2003 マルチプル・ウェーブ『東奉幻獣記~神の眠りし天秤~』

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[パンフレット][スターティングマニュアル]

キャラクター

設定

[藤白雪風]

名前|通り名
藤白雪風(ふじしろ・ゆきかぜ)|白姫
職業|性別|年齢
侍|女|15歳
第一印象
白黒、華奢、不愛想
性格
  • 一見、気弱そうに見えるが、芯は強い。
  • 人見知りが激しく、親しい人にはとても懐くが、苦手な人はとことん避ける。
自由設定
  • 両親から剣才のみを受け継いだ、4人姉妹の長女。状況・空間把握と未来予測に優れており、汚れ一つ付けずに舞う姿から通り名が付いた。
  • 女性的なものに憧れているが、自分には不向きと見限っている。飾り気のあるものは殆ど付けず、色も全て白と黒に統一している。
  • 自分に幻獣の加護がないのは、何かが足りないためと考えており、その何かを探し求めている。
  • 家を守るため、妹に刀を持たせないため、幻獣の加護にふさわしい力を付けるため、そして、自分にはこれしかないという思いから、時間があれば心技の鍛錬を行っている。
能力値・技能
項目初期最終
2629
14
14
14
14
刀術813

説明

これまで数多くのキャラクターをプレイしてきましたが、「自分の行動が家族その他のリアクションに登場しない親類縁者にどのような影響を及ぼすか?」ということを意識してプレイしたキャラクターはいませんでした。そのため、このキャラクターについては、守るべき家族・家柄を設定し、その不自由さを楽しんでみようと考えていたのですが、あまりに不自由すぎて「失敗したー!」と思うことになりました。後悔、先に立たず。

上記のとおり、能力値は「戦」を最高にして初期登録を行っています。同様の能力値にしているキャラクターは当然他にもいるだろうと考えていたのですが、実はこのキャラクターがシナリオ内どころか全プレイヤーキャラクターの中で最も人間時の「戦」の能力値が高いキャラクターだったことが最終号の情報誌で判明(同率1位)。できればリアクション上でも「剣技は圧倒的、しかし持久力がない」といった感じに、それと分かる描写をして欲しかったところです。そうすれば、この能力値をもっと派手に使用したアクションを掛けていたかもしれません。

項目

開始前

日記からの抜粋

2003.04.26 sat

「なにい! メイルゲームの新作!?」

「しっ、しかし前作は、1か月前に終わったばかりですよっ!」

「いいのいいの、ぼくらがやりたいんだから!」

会社がまだ2つしかなかった頃はそんな感じだったよなぁ、と思ったりするわけですが、マルチプル・ウェーブから『東奉幻獣記』のパンフレットが到着しました。

「こんなキャラクターを作れる!」、「こんなプレイができる!」、「こんな新システムを採用!」的なことが毎回目白押しのホビー・データに対して、こちらに書かれているのは「こーゆー世界でやります」というただそれだけ。PBMについては「文章アクションを送って、文章リアクションが返ってくれば、それでよい」と考えている私には、なんとも好感が持てる潔さです。

そして、その世界観も、

東奉幻獣記は、中世の日本や中国、中近東に似た文明が栄える大陸――東奉――を舞台にしたオリエンタルファンタジーPBMです。

この世界の人間は“幻獣”と呼ばれる特殊な生物の霊をその身に宿すことで、様々な不思議な力を使うことができます。広大な平原を一夜で駆け抜ける強靱な馬のような脚力や、巨大な岩を軽々と持ち上げる熊のような怪力、わずかな物音を聞き分ける鋭敏なウサギの耳など、見た目は少し人間離れしますが、その分強力な能力を自在に使うことが可能なのです。

と、

「どうでしたっ、炎尾先生!」

「う、うむ……これだ!! と思いました」

「やはり!! 実はわれわれも、これだ! と、思っていたんですよ」

とは全く思わないライトなファンタジー。『エテルーナ魔法学園』のときもそうだったのですが、“売り”が全く見えないところが、ある意味、漢らしく思えると同時に、口コミ以外で広める気がないのかこの会社とちょっと不安にもなったり。「PBMとはどういうゲームか」が一言も書かれていないところから察するに、新規参入者を開拓しようという気は全くなさそうです。

とりあえず。

須賀和良は、簡素なシステムのPBMを応援しています。

2003.06.11 wed

「なぜ、幻獣心臓に切り替えない!?」

「だってオラは人間だから……」

というわけで、『東奉幻獣記』のスタートセットが届きました。

わずか56ページのプレイングマニュアルと12種類の初期情報に対して、「とりあえず、キャラクター作成のところだけ読もう」とか「初期情報、読むのは倭国だけでいいよね」とか、いかに手を抜くかを考えている辺り、かなりのヘタれゲーマー気味。かつては300ページ近くある『竜創騎兵ドラグーン』のマニュアルを……やっぱり読み込まなかったような気がしますが、それはさておき。

「他の国はキャラクターの名前を憶えるのが面倒そうだ」という理由により、倭国への参加を決定した私ですが、知識レベルをキャラクターと同程度にするために、他国の説明や初期情報は読まないことにしました。これにより、キャラクターが感じる異文化に対する驚きをプレイヤーの私自身が同様に体験できるようになるからです(詭弁)。

また、幻獣は憑依させない予定です。そうすれば、幻獣部分も読まなくて済むから……ではなく、『デモンスリンガー2』でコンプレックスをメインに据えてプレイしていく筈だったのが、殆ど周囲と絡むこともないまま1人で立ち直ってしまったため、再度、同コンセプトのキャラクターに挑戦しようと思ったからです。もっとも今回は、裏返しである強烈な自負心も併せ持ったキャラクターにする予定ですが。

須賀和良は、忍者氏が「アンコールはいかが?」な人魚の歌姫を本当に投入するのか注視しています。

2003.07.05 sat

そろそろ『東奉幻獣記』のキャラクターを固めることにします。

もっとも、イメージは既に確定済み。芝村舞と緋村剣心(追憶編)をベースとした毎度同じみの戦闘技能が一点集中ゆえ指先なキャラクターです。というわけで、4つ取得できる技能は、何の迷いもなく「刀術」×4に決定。問題は能力値、これです。『東奉幻獣記』には以下の5つの能力値があり、これに[30-憑依している幻獣ポイント]点を割り振ることになります。

  • 戦(力・戦闘力)
  • 技(器用・素早さ)
  • 識(知識)
  • 華(魅力・感性)
  • 生(生存力)

私のキャラクターには幻獣を憑依させませんので、使用できるのはMAXの30点。幻獣ポイントはその幻獣のランクにより、下位:8点、中位:12点、上位:16点、最上位:20点となっていますので、幻獣を憑依させている人の平均的な能力値は4点くらいになるでしょうか。すると、「識」や「華」はよいとしても、「技」や「生」には……いや、せめて『生』だけには2~3点を割り振りたいところ。しかしそれでは、一点集中といううまみと特徴とがぼやけてしまうことになりますし……などと考えていたときに、利根川先生の言葉が脳に響きました。

「真の兵(つわもの)なら‥‥」

ここは「1」まで能力値を落とす‥‥‥‥!

というわけで、「戦」はMAXの26に決定です。

というか、今回、このためだけに『賭博黙示録カイジ』を購入したのですが、このように「ネタの為にコミックスを買う」という習慣は直した方がいいかな、と思う今日この頃です。

2003.07.06 sun

『東奉幻獣記』のキャラクターですが、昨日書きましたように、ベースは芝村舞と緋村剣心(追憶編)となっています。即ち、髪型はポニーテール。現実に於いても三つ編みと並んで私が一番好きな髪型の1つです。

それはさておき、この「ポニーテール」という名前、誰がどう見ても横文字です。対して『東奉幻獣記』はその名の通り、舞台は東洋系なファンタジーで、しかも私のキャラクターの行き先は日本がモチーフとなっている倭国です。そこに『髪型:ポニーテール』などというキャラクターを投入するのは、まさに世界観に対する冒涜と言えましょう。

というわけで、ポニーテールの日本語名を検索してみましたところ……『日本ポニーテール協会』などという素晴らしい組織を発見。その紹介文を抜粋しますと、

女性のヘアースタイルで、男性に圧倒的な人気を誇るポニーテール。そのポニーテールがなぜこれほどまでに人気なのかを研究する協会。

ポニーテールを単なるヘアースタイルとしてだけでなく、その歴史や文化的価値にいたるまで考察し、21世紀にポニーテールを大流行させるのも目的のひとつ。

「素晴らしい! 素晴らしい! これが、これがポニーテールというものか!」

そんな魂の叫びが聞こえてきそうな程、直球ど真ん中です。しかし、しかしであります。これだけではやはり足りないのです。何故なら外見だけではなく、その内面をもって初めて人は完成するものなのですから。

というわけで本日、私の心の中で『日本委員長協会』を設立。次のような理念を胸に、萌えの殿堂に向かって激進を開始する所存です。

萌えキャラクターの役職で、男性に圧倒的な人気を誇る『委員長』。その委員長がなぜこれほどまでに人気なのかを研究する協会。

委員長を単なる役職としてだけでなく、その歴史や文化的価値にいたるまで考察し、21世紀に委員長を大流行させるのも目的のひとつ。

P.S.

ポニーテールの日本語名はわかりませんでした。

2003.07.11 fri

「モトコってゆーんだけどよ、そいつ……」「そんなアニメ風の名前、聞いちゃいません、ジョニーさん」

というわけで『東奉幻獣記』ですが、来週の月曜日にキャラクター&アクション登録の締切を控えた今頃になって、「キャラクターのイメージ元を、芝村さんではなく、ラブがひならないマンガの女性剣士にしようか?」などと考え始めています。これには、「生:1」という能力値が芝村さんとは不釣り合い、偉そうなキャラクターを演じるにはプレイヤーにもそれなりの知識と洞察力が必要、という理由もありますが、何と言ってもポニーテールの日本語名が未だにわからないことが最大の要因です。

しかし、私はラブがひならないマンガをまともに読んだことがありませんので、5秒でこの案は却下。それにあのキャラクター、確か元気系だった気がしますし。そんなわけで、「生:1」にはむしろ田辺や萌といった小声系が向いているのでは? と思いつつあるのですが、実のところは、ドラマCD『ガンパレード・マーチ』Vol.3に収録されている座談会での前田千亜紀女史(田辺の中の人)のあまりの萌えっぷりに堕とされただけ、というのはここだけの秘密です。

なお、「『空想科学世界ガリバーボーイ』で声をあててたんだから、それなりに歳食ってるはず」という夢を壊すよーな発言は厳に慎んでいただくと助かります。

2003.07.12 sat

貸していた『東奉幻獣記』のマニュアルを引き取りに、14万8千光年離れた忍者氏宅へ出発。

1時間弱ある車内時間を有効活用するため、アクションを考えることにしました。キャラクターの性格が未決定のままにアクションを考えるのは何か間違っているような気がしますが、これは、最初にアクションを考え、それに合う性格とすることにしたからです。例え、思い入れ充填120%のキャラクターを作成しても、結局自分のプレイに向かず毎回のアクションに苦しむようになってしまっては、本末転倒と言えるでしょう。

私が参加する刀Divは、初期情報を要約すると「神社が襲撃され、国宝『クサナギノツルギ』が盗まれた」となります。「何故にカタカナ?」という根元的な問題はさておき、そのあまりのスケールの大きさに「そこらの一般人が関わっていいのか?」と不安が残る内容ですが、襲撃された際に死んだ神官を友人/親戚と自己申告することで無理矢理ストーリーに絡むことにします。

「日中に襲撃したということは、敢えて目立ち、反感を煽る手段を取っているということか?」「御剣祭の武術試合には、昨年まで毎年出ていたことにしよう」などと、アクションとキャラクター設定とを同時平行で進めていき、だいたいの内容が固まったところで、忍者氏宅に到着。

忍者氏は、「外見は柏木楓で、性格はミント・ブラマンシュな商人」をプレイすると言っていたのに、イメージ欄にはしっかり柏木初音が描いてありまして、大人はみんな嘘つきだ、とか思ったりしましたが、それはさておき、アクションの最終チェックのために初期情報を改めて読み直してみたら、神社が襲われたのって夜中でした。かてて加えて、御剣祭に武術試合なんてありませんでした。

残された日はわずか。登録締切の日まで……あと2日。

2003.07.13 sun

『東奉幻獣記』は、結果的にキャラクター設定と全くリンクしていないアクションになりました。

「手段メインのため、プレイヤーの考え方が全面に出た」とか「神官の友人・親戚という自己申告が通るか不明のため、心情を省くようにした」というのが主な理由ですが、なんにせよ、昨日の計画、企画倒れ。もっとも、プレイ開始前にイメージ固めをぎっちり行った『デモンスリンガー2』が、「キャラクター作成時の面影は今どの辺りを旅していますか?」という状態になっていることを考えますと、前半4回を掛けてイメージ固めを行う、くらいのスタンスでいいのかもしれません。

ちなみに、今回は「三人称による行動説明+キャラクターの台詞」と私の標準的なアクション体裁になっていますが、次回からはこれを毎回変えていこうと思っています。現在のところ、「全部一人称」「全部ト書き」「小説風」「ポエム風」「無茶苦茶長い」「無茶苦茶短い」といったものを考えているのですが、何か他にも面白いものがありましたら、教えていただけると助かります。一行アクションとか4コマアクションとかは、辞退させていただきますが。

P.S.

