐倉さんに以下のことを尋ねることにします。以後、ちょっと気まずい雰囲気になるかもしれませんが、疑ったまま接したりするよりは、ずっといいと思うからです。

  • どうして病院から走り去ったのか。

    「お医者さんになりたいんだもん、病院が嫌い、ってわけじゃないよね?」

  • 事件と関わりはないのか。

    「佐倉ちゃんが来てから事件が起きるようになった、って話があるけど、そんなの関係ないよねー♪ ね?」

なお、佐倉さんと話をする前に、リンダさんに会いに行き、「半分生きて~」とはどういう意味なのかを尋ねます。もしかすると、佐倉さんの体調があまり良くない(そして精神が不安定に見える)原因がわかるかもしれないからです。また、もう一度佐倉さんのことをきちんと見て欲しいので、紅葉寮に来てくれるよう頼みます。

「珍しい、って言ってたけど、他にも同じような人っているの?」

それとこのとき、小春さんにも話をしに行きます。一つは佐倉さんの体調のこと、そしてもう一つは、佐倉さんを気に掛けていた小春さんの目から見て、最近何か感じたことはなかったかの確認です。

リアクション

――今まで襲われたのって、秘儀魔法で成績優秀な女の子ばかりでしょ? ってことは、最初から目をつけていたんだと思うんだよね。でも、今回はたまたま一人だった陵一君が狙われたということは、実は誰でも良かったのか、選んでなんかいられなくなったのか、それとも・・・今までとは別の犯人だったりしてね――

寒い冬の夜、月が青白い光を雪に投げかけている。

『ひょっとして、本当は佐倉ちゃんと事件と、何かかかわりがあるんじゃないだろうか』という疑問が、じわじわと柚木(ゆうき りん)の心の中で大きくなっていく。あんまりいいことではないと分かっているものの、最近の周りの様子からどうも気になってきてしまった。だけれど、それは無いのだと信じたい。信じていたいのは本当だ。でも・・・と、その後に疑問が付いてしまう。

だったらどうして、ということが多すぎるのだ――「半分生きて、半分死んでますね」というリンダ・オルグレンの言葉――すっきりしないことおびただしい。どうしてあの場から走り去るようなことをしたのか? このままでは、到底納得できない。

「やっぱり、聞くべきだよね」

それで気まずくなってしまうかもしれない。だけれど、疑いを持ったまま接していくよりはずっといいはず。病院でのあれは何なのか? 事件と関わりはないのか? そこで思考に一区切りつけて、彼女は元坂 小春の部屋の扉を叩いた。

「小春ちゃん、小春ちゃん、いる?」

「ああ、うん。いるよ。・・・ところでなんだか見慣れない人尋ねてきたんだけど・・・あの人本当にさんの紹介?」

扉を開けて開口一番に、小春はに告げる。その開けた扉の隙間から、リンダ・オルグレンが座っているのが見える。

「あ、うん。ごめんね。言うの遅れてて。ボクより来るのが早いなんて思わなかったものだから」

「いや、ならいいのよ。ちょっとびっくりしたもんだから」

「・・・本当にごめんね。ねえ、ところで最近佐倉ちゃんについて、変わった様子とかなかったかなあ。この頃、体調悪いみたいなんだけど」

「うーん・・・特にはないかなあ・・・」

「そっか・・・」

言いながら小春の部屋にお邪魔する。リンダにも聞きたいことがあるのだ。彼女の言葉が気になってならない。部屋に入るなり、はこたつに入りお茶を飲んでいる霊媒師の真正面に座りこんだ。

それから、単刀直入に切り出す。

「で、リンダさん、佐倉ちゃんのこと『半分生きて半分死んでいる』ような人って、前に言ってたよね。あれはどういう意味なの。そういう人、他にもいるの?」

瞳を薄くして、リンダがお茶をこくりと飲み干す。それから、ゆるゆると語り始めた。それを一言も聞き漏らすまいと、は耳をそばだてる。

「あれは、ただ感じたままを素直に表現しただけよ。あの子の魂の半分は、この人間界と冥界の狭間をさまよっているのだわ・・・そして病院の被害者達も、それと似たようなものね」

「え? 何の話、二人とも?」

一人話が見えない小春。一応遊びに来てくれている相手に、何も出さないのも悪いかなと、台所からマリービスケットを出してきた彼女は、向かい合う二人の丁度横に座って首を傾げた。と、リンダはそれに手を伸ばし、遠慮なくバリバリと先に食べ始める。そうしながら、急に話を飛ばす。

小春に向けてこんな言葉を発して。

「あなたの背中に男の顔が見えるわ・・・」

「えっ。ちょっと、やめてよ。私そういうの好きじゃないんだから・・・」

あからさまに嫌そうな表情を見せる小春は、後ろを振り向いて落ち着かなげだ。いつもは自分から怪談話を始める小春をこれほど不安にさせるとは、それもやはりこの部長の力なのだろうか? は、ふと思う。

「心配要らないわよ。悪いものじゃないから。その火とはあなたのお父様で、あなたを守るためにいるだけの話だから。危ない目に遭っても大丈夫だったってこと、憶えが無い?」

「え…」

小春が驚いたように言葉を詰まらせる。しかし、も同じように驚いていた。そういえば彼女の家族についてなど、自分は全く知らないのである。

お父さんがそうなっているということは、つまりは、すでに死んでいると言うことだ。思わず知らず、口に出して尋ねてしまう。

「小春ちゃん、今の・・・本当?」

少し沈黙していた小春は声なくこくりと頷き、席を立ち奥へ行ってしまった。まずいことを言ってしまっただろうか。口元を擦りやや反省する。リンダは落ち着いたもので、ビスケットの二枚目を食べていた。

チッチッチッ

時計の音だけがやけに大きく聞こえてくる。と、小春がまた戻ってきた。その手に淡い菫色のかわいらしい花がついているオルゴールを持って。

「小春ちゃん、それは?」

「うん・・・今ので思い出してね。これ、お父さんが10歳の誕生日に贈ってくれたんだ。でも、これをもって帰る途中で、お父さん自動車にはねられて・・・死んじゃって・・・このオルゴールもその時壊れちゃって、音はもう全然鳴らないの」

ぱかりと開けたその中の鏡には、大きくひびが入っていた。完全に壊れているようだ。でも、と小春は続けて言う。寂しげに笑って。

「お父さん、ちゃんと私の傍にいてくれたんだね。それが分かっただけでもよかったよ」

その夜、はわりと早くに、リンダ・オルグレンと共に彼女の部屋を引き上げた。そうしたほうがいいような気がして。

クリスマスパーティにて倒れてしまった真奈美は、直ちに保健室へと運ばれた。幸いにもたいしたことはなかったようだが、それにしてもぐんぐん最近顔色が悪くなってきている。これは一体、どうしたことなのだろう。少し前までも確かに良くなったり悪くなったりと波はあったけど、これほどまでのことも無かったように思う。

まるで白い肌が、蝋人形みたいではないか。触れてみると冷たくて。

「・・・大丈夫かなあ」

「心配いりませんよ、ただの貧血でしょう」

と、先生は言うけれども、どうも心配でならない。はふっと息をつくと、気絶してずっと眠ったままの真奈美の顔を眺めた。

手持ちぶさたに備え付けのラジオなど聞きながら、パイプ椅子の上で足をぶらぶらさせる。季節はまさにクリスマス、流れてくるのは聖歌だ。

外は雪が降り続いていて、並木も白く化粧をされていた。道も白くなっている。今から夜にと向かうのだから、溶けることは無いだろう。

朝になったら、わりと深く積もっているかも知れない。窓が、外気との気温差のせいかどんどん曇っていく。目が覚めたら紅葉寮に早く戻してあげたほうがいいよね。慣れないところにいるのは、疲れちゃいそうだから。

でも、あの寮って暖房とかどうだったかな。エアコン・・・ボクはあんまり好きじゃないから、こたつとか、ストーブばっかり使っているけど。暖かくしておいたほうがいいかな。戻るときに部屋が冷え切っていたら、嫌なものだもんね。

誰かに電話でもして、頼んで・・・。駄目かな。

携帯を自分のポケットから出して、番号とにらめっこするいくらなんでも、勝手に部屋に入られたら、真奈美さんだっていい気持ちはしないかもしれないし。誰かの部屋に、一旦置かせてもらうとか・・・嫌がるかな。だったら部屋がきっちり暖まるまで、ボクは一緒にいようかなあ。

ぎいぎいと椅子の背もたれが、かけられた体重によってきしむ。保健室の中では、しゅんしゅんとストーブの上でやかんがゆだっていた。

先日倒れた真奈美は、夜遅くに自分の部屋に戻ることが出来た。そんなわけでその部屋に今日は見舞いという名目で集まってきた人々がいる。沙雪を初めとして子猫、葉月、、それから若葉・グラスケットである。

彼女らの前で、病み上がりそのものの真奈美は暗く沈んでいた。もうクリスマスも過ぎているので、当然学校は冬休みに入っている。ので、欠席と言う事態にはならずにすんだものの一時期大分回復していたとは思えないほどの弱りようである。

「お食べになりませんか? おいしいですわよ」

「ううん・・・食欲ないから・・・」

美味しい肉じゃがとご飯は、どうも役には立たないらしい。せっかく持ってきたのになあ。それにしても、庄野教師はここにはいなかったらしい。見込み違いだろうか。それとの関連であの薬箱のことを聞きたいのだが、どうにも聞きづらい。

もっと楽にとは思うのだが、正直自分がここまで口が重たくなってしまうとは思わなかった。沙雪はそんな自分自身に少し驚く。

「真奈美さん、何か心配事があるんなら、何でも相談してほしいだがね。出来る限り力になろうと思うとるだがね、私らも」

顔を覗き込む子猫にも、彼女は力ない笑みを見せただけだった。どうも、よろしくない。体力の減少が気力までも奪っているように見えて、葉月は眉をひそめる。

先ほど彼女にトランスファーマジックパワーを試してみたが、特に効果は現れなかった。魔力が減退していると言っても、彼女の場合には当てはまらないようだ。沈黙にたまりかねたのか、今度はがつとめて明るく呼びかけた。

「佐倉ちゃんが来てから事件が起きる様になった、って話があるけど、そんなの関係ないよねー。ね?」

本人の口から否定して欲しい。そう強く思っているだったが真奈美は何も答えてはくれなかった。より一層硬く口をつぐむだけで。どうして答えてくれないんだろう。より一層不安になってくる

頼むから、何にも関係ないんだって言ってほしい。そうしたらこのもやもやした感じもすっきり収まるのに。彼女が続く言葉を失ったところで、若葉の口が開かれた。

他の皆よりも、ややきつい調子で。

「どうして何も喋ってくれないの。庄野先生の居場所、知っているんでしょう?」

今年の六月半ばにあったこと、それから、庄野教師の行方。それが知りたくて、若葉は真奈美を問い詰めることを決めた。庄野教師がいなくなる前に言っていた“なくしたもの”とはなんなのか。彼女は逃げ続けて何がしたいのだろうか。

現状で女生徒が襲われる事件に庄野教師が関わっているのはほぼ確実だし、それについて真奈美が心を痛め続けていることも間違いない。彼女は、父親を止めてほしいと思っているのではないだろうか。

そうでなくとも、この現状からすくわれたいと思っているのではないだろうか。しかしそうなら『助けて』と言ってもらいたい。彼女自身の口から。壁を作っている分、一旦崩れればもろいはずだ。

「言葉にしなければ、何も伝わりませんよ」

しかしそれでも変わらず何も喋ろうとしない真奈美に、葉月は一つ息をついて呟いた。

「帝大救急病院・・・」

それは、調べ上げて突き止めた病院の名前だった。明らかに、真奈美の顔色が変わる。駄目押しとして、若葉は更に続ける。しいんと静まり返った空気の中で。

「庄野 真奈美。庄野 真奈美でしょう? あなたは・・・」

と、そこにけたたましい犬の吼え声が聞こえた。続いて小春の悲鳴も。

「何々、どうしたんだがねっ!」

物音に驚いた一同が取るものもとりあえず外に出てみると、そこには源太と陵一に取り押さえられている庄野教師の姿があった。それと、腰が抜けたようになっている小春の姿も。ただ事ではない。そう判断した彼女らは、一目散に階段を降りていく。

シロは、飛び掛らないように木にくくりつけられているが、激しく吠え立てていた。

「庄野先生・・・一体何があったんですか?」

尋ねる葉月に、源太はまだ剣を手放さないままに答えた。

「何がもくそも、こいつが小春を襲おうとしたんだよ。それですんでのところ、俺たちで取り押さえたんだぜ」

その事実に絶句する。その時、真奈美が始めて声を出した。それは、絞り出すような涙声だった。

「お父さん、もうやめて、もう・・・もういいから・・・」

それだけ言って、彼女は地面にへたり込む。お父さん。なんとなくわかってはいたものの、彼女の口から直にその言葉を聞いてしまうと、流石にどきりとする。

庄野教師は取り押さえられたままうな垂れていたが、彼女の言葉を否定する様子は無かった。やはり、佐倉 真奈美は庄野 真奈美である。横浜まで調べに行った若葉は、改めてそこについて噛み締めた。

しかし、何故娘のためにこうやって魔法の力をかき集めようと躍起になっていたのか? 襲われそうになった小春は、陵一に背中を支えられながら、なんとか息を整えようとしている。

「庄野先生、ここまで来たら、もうじたばたはしないよね。あたしはそうであると思ってるけど。どうしてこんなことになったのか、納得のいく説明をしてくれるよね?」

落ち着いた口調で、若葉が彼を促した。源太の肩口は大きく裂けて、服の袖が千切れそうになっている。もう少しずれていたら、切れていたかもしれないほど切り口は鮮やかなものだった。

相変わらずシロがひどく興奮して、鳴き声を上げている。庄野教師はすぐに答えようとはしなかった。なんともまあ、重苦しい沈黙があたりを包む。

「答えてください、先生。このままだと、何がなんだか分かりませんわよ、わたくし達も。真奈美さんは、一体どうなっているんですの?聞かせてくださいな」

泣き崩れる真奈美を介抱しながら、沙雪が彼を促す。

「・・・お父さん、もう話をしてもいいよ・・・私、もうこれ以上・・・お願い、話をして」

言葉を継いだのは、真奈美だった。青ざめた顔で、大きな黒い瞳は涙で潤んでいる。

彼女も、誰にも言い出せずに苦しかったのだ。はそう思って、その背中をそっと叩いてやった。なにしろ、ひどく興奮しているらしく、震えが止まらないでいるのだ。

むしろ、父親本人よりも娘の方の精神的な衝撃は大きかったらしい。彼女の言葉に観念したのか、うつむいたままぼそぼそと庄野教師は語り始めた。息を一つ吸い込んで。

「そこにいる真奈美は・・・私の実の一人娘だ・・・君達が知っている通りに、私の娘なんだ・・・しかし、もう本当は半年前に死んでいるんだよ・・・」

「えっ?死んでいるって・・・生きていらっしゃるじゃございませんの」

足はありますわよね。ふとそんなあたりを確かめて、沙雪は信じられないとばかりに首を振った。真奈美は薄く、はかなげな体つきだがたしかに実体としてそこにいる。なのに、一体全体この父親は何を言っているのだろう。

「・・・死んで? と、いうことは・・・?」

「えっ、ち、ちょっと待ってよ、だって佐倉ちゃんは・・・」

話についていけず、というか信じたくは無いが溜まらず口を開く。しかし、庄野教師はあまり口調を変えることもなく喋り続けた。

一人だけしか場にいないような口調で。

「・・・半年程前に交通事故で真奈美は死んだんだ。しかし、私はそれを認めたくなかった。なにしろ、まだ若くて・・・どう考えても死んでいい年じゃなかったんだ。妻を亡くしていた私には真奈美だけが生きがいだった。真奈美が病院で冷たくなっているのを見たときには、死のうとさえも思った。そんな時に・・・横浜で・・・」

「これのことですね」

若葉は、庄野教師の自白に合わせて横浜の病院で半年前に佐倉 真奈美が担ぎこまれた時の診断書のコピーを出した。

そこにははっきり、真奈美が死んだと言うことが記されている。

「そうだ・・・」

庄野教師はその件を肯定してから話し続けた。茫然自失の呈で、ふらふらといつの間にかかの有名な横浜魔法街に入り込んでいた彼は、薄暗い街角で怪しげな女性からそれ以上に怪しげな魔導書を受け取った。渡してくれた相手はひどく奇相の老女であった。その書物には、恐るべきことが書いてあった。死人をこの世に生き返らせる方法。

つまり禁呪の方法が事細かに記してあったのだ。もちろんそんな人倫にもそむくような魔法は、おおっぴらには出来るはずもなく、見つかり次第当局に没収されるのがオチなのだが、娘を失った父親は夢中でそれにすがりついた。

そうして、死んだ娘をもとのように蘇らせたのだ。しかし、死を生に転換するという、初めから無理がある魔法はそれだけにリスクもまた高い。生き返らせることは出来た。だが、その状態を維持するとなると並大抵のことではなかったのだ。

定期的にどうにかして魔力を与えてやらないと、復活させた体は崩れ、彼女は再び死の淵にと沈んでしまう。

「魔力を与えるため、その本と一緒に渡された二つのペンダントを使い、一方で女生徒の魂を奪い、もうひとつを使って真奈美に魔力を供給していたんだ・・・頼む。私はどんな罰でも受ける覚悟はある。しかし、せめて真奈美だけは助けて欲しい。自分はもう二度も愛する者を奪われた。もう三度目は耐え切れない・・・」

その話に、しいんとなる一同。真奈美は相変わらずがたがた震えている。大きく息をついたのは、源太だった。

「で、その本をくれたのは、どこの誰なんだい?それからその本のタイトルなんか、覚えてるのか?」

「本は『永久魔道と魂の書』で、本を渡してくれた人物は横浜中華街にある廉貞星(れんていせい)という名前の古物商の女主人だ」

「それは、天井裏に隠しましたか?」

「そうだ・・・結界を使って・・・」 とすると、あの繭の正体はその本なのか、カホェートが瞳を細めた。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・あの、お父さんは、私のためにこんなことしてしまったんです、だから許してあげてください。悪いのは私なんです・・・」

「佐倉さんが謝る事じゃないよ。これは、あなたが全くあずかり知らないところで行われていたことなんだから」

庄野教師に襲われひどく驚いたものの、事情を聞いて同情の念がわかないでもない小春。彼女自身も父親を交通事故で失っているために、死者を蘇らせたいという気持ちは理解できなくもないのだ。

「それでは・・・とりあえず、もっと詳しく話を聞かせていただけますか。ここではなんですから、別のところで」

なんとなく取調官みたいだな。思いつつも若葉は、彼に立つように促す。娘がいるところでは、色々と話しにくいだろう。反魂の儀式のやり方とか、どのように蘇ったとか彼女自身は知らないこともあるのだ。

「とにかく、真実を告げてくれて有難う。庄野先生」

若葉は庄野教師に礼を言った。良い悪いは別として、真実を告げる事は勇気がいったことだろう。

その後、若葉は泣いている真奈美の方を振り向いて優しく言った。あたかも母親が子供をほめるように。

「さっきは問い詰めてごめんね。助けてって、言って欲しかったの」

「まあずいぶんと馬鹿な真似してくれたもんだね・・・そんなふうに生き返らせてどうしようっていうんだい。おかげで周りの死ななくてもいい人間が死にそうになるし、あの子だって生きているのか死んでいるのか、宙ぶらりんなままじゃないか。結局あんたの自己満足でしかないんだよ、死者を蘇らせるなんていうのは」

そのきつい口調に、ピピニーの萌葱はおろおろと主人の顔を伺った。彼女は、明らかに怒っているように見受けられる。

「で、どうするんだいこの始末は、あんた、娘の死に際を看取るのかい。二度目の」

「・・・わかっている・・・私が間違っていたんだ・・・」

「間違っていたですむ問題か。あの娘も共犯者にして」

彼女の声がより一層、強く部屋に響き渡った。他に話をしようとする者は、今のところはいない。若葉も口をつぐみ、じいっと彼女の言葉を聞いている。怒りは、分からないでも無い。しかし・・・。

「でも、真奈美さんは共犯っていう訳じゃ」

「そうかい? そうとも言い切れないんじゃないの。復活させられたときはそうだったかも知れないけどさあ、それから以降・・・女の子達が次々襲われるようになってからは、そのことを彼女も知っていたはずなんだから。確かに共犯って言うと言い方悪いかも知れないけど、でも」

「ちょっと、なんなのさ! 少しは佐倉ちゃんの気持ちにもなってみたらどうなのさ! 間違っているだの二度死ぬだの・・・なんでそんなことしかいえないのさ!」

思いがけないの声の荒げように、吃驚したのか若葉は顎に当てていた手を僅かに離した。彼女は顔に血を上らせている。

鈴蘭が、そんな少女に応じるようにして、その前で腕組みをした。

「仕方ないじゃないの。だって、本当のことでしょう。幸いにも、病人の回復方法が見つかったからいいようなものの、そうでなかったら、みんな衰弱死していた可能性は高いんだよ。佐倉 真奈美は、もうすでに死んでいるはずの人間なのに、そのために新しい死体を作るっていうのかい? そんなのは、おかしいとは思わないかい?」

「べっ、別に正しいなんて思ってないよっ。ただ、佐倉さんがいるから全部悪いみたいな言い方はどうかと思うなっ。ボクはそんなのおかしいと思うっ! 佐倉さんがそうしてほしいって、頼んだわけじゃないじゃないか。ただ、言えなかっただけだよっ。どんな人だって、佐倉さんにはお父さんなんだからっ」

ばん。

床を叩く音に、びくっと萌葱が身をすくめる。

じいっとにらみ合うと鈴蘭。見かねた源太が、二人の間に割って入った。

「まあ待て。こんなところで喧嘩していたってどうしようもねえだろ本当に。もっと落ち着こうぜ」

「そうよ。とにかく糾弾大会になったってしょうがないじゃないの」

ようやく気を落ち着けた小春も、彼の意見に賛成する。ふと思い出したように、ぽつりと陵一は口を開いた。

「そう言えば、樹海ってもともと自殺の名所だったんじゃないかなあ」

「不吉なこと言わないでよっ」

「そうですよ。大体、真奈美さんはすでに一度死んでいらっしゃるのに、その表現は当たらないと思いますわ」

すかさず阜が反論し、沙雪がそれに続く。それにまた阜が反論。

「いやそんなことじゃなくって、探しに行かないといけないでしょーっ。こんな寒い中に外に出ていって、帰り道がわからなくなったらどうすんのさっ。それこそ大問題じゃないのっ」

父親の様子と一同の様子をかわるがわる観察して、カホェートも頭を痛めていた。やっと問題が解決しそうだと思ったのに、当の本人にいなくなられてしまっては・・・。

学園側にこの度の一連の騒動を総括する書類を提出したばかりというのに。

ペンダントも外したまま、どうするつもりなんだろう、彼女は。

日記からの抜粋

2002.12.21 sat

忘年会から帰宅後、メールを確認したところ、『エテルーナ魔法学園』の第5回リアクションが届いていました。

ざっと自分のキャラクターが登場するシーンに目を通してみたところ……キャラクターの心情がアクションに書いたものとは大幅に変わっていて、かなり驚きました。真奈美(NPC)に対する不信感よりも、彼女の健康状態を回復させることができるかもしれないという希望をメインに据えたつもりだったのですが、その辺りは完全にオミット。前回は、締切4時間前になってキャラクターの心情を転換させたのですが、リアクション上のキャラクターはまさにその転換前の状態になっていたものですから、「ひょっとして俺、書き直す前のアクション送った?」とメーラーを確認してしまったほどです。

ちなみに今回のアクションでは、リンダ(NPC)と小春(NPC)とを引き合わせることで何かしらのイベントが発生しないか、ということを狙ったわけですが、その点は無事採用されていました。

結果、ミスディレクションだったことが判明しましたが。

2002.12.23 mon

『エテルーナ魔法学園』の物理リアクションが届きました。

残念ながら、ボーナスLVアップはなし。「もしアクションを書き直さなかったら、どーだったかなー」という後悔の念は拭えませんが、今回はキャラクターの目的と行動がうまく噛み合っていなかったり、他のPCさんを完全無視したものとなっていましたので、致し方ないのかもしれません。しかしその一方で、プレイヤー目的は今までで一番達成できた回だったりしまして、今後のアクションの方向性にちと頭を悩ませることになりそうです。

なお、心密かに「全回、ボーナスを貰う」という野望を抱いていたのですが、志半ばで倒れることになったのがなんと言いますか、

「無念」

2003.01.06 mon

浅い眠りから覚めると、そこは雪国だった。

という程ではないのですが、道路がそれなりに冠雪していたものですから、職場まで普段は15分で着くところが、本日は1時間かかることに。この降って湧いた有り余る車内時間を有効活用するため、『エテルーナ魔法学園』のアクションを考えることにしました。雪道+昨年から履き潰したスタッドレスタイヤという状況下では、あまり考え事などしない方がいいのかもしれませんが、まぁ、ゆかり車ほどひどいことにはならないでしょう。

さて、そのアクションですが、第5回リアクションで「第1回から関わってきた真奈美(NPC)が生命維持装置を外して冬の樹海に向かった」という状況に陥っていますので、キャラクターの目的&行動は「魂-1:真奈美を連れ戻す」に決定済み。現在悩んでいるのは、プレイヤー目的と具体的手段がなかなか見つからないということです。

たとえば、「囚われのお姫様を助けに行く」というアクションをかける場合、キャラクターには単純に「姫を助ける」という目的のみを持たせておきながら、プレイヤーレベルでは以下のような目的を設定したりします。

  • お姫様に「自分を助けようとする者がいる」ことを伝える。
  • 腰の重いNPCに行動を促す。
  • 迂闊な作戦により、逆に警備を強める。
  • ミイラ取りがミイラになる。
  • 逃亡中に姫が死ぬ(ぉぃ)。

早い話が「キャラクターの行動によって、キャラクターが意図していない結果がもたらされる」ことを目論むわけですが、今回はどうもそれが思い浮かばないのです。ここは敢えて真奈美関係は放棄して、彼女を助けようとする過程で他のイベントに影響を与えることができないかを検討した方がいいのかもしれません。

そして、もう一つ問題なのは、具体的な、決定的な手段が見つからないということでしょうか。このままですと、見つかる/見つからないが完全にマスターの手に委ねられることになり、ちょっと悔しいです。あまりの手段の少なさに、「実は真奈美が見つかることは決定事項であって、いかに彼女を説得するかがポイントなのではないか?」 そんなことすらも考えてしまいます。

……などというところで、駐車場に無事到着。そして、あることに気が付きました。

「アレ? サイドミラー、たたんだままだった」

第06回 魂『生ける犬』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

アクション

アクションno.

魂-1「真奈美を連れ戻す」

目的

佐倉さんを連れ戻す。

動機

(人を助けたいという思いに理由はありません。)

行動詳細

既に夜になっていますが、翌朝まで待っていられる状況ではありませんので、すぐに佐倉さんを捜しに行きます。

手段としては、佐倉さんを見た場所まで行き、《御魂導》と《剛脚》で探して回ります。それと、人手は多い方がいいですので、庄野先生にも手伝って貰い、できるだけ多くの《猫目符》と《伝言符》を用意して貰います。

また、「佐倉さんの魂の半分は、現実世界と冥界の狭間をさまっている」ということですので、リンダさん達に精神世界の方でも探してくれるよう頼みます。もし、消えてしまうような状況になっているのでしたら、なんとか留めて貰うように(存在するために魂と身体の両方が必要なのだとしたら、一時的に他の人の身体を貸し与える、ということは可能でしょうか?)。「精神世界は現実よりも時間の進みが極端に遅い」とのことですので、何か方策を考えるにしても、精神世界にいた方が時間的余裕が得られると思います。

捜しているときに心に去来するのは、2つの怒り。1つは、半年近くして接しておきながら、佐倉さんが悩み、苦しんでいたことに気付かなかった自分に対するもの。そしてもう1つは、佐倉さんがお父さんの思いが込められているペンダントを以前に「こんなもの」呼ばわりし、そして今回、それを取り外してしまったことへのもの。

アクションの補足

プレイヤーレベルでの別目的が思い付きませんでしたので、別の方向でリアクションに楽しみを付加することに。

今回は死のうとしているNPCを連れ戻す、という行動ですので、キャラクターがそのことをどのように思っているのか、そしていかに説得するのかが重要だと思いますが、そのあたりをスポーンと抜いてみました。一人称の記述を行わないことで、リアクション上の台詞はおろか、心情までマスターに考えて貰おうという企みです。ある程度登場が約束されているゲームだからできることですね。

リアクション

佐倉 真奈美は、置き手紙を残していなくなった。季節は冬、樹海は健康な人間でも迷い込んだら危ないときがある。まして真奈美は体の具合がいいとはお世辞にも言えない状態だったのだ。これを追いかけずにほうっておいていいだろうか。いや、よくない。

柚木(ゆうき りん)はすぐさま誰よりも早く部屋の扉から出て行こうとした。その前に、常滑 子猫(とこなめ ねねこ)が慌てて立ちふさがる。

「ま、待つがねっ。こんなときに出て行ったら、二重遭難になってしまうがね。柚木さんっ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないよっ! こうしている間にも佐倉ちゃんが凍死したらどうすんのさ!」

状況が状況であるだけに、はいささか興奮しているようだ。そのため顔に血が昇っているのか、頬が紅潮している。

乙月 友樹美(おとづき ゆきみ)は、そんな彼女らの脇から独り言を呟くようにして口を差し挟んだ。憂いを含んだ表情で、ほっそりした指を顎に当てる。

「そうですわねえ・・・もう夜になりますし、これから冷え込む一方ですし、早く見つけてさしあげないといけませんわ。体が早速崩れてしまうかもしれませんし」

「怖いこと言わないでよ!」

確かに怖い話だ。子猫は内心そう思い、想像しかけて首をすくめた。そうこうしている間にも、窓の外では雪がまた降り始めていた。真っ暗な中に音もなく降り積もっていくその光景は、何もなければ美しいものだが、遭難するかも知れない人間が身近にいるとなると、そうそうのんきなことも言っていられない。だが、ド素人が夜中に探索なんて絶対無謀だ。やるべきではない。

「とにかく、外は真っ暗だがね。雪も降ってるし積もってるし、何の準備も無しに樹海に入っても駄目だがね。とにかく、そうならないように準備を整えて、それからの話だがや?」

正論である。それに対して、も少しは落ち着いたのか今しも出て行こうとする足を止めて息を吐き出した。子猫もそのことにほうっと息をつく。

壁際に立って静かに様子を見ているのは、山勝 鈴蘭(やまかつ すずらん)と若葉(わかば)・グラスケット。彼女らは、自分達がいる立ち位置から微動だにしていない。

赤坂 阜(あかさか つかさ)と服部 源太(はっとり げんた)は、ともあれ先走ろうとすると止めようとする子猫の仲介役として、彼女らの間に割って入る格好となった。

「佐倉さんを探す方法は、みんなで考えるほうがいいがね。そういうのが得意なカホェート君に・・・あれ? カホェート君は?」

気がつけば金髪の少年がいないので、子猫はあたりをきょろきょろとした。こういうときに一番便りになりそうな人物があの人なのに、一体どこに行ったのだろう。そう思っていると阜が事も無げに教えてくれた。

「カホェートなら、ちょっと外を見て来るって出て行った。今さっき」

「え、いつの間にっ。もう、そんならそれで一言くらい言ってくれればいいのに・・・とにかく、その得意なカホェート君を私は探しに行って来るからっ」

言い残して、子猫はすぐさま外に出た。そうして、階段のところで雪が降るのを眺めているカホェート・クランヴェーヌを見つけ、部屋に呼び戻す。どうやら彼は雪がどのくらい降っているのか直に確かめに出ていたらしい。

部屋に呼び戻されてから。こんな台詞を言ったからには。

「やっぱり、今探しに行くのはよくないんじゃないかな。もどかしいかもしれないけれど、日が出てから出来るかぎりの準備を整えて出発した方がいい」

白龍(パイロン)が、しゅっと白い息を吐き出したのは主に対する賞賛のつもりか。確信的な口調に、夜の出発を断念した皆はとにかく捜索のための準備を行うこととした。

また、源太、の希望により、捜索には庄野教師も刈り出されることが決まる。最も、この期に及んで彼が断ることは考えられなかったが。

「じゃ、みんなで必要なものかき集めてこようぜ。善は急げだ。もたもたしてると、夜が明けっちまうかもしんねえしよ」

ぱん。

手を打ち合わせて。源太が場をしめる。阜、、鈴蘭、子猫それから若葉、カホェート、それに都雲 沙雪(つぐも さゆき)らはまず一旦自分の部屋まで戻ることにした。源太と秋山 陵一(あきやま りょういち)は、庄野教師を見張るためその場に残ることにする。