通り名に『戦闘妖精』と付ける勇気はありませんでした。

2003.07.15 tue

早ければ今週末に第5回リアクションが届く『デモンスリンガー2』ですが、前回のアクションは「具体的な手段を全く書かない」という非常に手抜きな男気溢れるものとなっています。「上手い手段が思い付かなかった」というのがその根元にして最大の理由ですが、見当外れの手段を書くよりもマスター裁量に委ねた方が採用の確率が上がるように思えたからでもあります。また、話の流れからルーメンス(NPC)に関わる人が殆どいないであろうことを予想できたことも大きな要因です。競合者がいないのなら、目的だけでもある程度の勝負ができる……そんな目論見がありました。

しかし先日、とある方から「フレイさんに近いアクションをかけました」との連絡が。

ギャフン

さらに昨日、某マンガ家さんグループもルーメンスにアクションを掛けていたことを発見。

ギャフンII

そして今日、希望が絶望に変わった『デモンスリンガー2』を向こうの棚の上に置いて、『東奉幻獣記』関係サイトを巡回していたら、「戦:26」「拳法×4」の女の子というキャラクターが被りまくっている人が同じ刀Divにいるのを見つけてみたり。

ギャフンスター

第01回 刀『ヤタノカガミ』(マスター)

アクション

目的

御剣神社襲撃の犯人を捕らえる。

動機

殺された神官の仇を討つため。

リアクション

一方、御鏡神社に早馬が到着した。

乗っていたのは白姫こと藤白 雪風(フジシロ ユキカゼ)。おかっぱ頭の15才の侍。乙女。一睡、一休みもせずにきたのだろう。フラフラになりながら馬を降りた。

「疲れた……。しかし、私は墓前で、誓った。美晴の、仇を討つ、と……」

そう呟くと御鏡神社の本堂へ走っていった。

「すると御剣を襲った賊は、毒を吐くのか。首領は黒装束の男。龍の頭にコウモリの翼。重要なのは毒か。」 

と、御鏡の巫女の長、稗貫 乃菊(ひえぬき のぎく)は雪風からの情報を分析した。乃菊の低い美声は色白の彼女に似合い、周りの神官たちを魅了していた。そして彼女も40半ばでありながら、細く美しい女性だった。

「はい、それが、御剣の巫女、美鈴からの、情報、です」

雪風は答えた。

乃菊は華奢な雪風に「良く知らせてくれた、ゆっくり休んでくれ」と、労をねぎらった。

だがそれでは納得いかないものもいた。

「しかし、クサナギは何故奪われたのでしょう?」

と、緑色の瞳を輝かせながら、本堂の末席にて話しを聞いていた侍、槙(マキ) あかりは大神官の横に立っている乃菊に尋ねた。彼女は小馬の尻尾の様に黒髪を後ろに結わえている。しかし、それは侍の証なのだが、それ程強そうにはみえない。そんな彼女は質問を重ねた。

「さらに鏡と勾玉が奪われた時、何が起こるのでしょうか? 更に奪ったのは余程神社の事を知っている人物では……、そんな人物に心当たりはないでしょうか?」

乃菊は眉をひそめ、「わからぬ。人物に心当たりも無い。ただ毒に気をつけるよう、皆に伝えねばな……」と答えるのが精一杯だった。

早速このことは御鏡神社を守る者達に伝えられた。

裏方には裏方で戦いがあった……。

津波のように、おぞましい邪陰どもの進撃は御鏡神社を守る戦士たちを切り刻みながら飲み込んでいった。

更に多くの護衛達が討ち取られていた。その激流は益々激しくなっていった。そして……岩壁に当たった波のように先頭の邪陰がババアンッ! と、弾けて飛んだ。

そして、続けて2,3匹の邪陰が破裂するように、放り投げられるように飛んでいった。

激流はそこで止まった。そこには……

『凪』と『嵐』、二本の倭刀を持つ青き疾風、葉暮 陣。

白姫と呼ばれる乙女。藤白 雪姫

両名が立ちはだかった。

日記からの抜粋

2003.08.05 tue

『東奉幻獣記』刀Divの第1回リアクション(ノベル)がメールで到着。

ちなみに発信されたのは昨夜11時半。確かに発送予定日中ではあるのですが、昼過ぎから1時間おきにメールをチェックしていながらも睡魔に破れて寝てしまった私の立場はいったい何処に。

さて、いきなり名前や読み仮名を間違えられているのですが、それはさておき、気になるPC数は51人でした。最近私が参加していたゲームの中では断トツに多いですが、「なんじゃこりゃー!」と叫ぶほどのものではなかったようです。もっとも、前作『エテルーナ魔法学園』の魂Divと比べますと、文章量が1割減ってPC数は3倍に増えているという状況なのですが。果たして次回どれだけ減ることになるのか非常に楽しみです。というか、減って。お願い。

内容については、初回ですので皆さん顔見せという感じですが、それよりも何よりもマスターが提示していた情報と多くのプレイヤーさんの状況認識に大きなズレがありまして、思わず大笑い。初期情報の内容は「神社が襲撃され、国宝『クサナギノツルギ』が盗まれた」というものですが、この事件、世間一般には知られていなかったようです。アクションリストに「御鏡神社を警備する」なんてものがありながら、私のキャラクターが伝えるまで御鏡神社の人が事件のことを知らない程に。

このことが判然としないこともあって、私は「襲撃の際に死んだ神官が親戚/親友」という設定を私信で申請したのですが、他の戦士系の方々には「巫女がぞろぞろ歩いていたから、何かあると思って加わった」というものすげー苦しい説明が付けられていたりします。それにしても、事件が表沙汰になっていない状態でPCがどういう理由で事件に関わってくることをマスターは期待していたのか、小一時間問い詰めたいところです。

それはさておき!

「ダイナミック・クリエイター」「クロコダイルボーイ」「アジト」「えーすすとらいかあ」なんて単語がキャラクターの台詞の中にありまして、世界観ぶち壊れ。プレイヤー向けの説明ならまだしも、それを口にしたら戦争……じゃなくて、その世界に存在することになってしまいますので、この辺りのことはたとえアクションによるものだとしても、却下して頂きたかったところです。もっとも、たとえ説明だとしても、ファンタジーで「核爆発の様な衝撃」という表現はどうか思いますが。

「……皆さん、リアクションで名前を、名簿で読み仮名を間違えられて、私が怒っていると思ってるようですね。ぜんーぜん、そんなことないですよぉ?

(嘘だ)

(嘘です)

(嘘や)

(嘘……)

(嘘だな)

(嘘でしょう)

(嘘に違いありません)

(ぜってー嘘だ)

2003.08.16 sat

『東奉幻獣記』のアクションを考えます。

第1回刀Divの内容を要約しますと、「御剣神社に続いて御鏡神社が邪陰に襲われたが、なんとか撃退した」となります。アクションリストには神社の再警護や資料調査といった行動が並んでいるのですが、普通にやっただけではその他大勢として埋没してしまいますので、とりあえず無視することに。

私のキャラクターは、上手い具合に幻獣を纏っていませんので、「幻獣を超える力を求める」という名目で敵内部に潜入することを主眼にしようかと一瞬考えたのですが、『デモンスリンガー2』では敢えて無視している家族・家柄に関することを自由設定に書いてしまっているため、あまり無茶なことはできません。『デモンスリンガー2』と違って、死んだらそれまでですし。

幼馴染みを殺されたことに対する怒りと家柄から来る行動制限とを天秤に掛けながらプレイしていけば楽しいかもしれない、などと考えつつ、リアクションを読み返して現状把握をしていったら、何故か多方面にケンカを売るアクションに。いや、だって、国宝が盗まれたのですよ? 数十名単位で人が死んでいるのですよ? どー考えても、そこいら辺の暇人が事件解決の為に自主的に動くのではなく、統治者階層が指揮すべき事件です。

問題は、15歳というキャラクターの年齢ですが、江戸時代の元服は15才ですので多分大丈夫でしょう。マニュアルに書いていないことは歴史を参考にしたいと思います……と言いつつ、マニュアルに書いていない男女の職業区分については、「書いてないってことは、制限はないんだろう」と歴史を完全に無視している辺り、かなりダブルスタンダード気味ですが。

さて、マスターのマスタリング方針を探るこのアクション、実はTRPGをしていたときの経験が元になっています。別サークルの方を相手にマスターをしたとき、その方々がもう縦横無尽にNPCを使う使う。「PCだけで事件を解決する」というスタイルに慣れきっていた私は完全にフリーズ。「私に1週間だけ時間をください」という状態に陥ってしまいました。果たしてマスターはどのような結果を返してくるか、楽しみです。

しかし、予想通りとはいえ、第2回にして技能や能力を無視したアクションになってしまってるのが、ちと不安。

2003.08.19 tue

早朝、『東奉幻獣記』関係のサイトを巡回していたところ、アクションの文字数についての書き込みを見つけました。『エテルーナ魔法学園』では6,000文字制限だったのが今回は3,000文字になり、収めるのに苦労したとのこと。

苦労?

前作では6,000文字に達することなど1度としてありませんでしたので、文字数など全く気にしなかったのですが……というか、3,000文字制限のことをこの書き込みを読んで初めて知ったという始末。慌ててアクションを確認してみたところ、アクション800&私信600の計1,400文字。余裕でセーフです。

私としては、これでも「少し多すぎたかな」と反省するところがあったのですが……この倍以上を書くとなると、手段や条件が多く設定され、逆に自分の活動範囲を狭めてしまうように思えます。それに前作と比べて1DivあたりのPC数も増えていますので、あまり長文を送るのもマスターに悪いような気が……いや、PC数が多いからこそ、手段・条件を設定し、差別化を図った方が良いのかもしれません。

とりあえず、「3,000文字なんて何処に書いてあったっけ?」とマニュアルを読み返し……文字数などより遥かに重大な事項を見逃していたことを発見。

『エテルーナ魔法学園』宛てのメールアドレスにアクションを送っていました。

2003.08.22 fri

「僕たち、集団アクションとかそういうんじゃないから。ひとりひとりの個性見て欲しいから」

と、他のプレイヤーさんと殆ど相談することなくアクションを書いている私ですが、改めて『東奉幻獣記』のアクションを読み返してみますと、第2回も見事にキャラクターを演じていません。外見、性格、家族、秘めたる想いなど色々な設定があるわけですが、アクションと絡んでいるものは殆どなし。たとえ豪放磊落な親父侍だったとしても文面に殆ど変化はない、そう言い切れるほどです。

もっとも、私は現在、「キャラクターを演じる」ということにさほど興味はありませんので、その辺はとりあえずスルー。むしろ問題は、キャラクターシートに書かれていることの殆どが「死に設定」となっていることでしょうか。というか、キャラ作成に失敗した可能性、非常に大。

「毎回のアクションに、他PCに抱いている印象を記載する」

「やっちゃうか、そんな事も…!」

などということすら考えていたのですが、参加人数の前に敢えなく撃沈。設定の多くは、長期的に他PCと如何に絡んでいくかを念頭に置いて作成したのですが、まずはマスターが用意した舞台で自由闊達に踊れるように物語への介入しやすさを優先すべきだったと思います。

まぁ、過ぎてしまったことはどうしうようもありませんので、まずは手持ちのスペックの中で居場所を得ることを目指していくことにしましょう。その結果、プレイヤー目的とキャラクター目的とが一致してしまう可能性が高くなるのがちょっと困りものですが。キャラクター設定については、とりあえず二の次。1PC当たりの文章量も減っていますので、設定に関する描写への期待は次の程度に抑えておこうと思います。

「なくてもいいけど、ちょっとはあった方が……」

そんなの微妙過ぎー。

2003.09.09 tue

メールにて『東奉幻獣記』のリアクションが届きました。

まずは、テキストエディタの検索機能で自分のキャラクターの名前を探します。登場箇所や登場回数がわかっては楽しみが減ると考える方もいるかもしれませんが、まずは自分のキャラクターが登場しているシーンを読みたい、アクションが成功したかを知りたいというのは、プレイヤーなら誰しもが持つ欲求ではないでしょうか。

で、その検索結果ですが……1箇所でした。

名前で探しても1箇所でした。

名字で探しても1箇所でした。

行殺death。

なるほど、まずはマスターの用意した行動指針に乗ることが重要のようです。そしてその舞台で踊り、観客を集めることができて初めて自分の舞台を要求しろということでしょうか。これは、アクションについて、次回から大きな方針転換を行う必要がありそうです。

というところで、目が覚めた。

かなりいやーんな感じの夢にブルーになりながら、現実のメーラーをチェックしたところ、リアクションが2つ届いていた。「ひょっとして個別?」と喜び勇んで見てみると……EXACTLY。PCが4人登場しているので、完全個別というわけではないが、殆どが私のアクションに対するものだ。しかも、イラスト(図解)付き。マスターお手製のイラストが付くなど、『那由他の果てに』以来のこと。ただ問題なのは、いくら読んでも、巨大タコが海底で封印を解こうとしている図とリアクションの内容とがどうリンクしているのか、さっぱりわからんということである。

というところで、目が覚めた。

第02回 影『強まる陰の力』(マスター)

アクション

目的

武士、神官、民の連携を図り、連絡・警備体制を整える。

動機

これ以上、被害者を出させないため。そして、美晴を殺した邪陰を捕まえるため。

リアクション

その頃、赤坂の屋敷では剣術試合が行なわれていた。

し合っているのは乱童 王仁丸(ランドウ オニマル)と赤坂配下の武士のようだ。

静かに木刀を構える乱童。

その気迫に圧された武士は、気合の声を上げて突っ込んで行くが、大振りな一撃はあっさりと見切られて、一刀のもとに武士の木刀は跳ね上げられた。

「見事だ。この刀と共に私に仕えてくれ」

その光景を見ていた赤坂は満足げに頷く。

そして、乱童に彼女の愛刀を手渡し、召抱えることを伝えた。

そこに藤白 雪風(ふじしろ ゆきかぜ)が赤坂を尋ねてやってくる。

藤白は、神社の護衛について幕府が自ら行なってもらいたい旨を彼に告げた。

「このままでは、神社の防衛が疎かになり、危険な状態となります。ですから、幕府自ら神社の警護をしてはいただけないでしょうか?」

現在、神社の警備は有志の者を募っている状態だが、それだけでは心もとない。

正規の訓練を受けた侍の警備が必要だと説く彼女に対して、赤坂は頷くものの、些かその表情は重苦しかった。

「よい案であるのだが、華国との戦争で腕の立つ武士は戦場に赴いており、残った武士も大永都の防衛や警護に回っておる。できるだけの役人は配備できると思うが、正直言って質は期待しないでくれ」