なにより彼は、娘がいなくなったことがよほどショックだったのか、先ほどから一言も発していない。まあ、死んでからも生き返らせようとしたほど愛している娘だ。無理はないのかもしれない。

そんな彼の顔を覗き込んで、今しも自分も部屋を出ようとしていた子猫は何かを思い出したように、彼の元まで戻ってきた。

そうして、ひざをついて語りかける。

「庄野先生・・・あの、私一つ聞きたいことがあるんだがね・・・その・・・」

彼女がそうやって、二言三言話しかけていたのはほんの短い時間の間であったし、その声も小さかったので何を尋ねていたのかは誰にも知られなかった。はたからは慰めの言葉をかけているくらいにしか見えなかったので、誰しも注目していなかったのだ。しかし、その時子猫はたしかに庄野教師に質問をして、彼はそれに答えていたのだ。

「・・・そう。有難うだがや、庄野先生」

丁度その時、沙雪もまた他の人々とは別行動をとっていた。彼女は自分の部屋に戻って、充分に防寒服を着込んだ後、そのまま一人だけで樹海へ向かうことにしたのだ。誰にも見つからないように極力注意しながら、寮の中庭まで降りてきて、そこで召喚を行う。

「・・・出てらっしゃいな、わたくしのおうまさん」

応じて、真っ白なユニコーンがぼんやりした光に包まれ具現化する。それはうやうやしく足を折り、彼女を背中に乗せた。そしてそのまま、歩き出す。

「あかりさんも、道案内をしてくださいまし。森は真っ暗なのですから」

ぽっ。ぽっ。

点滅しながら、パートナーのウィル・オー・ウィスプが主人を追いかける。雪に飲み込まれて、そのまま遠ざかっていく足音はほとんど聞こえることはなかった。

小春の部屋に現在集まっているのは、、若葉、鈴蘭に気吹 瀬津(いぶき せつ)、そうして部屋の主の小春。最後に様子見にやってきた源太。

しかし、その場の空気はお世辞にもいいものとは言えない。真奈美を生かすか殺すかで、目下意見が真っ二つになっている所なのだ。

の胸に去来しているのは2つの怒り。一つは、自分が今まで真奈美の悩みや苦しみに全く気づかなかったこと、もう一つはその真奈美が父親の思いが込められているペンダントをかつて「こんなもの」呼ばわりしそして今回取り外してしまったこと。

(なんでだよっ・・・佐倉ちゃん!)

「死んでいるはずなのに?」

に鈴蘭が小さく肩をすくめる。それには噛み付かんばかりの勢いで反論した。

「佐倉ちゃんは不慮の事故でなくなったんだよ、『死んでいるはず』なんていう突き放した言葉は使って欲しくないんだけど。たとえ他人から与えられた命だったとしても生きているほうがいいじゃないか!」

2人の間に沈黙が満ちた後、小春がぴりぴりした空気に気おされながらも自分の意見を述べる。

「あのね、私も父親を亡くしたからよくわかるんだけど、もし生きて帰ってきてくれたのならばと今でも思うことはあるのよ。だから、真奈美さんには・・・やっぱり生きていてもらってほしい」

「ボクだって小さいときに両親を亡くしたよ。その時、もし庄野先生みたいに生き返らせる方法があったとしたら、それを教えてもらったとしたら、心から魔法の能力があってよかったと思って、引き込まれちゃったかもしれないんだよ! だから、だから・・・」

ミラーシェードの下から見えている鈴蘭の眼差しは、やはりどことなく冷たかった。少なくとも、外からはそのように感じられる。彼女は唇の端に、嘲るとも憐れむともつかないなんとも微妙な笑いを浮かべていた。

二度死ぬということは、確かに人間にとって恐ろしいことだろう。だがまあ、あんな風に共依存にはまった親子のことなど本来的にはあんまりかまってもいられない。何故なら、魔導書を渡したのは十中八九魔女ハドゥリヴァだ。だとすれば、これは多分テストケース。

彼女が完全に復活するために、この親子を実験課題にしたのではないだろうか。そして庄野教師はまんまとそれに乗ってしまった。ぞっとしない話だ。そうなる前にそれを阻止しなければならない。

「まあ、私はあの子を裁く気はないし、そうする資格があるともはなから思っていないけれど、親子の情愛を理解することと許すこととは違うし、責任を感じているくせに逃げ出すことを理解することと容認することとは違うでしょう」

彼女の言葉を、若葉・グラスケットは黙って聞いている。その内実が肯定か否定かと言えば、紛れもない肯定である。

「まあ、あの子は親に食われた生け贄みたいなものね。力が強くなればなるほどエゴが肥大していく。それに魔術士が振り回されるのは恥ずべきことだと思うんだけど?」

死体に還したほうがいい。口にこそ出さなかったが、鈴蘭はその思いを秘めている。

そこで、若葉がゆっくりと口を開いた。

「あたしは同情なんてしないからね。あんたたちが同情するのは勝手だけど、彼女たちだけが不幸の代表みたいな顔するのはやめてよ。身内が死んだ人間が、この世にどのくらいいると思ってるの。今この瞬間にもそれは続いているのに」

あたしは死を受け入れられない臆病者は嫌いだ。

真奈美には、是非黒幕を引きずり出すえさになってもらいたい。庄野教師に「永久魔導と魂の書」を渡した魔女。禁呪の記された書物をただの親切心で手渡すことなんてありえない。彼女の目的は、おそらく身内の死に耐えられない心の弱い相手に、禁断の魔法を使わせることそのものにあったのではないだろうか。だとすれば、真奈美がペンダントを外して皆に真実が知られてしまった今、彼女自身が何か手を打ってくるはず。庄野教師が何もしないのであれば。

若葉は、窓から暗闇に広がる樹海を眺めた。子猫や瀬津やそれからなど、彼女達は、真奈美を生かしたいと思っているだろう。しかし、自分はその逆だ。あの人間を殺してことが収まるものならば、ためらいなく殺そう。彼女はすでに死人なのだ。

万物は流転する。永遠に続くものはないし、人は皆死ぬ。そして変化しつつ流れていく。それでいいのだ。娘の死を受け入れられなかった男について許すことが出来ない。

「知ってる人が死ぬって言うのは、何にもましてどうにかしなきゃいけない問題だとは思わない? ボクは責任の範囲外で、自己満足のために他人を非難する人は大嫌いだ」

続いて、日ごろ温和な瀬津が、彼女にしてはきつい口調で考えを述べた。

佐倉 真奈美と同じ寮に住んでいるというのも、なにかの縁であり、意味があることだと思う。助けられるのならば助けてあげたい。

元がどうであるとしても、目の前で人が死んでいくことに耐えられるほど自分は強い人間じゃない。

「それは、私たちのことかい?」

軽く瀬津を睨む鈴蘭。

グレムリンの摩利、ピピニーの萌葱、それからフェアリーのジョージは常ならぬ緊張感に恐れを抱いて、それぞれの主を離れこっそり部屋の隅っこに移動していた。

「やばいよやばいよジョージ。なんとかしなさいよあんた」

「そんなん出来るわきゃねえだろ」

「うー・・・」

悲しげに鳴き声を上げる萌葱。

「で、あなたはどうなの?」

いきなり鈴蘭に話をふられて、焦ってしまう源太。

「ぜひとも唯一の男性陣の見解を聞いておきたいんだけど」

「あ、ああ・・・俺は知っている人が死ぬのはとても悲しい事だから、誰も死なせる気は無い。勝手に死なれたら困る・・・かな」

「話し合いになりませんね、これじゃあ」

若葉は年に似合わぬ大人びた口調で、かぶりをふった。その通り、意見は一つもまとまらず、対立したままである。どうもこの、ぎくしゃくした関係を置いといて捜索に出なくてはならないようだ。早くも、行く手に暗雲が立ち込めてきそうな気分の源太。

「いやさあ、そんな深刻にならなくても。ほらほら、小春っち、オルゴールが壊れたって言ってたじゃん。イヴ、直すんでしょ、それ、ねえ」

緊張感をとりつくろうためか、摩利がぶんぶん飛び回って主の腕と小春の腕とを引っ張った。彼女はこういう空気が大の苦手であるようだ。

ちなみにその後、小春はちょっと迷っている様子だったが、意を決して瀬津にオルゴールを託した。それだけがこの集いの中で唯一建設的なことだったと言えるかもしれない。

「僕は佐倉さんについては唯一つのことが知りたい、彼女自身は生きたいのか逝きたいのかどっちなのか。他の人の意見はともかくとして、それが分からない限り僕は行動を決めることが出来ない。助けるにせよ、そうでないにせよ」

子猫の部屋の玄関で、カホェートはそのことを言った。黙って聞いていた子猫は、ふと視線を落として彼に問いかける。

「カホェート君、もし私が真奈美さんみたいに死んじゃって、カホェート君の手に永久魔導と魂の書があったら・・・どうする?」

なんのかんの言った所で、真奈美自身の手で魔導書と決別しなくては駄目だ。彼女が、罪の意識から生きようとする意志を失いかけていることは由々しきことである。友達である彼女に、他人を意識した人生の選択は行って欲しくはないのに。

そうさせないためならば、自分の魂と魔力を与えても惜しくはない。そもそも、魔力が欠乏状態であるだろう状態でなんのかんのといったところでこれまたどうしようもないのだ。犠牲者をこれ以上出さないことに関して真奈美の死は確かに有効かもしれない。だが、現在の犠牲者にはその死は無意味でしかないのだ。

「え? ・・・そうだね・・・どうしようか・・・」

カホェートは、悩んでいるようだった。子猫は少し顔を赤らめて、それを隠そうとするかのように手を振り軽く咳払いして台詞を続ける。

「まぁその、仮定は無意味だがね・・・でも、そう、1回だけ私のピンチを助けに来てくれるっていうのを希望したいなあ。どう?」

と、言うなり、子猫は背伸びをしてカホェートの唇に自分の唇を押し付けた。本当に一瞬のことだったし思い切り予想外だったので、とっさに反応できず固まるカホェート。

そんな彼を置いて、子猫はすぐさま部屋の奥に戻って行ってしまう。

「・・・えーと・・・」

それ以上にいい台詞も思い浮かばず、カホェートはそのまま部屋から退散することにした。何度も頬をかきながら。らしくない仕草かもしれないが、勝手にやってしまうのだから仕様がない。

彼がなんとも言えない表情で、階段を降りていく。と、そこにぬっと人影が現れた。

「あ、カホェート君」

「あっ。・・・あ、柚木君」

「なんで驚いてんの?」

「いや、別に何も・・・」

ならいいけど。

自室に戻る途中たまたま通りがかっただけのは、丁度いいとばかりにそこでカホェートを捕まえて、とある依頼をした。それは、『今度精神世界の方に行ったら、佐倉さんの魂の半分を探しておいてもらえないか』というもの。もちろん、彼はその頼みを断ることはしなかったのである。

「いないなあ・・・どこまで行っちゃったんだろう、佐倉ちゃん・・・」

柚木は剛脚を使って捜索をしていたが、もう一度立ち止まって耳を済ませてみることにした。御霊導によって鋭敏になっている聴覚は、かすかな物音をも聞き逃さない。鳥のさえずり、雪が日の光に解けて枝から地面に落下していく音、つららがとけていく音、それから、獣の息遣い、犬が吼えている声・・・。

ううう、わんわんわんわん。ううううう。

「・・・シロ?」

その吼え方が、どことなくいつもと違っている。感じた瞬間彼女は走り出した。声がする方角へと。

そうしてから身に着けている伝信符が光始めるまでそんなに時間はかからなかった。

シロに引きずられるままに走り出した源太と子猫は、そこで彼女らを見つけた。げっそりとやつれてはいるものの、まだ死んではいない真奈美と、そこから少し離れた場所で、ユニコーンと共に立って複雑な苦笑いを浮かべている沙雪と。

「見つけた・・・おい、みんな、見つけたぞ、いたっ!」

よもや幻ではないだろう。すぐさま源太は伝信符で他の生徒達に真奈美発見の報を知らせた。彼がそうしている間に、子猫は真奈美に駆け寄り、その肩を支えてやる。

もう立っていることも出来ないのか、真奈美は雪の上にへたりこんでいた。

「佐倉さん、馬鹿なことして・・・体は大丈夫だがね? 顔色がでら悪いだがや・・・」

泣きそうな顔で、真奈美は彼女にすがりつくような視線を向ける。

「死のうと思ってここまで来たのに・・・でもやっぱり死にきれなかった・・・。私は、生きることも・・・死ぬことさえもできない・・・」

刃を振り下ろそうとしたその瞬間、真奈美が止めてと叫んだのを確かに聞いた。

沙雪はその声を思い出し、今の彼女の様子と照らし合わせる。彼女は心の底で完全に死のうと思っていたわけではなかったのだ。それにはほっとすると同時に、やはり苦いものも混じる。

うまくは説明できないけれど。

「それでいいんだがね。もう、馬鹿なこと考えるのはよすがや・・・」

子猫は、真奈美のペンダントを彼女の首に掛けた。銀色の薔薇は、やはり彼女の首元にあってこそ輝きを増すようだ。

「どういう形であれ、あんたは生きるべきだがね。私と真奈美は友達だわ。私は友達が困っていたら見捨ててはおけない。だから真奈美も、絶対に私を助けてね」

子猫は、そこまで言った後、隠し持っていた庄野教師のペンダントの蓋を開けた。物寂しげなメロディが、かすかにあたりに漂い始める。

沙雪と源太がその異変に気づき振り向いたとき、どさりと雪の上に何かが倒れる重たい音が聞こえた。それは、子猫の身体。

真奈美が、悲鳴を上げる。

「どうしたのっ、佐倉ちゃんっ! あっ・・・」

駆けつけて来たが、場を見て取った後すぐに細い体を支えた。

「うっそだろ・・・おいっ! ちょっと、起きろよ子猫っ!」

目の前で起きた悲劇に源太は悔しがり、子猫の体に手をかける。しかし、全く反応はない。今までに昏倒して倒れた女子生徒と寸分違わず同じように。

なんということだ。また、自分は止められなかったのか。悔恨の情が後から後からわき上がってくる。

そこに、荒々しいスレイプニールの蹄が、雪を撒き散らし駆け込んできた。それに乗っていた金髪の少年は、飛び降りて咳き込まんばかりに詰問する。

「どうしたんだっ!」

「子猫が、こいつが自分の魂使いやがったんだよ!」

聞くなり膝をついて、カホェートは子猫を抱き起こし呼びかけた。しかし、反応はない。少女は固く瞳を閉じたままだ。

「子猫君、子猫君! 子猫君!」

その後に現場に到着した陵一、庄野教師、それから阜、瀬津、小春はそれぞれこの事態を呆然と見ているだけであった。

これで、魂をとられた犠牲者は4人となってしまった。

「シロー。ご飯だよー」

寮の裏庭でシロの世話をしているは、ふと、耳をそばだてた。なにやら、紅葉寮の方から電話の音が聞こえている。あれは、確かここの寮母さんとこの共用電話では。今誰もいないのかな。

だったら、取りに行かないと。腰を浮かしかける、だが彼女のその思考は、次に聞こえた物音で吹き飛んだ。

「きゃあああああああ!」

今のは佐倉ちゃんの悲鳴だ。ほとんど反射的に、彼女は移動術の気動を使って寮の外壁を駆けあがり、閉められたままの窓から部屋を覗き込んだ。

「・・・っあ! 庄野先生っ!」

彼女の叫びどおり、そこにいたのは男性教師庄野だった。しかしその雰囲気は彼のものではない。その手に本を抱えたまま、真奈美を羽交い絞めにしていたからには。

は血相をかえて、窓ガラスを割ると、真奈美の部屋に踊りこんだ。

「助けて、お父さんが変なのっ!」

「ちょおっとお! なにすんのさっ! なんのつもりなの庄野先生っ!」

その声にも動じることなく、彼は全く無反応だ。

「なんですのっ! この騒ぎはっ!」

そこに、戸口からまた別の人間が駆け込んできた。沙雪である。彼女もまた庄野教師と真奈美を見て一瞬で自分がすべきことを把握したらしい。

さんっ! お使いなさいっ!」

素早くに手持ちの護鬼符を投げ渡し、自分は剣鬼符を男に向けて飛ばす。

教師はすぐさまルーンシールドを発動させて、その攻撃を半減化してしまった。

続いて、彼はマジックミサイルをその手から打ち出す。今度は、阜の護鬼符がはじけ飛ぶ。しかしそこまでだった。

攻撃の隙に、が影身を使い背後に回り、彼を羽交い締めにしたからである。真奈美はやっと父親の腕から転げるように逃げ出す。その体を、沙雪は素早く後ろに隠した。

「大丈夫、落ち着きなさいな真奈美さん。すぐに終わりますわっ」

この期に及んでも教師はやはり本を抱えたまま。その様子に妙だなと感じる。本来なら戦うときにあんな本持っていても邪魔になるだけだ。

なのにどうして後生大事に持っているのか。あの本はあやしい。なにかくさい。沙雪と同じことはもまた考えたようで、彼女は力の限り男の動きを封じ込めながら叫んだ。

「都雲さんっ!本を攻撃してっ!」

沙雪の剣鬼符が飛び、魔道書は吹き飛ばされた。

途端に教師は力をなくしその場に倒れこむ。

やはり、あの本がおかしかったのか。疑念が確信に変わる瞬間だ。真奈美は父親に襲われたことで、パニックに陥っているのか口もきけないでいる。

ウィル・オ・ウィスプのあかりさんは、そんな彼女を慰めようとでもいうのかちかちか点滅していた。

「どうしたの、悲鳴が聞こえたわよっ!? 真奈美さん、大丈夫・・・」

そこに、遅れて小春が入ってきた。床に叩き付けられていた魔導書は、彼女の姿を見つけるや自分から転がり、その前に倒れる。

「小春さんっ! それに触ったら駄目っ!」

「え? きゃああっ!」

は、開いたページからしゅわしゅわと、繭の糸みたいなものが、後から後から飛び出し小春をあっという間に包んでしまうのを見た。

「止めろ、このっ!」

手で切ってしまおうとしても、それはねばねばして絡みついてくるだけでなんの役にも立たなかった。そうしている間にも、糸は飛沫かと見まごうばかりに湧き出してくるのだ。かえって絡め取られそうになって、あわてて彼女は身を引いた。

その体に、糸が引く。

幸いと言っていいのか、それがくっ付いたこと自体ではなんともならないらしい。

糸はぐるぐると渦巻いて、天井にへばりつき床にへばりつき壁にへばりつき、とうとうその部屋に大きな繭型の結界を作ってしまった。その表面を細かく見ていくと、糸で言葉が無数に編みこまれている。すべて魔法の結界をなす単語ばかりである。今までに見たことがないほど細かく、模様のように刻み込まれたそれらがこの上なく強い防御を生み出している。

「なんなんですのっ! 勝手に出てきて態度がでかいですわよっ!」

剣鬼符を飛ばす沙雪。しかし、それは繭の表面に届く前にたやすく弾かれてしまい、力を失った。

「小春さんっ、小春さん!?」

「待って、危ないっ! 触ったら飲み込まれるっ!」

駆け寄ろうとした真奈美を止めつつ、も沙雪も適当な攻略方法を思いつかないでいた。そこに、中から低くしわがれた声が呼びかけてくる。

「・・・おや・・・もうかかってこないのかね・・・まあ、誰でも自分は可愛いもんさ・・・」

あざ笑う声はどこからどう聞いても小春のものではない。この上ない震えを感じてがぐっと腹に力を入れる。

「お、お前は誰だっ!」

繭の表面に編みこまれている文字がせわしなく組み変わったり組みあがったりしていた。

「私かい? 私はこの魔導書を書いたハドゥリヴァさ・・・知っているだろう。あんたたちは散々調べていたんだから・・・知らないわけがないよねえ・・・さあ、この小娘を返して欲しかったら、その娘の体を私に捧げな・・・もともとそのために復活させてやったんだからねえ・・・さあ、あんたもおいで。死者は生者に道を譲るのが道理だろう・・・?」

その言葉を聞いた真奈美は、夢遊病者のようにふらふらと繭に向かって歩き出した。

「佐倉ちゃん駄目だよっ! 行っちゃ駄目だってば!」

「そうですわよっ! あんなババアの言う事なんか真に受けてどうなさるおつもりですかっ!」

と沙雪はそれを力いっぱい押しとどめる。丁度その時、庄野教師が目を覚ました。

「こ・・・ここは?これは一体・・・」

どうやらやっと正気に戻っているらしいが、この際それが役に立つのかどうかははなはだ疑問であった。

日記からの抜粋

2003.01.31 fri

『エテルーナ魔法学園』の第6回リアクションが到着。

前回は意図的に内容を省いたアクションとしたのですが、結構発言させて貰っていました。私信に書いた「たとえ他人から与えられた命だとしても、生きている方がいい」という某コウモリ仮面騎士の台詞も言うことができましたし、なかなか良好な結果です。物語上の役割をそれなりに確立できているということでしょうか。

と、それはさておき。

今回は、共通リアクションなるものが添付されていました。「生徒集会で学園内で起きている事件を報告し、それらの関連を探ろう」というフリーアクションが実を結んだ結果のようです。「情報誌に毎月載っている『学園トピックス』の立場っていったい……?」という疑問が湧かないでもありませんが、ゲーム内におけるキャラクター行動と考えれば、十分に納得できることです。

それで、私が参加している魂Divに関する報告もあったのですが、読んでてちょっと泣けてきました。

庄野教師は、去年6月に事故で死亡した自分の娘に禁呪である反魂の術を施し、その身体を存続させるための魔力供給源として、女子生徒の魂を奪っていたのである。

「真奈美は一度死んでいる」ということはできるだけ隠しておきたかったのに、おもいっきり晒されています。社会への影響力を考えますと、「死者を生き返らせることができる」という事実はおいそれと公表できるレベルの話ではありませんので、大丈夫だろうと考えていたのですが、見通しが甘すぎたようです。と言うか、こんなことを他の全員に知られたら、とても学内に留まっていることなどできない気が。

残り2回、この親子が舞台から降りてしまっていないか心配です。

2003.02.03 mon

『エテルーナ魔法学園』の物理リアクションが届きましたので、LVアップを確認します。

とは言いましても、前回は今までで一番の手抜きアクションでしたので、結果は殆ど期待できません。他の方の行動を見た今になって「アレも書けば良かった」「コレも書けば良かった」などと思ったりもしますが、もはや後の祭り。素直に現実を受け入れましょう。もっとも、前回で既に連続LVアップは途切れていますので、さほど気負うものはありませんが。

とか思っていたのに、2LVも上がってるよ、ママ。

2003.02.11 tue

「……ったく、ボーナスLVアップをやらなかったら、いきなりへたれなアクションを掛けてきやがったな、コイツ。仕方ねぇ、奮発して2LVボーナスをくれてやるか」

という思惑があったかどうかは定かではありませんが、何故かボーナスを貰えていた第6回。『エテルーナ魔法学園』もいよいよ残り2回となりましたので、胸を張ってボーナスを受け取れるアクションを掛けていきたいところです。

と言いつつ、困ったことが1つありまして。

それは、「物語が謎解きに向かうほど、プレイヤーの考え方が前に出てしまう」というものです。第5回辺りまでは「××を××という方向に持って行きたい」というレベルでアクションを掛けることができたのですが、現在は「××を××という方向に持って行くために××という行動を取る」と、目的よりも手段の方が重要になっています。そのため、あれこれと手段を考えるわけですが、それがキャラクターに合わないこと合わないこと。「直情的に突っ込ませた方がいいかな?」と思ったりもしますが、考えたことを全く活用しないともったいないお化けが出てきそうな感じもします。

結局、「思い付いたことはみんなアクションに書くか」という結論に達し、今までの出来事を関連付ける作業を始めたのですが……少ししたところで大きな壁にぶち当たりました。NPCの目的と手段との間にどうしても矛盾が発生してしまうのです。これが単に私の考察力の無さから来るものならば何も問題はありませんが、それよりもNPCがPCのアクションに引っ張られてマヌケになっている可能性の方が高いように思えるのが、ちょっと怖かったりしまして。なにしろ、PCの行動の結果、状況が悪化したことが殆どないのです。

それと、この魂Div、NPCが全く動きません。PC主導と言えば確かにそうなのかもしれませんが、その受け身な姿勢は、主人公達が行くまで誰も宝箱を開けたりしないコンピュータゲームの域に達しているように思えます。「主要NPCにちょっかいを掛けて物語の転び様を楽しむ」というスタイルがメインの私には、その打っても響かないこと山の如しな鬼神っぷりは、まさに「ムダよ、ムダムダああっっ」な不動明王アカラナータ。早くサラスの式神が助けに来てくれることを祈るばかりです。

そんなわけで、今まではPCが物語を進めてきたわけですが、ことここに至って自分達だけで事件を解決しようなどと思い上がることはできませんので、NPCを有効活用することにしました。今までリアクションに1回も出てきていないその他大勢の人達に働きかけるのもどうかとは思いますが、自分の力ではどーしよーもない状況なのでよしとしましょう。うまくいけばマユリ程度には役に立ってくれるかもしれません。

以上、もしマスターが見ていたら怖いので、そろそろリアクションが書き終わるであろう今頃(2/23)になって2週間前のことをアップする須賀和良でした。

第07回 魂『永遠の蛇』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

アクション

アクションno.

魂-1「結界を破り、小春を助ける」

目的

ハドゥリヴァに佐倉さんのことを諦めさせる。

動機

佐倉さんも小春さんも助けるため。

行動詳細

ハドゥリヴァは、「小春さんを助けるか」もしくは「佐倉さんを助けるか」の二択を迫ってきましたが、このどちらかだけを選択するつもりはありません。ハドゥリヴァが、佐倉さんのことを諦めれば、その両方を選ぶことができるからです。

逆にこちらから提示するのは、次の二択。「捕らえた人達を解放するか」もしくは「今まで永らえてきた命をここで終わらせるか」です。第一、ハドゥリヴァという魔女が昔話の中の存在ではなく、現実に今いることがわかってしまっています。そのことは、様々な情報網を通じて、すぐにでも世界に知らせることが可能です。そうすれば、世界中の魔法研究者の注目の的となるでしょう。たとえ佐倉さんの身体を手に入れたとしても、その姿も一緒に知れ渡ることになります(「佐倉ちゃんみたいな美人は、どこにいたって、目立つんだからね!」)。今回の計画は、ここまで公になった時点で、既に失敗していると思えます。

繭については、既に4人の魂が精神世界に囚われていますし、智子さんの話が本当なら、新たに6人が囚われたことになりますので、もはや小春さん一人の問題ではありません。また、小春さん自身、繭の中ではなく、精神世界にいる可能性も高いと思われます。

魔法書の結界を破るというのは、ハドゥリヴァと交渉する上でも重要なことです。もっとも、自分自身は、西洋魔法の結界に関する知識はありませんので、寮内の他の人達や学校の先生等に助力を求めて回ります。また、できれば、プラハの学校に連絡を取り、ハドゥリヴァに関する情報を提供しあえるようにしたいと思います。

強気に出てはいますが、それは「佐倉さんを渡せば、全て解決するかもしれない」とつい考えてしまいそうになるのを払拭するためのものです。

リアクション

エテルナ学園紅葉寮、佐倉 真奈美の部屋で起きている騒ぎは、そこにいるものたちしか知らないでいる。

すなわち、魔女ハドゥリヴァが小春を人質にとり、真奈美の身体を魂の器として要求していると言う事は。周りにいる人間は、誰も真奈美を素直に差し出そうとはしていないし、考えてもいない。

ただ、彼女本人だけがいまだに腰が定まらずふらふらしている有様であった。

魔女の言葉に引かれて、今しも自分を差し出そうとしかねないでいる。

「真奈美さん。もう少し待ってくださいな。あんな相手の口車になんか乗ってしまっては、この先生きていけませんわよ」

もうすでに死んでしまっているという論理的矛盾はともかくとして、都雲 沙雪(つぐも さゆき)は、とにかく佐倉 真奈美をその魔女のもとへ近づけさせないようにとしていた。近づいてしまったら最後、彼女は二度と戻らなくなってしまう。そんな気がしたからだ。

場にいるもう一人の当事者柚木(ゆうき りん)もまた、その恐れは強かった。この結界を作って呼びかけて来ている相手、古の魔女ハドゥリヴァ。絶大な力を持っているのだろう事だけはひしひしと肌に伝わってくる。

今ここにいないのに、これだけの威圧感をかもし出しているというのはどういうことだろう。自分だってそんなに弱いつもりではいないのに、まるで比較にならないほどの次元の差というものが手に取るように分かる。

「佐倉ちゃん、行ったら駄目っ!」

「でも、でも小春さんが・・・」

声はか細く、まるで聞こえない。だがしかし、確かに真奈美はそう呟いた。血の気の引いた顔で。そうして、膝をがくりと折った。

「真奈美・・・」

あわてて庄野が彼女の肩に手を置いて、そしてその震えに気がつく。もしかしなくても、これは彼女を支える魔力が大幅に枯渇し始めているのではないのだろうか。

考えたくはないが魔女が力を奪いとっているのでは。そんな思いが誰しもの頭によぎるのを見透かしたように、鈍くてしわがれたハドゥリヴァの声は響いてくる。

「ほうっておいたって死ぬよ。あたしがちょいと小指をひねればね。たやすいものさ。もちろんこちらに取り込んでいるこの娘についてもそうさ。どの道両方いっぺんにってわけにはいかないんだよ。二兎を追うもの一兎も得ずって言うじゃないかね・・・あんたたち、この娘とその娘とどっちが大切なんだい。ぐずくずしてたらみんな死んじまうよ」

あたしにとって殺すことはたやすいものさ。ぐずは嫌いだよ。続けて嫌な笑い声が起きる。そこに込められているのはもちろん嘲りでしかない。

これだけ人の笑い声が癇に障るものだということをは初めて知った。こちらのことをまるで頭から馬鹿にしている。小春ちゃんと佐倉ちゃんを天秤にかけさせるような真似をしている。

「どっちも大事だよっ! だからどっちも助ける! お前なんかの指示に従う必要ないからね!」

部屋の片隅に落ちていた箒を片手に構えて、は叫んだ。しかし向こうの笑い声は低くなって続いている。

「まあ、身の程を知らないということは幸せなものだねえ・・・ちょいとお前さん、自分がどれほどのものだと思っているのかね・・・」

声の調子が変わったことに、沙雪はすぐに気がつく。凄みを増して、ねとりとまとわり付くような印象である。と、次の瞬間、の箒がなにかに引っ張り上げられるように、彼女の手元から弾き飛ばされた。そして、またたくまに繭に絡められ取り込まれてしまう。

「あっ・・・」

ばきばきばきべき。

丈夫な箒はまるでマッチをへし折るように簡単にもまれ、折られてぐにゃぐにゃにへし曲げられてしまった。それはつまり、捕まっている小春をいつでもそういう状態に出来るぞという証だったのだろう。

「人間の骨はこれよりゃ丈夫かね。生きているものほどはかないものはない・・・あたしはそれを超越して、あってあり続けたいんだよ。鼻っ柱ばかり強い、身の程知らずの小娘。とっととその娘を渡しな。死んでいる者が生きているものの役に立てるんだ。これほどいいことはないだろ」

それに。ハドゥリヴァは気味悪い猫なで声を作って、優しくに語り掛ける。

「あんた、死んだ親を生き返らせてやりたくないのかい? あたしはなるべく穏便に事を運びたいと願っているだけなんだよ。あんたに禁書を見せてやってもいいんだよ? 親をこの世に蘇らせることも出来なくはないかもしれないんだよ?」

「嘘ですわ! 柚木様のお父様お母様はすでになくなって日もたっているじゃございませんの! もう蘇らせるべき体もないのに、どうやって・・・」

「たとえ火葬にしたって、その骨は残るだろう・・・それを使えばいいんだよ。もっとも、ここにいる死人よりも、維持のためさらに魔力を必要とするかもしれないがね。しかしなんてことはないだろう。大好きな、失いたくない人間が蘇るんだ」