現在、倭国と華国の間で繰り広げられている戦は、現状華国優勢であり、倭国は辛い戦いを強いられている。

あまりの戦況の悪さに、遂に大将軍自らが直属の旗本を連れて交戦地に向かってしまったため、大永都に残っている侍たちは、かなり質が低い。

そのような話がなされていると、今度は杜松 末楽(ネズ スエラク)が赤坂を尋ねて来た。

「祭りの時に、この屋敷を邪陰のものが見張っていたとか。何かを狙っていたに違いありますまい。この不安定な時勢、如何でございましょう。この末楽め、必ずお力になりましょう。御鏡神社のこともありますゆえ、警護役の方々の世話役として使っていただきたいのですが」

以前の御鏡神社での一件などの実績を評価するに、杜松は十分信頼におけると見て、赤坂はそれを許可した。

もう一つ杜松が頼んだ補給に関しては、自分は管轄外のために行なえないようだ。

こうして話し合いが終了した後に、赤坂の屋敷から杜松が出てきた頃、街角の物影から御堂 貴理(ミドウ キリ)が赤坂邸を伺っていた。

(さて、奴がどうして邪陰に狙われているのかどうか、ゆっくりと探らせてもらうとしようか)

夜、赤坂の屋敷に逗留した乱童は湯に浸かっていた。

しばらくして、そんな彼女の耳に「曲者だ」という声が裏門の方から聞こえて来る。

「曲者だと……?」

ゆっくり着替えをしている暇もないため、薄物一枚だけ羽織って、刀を手にかけつける乱童。

その途中でこちらも曲者と聞いて駆けつけた藤白も合流した。

しかし、風呂から出てきたばかりの乱童の姿に、藤白は赤面して自分の羽織っていた着物を渡した。

「せ、せめてこれくらいは羽織っていてください」

「ああ、すまないな」

そして、二人が裏門にかけつけると、数人の酔っ払いのような男たちが裏門の警備をしている門番と乱闘している。

勿論、そんな相手に苦戦を強いられる二人ではなく、彼女たちは簡単に取り押さえてしまう。

「大した事がなくて良かったですね」

「こんな弱い奴らが邪陰のはずはないな……。だが、どうにも腑に落ちんな」

敵が邪陰でないことをほっとしつつも、こんな時にこんな連中が現れた事が気になる二人。

詳しく酔っ払いに問いただしてみると、彼は意外な事を口にした。

「黒尽くめの男に金貰って暴れただけだ!」

「なんだと!?」

そして、寝所には既に御堂が忍び込み、赤坂の首に刀を突きつけていた。

そんな状態に置かれても悠然としている赤坂に対して、御堂は気になっていた事を色々と訪ねてみる。

その結果、邪陰に見張られる理由に関しては分からず、ただ、自分の公職が高雲の警備と高雲に住む公家を監視する「高雲所司代」であるために、自分の存在を疎ましく思う連中も多いという返事が返ってきた。

そして、今度は逆に赤坂が御堂に対して質問を行なう。

「お前は何を望む?」

「……邪陰を殺す。それだけだ」

「面白い奴だ」

どうやら危険は無さそうだと、御堂が首筋から刀を放したとき、乱童と藤白が寝所にかけ込んで来た。

「「曲者」」

赤坂のすぐ近くで抜き身の刀をもっている御堂に対して身構える二人であったが、赤坂がそれを止めた。

「こ奴は今から私の元で働いてもらうことになった。よろしく頼むぞ」

あまりの事に彼女たちは状況が飲み込めずに、顔を見合わせるのだった。

しかしその頃、赤坂邸を離れる一匹の刃斬蟲がいた。

「ギギ、手だれが奴を守っている……。我では力不足」

どうやらここを攻めるには、それなりの数が必要なようだ。

刃斬蟲は主にそのことを伝えるために引き上げていった。

赤坂の屋敷では、御堂を信用できないと言った風の乱童と藤白に対し、赤坂は落ち着いていた。

「御堂、お前はこいつと行動してもらう」

そういって御堂に引き合わせたのは、風体に上がらず冴えない感じの中年の侍だ。

「浅井 平司郎(アサイ ヘイシロウ)と申します。赤坂様に呼ばれまして、御堂さんと行動するように言われました。以後宜しく」 

「監視役か?」

やや卑屈な態度をとるこの侍に、御堂が赤坂に尋ねるとさらりと彼は流した。

「枕元に忍んでいきなり刃を立てる者を簡単に信用するわけにはいくまい」

「これからどうするんです」

これからの事について尋ねる乱童に、赤坂は自分の手伝いを頼んできた。

「以前から高雲所司代の蔵に残された資料を探しているのだが、その中に幕府に反抗したもの達の手掛かりがあるかもしれぬ。何百年もの資料を整理するだけでも2ヶ月かかってのう。ようやく中身の見聞にかかれる。お前達は私の手伝いをしてくれぬか? 護衛が出来そうな腕の立つ知り合い等が入れば紹介して欲しいがな」

日記からの抜粋

2003.09.12 fri

昨日、メールにて『東奉幻獣記』のリアクションが届きました。

キャラクター数が51人ということで、前回は全14Div中最大人数を誇った刀Divですが、今回分割が行われ、私のキャラクターは新規の影Divに移動となりました。まさに機を見るに敏。その対応の早さを称えて、茶器を差し上げたいところです。ちなみに新たに現れたマスターの名前は六道迦楼羅……って、この方、乱Divのマスターじゃないですか。処理能力の高いマスターにキャラクターの再分配を行った、というのが正解でしょうか。

さて、気になる人数は25人。前回の半分以下になりました。もう片方の刀Divは24人とのことですので、2人が逃げたDiv移動を行ったようです。今頃、「分割することがわかっていれば、移動しなかったのにーっ」と思われているかもしれません。

なお、文章量は34kb。一人当たりの文章量は1.4kbですので、前回の1.1kbと比べますとそれなりに増えたことになります。とは言っても、前作『エテルーナ魔法学園』魂Div(3.5kb/人)と比べると、まだ半分にすら達していませんが。

「もうお薦めとゆうより、ふつーのPBMというカンジやな自分!」(今のオマエを人にお薦めってゆうのはずかしいわ)

2003.09.13 sat

『GEAR戦士電童』のサントラ1曲目を聴いてすぐに、作曲者をチェック。続けて、ちょっと気になった2つの作品をネットで検索し、

作品名監督音楽参加声優
GEAR戦士電童 福田己津央佐橋俊彦三石琴乃
機動戦士ガンダムSEED 福田己津央佐橋俊彦三石琴乃
新世紀GPXサイバーフォーミュラ 福田己津央佐橋俊彦三石琴乃

「なるほど」

そんな感想を漏らしている今日この頃ですが、それはさておき、『東奉幻獣記』は、「アクションは一部採用されたが、効果がなかった」という状態でした。と言いますか、[{(最上位目的を達成するための手段)を達成するための手段}を達成するための手段]という末端レベルのことを1つ話しておしまいとなってしまったため、かなり底が浅い行動になってしまったように思えます。つーか、それ以外をわざと無視しましたか?

今回、かなり切羽詰まった状況でリアクションが書かれたのか、キャラクターが全く設定を無視して流暢に話していたため、「次回のアクションは全てキャラクターの台詞で書こうか?」などと思っていたのですが、このままではなんとなく悔しいので、目的と手段の連鎖構造を記した業務棚卸的な書き方にすることを決意。

つーか、やっぱり下手に無口なキャラクターより、喋った方が嬉しいし。

2003.09.16 tue

『東奉幻獣記』の物理リアクションが到着しました。

トナーが残量不足だったのか、リアクションがひどく掠れていたり、前回まではレーザープリンタで綺麗に打ち出されていたデータシートが、今回はジェットプリンタでブレブレになっている辺り、ちょっと怖い現実が見え隠れして嫌ですが、それさておき、『東奉幻獣記』には幾つかの成長項目があります。

  • 経験値(白/黒)
  • 基本能力値
  • 技能レベル
  • 特殊能力

前回は「白1点、黒1点」、今回は「白1点」という結果でした。しかしこの経験値、いったい何の意味があるのか、まだ公式の説明がありません。多分、陰陽の気が云々というものだとは思うのですが、そうしますと、必ずしも高いから良いということにはなりませんので、あまり気にしないことにします。といって自分を誤魔化す。

基本能力値と技能レベルは、今のところ全く上昇はなし。技能の使用をメインに据えたアクションを掛ける気は全くないので、これからも上がらない確率が高いでしょう。自らの技量を誇示している方も多く見られましたので、こちらは一匹狼の殺し屋ではなく、組織に属する犬として行動していくことで個性を確立していこうと思っていますし。

しかし一方で、Div分割が行われ、キャラクター数も減っています。今回、マスターからの引きもありましたので、無理に奇をてらった行動をせず、それに乗っていくというのも1つの手かもしれません。

「以前から高雲所司代の蔵に残された資料を探しているのだが、その中に幕府に反抗したもの達の手掛かりがあるかもしれぬ。何百年もの資料を整理するだけでも2か月かかってのう。ようやく中身の見聞にかかれる。お前達は私の手伝いをしてくれぬか?」

戦闘系キャラクターの3人に「書物調査」という引きを提示してどうするのかと小一時間(略)。

2003.09.23 tue

「だってー、しょーうがなーいじゃないー。マスターの『引き』にチィともトキめかないんですもん」

ということで、『東奉幻獣記』のアクション書き。一応前回、他の戦士系の方2人と一緒に「ようやく(書物の)中身の見聞にかかれる。お前達は私の手伝いをしてくれぬか?」という引きを頂いてはいるのですが、NPCでさえ少ないことを認めている貴重な戦闘ユニットを何故に書物解読に割り振らねばならんのですか、つーか、調査アクションなんて掛けてられるか、プレイヤーには「どう調査するか」ではなく、「何を調査するか」「調査した結果、何をするか」を考えさせるべきではないのかね、ビシッ、という意見が脳内会議で満場一致の賛同を得ましたので、無視することに決定しています。

結果、前回と内容がほぼ一緒のアクションが完成。

「××の理由で失敗しました/認められませんでした」という説明もなしにアクションを無視されたのでは納得いかんのじゃー! と、ついムキになってしまう辺り、大人げなく、諦めが悪いとはわかっているのですが、「テロリスト集団による強盗・殺害事件があったら、私立探偵じゃなく、警察・軍が動きましょうよ」という話が却下されてしまいますと、職業軍人な侍としては己の根拠を何処に置いていいのかわからなくなってしまうのです。

と言いつつ、その一方で引きを無視している辺り、実は上司からの命令無視に近しい行為で、またもやダブルスタンダードなわけですが、その辺りは心に棚を作ることで乗り越え、今のこのクレイジーなワァルドに「一言物申す!」といった、コノ俺の熱いメッセージをマスターの心に届かせることを優先したいと思います。

とりあえず書生でも雇っとけ、って書いたし。

第03回 影『新月の夜』(鈴隼人マスター)

アクション

目的

各自の役割を明確にし、個ではなく、集団として行動できる体制を整える。

動機

邪陰に対して自分ができることは、彼らを討つ、又は誰かを守る為に戦うことだけ。

それ以外のできないことは、「それをできる他の人」を集め、その人達にまかせるべきだから。

リアクション

「さて……それでは蔵の方に行くとするか」

縁側から立ち上がり、赤坂もその場から退場する。側についていた乱童 王仁丸(ランドウ オニマル)も黙ってその後に続く。

狂剣の鬼姫と謳われた侍の少女である。ぼさぼさとした黒髪を後ろで高く結んでいる。あまり愛嬌はないが、心強い彼の味方の一人だ。

その時、屋敷の奥の方から、足早に駆けてくる者があった。

藤白 雪風(フジシロ ユキカゼ)。白姫とも呼ばれる色の白い少女である。王仁丸と同じ15歳だが、雰囲気はずいぶん違う。

「赤坂様」

「どうした、せわしいぞ」

眉をしかめる赤坂に、雪風は一通の書状を見せた。

「……御堂さんの部屋にこれが」

「ふむ」

赤坂は顎を撫でた。

御堂 貴理(ミドウ キリ)。それは先日来、赤坂の命を狙い屋敷に忍んだ少年の名。邪陰の手先と赤坂を疑い、彼の枕元に現れ、首に刀を当てた彼を、赤坂は雇い入れたのだ。

しかし、書状にはこう書かれていた。

『天之宮を探る』

「……勝手な真似ばかり……どうしますか?」

雪風が赤坂に問う。王仁丸も雪風も、貴理の事を不審に思っていたのだから、二人の表情は険しい。

だが赤坂はもう一つ顎を撫でて、苦笑した。

「……野の獣は簡単には飼い慣らせぬといったところか……構わぬ、蔵の調査に入ろう」

「しかし……」

王仁丸が見上げる。

その頭をくしゃりと撫でて、「あれには、浅井をつけてある」と赤坂は笑った。

「浅井って?」

昼行灯と呼ばれている、凡庸そうな家臣の事か。すぐには思い出せない程、影の薄い家臣だし。

それよりも王仁丸は、赤坂の暖かい手のひらで、気やすく撫でられたことの方がしばらく心に残っていた。

「……ふぅ」

古い書簡を棚に戻しながら、自分の隣でため息をつく少年に、槙 あかり(マキ アカリ)はふと首を向けた。

「疲れました?」

ボサボサ頭を紐で結んだだけの細い筋肉質の少年……那賀 与一(ナガ ヨイチ)は首だけをあかりに振り向く。

緑色の瞳を持つ、髪を高く後ろに結んだおとなしそうな女性である。彼は15歳で彼女は22歳だが、身長の差は余りない。

「いや……」

与一は愛想笑いも浮かべずに、書簡を棚に再び戻し始めた。

「そう?」

あかりも作業に戻る。

しばらく二人は黙って作業に集中していたが、ふと、先に口を開いたのは与一だった。

「……資料総当りじゃ、時間が幾らあっても足りないな」

「そうですね……でも目星はつけてるつもりですよ。……知りたいのは何故クサナギが二つあるということ」

あかりは敵が執拗に三種の神器を狙っているのは何故か。歴史の中で似たようなことが起こったことはないのか、と調べていた。

しかし、なかなかその資料は出てこない。

だが、もう一つの知りたいことについては、与一の意見と合致していた。

「……敵は、幕府も把握してねー神器に関して、並じゃない知識を持ってたからよ、神皇家と縁があって歴史の中で没落した貴族とか、邪陰に関係する明道家の残党とか、こういったのが怪しいんじゃないかと思うぜ」

「ふむ」

通りすぎた赤坂が、与一の声に足を止めた。

「……明道家の残党か」

「ありえると思います」

新たな声に、その場にいた者達の視線が集まる。

遠子と共に蔵にやってきた北斗だった。彼は今、高砂の館を訪れて話してきたことを繰り返すように、蔵の人々に話した。

「……白のクサナギが封印され、この倭国の平和と陰陽のバランスが大きく崩されようとしています。そしてその背後に見える邪陰の組織。彼等が何を目的としているのか、……」

北斗のあくまでも想像であったが、『敵』は倭国と華国の間の戦争で、国の主戦力たる若者が国境付近に集められ、国内としての防備が薄くなったこのときを狙い、『内乱』を起こさせようとしているのではないか、と語った。

無論、内乱そのものが最終目的ではない。内乱による国内の混乱に乗じて陰陽のバランスを徹底的に崩し、最終的な目的への架け橋としようとしているのではないか。

「内乱か……」

赤坂は腕を組んだ。

「はい」

北斗は頷き、その先を続けた。

「……その内乱はそれでは誰か起こすのかというと、僕は敵に助力を受けた公家が怪しいのではないかと考えてます……」

敵に助力、つまり「侍の力が削がれている内に権力を取り戻せ」とそそのかされ、敵に操られている存在としてもいいかもしれない。

「はっきりとした確証はないのだけど、……高雲所司代は公家を監視する役目ですよね。ここが狙われるということは、この考えの根拠の一つです……」

「ふむ……」

赤坂は頷いた。

黙って、考えをめぐらせる赤坂を中心に、しばしの沈黙が彼等の空気を支配していた。

そしてやがて赤坂は北斗に尋ねた。

「その話、高砂殿にもされたのであろう? 高砂殿はなんと」

「蔵の調査の様子を見てまいれ、と」

北斗は苦笑するように微笑んだ。視線は流れて遠子にも向く。

彼女に会いにくる面目もあったので、それはちょうどよい口実でもあった。

「……赤坂様、これを」

突然、静寂を裂くような声で、雪風と王仁丸が赤坂に一冊の書簡を手渡した。

それは、幕府で捕らえた邪陰に関わる組織が書かれた本であった。

「おお」

赤坂は急ぎその本を手に取る。『影幻衆』という文字がはっきりとそこに書かれていた。

『影幻衆』

影幻衆は元々は、明道家に仕える忍びの集団であった。しかし、明道家が大河の合戦で破れ滅んだ後、月良家に仕えるようになった。

しかし、その後他の忍びの里との政争に破れて、幕府での地位はどんどん低くなっていったようである。

滅亡を恐れた影幻衆は、25年前に他の忍びの里を強襲したが、返り討ちにあってしまった。

しかもその際、彼等が邪陰らしき力を使っていたことが判明し、捕らえられた首領は打ち首。一族の者も全員忍びの者たちによって滅ぼされた。

「……明道家に関わる者って推理はあながち間違ってないみてぇだな」

与一は肩を持ち上げた。

その時だった。

「誰だ!」

突如、王仁丸が蔵の戸棚の一つに向けて倭刀を抜いた。雪風もその横でひらりと剣を抜く。

ガタ。

物音がその奥で響く。

「どなたですか……?」

小刀を抜き、赤坂と北斗の前に出る遠子が尋ねる。返事は、ない。

「……返事がねぇならこっちから行くぞ?」

呟きが終わると同時に足を踏み込む与一。彼の切っ先が、戸棚をまっすぐに叩き斬る。

戸棚の影から、咄嗟に飛び出す忍び。王仁丸と雪風がばねのような速さでその後を追う。

「待て!」

「今の話……聞かれたっ」

顔色を変える北斗。

「大丈夫だ……捕らえられるだろう」

赤坂は腕を組んだまま、信頼する者達の動向を見守った。

俊敏な動きで忍びは蔵の細い通路を駆けている。すぐ後ろを王仁丸と雪風も追う。

建物の外に逃げられてはおしまいだ。唇を噛み締め、懸命にその影を追う。

しかし、蔵の出口は間近。あと忍びの足で数歩。

「……くっ」

「待てぇ……っ」

二人の侍の少女が苦しげに呟く目の前で、忍びは外の明るい景色の中に溶け込んでゆこうとする……刹那。

ドゴッ。

いやな音が響いた。

地面に突っ伏して倒れている忍び。

「あ、悪ぃ……誰か下にいなかったか?」

屋根の上で瓦をおとした権造が心配そうに下を見下ろしていた。

「……そういえば、どうしてだろう」

「え?」

王仁丸の呟きに雪風が振り返る。二人は、着替えに戻った赤坂の部屋の前にいる。

「赤坂殿は何故に邪陰に狙われているんだろう? 高雲所司代という仕事柄って、政敵にされやすいのかな?」

「……公家を監視する役目という話でしたけど……?」

「公家……そうか……敵は公家と思っていいのかな」

その時、がらりと襖が開いた。埃っぽい蔵からの着物から替えてきた彼は、護衛役の二人を見下ろす。

「その話もまとめてしようか」

彼はどこか明るく言って、廊下をゆっくり歩きだした。

雪風と王仁丸は慌ててその後を追う。

屋敷の一室。赤坂は集まった者達を前に腰掛けた。

赤坂の護衛を任せられている刀也や誠志狼も、話の聞こえる庭先に立っている。朧は部屋の一番後ろで部屋を見渡していた。

「……そろそろ私の考えも話しておこうと思う」

赤坂は話し出した。

「以前にも話したかと思うが、高雲の街は、御剣神社の寺社町という側面だけでなく、反幕の意思が強かった公家を住まわせて監視するという役目も持っている。つまり、この街の最高権力者である高雲所司代の役目は、公家の監視も含まれているということだ」

「……公家が怪しいと、赤坂様も思うのですか?」

遠子が尋ねる。赤坂はゆっくり頷いた。

「御剣神社の神器強奪の報は、こちらにも届いてはいた。しかし、あの時期、現在の倭華戦争に乗じて動こうとする公家の監視に人員を割いていたのでな。……動くに動けなかったのだ。だが、ようやくというかな、幕府に叛意を持つ公家の割り出しをある程度出来てきた」

「……天乃宮は?」

雪風が問うた。

「無論、入っておる。天乃宮家は、神皇家の遠縁に当たる由緒ある家柄で、倭国では数少ない裕福な公家だ。どうも先祖伝来として持っている土地に、隠し銀山があるらしく、それによって利益を得ているらしい。銀山の個人所有は幕府の法に違反する。その証拠さえ掴めば、天乃宮を取り押さえることは可能だ」

「銀山か」

与一が反応した。

けして、借金を背負う者ゆえの羨望のため息ではない。決して。

「……しかしそれを調査するにしても、人員が不足しているのだ。出来ることなら、お主達に頼みたいと思っておる。もし、頼まれてくれるのであれば、公儀隠密としての地位と必要なものの手配は、約束しよう。お主達でもいいし、お主達が信用できる仲間を紹介してくれてもいい」

「その場所はどこにあるのですか?」

朧が尋ねた。

「天乃宮の所領にある明道半島沖の小島だ。恐らくは、天乃宮の私兵や邪陰どももいると思われるので、くれぐれも気をつけなければならぬ」

赤坂の話が終わったのを見計らい、次に口を開いたのは雪風だった。

「……邪陰の目的と居場所の検討がついたのですから、われわれだけでなく、専業の人々も集められないのでしょうか?」

邪陰の数は多くても100名を超えてはいないだろう。

自分達ばかりでなく、応援を頼んで、医師や書生、狩人等を集めることが出来るならば、我々の勝機も固い。

しかし、赤坂はそれをやんわりと否定した。

国境での戦いで大量の人員が裂かれている。さらに、人々の多くを徴収して移動をさせるには時間も金子もかかるし、争いが国内で起こるのではないかと人民を不安にさせてしまう。

大事にならずに済むのであれば、それにこしたことはないのである。

日記からの抜粋

2003.10.20 mon

『東奉幻獣記』の第3回物理リアクションが到着しました。先週金曜日の深夜24時06分にメールによるものは既に発信されていたという噂もありますが、市民、噂は反逆です。

さて、前回のアクションですが、失敗することはわかっていました。「公権力を用いて事件解決のために各種専門家を登用する」という行動ですので、これが認められてしまうと、他のPCさんの活躍の場を失わせてしまうからです。問題なのは失敗の仕方。プレイヤーレベルでは、公権力が動かないのか、動けないのか、それともマスターが何も考えていないだけなのか、それを確かめるという目的がありまして、結果が3番目だったならばDiv移動をしようと思っていたわけです。つーか、前回までの描写からしてかなりの確率でそうなることが予想され、どんなキャラクターを再登録しようかと既に考え始めていたりしたわけですが。

しかし、届いたリアクションでは、NPCから今まで動かなかった理由が述べられていました。正直、予想していたままの答えでしたし、「前回の時点でこの説明があったなら、1回無駄にせずに済んだのに……っ」という思いはあるのですが、文章量は前作レベルまで回復していましたし、PC同士の絡みも多く、楽しく読むことができましたので、次回以降もこのDivで、次回以降はシナリオに沿った形でプレイしていこうと思います。

っていうか、実は今回も担当マスターが変わってまして。状況設定に無理があるシナリオを渡された新人マスターの苦労を思うと、わたくし涙がとまりません。

2003.11.16 sun

ふと気付くと、明日が『東奉幻獣記』の第4回アクション締切日。

実は「まだ1回しかリアクション読んでねぇ」という駄目な状況にあるのだが、『東奉幻獣記』に関しては「できるだけ短く」をモットーにやっていこうかと思っている。同時参加キャラクター数を減らしてから、アクションを長くだらだらと考えるようになっているため、状況分析と行動決定をより短時間で行えるようにしたいのだ。というか、私のアクションは思い付きに頼る傾向が極めて高いため、その思い付きを作業的に見つけ出す訓練を行うことになる。

ひとまず、合い言葉は「いつもの倍の速さで、しかもいつもの倍のクオリティであげる!」であろうか。『華乃東萌嵐知希話』のスタートセットが届くのは、仕事が本格的に忙しくなる1月中旬。さらに、虎井マスターの同人PBMもその頃に始まる可能性がないと言えない。それまでにある程度頭を慣らしておく必要があるだろう。

『華乃東萌嵐知希話』に2キャラ分振り込んじまったし。

2003.11.17 mon

「しまったーっ! 今日って火曜日じゃないか。『東奉幻獣記』のアクション締切って昨日だよ。まぁ、物理アクションが届くのは水曜日頃の筈だし、第2回のときも火曜朝にアクション送信して間に合ったから、今回も大丈夫だよな、うん」

などという夢で目を覚まし、

「さっき夢の中でアクションを書き終えたばかりだというのに、なんでまた最初っから書き直さにゃならんのだ。っていうか、夢のと比べると文章量が半分にしかならんぞ。何か書き漏らしがあるのか?」

などとブツブツ文句を言いながらキーボードを叩き、

「そういえば、夢では私信までは書いてなかったな。とりあえず、Mさんの最初の行動が後半の伏線になっている辺り、なかなか展開が面白かった、ってなことを書いておくか……って、ちょっと待て。オレの今回のアクションって、おもいっきりMさんの二番煎じになってないか?」

終~~~~了~~~~。(今田耕司のマネで)

2003.11.18 tue

やはり書き漏らしがあった。_| ̄|○

第04回 影『鼓動』(鈴隼人マスター)