まとわりついてくる言葉に、は顔を伏せた。そうして、拳を握り締める。お父さんお母さんが生き返って来てくれたらどんなにいいだろう。どれだけそのことを今まで夢に見てきたことがあっただろう。

二人ともいなくなってしまった日から。

さん、騙されては駄目ですわっ! このババアの言うことなんて全然全くこれっぽっちも信用できませんわよ!」

「分かってるっ! ハドゥリヴァ、佐倉ちゃんみたいな美人は、どこにいたってすぐ目立つんだからね! お前の存在、今ここでみんなに知らせてもいいんだよっ」

この魔女が御伽噺の存在ではなく、現実にいるということ。それが全世界に知られれば、必ず各方面の研究者達が調査をし始める。そうなれば彼女にとっては不利なはずだ。はそう考えて、大いにはったりまがいの脅しをかけてみることにした。ここにいる佐倉 真奈美を渡せば、全てこともなく解決するかもしれないとつい考えてしまう自分を振り切るためにも。

しかし相手は少しも驚かず、鼻をうごめかす調子で答えてくる。

「そいつの身体が使えないのなら、また他の身体を探すまでさ。ほとぼりが冷めるまで、どこかに雲隠れしていてもいいねえ・・・それよりも今、この魔道書に消えられて、困るのはそちらでは無いのかね?」

言葉に詰まったに替わり、沙雪は一歩魔導書に向かって進み出た。真奈美は庄野教師が背にしてかばっている。いきなりあれに襲い掛かるということもないだろう。

とにかく、時間稼ぎをしないと。息を整えて、彼女はゆっくりと相手に話しかける。

「小春さんをその中から出していただけないなら、こちらにも考えがあります」

その考え、というのはもちろん真奈美を殺してしまうことだ。さっきの魔女の口ぶりから推察するに、そんなに効果はない脅迫かもしれないが、それだってしないよりましなはず。

(世の中奇麗事ばかりではありませんわね、お父様)

心で呟きさらに台詞を続けた。なるべく丁寧に。

「ですが、私としては先に小春さんを解放していただかないと困ります。何故なら小春さんとお別れのご挨拶をしてないのですから・・・。もちろん、そう長くは時間は取らせませんし、力の差は歴然ですから・・・。いいですわよね? ここから私たちは逃げも隠れもしませんし、せめてお別れぐらいは・・・」

「ふうん。ずいぶん腰が低いことじゃないか・・・しかしあんたたちが逃げも隠れも出来るはずがないことはあたしがよく知っているとも・・・おっと。どうもネズミが入り込んでいるらしいね。そうだねえ、夕方まで待ってやろうか。それまでにはかたが付くだろうよ・・・」

一人で喋って、ハドゥリヴァの声がそこでいきなり途絶えてしまった。今のは引き延ばしが成功したと見ていいのだろうか。しかし、ネズミというのは一体何のことだろう。今だ庄野教師から吸い込まれた人々のことを説明してもらっていない沙雪らには、検討がつけられなかった。

繭は相変わらずぐるぐると動いて、解かれる気配も見せはしない。

窓から赤い光が差し込んできて、部屋の中に長い影を作っている。あれから一向にハドゥリヴァの言葉はなく、結界は小康状態に陥っていた。

しかし、人は各方面から集まってくる。まずは庄野教師の部屋からカホェートの残したメモを持ってきた瀬津、そして神社から戻ってきた天海、友樹美、源太。それから若葉。佐々木 智子。もともといた、沙雪、庄野教師、そして誰より何より真奈美。

以上の者が現在部屋に集まっている。少し多すぎると言えなくもない人数だ。

ただし、今さっき真奈美は若葉に1階のリビングに来て欲しいと言われ連れて行かれた。はその彼女が気になるのでついていった。なので、彼女ら三人だけはこの場にはいない。現在のところは。

「あっ、ちょっと、穴が開いてますよ、穴がっ!」

天海の声に、一堂はどよめく。彼が指し示す方向には、確かに穴が開いていたからだ。そうして、そこから肌色のものが見える。どうやら、小春の手であるらしい。

「早く引っ張り出さないと、みんな、手を貸してっ」

瀬津はそこから自分の手を差し入れて、彼女を引きずり出そうとした。それには、他のものも協力する。

魔導書の結界は破れ、ほつれ、その糸の集合体の中から小春がようやく姿をあらわした。手足を折り、丸まった姿で。しかし、なんらの外傷も見当たらない。

そこだけはとりもなおさず安心して、と沙雪は彼女の体にも手を延ばし、引っ張り出した。あれだけ強固だった戒めが古くなった輪ゴムみたいにぼろぼろと、いともたやすく切れていく。

取り出してもまだ彼女の体に張り付いている糸を払い落として、瀬津はその体をゆすって呼びかけた。

「小春さん、小春さん、小春さん、しっかりして。聞こえてる?大丈夫?」

「う・・・」

うっすらと目を開ける小春。よかった、ちゃんと戻ってきた。魂はとられてなかったみたいだ。だが、精神がのっとられているかどうかは別物。なにしろ庄野教師でさえ今まで行くたびも操られていたのだから。

十分に注意だけはしておき、瀬津は彼女に尋ねた。

「小春さん、とりあえず、ほら、この『お母さんの』形見のオルゴール、直ったんだよ」

「あ・・・うん、聞こえた・・・ありがとう、お父さんの、治ったんだね」

よかった。意識はちゃんとしてる。目の動きもなんらおかしいところはない。正常だと見ていいだろう。口ごもっているのは、意識が混乱しているからか。

まあ、この状態で混乱しない方がどうかしているが。

握りつめていた符を離し、一息つく沙雪。

瀬津は、小春をささえていた手を徐々に離して、自分から立ち上がろうとしている邪魔をしないようにした。

かぶりを振り、小春はあたりを見回す。

「えーと、なにがあったの? 私、あんまりよく覚えてないんだけど・・・」

それはそうだろう。悲鳴を聞きつけて入ってきた途端に本に飲み込まれたんだから。要領を得なくて当然だ。

源太は極力手短に状況説明をした。あんまり長く時間をとっていてもいけないだろう。魔女はまだ生きているんだし、このまま済ませてくれるはずもない。

「あーと、魔女ハドゥリヴァが出たんだ。それで、庄野教師を操って真奈美を襲おうとしていたんだと。そのとばっちりで、小春は今まで結界に取り込まれてて・・・今丁度助け出されたところ。でも、真奈美も大分魔力を奪われてて、とにかく大変なんだよ」

やはり状況については詳しくは分からなかったが、とにかく真奈美がらみでまた事件が起こり、魔女とかいうのが彼女をこういう状態にしているらしい。真奈美がここにはいないのは、また保健室なのだろうか。

「よくないですわね。魔力が底をついているような状態ですから・・・やはり早いところあのババアをなんとかしないと」

「ババア?」

「いえ、あの魔女ハドゥリヴァをなんとかしないと」

聞き返した小春に、こほんと咳払いして訂正を入れる沙雪。やはり、お嬢様言葉にババアの単語は似つかわしくないと察したからに違いない。智子はそう見る。そして、ふと胸の辺りが熱くなってきたような気がして、不審そうに手を当てた。そこにあるのはオーミから貰ったタリスマンだ。次の瞬間、彼女の頭に言葉が響いてきた。

『智子さん、清美さんはちゃんと助け出したからね・・・』

はっきりとオーミの声が聞こえてきて、智子は戸惑う。しかし、それ以上に熱いものが胸にこみ上げてきて、一つの言葉になった。

「馬鹿っ!」

吃驚した面々が、彼女の方を振り向くのも構わずに。

夜の月光は白々と、紅葉寮を照らしている。

若葉に連れて行かれたリビングに待っていたのは、緑茶をすすっているリンダ・オルグレンであった。いつものことだが唐突なリンダは、指2本立てて説明を始める。

「そう、危険性というのは2つ。まず一つは乗り込んだはいいが返り討ちにあって戻れなくなってしまうこと。そしてもう一つ・・・実はこちらのほうがはるかに危険度は高いんだけど・・・魔女ハドゥリヴァの魂が死んでしまう場合。そうなったら、彼女の精神で支えられている本の中の世界は崩壊し、中にいた人間はほぼ間違いなく飲み込まれてしまうわ」

そうすると、どうなるの?

不安げに尋ねるに、リンダは少し笑ってさあ、と答えた。私にもわからないと。

「ただ、捕まってしまうよりも危険なことだというのはわかるわ。なにしろなんの資料もないんだから、どうなるか分からない、もしかしたらそこで魂も終わってしまうのかもしれないし、そうでないかもしれないし。分からないということほど危ないことはないものよ。で、これからこの子を使ってダイブしてみようと思うんだけど、誰か行く人は?」

真奈美を指差して、リンダはゆっくりと周りの顔を眺めた。一同はしばし無言でいたが、やがてが口火を切る。

「行くよ、ボクは行く。だってそうしなきゃ、なにも取り戻せないじゃない。ハドゥリヴァからみんなを取り戻して、それから退治しなきゃあ」

続けて、若葉が口を開く。

「もちろんあたしは言いだしっぺだからね。行くに決まってる」

「あ、私も・・・オーミ君と清美が気になるから行きたいんだけど・・・」

少し間を空けて、最後に智子がそう名乗りを上げた。

しかし、は慌ててそれを止める。彼女における戦闘能力が皆無だとは言わないが、自分達が今から行こうとしている場に行くのは危険すぎる。

「駄目だよ、智子さんには危ないよ」

「でも・・・」

「大丈夫、心配しないで、ボク達がちゃんとみんなを連れ戻してくるから」

何度もそう諭されて、仕方なくあきらめる智子。こうして、彼女は残って具合の悪い真奈美に付き添っているということになった。

「リンダさん、佐倉ちゃんのペンダントの魔力の流れを辿れば、精神世界内の結界を突破できるかも知れないんじゃないかな」

「そう? ならそうしてみようかしら」

の提案を聞きながら、見送りに来ていた鈴蘭は萌葱の頭を撫でていた。気持ち良さそうに目を細めるピピニー。

それが終わった後彼女は、若葉に向けて軽く手を上げた。

「後は任せて、安心して行ってきていいから。ロックゴーレムも持って行きなさいよ」

「ありがとう。わかってる」

頷く若葉の手には、白光の偃月刀がしっかりと握られている。これがどう役に立つのかは分からない。だが、魔女に対して少しでも力になればいい。

あの存在を滅するための力に。

深く瞳の色を沈みこませる少女は、黙ってと真奈美の会話を眺めていた。

さん。あの、気を付けてくださいね」

「だーあいじょーぶっ! それよりも佐倉ちゃんには、女医さんになりたいっていう夢があるんでしょ! そんな人が簡単に命を捨てようとしちゃ駄目だよ! 夢があるんなら、夢が実現するように努力しなくちゃ!」

うん・・・。

消え入りそうな声で頷く真奈美。

智子は、せめてタリスマンを使って、オーミの許に皆が到着できるようにと、それを持ったまま真奈美の手をしっかりと握り締めた。

「じゃあ、行きましょうか、皆さん」

リンダのその声が、サイコダイブへの旅立ちを告げる。

オルゴールの音を辿って、行き着いた先にはよく見知った人物がいた。

赤い革張りの椅子に腰掛けて、ガラス張りみたいな視線をこちらに向けているのは、間違いなく佐倉 真奈美。

真っ白な肌と黒髪と、よく出来た美しいお人形そのままの様子で、瞬き一つせずに魔女の部屋にいる。一瞬戸惑った。

「佐倉っ・・・?・・・」

アンティークな調度品に囲まれている彼女は、心底ピスクドールだ。真っ白なドレスを着て、部屋の中の一部分としてしっくり埋もれてしまいそうで。そしてその隣に、魔女がいる。

なんだかよくはわからないが、どうもうまくない展開であるようだ。

机の上では、オルゴールのペンダントが掛けられた水晶製のしゃれこうべが乗っており、怪しい光を発している。阜は眉をひそめて、腹のあたりに力を入れた。

そうして、ハドゥリヴァを激しく問い詰める。自身で出来うる限りに気を高ぶらせて。そうしないと、喉から声を出すことすら出来なくなってしまいそうで。

「不老不死だなんてもう諦めろ。佐倉 真奈美を渡すことは出来ない。お前のわがままだけを認めることは出来ない。そんなのは道理じゃない。大体お前はどうして不老不死なんかに執着するんだ。そこまでさせているものはなんなんだ!」

しわがれた声が、しわがれた笑いを浮かべる。

古の魔女は真っ直ぐに阜を見た。もうそれだけで、体のどこかが怯え始めるのを止めることが出来ない。

「何故不老不死に固執して悪いのかね? 命には限りがある。自分の無限の才能を活かすためには無限の命が必要なんだよ。だからあたしゃこの反魂の術を生み出した。真奈美の死体となった身体に魔力を満たし、あたしの魂が入ることで復活は完成する。もう何百年もその方法で生き返ってきたよ。あんた、欲に理由なんか本当はないんだよ。食欲は生きるため、性欲は種族を保つため、物欲は寒さ暑さから身を守るため、なんていうけどそれはみんな嘘っぱちさ。それが本人にとって必要であれ必要でないのであれ、欲は欲としてそこにあって、欲の為に欲を生み出しているに過ぎないんだよ。あたしもそう、あんたもそう、結局はみんなそうなのさ」

ばちばちばちばちばちっ。

唐突に青い雷が部屋に発生した。ハドゥリヴァは突如部屋に巻き起こったそれに顔を向ける。驚いてはいない様子で。

むしろ、驚いたのは阜のほうである。いきなり三人の人影がそこに出てきたのだから。それは、、若葉、リンダの三人と、そしてロックゴーレムだった。

出てくるなり、若葉は偃月刀を翻して、その切っ先を魔女へと向ける。

「あたしはケルト人として、命は流れるものだと信じてる。魂は不滅だ! 流転しながら、引き継がれていくものだと! ハドゥリヴァ、死を恐れて、みっともなく唯一つの生にしがみついているお前は醜い!今ここで死すべきだ!」

そのまま刀を魔女の首元に向けて叩き込もうとする若葉。しかし、それは目に見えない衝撃波で遮られた。

彼女もろともその場にいた全員が、部屋の外まで弾き飛ばされる。

「ど、どうしただがね、みんな!」

常滑 子猫、カホェート、オーミ、葉月が大きな衝撃音を頼りに駆けつけてみると、そこには阜、、若葉、リンダが廊下に投げ出されるようにして倒れていた。

幸いにも、意識はしっかりしているようで、全員顔をしかめながらもすぐに起き上がってきたが。話を聞いてみると、どうやらハドゥリヴァと一戦やりあった模様だ。

「早く戻らないと、ハドゥリヴァが佐倉ちゃんになにするかわかんないし」

魔法で部屋の外まで出されてしまったことは、かなり痛い。が言ったそれを反駁するのは、カホェートだ。

「いや、危害を加えられたり、というのはないだろうけど。もともと自分の新しい体にするために、生かしておいたわけだからね」

魔女自身の好みもさることながら、彼女にぴったり合うという体はそんじょそこいらにごろごろと転がっている類のものではないだろう。

娘が死んでしまった親を探し出し、その親に魔導書を手渡し復活をさせて、それから己を経由し魔法のエネルギーを注入し続ける。魔法のエネルギーを持った相手を刈り取らせながら。

言うと早いがかなり手が込んだやり方だ。それだけの手間隙をかけたものをあっさり破棄してしまうなんてことはあり得ない。と、思いたい。

「どうも僕にも読みきれなくて困るね。何百年も生きているような相手の心理なんて実感することも難しいからね」

閉ざされた魔女への扉は、黙して語らず彼らの目の前に立ち続けている。完全にこちらを閉め出してしまったらしい。弱り果てているそこに、最後の一人がやってくる。

「お~~い。みんなここにおったんか~~」

「あ、虎鉄さん。よかった、生きてたんですね。でも、その怪我・・・」

葉月は彼を迎えて心配そうにその肩口を眺めた。

そこは大きく焼けこげて、かなり苦しそうだ。後は結構な肉弾戦だったのか、体のあちこちに打撲の後が見える。

「大丈夫ですか?」

「いやいや、心配あらへん。けどすまんな。イフリート、どっかに逃がしてしもうて・・・」

彼がその言葉を口にした途端、廊下がばっと明るくなる。何事。思う暇もなく、あたりに紅の炎が満ちた。こ、これはっ。

「・・・うわあ・・・先回り? ずっこくあらへんか?」

ものすごく嫌そうな虎鉄の目に映ったのは、閉ざされた扉の前にイフリートと、そしてグランドタートルが立ちふさがっている姿であった。

情報誌:プレイヤーキャラクター特集

柚木凛

どこまでも真っ直ぐで、心のうちに燃える熱い炎は周りを照らす光となり、時に衝突する火花ともなる。彼女の大切なものは、彼女が守りたいと願う人々。彼女が倒したいと願うのは、その人々を傷つける輩。真奈美に注がれた父親の思い、真奈美が目を背けようとしているもの、彼女は目をそらさない。