アクション

目的

他の人達が高雲を離れる間、赤坂の警護を全うする。

動機

影幻衆の里と銀山のどちらに向かうにしても、自分には長旅を行えるだけの体力がないため、途中で足手纏いになる可能性が高い。

また、両親が共に華国に行っている以上、妹達のみを家に長期間残しておくことはできないから。

リアクション

その様子を眺めつつ、赤坂はやはり護衛の藤白 雪風(フジシロ ユキカゼ)と共に館の縁側に腰掛けていた。

「明日には高雲に戻らねばならない……頼むぞ」

ため息と共に赤坂は告げる。

いくら家族が心配だからといって、勤めを休むわけにはいかないのだ。高雲の町で赤坂が目を光らせていなければならない連中は少なくない。

「……赤坂様にも護衛が必要です」

雪風よ、わしが死んでも代わりはおろう。が、家族を奪われればわしは存分な仕事が出来るとは限らぬ……」

赤坂は茶をすすり、青い空に視線を向ける。沈痛なため息がひとつ漏れた。

雪風はその横顔をしばらく見つめていた。

「赤坂様、……ご家族が大切なのですね……」

「無論だ」

「もし……」

愚問かもしれない。そう思いつつ、雪風の唇は言葉を発していく。

「もし、ご家族を人質にとられたら、赤坂様は民と家族どちらを選びますか?」

「……」

赤坂の視線が、刹那険しく光ったように思えた。

意図を誤解されてはならない。雪風は、さらに続けた。

「私も……私の……かけがえのない妹達を守ってきたつもりです。けれど、彼女達がもし……危険にさらされるようになったら……どうなってしまうのだろうと考えてしまって」

赤坂の周りには今、いろんな人物がいる。

素性もさまざま、信頼に足ると雪風が思っている人物ばかりでないことは確かだ。

守る物を持つ彼女にとって、守る者を持たない存在というのは、何を心の基盤にしているのか推し量ることができず、どう信用していいものやらという思いもあった。

けれど、それらをすべて受け入れつつ、さらに守るものを持つ赤坂という男。

彼がどう考えているのか、それを純粋に知りたかったのだ。

それらを全て話すと、ようやく赤坂は表情を和らげた。

「……一つだけ、雪風とわしには違うところがある」

「はい」

「私の仕事は高雲の町の安寧を保つことだ。そして、その仕事で食い扶持を得ているのだ。私の家族も同様にな。……つまり、私が満足でない仕事を行わないのであれば、私も、私の家族も生きている資格がない……そう思わぬか」

この人は。

雪風は赤坂を見つめた。その真剣な眼差しに苦笑するような笑みを浮かべ、赤坂は肩をすくめた。

「……常日頃はそう考えておる。しかし実際はどうなるやら……わしも想像ができん」

「赤坂様」

雪風……おぬしはまだ自由じゃ。時がきたとき、そのときに後悔しない選択を選べばよい。道は一つしか常に選べないものじゃ」

「はい……」

この人は……。

雪風は赤坂を見つめ続けた。

この人を守り続けることこそ、今の私の道だ。彼女は自分に心の中でそう告げるのだった。

湯気の彼方。

夕餉を終え、赤坂邸の広い風呂を間借りする女性陣である。

勿論、護衛の任務の途中である。何度も断っていたのだが、浅井や他の護衛達もよく勧めてくれるため、断りきれずにしばしの一呼吸となった。

柚子をぷかぷか入れたお風呂を沸かした日は、屋敷に勤める者は皆、入浴をしなければいけないという決まりがあるとのことである。

「……王仁丸さん、お着物とても似合って……ましたよ」

湯気の向こうで微笑むのは雪風か。

「そうか?」

桶で湯をかぶりつつ、王仁丸は苦笑する。

昔とったキネヅカ、……意味は違うだろうけど、そんな単語が頭に浮かんだ。

「言葉使い以外はお作法もきちんとされてましたし」

千佐都も和やかに言う。

「……医者先生、お世辞いっても何も出ないよ」

「あら、お世辞なんかじゃ……」

湯船に戻り、王仁丸はかぶりを横に振った。

「いかん……な。護衛で来たっていうのに、ここはなんというか……いい家庭過ぎて……殺伐と出来ない」

娘達は清らかで明るく聡明で、奥方も美しくよくできた婦人。絵に描いたようなよい屋敷だと思う。

「本当ですね……何となく妹達や両親に会いたくなりました……」

雪風が小さな声で囁く。

「おふたりにお願いがあるの……」

千佐都は意を決したように王仁丸と雪風に告げた。

「? なんだい」

「……もし影幻衆の人が現れたら、命をとらないで欲しい……。これ以上、人が死ぬのを見るのも、あの娘さんたちに見せるのも辛いです……」

「……」

雪風と王仁丸は互いの顔を見やった。

千佐都の気持ちはとてもよく分かる。

けれど、戦いの場の中でそれだけの余裕が自分達にあるだろうか。

それに例えトドメを刺されずとも、彼らは……影幻衆は皆、自らの仕込み毒で果ててしまうのだ。

「そう出来るよう……努力します。医者先生」

雪風が微笑んだ。

王仁丸も頷く。確かに、この幸せな家庭で暮らす彼らには見せたくないと思った。

死に果てた者のあの姿を。恨みのこもった眼差しを。

叶うならば……の話だけれども。

その時。

ズゥゥ……ンッッ

建物の下から突き上げるような衝撃が襲った。

「何!?」

雪風が立ち上がる。

建物のどこかで悲鳴が響いた。

王仁丸と千佐都も続けて立ち上がる。彼らは迷いなく湯船から飛び出していった。

建物が揺れ、蜘蛛たちが破壊活動を始めたのがわかる。

響きわたる使用人達の悲鳴。

「……」

泣き喚くのをやめて息を殺す娘達。奥方も赤坂も顔色が青ざめている。

部屋の隅では、刀を握った浅井が膝をつき、いつでも飛び出せるように用意していた。

刹那……。

部屋に突風が吹き込んだ。

舞う襖板。

煽られ、赤坂がよろめく。

娘達は悲鳴を上げた。

「ふぉーっふぉっふぉっ」

蜘蛛にまたがった雲爺は、その上から飛び降り、娘達に手を伸ばす。

「さあ……ワシと一緒に来るんじゃ……」

小刀を見せ、首元に当てつつ、辺りを見回して彼はいやらしく告げた。

「華子っ!」

赤坂が叫ぶ。

「お父様っ!」

つかまった少女が父の声に反応した。

と、同時に、少女の手が、小刀を持つ雲爺の手の甲にすっと伸びた。

激痛が雲爺の腕に走る。

「うごおっ」

「……この変態ジジィ!」

叫び、娘の腰から鞘がはじかれる。抜き打ちの剣は、とっさに身を避けた雲爺の鼻先をかすめた。

さらに二番目の娘らしいのが雲爺に向かい駆けた。白い光がその腕の袂で光る。

「蜘蛛やっ」

叫ぶや否や、蜘蛛の上に雲爺は飛び乗った。

そしてその鋭い前足を、二人の少女の真上に浴びせた。

当然のごとく、少女達は右と左に上手く避ける。

「ほっほっほっ……オマエさんがた……赤坂の雇った者か。だまされるところだったわい」

「今頃気づいたか……遅いぞっ」

王仁丸は叫び、剣を抜きながら走ると、畳をけりつけ、蜘蛛のうえに飛び乗ろうとした。

「うぬっ!させるかっ」

蜘蛛は白い糸を吐く。絡まり思わず顔をそむける王仁丸。その上に再び蜘蛛の爪が迫る。

「危ないっ!!」

今度は雪風がはじいた。しかし蜘蛛の足は1本ではない。

次々と四本の足が、王仁丸と雪風を翻弄するように振り回される。

逃げ惑いつつも、赤坂と奥方を気遣わねばならない。部屋の隅に追い詰められ、二人の表情が青ざめた時だった。

天井がきしむ音がした……。

刹那。

板が割れ響く音と共に、貴理が天井から飛び降りて、その蜘蛛の体に深く武器を……彼の武器は鉄の扇である……を叩き込んだのだ。

言葉にならぬ高い悲鳴をあげる蜘蛛。

続けて、その瞬をつき、部屋の隅にいた浅井が走り、蜘蛛の足を数本切り落とした。

さらに……。

庭先ではバシュッという鋭い轟音が響き渡る。

「なんじゃっ!」

まっ先に雲爺が振り返る。

屋敷の庭園の岩場に設置した弓発射機を使い、伝明寺 権造が蜘蛛に向かい、矢を放っているのだ。

その衝撃たるすさまじく、蜘蛛はあっという間に倒れていく。

「……これぞ名づけて夏春都!(ゲパルト)だっ!! 快調じゃねえかっ!」

当初の計画とは違い、移動式にしたり設置も平坦な場所は難しいと、色々諸問題はあったものの、強い武器を作ったことには変わりない。

多少……強すぎるきらいはあるかもしれないが。(大きな声じゃいえないけど、屋敷まで一部壊れちゃったとか)

「な……なにおう……」

雲爺は呆気にとられてぽつりと呟いた。

「い、いかん。おぬしらの作戦には巻き込まれぬぞ。邪魔はさせぬ! 出でよ! 我が影幻衆!!」

叫ぶや否や、次に出てきたのは忍びの……人間達であった。

短刀を持ち駆け込んでくる忍び達を貴理と浅井に任せて、王仁丸と雪風は、娘達と奥方を連れて屋敷の廊下に飛び出した。

そのまま玄関まで駆け、外に飛び出し、納屋に彼らを入れる。

「けして……外に出てはいけません」

「わかりました」

雪風の言葉に頷く奥方。

雪風はそれを確認してから、扉を閉めた。

「いくぜっ!!」

「ええっ」

雪風と王仁丸は地面を蹴った。

はだしの足に、乾ききらない髪は冷たかったが、そんな文句を言える場合ではない。

蜘蛛たちに向かい彼らは駆けた。

一匹でも多くしとめるために。……医者先生との約束が二人の脳裏を駆けていた。

けれど、そんなことを言っている場合ではないのだ。

これは戦いだから。

自らも命を賭けて闘う……場所なのだ。

夏春都の矢が放たれ、二人の侍は駆け巡る。

雲爺が蜘蛛を撤退させたのは、それから程なくのことだった。

「……一人……二人……」

半壊した赤坂邸の庭で、千佐都は茫然と立ち尽くしていた。

なんで人は死ぬのだろう。

そして自分はそれに対してなんて無力なんだろう。

影幻衆の者の死体は四体残っていた。貴理や浅井の手によるものであり、自ら命を断ったものではない。

なので薬草は役に立たなかった。

他にも崩れた建物の下敷きとなり、何人もの使用人の人が亡くなった。

「医者先生!」

雪風の声に振り返る。

「生きている人の……手当てをしてください」

雪風は真っ直ぐに千佐都を見つめて呟いた。

「はい……」

千佐都は頷く。

そして屋敷の中にかけていった。

「……このたびはご苦労であった」

王仁丸、雪風、貴理、権造、千佐都を前に、赤坂は深く頭を下げた。

「お主らの活躍……本当にありがたく思う……。まったく被害がないというわけには行かなかったが、娘たちを誘拐されることはなかった。これは一重に皆に感謝せねばならない……」

「赤坂様、そんなっ」

彼らは思わず膝をたて、頭を下げる赤坂に驚くのだった。

赤坂は顔を上げ、苦笑する。

「……強がりは言うたものの、本当は心配でたまらなかったからの……。娘御たちの身に何かあれば、私は……どうなっていたことやら」

深く吐息をつき、茶をすする赤坂。

「ご無事で何よりでした」

千佐都が微笑んだ。

「まだ怪我に苦しんでいる人がいますので、私はこれで失礼しますね」

「いや、しばし待ってくれるか……」

赤坂は、彼らを見回した。

「おぬしらに話しておきたいことがあるのだ。……まずは、皆の今回の働きにより、「隠密同心」として君達を雇い入れたいと思う。とはいえ何か変わるというわけではないのだが……正式な地位を得たと思ってくれていい」

「隠密同心……」

貴理が低い声で呟き、クスクスといやな笑い方をした。

「……なんだか愉快な名前じゃないか。いいね……」

「そう言ってくれるか」

赤坂も低い声で笑った。そして、もう一度前を向き直し、続きを語る。

「……また邪陰に関してだが……新たな情報が手に入ったから、話しておこうと思う。倭国の北部の方に、「天泉(あまいずみ)」という小さな隠れ里があるという。その里の近くの山では、特殊な鉱石が採れるという言い伝えがあり、その石で打った彼方は不思議な力を持つということで、その筋では有名な場所として知られてもいる」

「ほう……特殊な鉱石か」

それで鋸やカンナを作ったら、さぞやよく……と考えたのか、権造が関心を持ったように呟く。

「また……かつて魔皇帝ハクワンが数多の邪陰を率いて、反乱を起こした時、邪陰のみを斬るための刀が鍛えられたという話があるのだ……とはいえ、その刀の製法はもう失われてしまっているということだが……」

「邪陰のみを切るための刀……」

王仁丸は呟いた。

それがあれば、もっと簡単に邪陰を退治できるのだろうか。

……あんなに被害者を出さないうちに。

日記からの抜粋

2003.12.10 wed

さて、メールで『東奉幻獣記』の第4回リアクションが届いています。

  1. 都に住む赤坂(NPC)の家族を護衛する。
  2. 佐渡(仮)の隠し銀山を調査する。
  3. 忍者の隠れ里を調査する。

前回のアクションリストは、大きく分けて上記の3つ。

1番については、「赤坂の家族が狙われている」という情報は、敵側近くにいるPCしか知らないことで、それが必ずこちら側に伝えられるという確証はありませんでしたので、選択は無理。2~3番については、今まで剣技を磨いてきたのはあくまで街中であるため、野外活動は極めて不慣れの筈、また、能力値の「生」がTRPGのVitarityに近いものだとすると、「生:2」では遠出を行えるだけの体力もない筈と判断し、やはり選択から除外。結果、リストにはなかった「他の方が高雲の町を離れている間、赤坂を護衛する」というアクションを掛けました。他の方との行動の差別化を図ると共に、劣っている部分を個性として強調しようという魂胆です。

さて、結果はどうなったかな、と「Ctrl+F」で名前を検索したところ、赤坂と一緒に都に行き、他のPCさんと共にその家族を護衛していました。

…………え?

前回、「赤坂が都に行く」なんて話あったっけ? ひょっとして俺、重要事項を読みのがしてた? と、頭からリアクションを読み直したら、以下のような記述を発見。

高雲の町で起こっている陰謀の為に、彼の家族が危険に晒されている。

御堂貴理が、極秘裏に天乃宮の屋敷へと忍び入り、その目にしたのは赤坂邸の詳細に渡る見取り図と、彼の一日の行動を記した覚書であった。

彼はそれを赤坂に伝えた。

刻は急を告げるべきと訴える情報である。赤坂は身辺の者達に頼み、早馬を駆けさせ、また自身も大永都へと向かうことにしたのだ。

これは、

  1. 「赤坂の家族を護衛する」を選択する人が必ずいる。
  2. その行動を採用するには、「家族が狙われている」ことを赤坂側が知っている必要がある。
  3. その情報を得ようとする行動は、ほぼ間違いなく採用される。

ということを見越しての行動が、見事に成功したということでしょうか。1番を真っ先に選択肢から外した私とは大違い。思わず拍手を送りたくなるアクションです……と言いたいところですが、そんな見せ場が結果としてのみ書かれていることを考えますと、「マスターが仕方なしに動かした」と見るのが正解であるように思えます。もっとも、『東奉幻獣記』は個別リアクションが出まくっていますので、油断は禁物ですが。

P.S.

私は1度も個別を貰ったことがありませんが何か?

2003.12.18 thu

ふと気付くと、来週月曜日が『東奉幻獣記』の第5回アクション締切日。

実は「まだ自分のキャラクターが登場するシーンしか読んでねぇ」という駄目な状況にあるのだが、『東奉幻獣記』に関しては「できるだけ短く」をモットーにやっていこうかと思っている。同時参加キャラクター数を減らしてからアクションを長くだらだらと考えるようになっているため、状況分析と行動決定をより短時間で行えるようにしたいのだ。というか、私のアクションは思い付きに頼る傾向が極めて高いため、その思い付きを作業的に見つけ出す訓練を行うことになる。

――などと以前の日記を使いまわしている辺りで、帰宅時間が10時近くになりつつあって時間が全然取れませんよ奥さん、という現状を察して頂けると幸いです。

2003.12.22 mon

武家の者として行動してきたつもりだったのに、武家NPCから「一つだけ、雪風とわしには違うところがある」「おぬしはまだ自由じゃ」などと言われ、「あなたは救世主ではないわ」と言われたネオのようにショック(2点)を受けている『東奉幻獣記』の第5回アクション締切がやってきました。

リアクションを読み、「敵方NPCを闇討ちする」という行動がすぐに思い浮かんだのですが、キャラクター設定上、あまり無茶なことは行えません。「家族がいる」ということがここまでアクションの幅を狭めることになろうとは、海のリハクの目をもってすれば事前に見抜くことができたかもしれませんが、私には無理でした。いや、その足枷をこそ楽しもうと思っていたのですが、ちょっと見通しが甘かったようです。

早い話が大失敗。

というわけで、『華乃東萌嵐知希話』『666~Number of the Beast~』ではもっと自由に動かせるキャラクターをさあ作ろう今作ろうすぐ作るぞ、と野望の炎を燃やしているのですが、それよりも締切まで残り4時間を切った目の前の真っ白いアクション用紙はどうしたものか。

第05回 影『闇と月』(鈴隼人マスター)

アクション

目的

蝶子を助け出す。

動機

天乃宮が失脚した後では、見つけ出す手段が失われる可能性があるため。

リアクション

高雲 所司代の館。

赤坂 源吾(あかさか げんご)は、大永都から戻ると、精力的に仕事をこなしはじめていた。

大永都の赤坂邸から奪われた末娘・蝶子の行方は一層知れぬ、さらには、賊からの連絡もなかった。

また、天堂北斗からの、青ヶ島にて、潜入捜査をしていた那賀与一、篁遠子両名から助けを求める書簡が届いたことが知らされてもいた。

そちらへの人員として、大工(彼流に言うところのだいなみっくくりえーたー)の伝明寺権造(デンメイジ ゴンゾウ)、道士の朧(ロン)、そして医者の笹良雅(ササラミヤビ)を、向かわせたところだった。

「・・・・・・あちらもこちらも気苦労が減りませんね」

自分の事も振り返りながら、藤白 雪風(フジシロ ユキカゼ)は苦笑を浮かべた。

白く透いたような肌に艶やかな黒髪を持つ少女侍だ。

「おぬしもな」

縁側で諸侯との書簡に目を通していた赤坂は、少し疲れたような表情で微笑んだ。

雪風が、彼の護衛役として側に仕えている時間以外は、失われた蝶子の行方探しに懸命なことを知らぬ赤坂ではない。

「公家達の様子見ですか?」

雪風は身を乗り出して尋ねた。

普段であれば、主人の仕事の書簡を覗き見るような真似はしない。

けれどあせる気持ちが彼女の体を、無意識に前のめりにさせた。

「うむ」

赤坂は吐息をつく。

「まあ、ほとんどは高砂に任せてある。全く、柔軟なお方だ。すっかりわしを寝返った気でおるようじゃ」

赤坂は明るく笑ってみせた。

「寝返る?」

雪風は表情を強張らせた。高砂というのは、有力公家の一人だが、赤坂とは懇意の中。そして数少ない赤坂が気を許せる者の一人だった。

「無論、冗の談とかく」

赤坂は笑いながら言った。

「商人の杜松達の入れ知恵よ。あやつ、わしにまで芝居に乗れと言ってきた。人前で、高砂と仲の悪い振りをせえと」

「それで、どうされるのですか?」

雪風が困った表情で聞き返した時、背後の襖が開いた。赤坂の忠実な家臣である浅井 平四郎(あさい へいしろう)と共に戻った、御堂 貴理(ミドウ キリ)が戻ってきたのだった。

「御堂さん」

雪風は彼を見上げた。共に蝶子の行方を追っている仲間だった。それまでの疑心などを忘れたわけではないが、今は心の奥に鎮めてある。

「……六ノ園も空振りだった」

貴理は座り込むと、無遠慮なため息をつく。その横に音もなく腰掛け、浅井が呟いた。

「森城、雪岡、六ノ園……高砂様から知らせていただいた三人の公家の屋敷には蝶子様はいらっしゃらなかった。かくなる上は、天乃宮の屋敷か……?」

「それは……」

雪風は赤坂を見た。

勿論、最大に怪しいのは天乃宮だ。

しかし、赤坂は頷かなかった。

「まあよい……蝶子を攫った賊の目的が、接触を図ってきたときに考えればよいことじゃ。今は……銀山の連中の無事と、高砂の連絡を待つことのみか」

「それでは……!」

雪風は赤坂を見つめた。

蝶子の捜索をするな、ということか。

まだ幼い4歳の娘だ。父を思い、母を思い、姉達を思い、今こうしている間にも、泣いているやもしれない。

同じ幼い妹達を抱える身としては、雪風にはとても耐えられないことのように思えるのだった。

(……やはり腑に落ちない気がする)

藤白 雪風は、赤坂邸の部屋で、解せぬ思いに包まれていた。

視線の先には、茶をすする赤坂が見えた。

仕事もすっかり今日のところは終わったらしく、のどかな冬の午後の庭を見やり、煙草を置いて、代わりに茶を一服していたらしい。

「何か聞きたそうじゃの」

雪風と視線があうと、赤坂は破顔した。

「はい。聞きたいことがあります」

雪風は赤坂の側に膝を寄せる。

「腑に落ちないのです。……こないだの一件でどうやら天乃宮と影幻衆に繋がりがあることがわかりました。しかし、影幻衆は、邪陰の力を持つ者であり、既に御剣神社での大罪を起こしています。公家たるものが、そのような者達と手を組んだりするものでしょうか」

「……ふむ、そうじゃの」

赤坂は腕を組んだ。

「天乃宮は影幻衆を使っているのではなく、使われているという可能性はありませんか?」

「使われているか……ふむ」

「例えば……家族の誰かを捕らわれたとか……赤坂様、天乃宮様にはご家族はいらっしゃられないのでしょうか?」

「奥方殿は既に亡くなられておったという話だが、息子殿が一人いらっしゃるという筈だな」

赤坂は呟き、「……そういえば」と続けた。雪風もさらに尋ねる。

「その息子さんは、今、どちらへ? 高雲におられるのですか?」

「いや、留学中ということであったはずじゃ。随分幼い折から、外に出されたということで、その時は一時、変な噂が広がったものだった」

「変な噂?」

「……とある方とあまりにも似通っているため、外に出された、とな」

あまりにも突飛すぎる噂であった為、それはすぐに立ち消えた風聞であった。

天乃宮からの報告は、息子は生まれつきの病で肺を患っているため、田舎の親戚を頼ってそこへ出した、というものだった筈。

二十年前以上の話で、赤坂もこの要職につく前の話だ。

「あのお方とは?」

雪風がさらに問う。赤坂は苦笑しながら告げた。

「大永都の開明王様……とな」

「な、何!?」

その報は突然もたらされた。

赤坂は思わず立ち上がり、使者を驚愕の眼差しで見つめた。

「天乃宮が失踪した!?」

「はい! 既にお屋敷はもぬけの空であったと。調度品などはそのまま置いてあったそうですが。家人一人残らずいないそうです」

「……どういうことだ……」

「銀山の帳簿について、追求されるのを避けたということでしょうか?」

雪風は蒼白になりながら、赤坂を見上げた。

「……そうであろうが……しかし。いやに胸騒ぎがする」

赤坂はその場に再び座りこみ、深いため息をついた。

その夜。

高雲の町から西に十里ほど離れた村で凄惨な事件が起こった。

一晩にして、十二戸の民家が破壊され、まるで獣に食い散らかされたような三十余人の死体が発見されたのである。

人々は、化け物の仕業と噂した。

そして、この日をきっかけとして、この化け物はいたる場所に現れ、噂を広めることになる。

日記からの抜粋

2004.01.21 wed

数日前から内容を思い出そうとしているのですが、前回どんなアクションを掛けたのか全く思い出せない『東奉幻獣記』の第5回リアクションが届きました。結局自分に負け、リアクションを読む前に一応アクションを確認してみると、具体的な手段・行動が全く書かれておらず、「そりゃ思い出せるわけなかんべや、つーか、なんでこんなアクション掛けてんだよ俺は」などと思ったり。

最近ではすっかり「へっへっへ、物語を動かしてやるぜぇ」とかいった野望は持たずに徒然とアクションを書いているわけですが、このままでは「コイツ、なんのためにゲームに参加してるんだ?」とマスターに思われそうな気がしますので、つーか、俺が思い始めたので、次回は少しはっちゃけたアクションにしようと思ったのですが、締切3日前に『Fate/stay night』が発売されるんで、おざなりになる可能性極めて高し。

第06回 影『高雲』(鈴隼人マスター)