「たとえ他人から与えられた命だったとしても生きているほうがいいじゃないか!」

日記からの抜粋

2003.02.28 fri

『機動戦士ガンダムSEED』をご存じでしょうか。

知ってますか、そうですか。

それはさておき、『エテルーナ魔法学園』の第7回リアクションが到着しました。他の多くのPBMの例に漏れず、このゲームにも、リアクションの最後に【Writer's Note】としてマスターメッセージがあるのですが、第5回以降、

近況報告としては、ガンダムSを見ているってことですかねえ。絵は好きじゃないですけど話としてはなかなか面白かったり。近頃疎遠になっていた昔の友を選ぶかそれとも現在進行形の友を選ぶか。それがテーマですかねえ(違う)。

前回からの引きでガンダムSについて。全く話がまとまりそうにないので、何クールで広げた風呂敷を畳み終わることが出来るのかなあと。

と、『ガンダムSEED』のことが挙げられています。それまではどちらかというと事務的なものばかりで、正直言ってつまらなかったのですが、第5回以降はこの話題を通してマスターの“私”を垣間見ることができ、同好の士としてより身近な存在と感じることができるようになりました。まぁ、身近に感じたからと言って、どうなるものでもありませんが。

そして、今回の【Write's Note】。

最近知ったこと。ガンダムSに出てくるハロは、実は初代ガンダムにもあったということ。さすが初代のオマージュ作品と言われるだけのことはあるなあ。いやはや。時々雰囲気にリヴァイアスが混じったりエヴァが混じったりとかあるにせよ。

「いやはや」って……「実は」も何も、ハロは『Z』にも『ZZ』にも『逆襲のシャア』にも『V』にも出てきているのですが、ひょっとして富野監督の宇宙世紀ガンダムを全く見たことがないのでしょうか。この一文をもって、マスターとの距離が急激に遠ざかってしまったように感じます。

年齢的に。

2003.03.03 mon

『エテルーナ魔法学園』の物理リアクションと情報誌が到着しました。

今回の情報誌には「プレイヤーキャラクター特集」があり、1Divにつき2~3人ずつ紹介されているのですが、それに私のキャラクターが載っていました。第4回辺りまでは意図的に核心に近付かないようなアクションを掛けていたというのに、なんとも恐縮なことです。

ちなみにその紹介文を見てみますと、

どこまでも真っ直ぐで、心のうちに燃える熱い炎は周りを照らす光となり、時に衝突する火花ともなる。彼女の大切なものは、彼女が守りたいと願う人々。彼女が倒したいと願うのは、その人々を傷つける輩。(後略)

アクション内容ではなくキャラクター設定の勝利という気がしないでもありませんが、気になることがもう一つ。いや、今回のリアクションで「ハドゥリヴァからみんなを取り戻して、それから退治しなきゃあ」と言っているのを見たときから微かな違和を感じてはいたのです。

私、アクションに「××を倒したい」なんてこと、今まで一度も書いてないですよ?

キャラクターの心情を考えることを放棄したツケが、よもやこんなところで回ってくることになろうとは、海のリハクも以下略ですが……はっ! これが「生きたキャラクターというのはプレイヤーの思惑を越えて動き出してくれる」ということなのでしょうか。それに、キャラクターが新たな状況に臨み、マスターがその心理を把握して動かしてくれることをこそ、私は望んでいた筈です。

「マスターまかせ、という言葉は好きではないかな?」

「そのマスターを自分で動かすとなれば、話は別です」

つーか、動かせてないし。

2003.03.08 sat

嵩島氏に『エテルーナ魔法学園』の交流誌用マンガを見せて頂きました。

私のキャラクターが登場しているとのことで……って、おもいっきりメインを張ってますよコレ? てっきりチョイ役とばかり思っていましたので、これは嬉しい驚きです。と同時に「3か月も前に交流誌を撤退している奴のキャラクターがこんなに出張ってていいのだろうか?」と不安にもなったり。

氏には、昨年末にスキーイベントのお誘いを頂いたりもしています。このままTakeっぱなしというのも何ですので、最終リアクションが届いたら、それと一緒に先日部屋を掃除したときに机上の紙束から出てきた凛の初期設定画を送ろうかなと考えていたり。もっとも、今見返してみますと「誰だ、コイツ?」という感が否めず、

「違うッ! 凛は違うッ!!」(ダッ)

となる可能性がなきにしもあらずですが。

2003.03.09 sun

いよいよ、『エテルーナ魔法学園』の最終アクションです。

第6回辺りから「目的は定まっており、それを達成するための手段を考える」という形になっていまして、アクションの根幹を「こんなことしたら、どういう展開になるかなー?」というところに置いている私としては、正直、アクションを考えるのがあまり楽しくありません。

物語上の役割を得ることができたことが、この原因の1つだと思われます。役割を得るということは、行動がそれなりに評価されたということであり、以後の一定の活躍に繋がるものだと思いますが、それと同時に「ストーリー展開上、期待される行動」を発生させることにもなります。毎回、卓袱台返しを仕掛けたいと考える私にとって、これは大きな制約です。このゲームでも、展開次第では敵役側に付く可能性もあったのですが、第7回にてキャラクターがそれを否定してしまっていたのがなんとも痛く感じられます。

と言いつつ、その一方で、アクションに書いていない発言をキャラクターがしているのを見るのは、「ぷはーっ、この一文のためにゲームしてるーっ!」と非常に楽しかったりしますし、「アクションに書いたことの結果しか書かないマスター」と「マスター裁量でキャラクターを動かしまくるマスター」とを比べたなら、私は選択の余地無く後者を選びますので、こうしたことに不満を持つこと自体、矛盾しているとは思うのですが、今回のアクションでもそうなりましたように、大小の違いはあれ、人とは元来矛盾した考えを併せ持つ存在なのでしょう。

と、さりげなく一般化しつつも。

アクションと真逆の発言をするのだけは断固として拒否させて頂く。

第08回 魂『わたしのした事はなにか』&盗個別『夢を実現するために』

アクション

アクションno.

魂-1「魔女を倒しに行く」

目的

佐倉さんの魂を現実世界に連れ戻す。

動機

「佐倉ちゃんを助ける」と自分で決めたのだから。

「佐倉ちゃん達がこれからどうするかを決めるのは、ボク達じゃなくて、佐倉ちゃん達自身だ。でも、死んじゃったら、それすらもできないからね」

行動詳細

ハドゥリヴァが佐倉さんの魂の半分を捕らえています。その行為に理由があるとするならば、自らでは魔力の回復を行えないようにし、ハドゥリヴァに合った魔力で身体を満たすためなのではないかと思われます。佐倉さんは、魔力の流れ・精神のある世界が、他の犠牲者と丁度逆の状態になっています。だとしますと、囚われた魂を元に戻せば、ある程度までは他の人達と同様に他者から魔力の供給を受けなくても大丈夫になるかもしれません。常に魂を精神世界と現実世界とに分けておく必要があるからこそ、前回佐倉さんを身体ごと取り込まなかったのではないか、とも考えられます。

それならば、召喚獣を倒し、ハドゥリヴァから真奈美さんの魂を取り返すまでです。

サブアクション

福原一馬(M6721)さんから、インターハイについての招待を受けましたので、可能でしたら、応援に行きたいと思います。

リアクション

魂『わたしのした事はなにか』(駄馬梅之助・羽鳥由布マスター)

「わかった。じゃあリンダ君、オーミ君、先に行っておいてくれ」

カホェートの言葉に頷き、ゴーレムと被害者たちを連れてその場から離れていく二人。を眺めて、常滑 子猫(とこなめ ねねこ)も腹をくくった。

魔女は私を苦しめ、友達を苦しめた。魔女が生きたいというのが根源的エゴなら、それを打倒したいと思う私の気持ちだってエゴ。だから、キッチリカッチリやんなきゃ失礼ってもの。子猫は前に控えるグランドタートルとイフリートを前にして、皆の守りを固めることを即断した。

「みんな、とりあえず陽甲呪だがねっ!」

その場にいる全員に見えない鎧を着せた彼女は、次に雷縛呪でイフリートを攻撃した。それが戦闘の幕開けである。

「カホェート・クランヴェーヌの名において命ずる!出でよ地を這う巨亀ドゥドゥーム!」

まずカホェートが召喚によって目の前にいるグランドタートルと同じ物を呼び出した。体の大きさでは向こうに劣るものの、頑丈そうな外見は全く同じものだ。呼び出された巨大亀は、鈍重な姿に似合わないスピードでいきなり向こうのものにぶつかった。がつんと激しく甲羅がぶつかり合う音がして、火花が散る。

ふいをつかれた形だったのだろう、魔女側が若干押され気味である。その隙をついて、柚木(ゆうき りん)は烈身を思い切りグランドタートルにぶち当てた。

「このおーっ!」

亀の甲羅が宙に浮き、そして気持ちよくひっくり返るまでに要した時間は数秒だったろう。

ずしいいんん・・・ と地響きを立てて、天井からぱらぱら土ぼこりが落ちてくる。何が起きたか一瞬分からなかったのか、大きな牙を生やした首がきょとんとしてあちこち見回す。そうしてから、ばたばた上向きになった足をもたつかせて、彼は必至に起き上がろうと試みた。だが何分にも狭い空間でのことなかなかうまくいかない。なんとなくほほえましい光景ではある。その隙に霊癒を使って回復した姜 虎鉄(じゃん ふーちぇ)がその亀に向かっていく。

「ふふん、文字通り手も足も出えへんようやな・・・ ほしたら、おとなしく戻りーな!」

戦神術によって攻撃力が三倍に増えた虎鉄は、思う様裏返しの亀に拳を叩き込んだ。がつんがつんと石をたたくような音があたりに響く。堪らなくなって頭と手足を引っ込める亀。虎鉄はしかし、闘気を纏った貫手で腹の甲羅の繋ぎ目を狙う。

「でぇりゃあああああああああああああ! 往生せいやあああっ!」

「グギエエエエエエエ!」

頼りの甲羅を割られたグランドタートルは、成す術も無いまま、強制送還と相成った。

同時に、カホェートも自分が呼び出した分を送還しておく。巨体をそのまま置いていたら邪魔になるだけなので。

「戻れクー、ケンレン! 行けー! ミスティ、ユキヒメ!」

翻ってイフリートに向け戦闘を行っているのは、三崎 葉月(みさき はづき)である。彼女はミストドラゴンとスノーレディーを呼び出し、炎の魔人に向かわせることとした。魔法の霧を周りの防御とし、真正面のイフリートへ氷の息とミストドラゴンの水流弾をぶつけまくる。もちろんパートナーであるフィッシャーも一緒になって水流弾を吐き出し続けた。

しかしイフリートは巧みに身をかわし、なかなかうまく当てることができない。焦りを感じていたところに一仕事負えた虎鉄が赤坂 阜(あかさか つかさ)の治療を受けて参戦してきた。

「頑張れよ、虎鉄」

「わかってんがな阜ハン。で、あの動きを止めたらええんやな葉月ハン!」

「うん、そしたら絶対に当ててみせるからっ!」

「よっしゃ」

拳を手のひらに打ち当てて、格闘少年は勇ましくイフリートに向かって行った。先ほどとは違い、この魔人も大分その力をそぎ取られているようだ。確かに葉月の攻撃は効いている。だが決定打とはなっていない。

やはり一瞬でいいから動きを殺さなくてはなるまい。こういうときに一番いい方法は。

「おい、デカブツ!」

その呼びかけにイフリートが虎鉄のほうを振り向く。その鼻先に間髪いれず彼は思い切り手を打ち合わせた。そういう行動に出るときは思っていなかったに違いないイフリートはほんの一瞬、いやそれよりまだ短いかもしれないが動きを止める。

そこに、フィッシャーとミスティーの水流弾が打ち込まれた。虎鉄のすぐ頭上を通り過ぎて。彼の目の前で、イフリートは赤い光を放ちながら元居た世界に戻されていく。

「グッジョブやな、葉月ハン!」

親指を突き出して、彼は朗らかに少女に向けて微笑んだ。少女もまたそれに答えて会心の笑みを浮かべる。障害物がすべていなくなったのを見計らって、カホェートはに指示を飛ばした。

君! 扉を蹴破ってくれ!」

「はいよーっ!」

「あ、私も手伝うよっ」

阜が天弓呪を扉に向けて連打し、そこに派手にが蹴りを入れる。破られたそこから、若葉(わかば)・グラスケットが早速入り込もうとする。が、阜に袖を引きつかまれて止められた。

「何するのっ」

不本意そうな声で、鋭く若葉が言った。その目の前で手をふる阜。

「いや、ちょっとその刀に火刃呪かけとくからさ。備えは多い方がいいでしょ?」

ああそういうこと。不審そうな目を和らげて、若葉は阜に刀を差し渡した。早くしてねと言い置いて。と、そこに妙にか細い声が割って入る。阜がふっと視線を落とすとそこにはなにやらぼろぼろになったゲロンパがいた。

「ゲゲゲゲゲロロ・・・ ゲロー!」

「おお、生きてたんだゲロンパ!」

「ゲー」

「なんだ、泣かなくてもいいだろ。全くだらしないんだから」

よほど今まで心細かったのか滝のように涙を流すゲロンパをなだめる阜。だがそう言っている彼女自身もまたこの上ないほどにほっとしてはいたのである。

魔女の部屋で、は彼女を睨みつけた。生気のない真奈美を横にしている彼女を。とにかく、佐倉ちゃんを早く助けてあげないと。そのためにはまず魔女から引き離さなくてはいけない。隙をついて。

今の目的は倒すことではない。この魔女にはいい加減腹が立ちっぱなしではあるけれど。懸念もあるのだ。もしこの魔女を殺してしまったらこの世界もそのまま死んでしまうのではないかという懸念が。

「お、お前。骨から体を作れるっていうんなら、髪とかからクローンでもなんでも作り出せばいいじゃないか! それに永遠にあり続けたいならこの世界でずっと精神だけで生きていたらいいだろう!」

憤懣やるかたないの言葉に、魔女は唇を曲げた。どこかうれしそうに。

「クローンに魂は宿らないよ。作ったって意味がないのさ」

「ほう。それは初耳ですね。しかし、あなたほどの魔女ならばそんな手間をかけなくても真奈美の体を乗っ取れるのではないのですか? 僕はあなたのやった事の善悪は別として、この精神世界の構築に関しては賞賛を述べたいと思っているのです」

カホェートは慎重に、丁寧に言葉を選んで話をした。今までの様子から考えてこの魔女は自己顕示欲が強い性質であると思われたからだ。もっとも賞賛のところは本音である。これだけの力があるのならもっと別なことも出来ただろうにと、そこのあたりが残念と言えば残念だ。

魔女の笑いがさらに深くなった。目元は半分ほどフードに隠れているが、怒ってはいないらしい。いけるだろうか。

「他人の身体に魂を固定化するのにはそれなりの準備が必要なんでね・・・」

彼がそう思った瞬間、いきなり魔女が黄色い歯をむき出しにし台詞を途切れさせた。同時に彼女に向け後から火の弾が飛んで来る。火界呪だ。

誰が? とっさに振り向いたカホェートが見たのは、子猫の姿であった。

「なんだね、手癖の悪い野良猫だ」

じゅっ。

呪文を唱えたわけでもないのに火界呪は消え去った。まずい、この後続いて天弓呪であの髑髏を狙おうとしていたのに。子猫の血の気がすっと下がる。と、同時に彼女は体に強い力が叩きつけられるのを感じた。

「きゃあっ!」

どしんっ。

衝撃を感じて、子猫は眼を瞑った。しかし、そんなに強い痛みなどは来なかった。おかしいなと思い恐る恐る瞳を開ける。同時にカホェートに抱きとめられそのまま弾き飛ばされたのだということが理解できた。壁際に背をつけて座り込んでいる彼は、かなり苦しそうに眉をひそめていた。

「か、カホェートクンっ! ごめん、ごめんだがねっ!」

「いや、いいよ。たいしたことないから」

魔女は手加減している。そのことが分かった上でのカホェートの発言だったのだが、子猫はあんまり信用していなかったようで、慌てて自分の腕の中から這い出しこちらをかばうように立ち上がり両手を広げた。魔女に対して。

「子猫君、危ない!」

「危なくなんかないだがねっ。危ないのはむしろカホェートクンだがねっ! は、ハドゥリヴァ、なんてことするだがねっ。人の話もよー聞かんとっ」

子猫の言い分には色々矛盾もありそうだが、まあ、こんなときに冷静に喋りなさいと言っても不可能か。思う阜は二人のやりとりを隠れ蓑にし自分に隠形呪を掛けて、こっそりハドゥリヴァに近付こうとしていた。

うまくいけば、そのまま真奈美を伸髪術で巻き取ってしまおうと思ったのだ。が、しかし。髪を少し伸ばした段階でいきなりハドゥリヴァが曲がった爪を正確に差し向けてきた。隠身の術は脆くも破られ、彼女の姿は魔女の真正面まで来た段階で明らかになる。

「うえっ!?」

「懲りない奴らだね。私には通じないよ」

そのまま子猫たちと同じように衝撃波を浴びて、壁に叩きつけられる阜。思わず息を詰まらせて彼女は激しくむせた。しかし、そこで信じられないことというか一つの奇跡というかそんなことが起こる。

今まであんまり役に立っていなかったシノビガエルのゲロンパが一瞬の隙をつき、鎖鎌を使って勇敢にも水晶髑髏を奪い取ったのだ。ただ、急いでいたあまり自分がそれを頭から被ってしまったあたりはおまぬけだが。

「あ、この蛙、なにすんだい!」

ハドゥリヴァが声を荒げて、髑髏を被ったまま部屋中めくらめっぽう駆け回るゲロンパに向かい雷を落とす。その油断を見逃すカホェートではなかった。片手を上げて声を張り上げる。

「カホェート・クランヴェーヌの名において命ずる! 出でよ影に住まう闇豹ジャンマロウ!」

叫びに合わせても最速の縮地で真奈美を奪いにかかる。ゲロンパが躓き、水晶髑髏が頭からすっぽ抜けて宙に舞う。子猫が使いそびれていた天弓呪をそれに向けて放ち ―― 瞬きのうちに髑髏が粉々に砕け散った。

「なにっ・・・」

時を同じくしてシャドウパンサーの金縛りが魔女を捉え彼女の動きが一瞬止まった。

「あんたが唯一知らない『死』っていうものを教えてあげるよ!」

若葉は大きく偃月刀を振りかぶり、その首元に叩きつけた。ハドゥリヴァの首が胴体から離れ、血が噴水のように吹き上がり天井を汚す。

そのなまなましさに子猫は顔を強張らせて喉の奥で悲鳴を上げた。すぐにカホェートにその目を塞がれたが。そのとめどなく流れ出す血と同じように砕かれた髑髏からも膨大な量の魔力が流出し始める。

ガタガタ・・・ ぴしぴし・・・。

「な、なんだがねっ、これはっ」

「城が・・・ 崩れていくよっ!」

真奈美の魂を抱きかかえたは、じっとりと汗をかいて足裏から伝わってくる振動を感じていた。音も揺れもどんどん大きくなっていく。

その老いた体が崩れ落ちていくのを、若葉はしっかりと見て取っていた。ただひたすらに肉体が老いていく。今まで押しとどめていた者が堰を切って溢れ始めた。かさかさになった皮膚から粉が噴出して、どろりとはらわたが溶ける。生首の瞳が腐りはて落ち窪んだ眼窩になったかと思うと、唇もひび割れ黄色い歯がむき出しになっていく。

「・・・し・・・死んだんか? ばあさん・・・」

「・・・みたいだね。時の流れが一気に押し寄せてきたんだ、多分」

カホェートは額の汗を拭って虎鉄にそう答えた。若葉は手にした刀を下ろしてきっぱりと言い切る。

「あるべきように、なるべきようになっただけよ。なんにもおかしいことはない」

「んなことより城が・・・ 崩れる、崩れるでぇーっ!」

虎鉄が叫び声を上げる。彼の言うとおり主ハドゥリヴァのいなくなった城は、まるで砂ででも出来ているかのようにもろもろと崩れ出した。華麗な内装も、がっしりした石組みの壁面も、それから床も、すべてが崩壊し始める。

とりあえず足をくじいてしまったらしい葉月を背中にして、彼は一目散に階段を駆け下り始めた。それに、他の人間達も続く。頭の上から小石と砂がばらばらと散ってかぶさってくる。足をかける端から石段がぼこぼこ崩れていくので走りにくいといったらありはしない。うっかり転びでもしたらそのまま生き埋めにされてしまいそうだ。それほどに、崩落は急でありまた激しい。

ずらりと首をつらねたガーゴイルの奇怪な象が、頭から崩れて行って、さらにすさまじいことになったがそんなものを見ている余裕などありはしなかった。

「うわとととっ! 葉月ハン、大丈夫かいなっ!」

「うん、私は平気。でも、虎鉄さん走りにくくない?」

前につんのめりそうになった虎鉄が、三段ほどすっ飛ばしてなんとか体勢を立て直す。それに対して葉月は足の痛みを堪え彼を気遣った。

「なあに、葉月ハンはちっちゃいし軽いからな、そんなにたいしたことあらへんわっ。気にせえへんで、しっかり背中に捕まっときや!」

なんだか少しうらやましいかも知れない。自分の足で走って逃げている子猫は、前を行くカホェートの背中をちらりと眺めたりしていた。あんな風に背中におんぶして逃げてくれたら、まさしく絵に書いたような恋人同士みたいだし。

そんな余計なことをあれこれ考えていたおかげで、彼女は最後の一段を踏み外してしたたかに尻餅をついてしまう。

「もうっ、なにやってんの! ぼーっとしないでよっ!」

若葉はそこを追い抜きながら、きつい言葉を浴びせかける。うう。これが理想と現実とは必ずしもという奴なのか。ばさばさ落ちてくる土を払いのけながら子猫は思った。即座に立ち上がりまた走り出して。か、カホェートクンぐらい待ってくれたっていいのにっ。もうもうもう女心の分からない人だがねっ。それでも好きだけどっ。

「ああーっ、みんな、待ってだがねーっ」

「子猫がちょっと遅れてるみたいだけど、止まらなくていいの、カホェート」

「大丈夫さ。彼女はちゃんと追いついてこられるって、僕には分かってるから。それよりもこれは出口まで城が持つかな」

ゲロンパを服に張り付かせている阜に、カホェートはそう答え額に少し皺を寄せた。ハドゥリヴァがいなくなってしまったということは、この城が存続している意味がなくなったということだ。この城の存在意味がなくなったということは、この世界の存在意味もまたなくなってしまうということ。

この暗い森は間違いなく彼女自身であったのだろうから。自分達は果たしてもとの世界に戻れるのか。不安が彼の胸を過ぎる。

「佐倉ちゃん、しっかりしてよっ、ちゃんと向こうに戻るんだからねっ」

真奈美を負ぶってもまた必至で走る。その横に秋山 陵一(あきやま りょういち)が並んでいた。そういえばこの人今回何をしたんだっけ。ふと疑問が過ぎるが、そんなことに関わっている思考的暇もなさそうだ。

「五郎丸、急いでいそいで。生き埋めになっちゃうぞっ」

「ペペペペペペペペペ!」

短い足ではあるが、クラウンペンギンは速度を上げて主人のあとを追う。いつのまにか心もとない足だけでなく翼も使って四足歩行をしていたりしたが、誰も突っ込みを入れる余裕などなかった。ひたすらに走る。

ごろろろろろろろ・・・。

深く重い音が足元から響いてくる。

「うわ、なんや、地鳴りかいなっ!」

台詞に引き続き窓から外を見て、虎鉄は絶句する。あれだけ広かった森がこれまた崩れていっているのだ。空はただ曇り空であることをやめて、赤黒い妙な色に染まっている。そこらに、落雷が何本にも分かれて落ちていた。

ばん、ばん。どん。

城の屋根にも落ちて向こう側にあった塔が跡形もなく一気に崩れ落ちた。その残骸が地面に激突してまた激しく地面が揺れる。

「うわっ。あれがこっちまで来たらえらいこっちゃやがなっ!ほんま、世界の終わりみたいな光景やでっ!」

崩れていく。城ばかりでなくこの世界自体が引き裂かれていく。そのことは肌でしっかりと感じられる。森や地面、それに空までもひびが入りもろくも崩れ去っていく。滅びていく世界に長居は無用だ。空から差し込んでいる一条の光を目指して、めいめいは空へと浮き上がった。

カホェートがまず始めに呼び出したヨルムンガンドには、子猫と陵一と真奈美を負ぶったが同席する。阜と虎鉄は飛雲術を使い、若葉とオーミはほうきに乗り、葉月はパートナーであるフィッシャーに乗っている。ちなみにリンダは阜に同席、被害者の仁美と理緒名は虎鉄が雲に乗せており、清美はオーミが箒の後に積んでいる。ともあれ全員ちゃんと脱出できた形だ。

「急げ雲ーっ。はよせんと穴が塞がってまうでーっ!」

ううむ、やはり二人はちょいと重量オーバーやったんやろか。自分が乗っている雲に発破をかけながら虎鉄は思わないでない。無理せずに一人にして後はカホェートに頼んだ方が良かったかも。あのヨルムンガンドにはまだまだ乗れそうやし。にしてもえらい張り切りようやなオーミハン。

「待っててね、智子さーんっ!」

口で言うてるし。ええなぁほんまに。あ、そんなこと言うてる間に光が弱くなっていくような。・・・と、誰や。なんや雲の中から出てきたで。

「おーい、おーい、みんな無事かーっ! 迎えに来たぞーっ!」

「みなさんご無事ですかーっ?」

その声に、はうれしくなった。向こうとこっちは間違いなく繋がっているのだと確信できてほっとしたからかもしれない。とにかく来てくれたんだ。

「あ、源太だよ、源太! 佐倉ちゃん、やっぱりあれはちゃんと向こうに出る穴だったんだよ!」

その言葉にはあまり反応もしていないような真奈美であったが、しかしは構わず呼びかけ続けた。そうすることが彼女の正気を取り戻させる唯一の手立てであるかのように。若葉はそれを一瞥すると箒の速度を上げた。

どうも、自分でも信じ切れなかったのだ。あの魔女は本当に死んだのだろうかというあたりが。確かに自分は首を飛ばしたしその流れ出る血も見た。しかしあれが完全に滅したにしては世界の瓦解が緩やか過ぎるような気がしてならないのだ。振り向くと城はもう完全に崩壊してしまっていてただの瓦礫と化していた。

魔女はあれとともに滅したのだろうか。それとも。

「いやあー、ご無事で何よりだ。みんな。どうも俺達が出る幕なかったみてえだな」

「そうだがね。源太クンたちちょっと遅すぎだがね。もう、私たちがどれだけ苦労したことか・・・」

どこか得意そうな色も混ぜて、スフィンクスからヨルムンガンドに飛び移ってきた源太たちに話す子猫。その言葉が続かなくなったのは、悲鳴じみた見た若葉の叫びのせいであった。

「ちょっと、みんな、後、うしろーっ!」

ぐおん。

暴風が迫ってくる。お団子にした髪の毛をかき乱されそうになりながら振り向いた阜が見たのは、ぐんぐん後から迫ってくるバハムートであった。いやそれだけならばまだましだというもの。そのバハムートにハドゥリヴァの生首がずるずるした臓物をまとって張り付いている。一同は言葉を失った。リンダのみ、なにやら落ち着いた風情である。

「まあ、そんなに簡単にやられないか。腐ってもラスボスだもんね」

「ぎゃああああ! なんだがねーっ! 私ああいうスプラッタなのは苦手なんだがやーっ! いやいやーっ、こっちに来るなーっ!」

なんにしてもその視覚的効果に一番やられているのは子猫であるようだ。葉月は怯えるスキッパーを懸命になだめながらそう感じた。まあ、自分も見ていてあまり気持ちいいものではないが。

「だあ、もうしつこぉい! 大人しく死んでろってばっ!」

がそう言っている間にも、ぐんぐんハドゥリヴァの首は迫ってくる。ヨルムンガンドの上でカホェートは舌打ちをし源太と視線を交し合った。こういう場合にすることは一つ。二人で協力して例の技を出すことだ。

「カホェート、頼むぜ! 戻れスフィンクス! 出てこいシームルグ!」

「分かった」

言葉を交わす時間も惜しいように、二人は見事な連係プレーでおのおののなすべきことを果たす。再びゴールデンラビットのホメェルの力を借りたカホェートは、シャドウパンサーのジャンマロウを呼び出す。そして呼び出したジャンマロウを、やはり源太の呼び出したシームルグに乗せると、ありったけの呪符を投げ渡した。シャドウパンサーとシームルグの二体は、ハドゥリヴァを乗せたバハムートへと向かっていく。

「「光と闇の螺旋!」」

源太とカホェートが声を揃えて叫ぶ。

魔女の首はぐるりと目玉を回し、口から赤い光を放つ。ジャンマロウはそれを護鬼符で防ぎ、剛力符で強化した腕力を伴い、拳とともに魔女の顔に紫電符の雷を叩き付けた。

ばじゅうううっ。

肉がこげるいやな音とともに首は悲鳴を上げて、バハムートの上から弾き飛ばされ落ちていった。

「「やったぁ!」」

喜ぶ二人。

「よぅし! 心配いらねーっ。とにかく、魔女がまた出てこないうちに早く帰ろうぜっ! ったく、しつこい年寄りは嫌われんだぞっ!」

結界を通る間際、首が落ちていった方向に向け思い切り毒づく源太。それもかき消されるほどに、精神世界の崩落音は凄まじいものであった。

「ん・・・あれ?」

は目を開いて、そこに見慣れた電灯がぶらさがっていることに違和感を感じた。頭の芯がどこかぼやけているようで、はっきりと認識できない。ここはどこだったろうか。無意識の上に体を起こして、それから夕日が顔に当たるのを感じる。そうしてからようやっと思考がはっきりと動き始めた。

そうだ、ここは紅葉寮だったっけ。魔女を倒して、戻ってきたんだったっけ。真奈美ちゃんは・・・いない。あのもう一つの彼女の魂は、無事に彼女のもとにたどり着けただろうか。早く確かめないと。彼女が眩しさに目を細め起き上がったところに、声がかけられる。

「起きたの?」

「あ、若葉ちゃんも無事に戻ってきていたんだね。よかった」

「まあね・・・いまいちぱっとしない気分だけど・・・」

窓の外はもう静かな夕暮れ。向こうに居た時間も相当長かったようだが、こちらにしてみれば昼から夕暮れまでの間の出来事だったのか。少し笑って薄紫の瞳をした少女は軽く伸びをした。

しかしこれで終わりではない。後もう一つ仕事があるのだ。鈴蘭はうまくやっていてくれただろうか。そんなふうに外の景色を眺め続けている若葉をよそに、は腕をぐるぐる回し体に異常がないことを確かめてから、早速その部屋を出ることにした。