アクション

目的

今までの事件と西の村で起きた事件との関連性を探る。

動機

結局後手でしか行動できない悔しさと御剣神社で友人を殺されたことを忘れかけていた自分への怒り。

リアクション

藤白・雪風(フジシロ・ユキカゼ)はその崩壊した村の前に立ち尽くしていた。

30人が一夜のうちに命を落とした村。

焼け焦げた黒い柱からは、まだ煙が立ち昇っている。

「……酷い」

ぽつりと言葉が口からこぼれた。

雪風

赤坂が呼ぶ声が聞こえる。

けれど、しばらく雪風は頭を抱えたまま、その場に俯いて座り込んでいた。

……泣いていたのかもしれない。涙は出なかったけれど。

雪風、大丈夫か……?」

赤坂の足音を聞き、ようやく雪風はよろりと立ち上がった。

「はい……」

死体なら見慣れている。

けれど違う感慨が彼女の胸に起こっていたのだ。

この村で殺された人達はきっと、平和で暮らしていたのだろうと思ったから。

突然大きな力で突然、家を、家族を、幸せを破壊される悲しみと恨みと痛み……。

御剣神社で殺された友人の事も思い出し、雪風は無力感にさいなまれていた。

「それならよいが……無理はするな?」

雪風の願いを聞き届け、彼は自分の職務とは管轄が違うものの、押野村というその事件の起こった場所へと雪風を伴い訪れていた。

「生存者は……いましたか?」

「……この近くの村で手当てを受けているそうだが」

「赤坂さん!」

馬の蹄の音とともに、知った声が響いた。

雪風と赤坂が振り返ると、朧(ロン)が馬を駆り、二人の側に近づいてくる。よほど走らせ続けたのだろう。馬は息もあがりすっかり汗ばんでいるようだ。

「朧か……」

「どうしてここに?」

赤坂の姿があるのだ。不思議に思い問いかけたが、朧はすぐに愚問だったな、と思って苦笑した。

この事件に天乃宮が関係しているのではないか、赤坂もそう思ったからに違いない。

さらに、その後に蜷川・慎之介(ニナガワ・シンノスケ)、橘・千速(タチバナ・チハヤ)もその場へと到着する。

赤坂とは面識のない二人であるが、氷河・誠志狼(ヒョウガ・セイシロウ)の紹介状を持っていたので、すぐに合流することが出来た。

「……高雲では随分な騒ぎになっているようですね」

馬から下りて、慎之介が告げると、赤坂はゆっくり頷いた。舶来の眼鏡をかけた穏やかそうな若者だ。

「あちらで赤坂様をお尋ねするつもりだったのですが、こちらに来ていると伺いまして」

「……じっとしてられなくてな……」

赤坂は苦笑した。

「やはり関係があると?」

慎之介が尋ねると、赤坂は首を横に振る。

「……解らぬ」

「赤坂殿……我々は狐日神社から戻ったのだ」

艶やかな黒髪に碧色の瞳の巫女、千速が赤坂を真っ直ぐに見つめた。

「……狐日神社の巫女曰く、『過去に捕らわれ、自分を見失った小賢しい奴が触れた、けして揺り起こしてはならぬもの』があると」

「そうか……」

赤坂は千速の言葉を頷きながら聞く。

「ハクワンやダイカ時代についての情報が最も充実しているような文書がありそうな倉庫を知りませんか?」

慎之介が問うた。

「そうじゃのう……御霊神社かもしくは……」

その時、役人達が数人赤坂に報告を告げに集まってきた。

赤坂は返事を返し、それから慎之介に慌てて言った。

「もし、よければ御鏡神社の乃菊殿のところに寄ってみてもらえぬか。……いや、何かあるわけではないのだが」

御鏡に凶兆があった、そうだから。

彼は役人達の手前でそれを口にはしなかったが、心で思いながら慎之介に言って去った。

御鏡神社の書庫はすでに調べを尽くしていたし、新たな情報をそこで得られるとも思わないのだが。

屋敷に戻った赤坂を見送り、雪風は以前、被害にあった三つの村の調査を続けていた。

焼け焦げた嫌なにおいに、血の匂い。

このむせかえる場所に少しもいたいとは思えなかったけれど、再びを防ぐためには必要なことだ。

「……化け物の大きさは、人を遥かに凌駕する大きさとか……」

千速の報告に頷き、雪風は破壊された村を眺める。

「何か弱点のようなものがあればいいのですが……」

「そうだな……」

強い力を持つ敵であることは明白。

「俺たちの力でなんとかなります」

朧が力づけるように微笑んだ。

「それに……次の襲撃地点の予想も可能だと思うんです。さっき、刀也や与一とも合流して少し話したのだけど、この二つのうちのどちらかだと思うんですよね」

地図を広げ、朧は事件の起こった場所を指し示す。

高雲の町を中心にして、三箇所の事件発生地点に線を引く。

その線のどれもが同じ程度の長さだというのを、皆が理解してから、さらに朧は続けて線を書き足した。

すると、南に頭を向けた五芒星が完成した。地図の上では、頭を逆さにしたように見える。

「……なんと」

陰陽術の心得がないものでも、それが異常な事とはすぐに気付くことができた。

「それで……残る二つの村とはどこであろう?」

顔色を変えて千速が問う。

朧は頷いた。

「南東の『駒尾村』と、南の『雪帆町』ですね。……ただ、どちらが先か、これはわかりません」

「……」

雪風と千速は思わず視線を見合わせた。

分かれて見張りをたてるとしたら、それは大きなリスクをも伴うことだ。とはいえ、片方に人を集めて、もしもう片方が襲われたりしては後悔するどころじゃないだろう。

「ねぇ、みんなー!」

瓦礫の付近を捜索していた葉月・希望が、集まっている仲間の元に駆け寄ってきた。

「……どうしました?」

朧が希望を見つめる。

「あのね、一つ気付いた事があって……」

葉月は目撃情報などを集める事に奔走していたのだが、その合間に気がつき、気になっていることがあったのだ。

「……敵は一体じゃないかもしれないよね……。最初の村と次で聞いたのが、「赤い服を着た狒々」だったでしょ、この村を襲ったのは「紫色の牙をもつ蜘蛛」らしいの」

「本当か、それは?」

千速が問い返す。

希望は大きく頷いた。

「……少なくとも二匹いるんだと思う」

「……二匹同時に他の村を襲うこともあるのですね……」

ため息をついて雪風は地図を見つめた。

空は今日も快晴だ。天気のいい夜が続いているというのはいいことかもしれない。

今夜から手分けして二つの村の見張りをすることを彼らは決意した。

「……天乃宮の息子の噂……本当であったとはな」

高砂は、ため息をつきながら、赤坂が御堂貴理から伝わった情報を聞いた。

「御霊神社の話では、比呂という青年、ハクワンを崇拝しているということです。……そうだな、北斗」

「はい」

高砂の側に仕えた北斗が頷く。

「……青ヶ島に幽閉されていた若者ならばこその巡りあいかもしれぬの……」

乃菊が希望にお屠蘇をお酌しながら呟いた。

「……おとと……そのくらいで♪」

希望は深刻な話と知ってながらも、ちょっと明るい声で場を和ませる。

「明るい報せといえばな……蝶子は影幻衆の里にいるらしいと、その公家は話したそうだ」

赤坂は苦笑いして場を見回した。

「……なに、娘御の居場所がわかったのですか」

高砂が表情を明るくする。場にいる者達は全員一気に表情を明るくした。

雪風だけが、すぐに向かいたい気持ちを窘められたのを思い出し、複雑な表情をしている。

「影幻衆の里らしい……さすがに場所まではわからぬが、命はあるらしいぞ……」

「何か取引をたくらんでいるのでしょうか?」

朧が尋ねる。

「……わからぬ。何かあれば、もう言ってきてもよさそうなものなのだが……」

赤坂は杯を見つめ、苦笑した。

「わからぬよ……」

日記からの抜粋

2004.01.25 sun

昨日届いた『東奉幻獣記』の物理リアクション。

1日遅れながら、データシートで成長具合を確認したところ、

幻獣の能力修正値が1ポイント上昇しました。

……私のキャラクター、幻獣を宿してないんですが。

「他には何かないかい?」

第07回 影『黄金龍』(鈴隼人マスター)

アクション

目的

比呂の行為を止めるため。

動機

己が目的のために簡単に人を殺し、力のみをもって支配しようとする者を許せない。

リアクション

駒尾村。

人口はさほど多い村ではない。農業が主な産業で、畑が広がる中にぽつりぽつりと家が建っている。

風景からしても、とてものどかで平和そうな村であった。普段ならば。

……けれど、その日、村は緊迫した雰囲気に包まれていた。

「逃げてください! 早く、早く!!」

藤白 雪風(フジシロ ユキカゼ)は馬で駆けながら、村人達にその村から脱出するように呼びかけて回っていた。

村から数里離れた場所に、伝明寺 権造(デンメイジ ゴンゾウ)達が避難所をこしらえてくれているはずだ。

あまり猶予は無かった。正体を知られた敵がどのような策に出てくるかも定かではなかったから。

「何が起こるというんじゃ?」

「この村はどうなるのです?」

不安を訴える人々に雪風「危険がこの村に迫っています。早く逃げてください!」としか告げる暇も無かった。

「……西側の村人の避難は終わりました」

蜷川 慎之介(ニナガワ シンノスケ)が告げに回る。

「ありがとうございます」

雪風は初めて小さく笑みを見せ、慎之介に馬上から視線を向けた。

この村の人々を囮にする必要はない。

一刻も早く退散させ、彼らを犠牲とせぬようにせねば。

雪風の思いを慎之介も理解していた。

駒尾村から山ひとつ離れた場所では、赤坂が手配した民間の有志による集まりの部隊、「有志隊」も続々と集合しつつあった。

その戦力は戸雲村に向けて最初は集められたものだが、商人・杜松の頼みもあり、駒尾村の防衛にもまわされていたのだ。

「……ひい、ふう、みい、……1番隊はこれで全員か?」

有志として集まってきた町民達は、迎え出たのが獣人化した少年とは思わなかったと、少し驚いた顔をしている。

しかしそれには気づかぬフリをして、那賀 与一(ナガ ヨイチ)は、その数を指折り数えて、近くで剣の素振りを繰り返している御子上 刀也(ミコガミ トウヤ)に話しかけた。

「村の北側に連れていって配置しようと思うが、どうかな?」

「全員か?」

避難所の設置の手伝いに少し残しておいてもらえると助かる、と権造が言っていたのもあるが、なるべく早いうちに邪陰に対する防衛線も引いておきたかった。

「それじゃ半分の8名だけ連れてくか……。2番隊がきたら全員連れてゆくとして」

「そうだな……」

刀也が頷くまもなく、与一は半数を連れて駒尾村の方角に進みだした。

視線で見送り、刀也は再び剣の修行に戻る。

まっすぐに剣を振り下ろすだけの素振りでも、そこに何か見えてくるものはあるのだ。

……真下。

彼は剣を止め、心の中でその名を呼んだ。

必ずや、倒さねばならぬ彼の敵の名だった。

宵の風に揺らされ、ちらちらと花びらが舞う。

再び剣が宙を切り裂くと、桃の花びらは二つに散った。

駒尾村の外れ。戸雲の方向を向いた一角に、彼らはいつしか集まっていた。

「月が出ましたね……」

蜷川慎之介は空を見上げ、雲間に浮かぶ銀の盆のような月を見た。

きっと今にも雲の渦にかき消えていくような空の色だった。

「……今宵は出るのでしょうか……」

同じく彼の傍で、その月の消え行くさまを眺めながら、藤白 雪風もぽつりと呟く。

二人の間を一陣の秋の風が過ぎていった。

「来るさ……」

御子上刀也が、刀を肩にかけながら歩いてくる。

「……間違いなくな……」

まるで確信のように語る刀也は、誰かを待つように、それも特別の人を待つかのように眩しそうに曇天の空を見上げた。

あの敵と会える。

何度か刀を交えた強敵だった。

今夜こそは負ける気もしない。

空は雲っていても、心は澄み切った空のように迷いはない……。

「……」

そんな刀也から、ふいと視線をそむけ、雪風は自らの膝を抱いた。

村の人々の避難は住んでいる。

村の周囲に、赤坂から渡された兵達を並べ、例え被害が出たとしても村ではない方向に向けた。

それから……。

「ここまでするとは思ってなかったぜ」

伝明寺 権造が、笑って雪風に話しかけた。

駒尾村の主なる家屋は、ほとんど先に壊していたのだ。敵に壊されてそれで被害が出て陰の気をばらまかれるくらいなら……いっそ先に壊しておいたほうが禍根も出ないというもの。