「じゃ、若葉ちゃん、ボクは先に失礼するから」

ばたり。扉が閉まる音を耳にしてから、若葉は部屋の片隅にゆるり首をめぐらせた。そこにいたのは、リンダである。

「何か?」

「いいえ。別に。ただ、彼女にはもう会えないんじゃないかなと思ってね。それだけよ」

くすりと片頬をゆがめると、それきり言葉は途絶える。

かたん。かたん。

風が窓をゆする音だけが部屋に満ちていた。

リンダはどこまで知っているのだろう。なんとなく若葉は考える。しかしまあ、どちらでもいい。もう事態は確定してしまっているのだから。

魔法環境庁から来たという二人の職員は、手短に一同に自分達が訪れたわけを説明した。

「この学園の教師が禁呪を使ったという報告がありましたのでね。調査に来たのですが・・・庄野というのはあなたですな?」

「はい・・・私です」

「・・・あなたには聞きたいことが山ほどある。我々とご同行願えますかな?」

慇懃ではあれど、有無を言わせないその口調に真奈美が弱弱しく反論をする。

「あの、お父さんはどうなるのですか・・・?」

中年のほうの職員は、その声をかけてきた娘の顔をちらりと眺めて、庄野にまた向き直る。

「この子がその実験体ですかな?」

「じ、実験体てそんな言い方・・・」

反論しようとする虎鉄は、何故か鈴蘭に腕で静止された。職員は彼に構わず淡々と庄野に対してだけ話を続ける。

「では、彼女にも来てもらわなくてはなりませんな。色々と調査したいこともありますし。君、魔導書はどこにあるのかね?」

なんで鈴蘭さんに聞いているんだろう。事態がよく飲み込めないオーミは智子を後に下がらせつつも怪訝な表情を示す。

鈴蘭はあくまで無表情に肩をすくめて、肩越しに親指で結界を示した。そこには魔女の封印によって既に魔力を無くし、炎を上げて燃えている魔導書の姿があった。紅蓮の炎の中に、今まさに永遠の蛇ウロボヌスが焼き尽くされていく。

職員二人はなにやら落胆したような表情になったが、やがてすぐに気を取り直し教師と真奈美を乗ってきた車まで連れて行く。何も言うことが出来ずにただ見送るしか出来ない学生達。

その中でカホェートは密かに疑わしく思っていた。皆が魔女に気を取られている間、あの本をひそかに燃やしたのが鈴蘭なのではないのかと。今となっては自分にもわかりはしないのだが。

車の扉がばたりと閉まり、ブロロロロ・・・と音を響かせて遠ざかっていく。神社の境内から見送る彼らの間には交わす言葉もなかった。そこに、と子猫が息を弾ませて階段を駆け上ってくる。

「あ、みんな、ここにいたんだがね。カホェート君も・・・て、どうしただがね? 暗いだがや」

「いや・・・あのさ」

言葉を濁す阜。

「ねえ、佐倉ちゃんは? ちゃんと戻ってきたんだよね?」

この二人にどう説明しようか。さし当たっての彼女の悩みはそれであった。

影は長く長く地面に伸びていく。夜の帳が近づいていることを示すように。

初めにここに訪れたときと全く同じように、佐倉 真奈美はボストンバッグ一つを持ってまた旅立って行く。紅葉寮の皆は、彼女を見送るために駅までやってきていた。

は寂しさと不安とがない交ぜになりながらも、精一杯に彼女を励ます。

「あのさ、佐倉ちゃん。落ち着いたらちゃんと手紙頂戴。なにか困ったことがあったらいつでも言ってきていいからね」

「うん」

「ボク、死んだらどうなるのかなってずっと気にはなってたんだ。でも、死んだら、今いる人たちと同じ時間が過ごせなくなっちゃうよね。向こうにはお父さんとお母さんがいるかもしれないけど、でも、でもね、ちゃんと生きてから行かないと向こうにいる人たちに、お父さんとお母さんに胸を張って会えないような気持ちがするんだよ。だから佐倉ちゃん、しっかり生きよう」

あんまり上手くない言葉だが、それでも向こうには通じたらしい。少し寂しげに微笑んだ彼女の表情に一層胸が詰まるは、目頭が熱くなってきそうなのを必至に抑えた。

ようやっと親しくなれたと思ったのに、彼女がもういなくなってしまうなんて。

「きゅきゅきゅきゅ。きゅう~~~」

フィッシャーーがぴちぴち尻尾をふって悲しげに鳴くのを、葉月は頭を撫でて押さえる。

自分もやはり寂しい。一人、親しんでいた人が居なくなってしまうのは。一人一人にお別れの挨拶をしていた真奈美が、こちらにも言葉をかけてくる。

「それじゃあ、葉月ちゃんもお元気で・・・」

「うん。元気でね。私はエテルナ因子の研究を続けていこうと思ってるの。いつかその研究結果を見せてあげるね」

ホームページも作っているから、もしよかったら見てみてね。そんな言葉も付け加えた少女。グレムリンの摩利は意外と涙もろいのか、ちーんと大きなハンカチで涙をふき鼻をかんでいた。彼女の主もまた同様に涙を浮かべている。

「瀬津さんにも、いろいろお世話になりました。本当に有難う」

「ううん。ごめんね。真奈美ちゃんがここにいられるように学園に直談判してみたんだけど、何の役にも立てなくて・・・」

「いいの。その気持ちだけですごくうれしかったから」

ジリリリリリリリリ。

別れを惜しむ彼女らの気持ちを振り切らせるかのように、発射のベルが鳴り響く。真奈美は電車に乗り込む前に帽子のつばを押し上げて、それから・・・みんなに笑いかけた。

それは今まで見たどの笑顔よりも明るく、晴れ晴れとした本当の笑顔だった。

「じゃあ、みんな有難う。本当に、本当に有難う――」

盗個別『夢を実現するために』(鉢掛宵マスター)

晴れ渡る空の下、大勢の選手が柔軟体操などを行っている。ここは国立競技場、今日は魔法陸上のインターハイ当日である。 選手がトラックへと入ってくる。これから男子3000m走の決勝が始まるのだ。

1コースから選手の名前が次々と呼ばれていく。そして

「6コース エテルーナ魔法学園 福原 一馬(ふくはら かずま)選手」

アナウンスに合わせ、一馬がコースに入ってくる。

「一馬さ! がんばるだっぺ~」

「そうだよ、一馬君! 負けたら承知しないんだからね!」

「か、一馬くん、が・・頑張って~!!」

一馬の応援にきていた3人の女性鈴木 絵里香(すずき えりか)、柚木(ゆうき りん)、川宮(かわみや) ぴあのがそれぞれ声援を送る。

その時、声の方を一馬が一瞬見上げた。

一馬の視線にぴあのは試合前のことを思い出していた。

「予選二位通過なんてすごいっぺ、一馬さ」

「ほんとほんと。同じ移動術専攻のボクから見ても一馬君の実力は一歩ぬきんでてたね」

絵里香とはそれぞれくちぐちに一馬に対してはしゃいだように声を掛けたが、その中でただ一人、ぴあのだけは一馬の緊張に気付いていた。

「どうしたの?」

「スタートの・・・イメージが・・・浮かばないんだ」

ぴあのの声に一馬はそう答えた。よくみると彼の足は震えている。

「大丈夫だよ、一馬くんなら、勝てるって」

「予選は…それでも…なんとかなった。でも…決勝は…さすがに…」

ぴあのがなんとか励まそうとするが、一馬の声は暗い。

「仕方ないだべ、んだら、かったらおらがホッペにキスしてやるべ。勝利の女神のキスだべよ」

絵里香がまるで名案を思いついたかのように提案するが

「お前にされてもな・・・」

と、一馬はため息をついた。すると、失礼なやつだべと小さく呟いて頬を膨らます絵里香を押しのけ、が新たな提案をする。

「じゃあ、一位になったら、ぴあのちゃんが一馬君のホッペにキスするっていうのなら、どう?」

「ち、ちょっと、人を勝手に商品に・・・」

その提案にあわてたのはぴあのである。だが、は逆にぴあのの目を真剣に見詰めて

「なによ、ぴあのは一馬君に勝って欲しくないの?」

「それは勝って欲しいけど・・・」

その言葉と瞳に気圧されるようにぴあのが呟くと、

「なら、決まり! じゃ、頑張ってね、一馬君」

は決まったとばかりに声をあげると一馬の背中を叩いた。

「勝手にしろ・・・」

一馬はもう1度ため息をつくとトラックへと向かったのだ。

「あっちゃあ、ぜんぜん、効果ないみたいね」

一馬の変わらぬ態度には手の平で額を叩きながら呟いた。

「ううん、そんなことないんじゃないかな。一馬くん、すごく気合が入ってるみたい」

真剣に一馬の様子をみていたぴあのはそう呟いた

「やっぱり恋の力のおかげだっぺな」

「もう、からかわないでよぉ、絵里香ちゃん」

絵里香にからかわれ、ぴあのが頬を赤く染めた。

3人がそんな感じでじゃれているうちにレースがスタートした。

選手達が一斉に剛脚の呪文を使用し、走りはじめる。剛脚の到達速度、到達時間などは学生達であればみな似たりよったりといってもいい。だから、勝負は剛脚の速度が上がるまでにどれだけ自らの脚力で差を広げるか、どの地点で剛脚を縮地に切り替え、スパートをかけるかなどにかかってくる。

一馬のスパートは素早かった。予選一位の選手よりも格段にである。予選でははじめての会場のため、タイミングを合わせることができず、スタートをミスしていた。一馬はこの決勝でも同じミスをするのではと不安があったのだが、思い切り良くスタートをすることが出来た。そしてそのままぐんぐんスピードに乗っていく。

(いける、いい調子だ・・・これなら・・・)

一馬はぴあのへと視線をむけ、軽く親指を立てた。ぴあのも同じように合図を返し、微笑んだ。

(もし、この決勝で一位を取ったら・・・)

一馬の視線が知らずにぴあのの唇へと吸い寄せられる。

「一馬、よそ見をするな!!」

その時、クラブの先輩からの檄が飛んだ。と、同時に彼の横を一陣の風が横切った。ほんの少し、意識をよそにやったせいで剛脚の速度がわずかながら緩んだのだ。一馬はあわてて意識を集中させ、相手を追うが、距離がほとんど縮まらない。

「くそっ! こうなったら、最後の直線で・・・賭けに出るしか」

一馬は覚悟を決めると、最後の直線に入った途端に剛脚から縮地へと術を切り替えた。

「だめ、一馬君、焦りすぎよ、術の切り替えが早いわ!」

「それってどういうこと?」

の言葉にぴあのが驚いて尋ねた。

「今、術を切り替えたんじゃ、ゴール直前で失速するはずよ。そして抜かれるわ。最悪の場合は全員にぬかれちゃう」

「一馬くん!」

の言葉にぴあのは祈るように一馬を見つめ続ける。

「そろそろだよ・・・、一馬君が失速する」

はそういって一馬から視線を外した。まるでその姿を見たくないとでもいうように。

「ぜんぜん、失速しないべよ、一馬さ」

「うそ、そんなこと・・・本当だ、どうして?」

絵里香の言葉にが視線を戻すと、彼女の言葉通り、一馬はそのままのスピードを今だに保ちつづけていた。

(くっ、心臓が悲鳴を上げてる・・・術を制御・・・しきれない・・・いや・・・あきらめるな・・・全力を尽くすって決めたんだ・・・まだ、まだ、オレはいける・・・)

一馬はともすれば立ちきられそうになる意識を必死に押し止め、限界まで術を行使しつづける。だが

(もう・・・・・・だ・・・め・・・だ・・・)

ゴールまで後数メートルというところで一馬の意識は立ち消えた。

次に一馬が目を覚ますと目の前は真っ白だった。

「うわっ・・・」

あわてて身体のバネをきかせ跳ね起きると、その白いものが顔から零れ落ちた。それは濡れタオルであった。

「あっ、起きたの? 一馬くん」

その声は跳ね起きた彼のすぐよこから聞こえた。

「ぴ、ぴあの? オレは・・・一体」

「お姫様の膝枕は気持ちよかった? 大会新記録保持者さん」

ぴあのに尋ねる一馬の正面から、ぴあののパートナーのティムがそういって彼をからかった。

「ひ、膝枕? す、すまない…、オレ・・」

一馬はあわてて退こうとして、くらっとする頭を押さえた。

「ほら、急に動いちゃだめだよ。もう、限界以上に魔法を使うんだから、そうなって当然なんだよ」

「まあまあ、そのおかげで優勝して、おまけに大会新記録まで樹立したんだからさ、許してあげなよ、ぴあのちゃん」

怒るぴあのをがなだめた。

「それはそうだけど・・・」

「それよりも、ぴあのさ。ほら、例の約束、どうするだべ?」

口篭もるぴあのに絵里香が尋ねると、がその尻馬に乗った。

「そうそう、一馬君、多分、その為に頑張ったんだよ」

二人に迫られ、ぴあのと一馬が揃って顔を赤くする。

そして、ぴあのは逡巡した後、

「う・・・うん・・・そうよね・・・一馬くん、頑張ったもんね…」

と小さく呟くと一馬へと顔を近づけていく。

「恥ずかしいから目を瞑って」

ぴあのの小さな声に

「あ・・・ああ」

一馬は頷いて目を閉じた。

そして再び見開いた一馬の目に写ったのは天井であった。

「ゆ・・・め? でも・・・確かに頬に唇の感触が…」

そういって一馬は己の頬に手を持っていく。そこには確かに唇の感触が。そしてその感触が離れると…

「う~ん…だめですよ…あなたはもう…生徒会の役員なんですから…ところかまわず…キスなんてせがんだら…」

という男の声が聞こえてきた。

嫌な予感に一馬が恐る恐る隣に視線を向けるとそこには彼と同居している赤川 智也の姿が。

「うわああああああああああああっ!!」

晴れわたる春の青空の下、一馬の絶叫が木霊した。

「一馬さ、なんか衰弱してないべか?」

「そうだね、何かあったのかな?」

「あんな状態で一馬くん、大丈夫なのかな、今度の大会…」

一馬の練習を身にきていた三人が彼の様子をみて口々にそういった。

「あれじゃ、厳しいべよ」

「そうかな…やっぱり」

絵里香の言葉にぴあのの表情に影が落ちた。

「大丈夫だって。ぴあのちゃんが一馬君に一位になったらキスしてあげるとかいえば、一発だよ」

「そ、そんなことできないよぉ」

の言葉にぴあのは顔を赤らめるのだった。

日記からの抜粋

2003.03.28 fri

『エテルーナ魔法学園』の最終リアクションが届きました。

概ねアクション通りの行動をしていました。

終わり。

2003.03.29 sat

――という訳にもいきませんので、個人的な勝利条件を満たすことができたかどうかを考えます。

もちろん、ゲーム期間中、プレイを楽しめたかも重要ですが、私の場合、「私のキャラクターがいたから、このシナリオはこういう物語になったと言えるか?」が最大の評価点になります。現在は「キャラクターという駒を用いて物語の流れに介入する」ことをプレイの第一指針としているからです。

まず、全8回を振り返ってみまして、「NPCにされて悔しいことがあったか」……言い方を変えますと、「NPCのみで物語を展開されたことがあったか」ということについては、「全くなかった」と言ってよいと思います。それはそれで問題があるような気がしますが、それだけPCに物語の流れが委ねられていたということでしょう。そしてその中で、どれだけ方向性を示すことができたかというと……555の中の人ならこう答えるでしょうか。

「微妙」

シナリオで作られた対立の一翼を担うことはできたと思います。しかし、それをもって物語の展開に影響を与えることができたかというと、むしろ逆で、物語に引きずられた行動しか取れなかったように思えます。特に最後の3回は、アクションを書かずにマスターの裁量で動かして貰っても何の問題もなかったほどに。

その点から言えば、後半は完全な敗北です。私自身、「どんな結果になったかな?」というワクワク感は全くありませんでしたし、アクションを読んでマスターがニヤリとするようなことも多分なかったでしょう。

毎回、驚きを伴うアクションを書き、驚きを伴ってリアクションを読む――最終回までそのようなプレイを行うことが夢でしょうか。

「夢ってのは、呪いと同じなんだ」

解ける日は来るか。

2003.04.19 sat

『エテルーナ魔法学園』の盗Div第8回個別リアクションが届きました。

盗Div?

私が参加していたのは魂Divです。「よりにもよって、個別リアクションを誤配信しちゃったのか?」と思いつつ、中身を確認してみましたところ……マルチプル・ウェーブ! あんた、あんたカッコいいよ! 嗚呼っ!!

それは確かに私宛てのもの。最終回アクションでわずか1行だけ書いた「福原一馬さんから、インターハイについての招待を受けましたので、可能でしたら、応援に行きたいと思います」というサブアクションに対する個別リアクションだったのです。なんと同人ゲームっぽいサービス精神が旺盛なのでしょう。第一作の対応がここまできめ細かですと、次作は普通のレベルになっただけで落胆する人が続出するのではないかと、逆に不安になるほどです。

いや、どこを“普通”とするかは置いといて。

ちなみに登場キャラクターは4人いますが、全員、参加Divが違います。【Writer's Note】にある「盗・炎・心・魂の共通の個別ノベル」という言葉の矛盾がなんともステキだと感じた次第です。

須賀和良は、マルチプル・ウェーブを応援しています。