修繕に時間はかかるだろうけど、人の命には代えられない。

「……陽の気も、ここを訪れたときより増えています」

慎之介が微笑んで語った。

「明日になれば御鏡神社の人達が盛大な祓いの儀式をしてくださるということですし……、明日であれば完璧なのですけどね」

さすがに急が急を呼ぶような状況であったので、神社の儀式を執り行い陽の気を増やす儀式を行うことは難しかった。

人が去った土地はそれだけでも少し寂しい感じでもある。

しかし、慎之介が九尾狐の加護による太陽陣をそこにかけると、土地は変化した。決定的な変化ではないが、効果は高かっただろう。

「……酒盛りでもできるとよさそうですけどね、この面子だと」

苦笑する慎之介に、雪風はようやく小さく笑顔を見せた。

戦いなんて早くなくなればいい。

戦いを好む人が、彼女にはどことなく嫌気をさして思えていたのである。

「それはいいな……」

酒盛りに反応して、刀也が小さく笑う。権造も、頷いている。敵を目前にしての酒盛り大会など、想像するだけで陽の気を増やせそうだ。

「みんないい加減にしろよ?」

苦笑を隠さずに乱童 王仁丸が、村の反対側の道から出てきて言った。

彼女は東田 千佐都と共に、避難所から炊き出しのおにぎりを分けてもらってきていたのである。それに気づくといくつもの方向からうでが伸びる。

「たくさんあるからゆっくり食べろよな?」

「……昼間っからいろいろ働いたからな」

大きな腕で、おにぎりを次から次に口に放って権造が笑った。

建物を強化していくつもりの案を言ったのだが、それでも壊されてしまっては意味がないと、雪風が全部壊してしまうとういう案を出したのだ。

思い出のある調度も多いだろうし、村人達の避難活動もそれで時間はかかったのだが、田畑を残し彼らの住居の類は全て壊すことになった。

「……もうこの土地に悲しみはよせつけたくないのです」

雪風はきっぱりと告げた。

千佐都も隣で大きく頷いた。

「私も……もう誰も死んでほしくありません……」

今度こそは……助ける。

例え忍び達であろうと、必ず。

必ず……仕留める。

比呂はいないのだろうか……。

邸に閉じこもっていても、いまさらしょうがないというのに。

雪風は隠しきれない憎しみに包まれ、その場所に立っていた。

もうこれで終わりにしてみせる。

彼は、神社を襲い、村を破壊し、多くの命を奪っている。

一人でも見逃せばそれだけ、他の人たちの命を危険に晒すことになるだけだ……。

ふと、こんな憎しみに包まれた自分もまた、陰を発生しているのではないか……と雪風はふと思った。

しかし、彼女は小さく苦笑すると、それでも。と刀を握りなおす。

「この戦いは、終わらせなくてはならないから……」

「……太陽陣!!」

周囲の地面が光り輝き、そこに足を踏み入れた百足と蜘蛛が両方とも驚きの表情を浮かべる。

慎之介が放ったのは陽の気を増す結界。

火傷を負ったように、特に大きく踏み込んだ百足はのたうち苦しんだ。

「いまだ!!」

王仁丸が駆けつけ、その百足に破邪刀の一閃を打つ。

しかし硬い鋼の体が影響してか。もしくは、弱点が別にあるのか……。

雪風もまた蜘蛛に向かって駆けていた。

これ以上大地に血をこぼしたくはない。けれど、この変化した彼らに明日などあるのだろうか……。

雪風の足元の大地が光り輝いた。

慎之介が蜘蛛に向けて放った太陽陣が、彼女のいる範囲も含んだのである。

柔らかな、夏のこもれびのような陽の気のシャワー。

まるで、自らを励ますかのような柔らかな気配……。

「……」

雪風は迷いをたつように、その頭をめがけ、刀の柄を強く振り下ろす。

蜘蛛は大きく身を翻して、暴れだす。

刀を握りなおし、今度はそのやわらかそうな首元に向けて、雪風は柄で突き上げる。無論、急所ははずすが。

「ぐわぁっぁっぁああああああっ」

確実な手ごたえがあった。

蜘蛛は右往左往というように辺りを暴れだしはじめた。

「こっちじゃ、こっち!!!」

権造が叫ぶ。

彼が招くのは、邪封じの符の張られた簡易小屋である。

雪風は蜘蛛を追い、その小屋の中へと追い込んだ。

勢いよく扉が閉まる。

「どうだ……!?」

「……」

10を数える間もなく、扉を開く権造。

中には口をだらりと開けた明伯が倒れていた。

雪風は彼に駆け寄り、手首を取る。

「……生きてる……」

雪風はほっとしたように呟いた。

「本当か!?」

いまだ百足と四苦八苦している王仁丸が叫んだ。

「ええ!! 生きてます! その百足も早く!!」

「わかった!!」

王仁丸は百足の同じく頭を狙うことにした。

全体の大きさにしては小さな部分でもあり、狙いにくいけれど……。

再びの太陽陣を慎之介が放つ。

こげるような全身の痛みに咆哮する百足。そこに王仁丸は飛んだ。

頭を強く小太刀の柄で殴りとばし、ついでにその首を抱えて、思いっきり回転させると、……背負い投げが見事に決まった。

「嘘……」

やった本人も驚きの必殺技である。

しかもそこに、千佐都が駆け込んでくる。

刃のない小刀。それを高く彼女は掲げ、頭をめがけ、力を込めて振り下ろした。

「……!!!」

恐ろしい咆哮が辺りに響きわたった。

頭をつぶされたように見えた百足は、次の瞬間には何も怪我をしていなかった。

けれど、もうぴくとも動くことはなく、死んでしまったように見えた。

しかし……。

「あっ……」

千佐都は小さく声をあげた。

大きな百足の体はどんどん縮小化をはじめたのである。そして終いには六ノ園の形に戻った。……もちろん、彼も生きていた。

「……大丈夫ですよ、思ったほど、傷も深くありませんから」

「そうか……」

千佐都は手術を終えた手のひらを桶の水で洗い流しつつ、与一に優しく微笑んだ。

彼の乗っていた馬の手術を終えたのである。

今回、最もの重傷患者はこの馬であったかもしれない。

真下の毒も、すぐに毒消しは飲ませ、多分、数日もすれば目を覚ますだろう……。

百足と蜘蛛が倒されると、残りの敵たちは、恐れをなして逃げ出してしまった。与一は囲まれていたところを何とか切り抜けた形にはなったが、怪我をした馬が気の毒でほっとする間もなく、千佐都を呼びにいったのだ。

「それでは、私は戸雲に急ぎます」

慎之介が馬に跨りながら、皆に告げ、危急に去っていく。このことを仲間に伝え、また天乃宮別邸に住まう敵があるならば力になるために。

彼を見送りながら、疲れ果てた彼らはそっと大地に腰掛けた。

「……儀式は……阻止できたんだよな」

王仁丸がぽつりと呟いた。

「多分……大丈夫だと思います」

敵は村に一歩も入れなかったから。

雪風は微笑んだ。

「それなら……ハクワンの秘宝も完成しないってことだな?」

権造が腕組みをして、うんうん、頷きながら告げた。

「そうだといいが……大丈夫だよな」

与一が少し自信なさそうに苦笑する。

「大丈夫です……きっと」

千佐都が目を細めて彼らに笑いかけた。

今までの戦いとは違う。

誰も死ななかった。

怪我をしたものはいたけれど、村からは離れていた。

だからきっと大丈夫。

そう微笑んで告げる医者先生の言葉に、仲間達は「そうだな」と笑顔で頷き返すのだった。

第08回 影『それぞれの道』(鈴隼人マスター)

アクション

目的

事件の顛末を見届け、その結果に納得がいかない場合は、赤坂に沙汰の理由を尋ねる。

動機

天乃宮は、彼に賛同した公家とともに裁かれるべき。

これだけの惨事を起こしておきながら、お咎めなしとなっては、納得できないし、殺された人達に申し訳が立たない。残された家族の怒り、悲しみ、憎しみは何処に向けられれば良いというのか。

彼らが反省するは、人知れぬ地ではなく、牢の中。いや、それ以前に彼らは後悔はしていても、反省はしていないかもしれない。天乃宮は「これからはつつましく生きていきたい」と言ったという。多くの人達の『つつましい暮らし』を一方的に奪った者が言う台詞ではない。何も贖うつもりはないと言っているのと同じではないか。

正直なところ、自分1人が島に赴くことになったとしても、比呂を捕らえたい。しかし、自分は武家の者。私怨で罪を犯すわけにはいかない。

天乃宮の銀山や彼に賛同した公家の財産は、幕府預かりとなるだろうが、もし認められるのなら、殺された人達の供養や家族にあてがってもらいたいと思う。

リアクション

「……銀山に抑留、ですか?」

その言葉を聴いて、藤白雪風(フジシロ ユキカゼ)の表情が強張った。

「うむ……」

赤坂源吾(あかさか げんご)と共に、大永都へと馬で向かう道すがらの二人である。

雪風は、親友の墓参りの為に途中から進路を変えて行く予定であったが、途中まで彼の供を勤めていた。

最近の激務の為か、赤坂も最近少し老け込んできた気がする……。

「温情の判断が下ったようですね……」

雪風は重い溜息をついた。

比呂にとって生まれ育った場所での抑留。それは果たして、罪を問うといえるのか。

「……雪風はそういうだろうと思った」

赤坂は静かに笑う。

「これだけの惨事を起こしておきながら、お咎めなしとなっては、納得できないし、殺された人たちに申し訳がたちません」

「そうだな……」

赤坂は頷いた。

いくら死んだというのだ。

何の罪もない人々の死を、いくつ見てきたことか……。

雪風は足元からこみあがってくるような怒りを感じた。

「……全てを闇に葬り、何もなかったようなことにしてしまうというのも納得ゆきません……。殺された人達の残された家族の怒りや悲しみ、憎しみは何処に向けられればよいのですか」

「……」

憤りに両手の拳を握りしめ、まぶたをぎゅっとつむっている雪風

彼らが反省する場所は、人知れぬ地であってはいけないと思う。牢の中でなければ。

それ以前に彼らは後悔はしていても反省はしないかもしれない。

『つつましく生きていたい』と最後に残したという天乃宮。

つつましい生活を一方的に奪った者が言う台詞ではない……。

「それは幕府も分かっているだろう……」

赤坂は馬を止め、空を眺めながら呟いた。

「それでも、助けたいという者もある。……天乃宮を助けたいと思う者たちは、彼とともに銀山で過ごしてもいい、とさえ言ってるのだ」

「なぜそこまで……」

雪風は吐息をついた。

彼女には到底理解できない。

「……私は武家に生まれ育った者……幕府の令に背こうとは思わないけれど……」

雪風は赤坂をじっと睨むように見つめて呟いた。

「ひとりで島に乗り込んででも、あの親子に死んだ人たちの為に死を報いてやりたいと思います……」

それが当然だと思うし……。

彼らが生きて、これから何をしてくれるというのだ……。

空しさを抱えたまま、彼女はそう告げ、瞼を閉ざすとゆっくりと馬を進めだすのだった。

御鏡神社のある日の境内。

とても天気のいい、明るい青い空の広がる空の下、その境内にはたくさんの人々が集まっていた。

赤坂の家族や、青ヶ島に移住していた人々も帰ってきた。

あの忌まわしい事件から半年。

それぞれの道を歩んでいた彼らも、その嬉しい知らせを聞き駆けつけてきたのだ。

姿を見せなかったのは、宵薙 霧雨だけだった。

彼の消息は誰も知らなかった。

「そろそろ出てくるかな?」

侍として幕府に正式に務め始めていた北斗は、御剣神社から戻ってきていた遠子を振り返り微笑んだ。

「そうね……」

遠子は頷く。二人の見つめる先、そこから現れる筈の人物を胸を躍らせ待っているのだ。

「花嫁様、きっときれいよ。ちゃんと待ってなさいね、蝶子」

「うん! 姉様!」

赤坂家の娘達も着ている。上の姉のきくと華子は、花嫁の衣装の着付けを手伝っているらしい。

父と共に楽しそうに騒ぐその幼い姫君達を、少し遠くから眩しそうに見つめる黒装束の公家の青年がいた。彼らが来るとは思っていなかった。

姫たちの姿を見つけて、少し遠慮がちに隠れている黒翼院 白夜である。

蝶子姫との文通は続いていた。……今はまだ彼の一方的な手紙だけだけれど。姫は必ず文を読むと感想をくれるのだ。

そして嬉しそうに文を読んでくれる。それだけで十分彼は幸せだった。

「……」

藤白 雪風はその境内の隅に立ち尽くしていた。

今は赤坂の元で、壊滅した村々の復興のための仕事を中心に行っている彼女である。妹達にも定期的に会うことが出来る時間を手に入れていた。

満足とはいえないが、自分の信念に正面に向き合う仕事を行っているつもりでいる。

「そろそろ、出てきたか?」

神社に続く階段を登ってきた同じく赤坂に仕えている御堂 貴理が、浅井と共に、彼女に呼びかけた。

「いえ……まだです」

「そうか。見逃さずに済んだ……な」

「そうですねー」

いつまで浅井は自分にくっついているんだろうと毎回うざうざしく思ってはいるが、それなりにやはり仲のよい二人だ。

公儀隠密という立場を未だに続け、目安箱などに投函された事件の前調査などを、浅井と共に行っている。

時々、むかついて、奉行所に提出する前に悪人を始末したりして怒られることも多々あり、来年も同じ仕事をしているかどうかは定かでなかったり。

「おお、だいぶ集まっているな」

神子上 刀也は、橘 千速と蜷川 慎之介と共に、最後に境内を上がってきた。

その三人の登場に、多くの人が振り返る。

千速と慎之介が二人で協力しあい、狐日神社を盛り立てていることは、皆が知っていた。

そして修行の旅に出て、なかなか連絡のとれない刀也との再会はとても嬉しいものだった。

「間に合ってよかったでおじゃるな! 刀也殿、麿と蹴鞠で勝負じゃ! 蹴鞠でなら負けないでおじゃるよ!」

そう叫んで、見栄晴はぽーんと鞠を蹴る。

刀也は小さく笑って、その鞠をけり返す。

みるみる高く浮かび上がる鞠。

面白がって朧がそれを膝で受け止め、与一に回す。与一も高く鞠を飛ばし、最後に見栄晴に戻ってきた。

「すとらいかーの技見るでおじゃるー!!」

ぽーーん!!

皆に負けないように再び高く持ち上がる鞠。

その鞠の真下にいたのは大工の権造。

「てやんでぃっ」

頭突きで決めようとしたのだが、……見事に失敗。

境内に楽しげな笑い声が響き渡った。

情報誌:PCデータランキング

能力値ランキング(人間時):戦
順位名前
1空木 ヒナタ
1藤白 雪風
3紅 飛龍
4神子上 刀也
5呂 伯辰
能力値ランキング(完全獣人化時):戦
順位名前
1鬼瓦 グリコ
2佐久間 十兵衛
3獅子 怒琉魅
3徳川 ほげ代
5立華 皐
5空木 ヒナタ
5藤白 雪風

日記からの抜粋

2004.05.31 mon

「リアクションはいつ、私に届くのだろう?」

「届かないと思います、いつまでも」

そんな雰囲気が漂っていた『東奉幻獣記』の影Div最終リアクションが先週末にメールで届き、本日、物理リアクション&情報誌も届いた。周回遅れのDivも幾つか存在するが、私にとっては、これにてこのゲームは終了である。

さて、リアクションの内容はさておき、今回の情報誌にはPCデータ特集」と題して、能力値や経験値ランキング等が載っている。前作『エテルーナ魔法学園』では「PCのデータに関しましては、各プレイヤーの個人情報扱いとなりますので、オフィシャルから公表することはございません」と言っていたのだが、方針変換があったようだ。

で、私のキャラクターなんですが、なにやら「戦」で1位になってますよ?

間違いなく初期登録値の勝利なのだが、はっきり言って、影Div参加者でこの順位を予測しえた人はいないだろう。そんな突出した描写、リアクションにはまるっきりなかったし。ちなみに影Divには「俺より強い奴に会いに行く」的な方がいたのだが、そちらは4位。おそらくこの順位には納得できていないのではないかと思われる。

もっとも、このゲームには能力値以外に技能もあり、某掲示板での書き込みを見る限り、氏の「刀術」は私のキャラクターより2LVくらい上のようだ。これは、毎回戦闘している人と全8回中1~2回しか戦闘アクションを掛けていない者との違いであろう。

とか思っていたのに、前回、今回と何故か2LVずつ上昇しており、しっかり「刀術」も追いついてしまっていたり。なお、この特別成長だが、今回のリアクション中での行動――「馬で旅」と「村の復興支援」――が剣技に欠片も関係ないことを考えると、アクションの結果による成長というよりもアクションをてきとーに流す代わりにボーナスを上げることで矛先を鈍らせる、というマスタリング術に見えないでもない。

ちなみに、『東方幻獣記』での技能LVは、次のようになっているのだが、

LV目安
0素人
1素人に毛が生えた程度
2一人前(家族に自慢できる)
3有段者クラス(他人に自慢できる)
4プロ級(町内に自慢できる)
5ベテラン
6師範クラス(地方で名が知れ始める)
7名人レベル
8達人レベル(国内で名が知れ始める)

私のキャラクターが到達した13LVというのは、いったいどこまで逝っちゃってる状態なのであろうか。