「実年齢より若く見えるキャラクター」第2号です。とは言いましても、ナーガは人間の寿命の3倍ですので、ナーガとしてはこれが普通なのですが。
当初、登録しようと考えていたのは、ゴーレム乗り。しかし、届いたプレイング・マニュアルを読みましたところ、キャラクター登録の時点ではグライダー等にしか乗ることができないことが判明し、一気に熱が冷め、何かがどうにかなってナーガの女戦士となりました。なお、名前は当時乗っていた車から取っています。
初めの数回は斥候などを行っていましたが、その行動結果をリアクションで読んでも全く面白くなかったものですから、以後、プレイヤーとして違和感を抱いていた「一騎打ちシステム」に対しアクションを掛けるようになり、最終回近くまでドツボにはまり続けました。
全体を通して上手くプレイすることができませんでしたが、交流誌『我らジェトっ子』や『The Only Naga』に色々と投稿していましたので、それらをアップしています。
初回から、「戦闘中止を進言する」などという、他のキャラクターのアクションの前提を破壊することになる反逆的なアクションを掛けたようです。
「それでは、明日の昼に討伐に向かう。それぞれ準備をするように。それから、今朝方少数ながらアミュートとエクセラが首都から送られてきた。支給を望む者は申し出るように」
解散が伝えられると同時に戦士ドルチェス・バニス(ドルチェ)は出ていこうとしたマキシミリアンを捕まえて云う。
「あたしにアミュートを下さい!!」
毅然とした眼差しが、マキシミリアンの目をとらえる。
「あしたの山賊退治では先陣を切るつもりなんだ。先頭の人間がいい防具をつけるのは当たり前だろ」
回りの者への牽制を込めて大きな声で彼女は言い切る。熱く燃える瞳を向けるドルチェに、マキシミリアンは少し戸惑ったようだ、軽い笑みを見せて話す。
「君がアミュートを纏うに相応しい人間なら、必ず支給される。発表は明日だ」
ドルチェの他にも次々にアミュートの支給を求める者がマキシミリアンの元に集まる。
そんな姿と対照的な者もいる。御衛士ガダール・スラヴァット(ジェイド)は回りの者に気取られぬように溜めていた息を吐き出した。
(マックス様‥‥あまり面倒な事を考えなさるな。あなたの考え一つで、ことと次第によっては命を落とす者がいるのですよ‥‥)
ジェイドはそんな事を考えていた。しかし、言っても無駄な事を知っていたので、黙っていた。
しかし、それを口に出す者もいた。皆が散り、マキシミリアンが1人になった時に話しかけたのは、若き戦士シルビア・プレセアード(シルビア)だった。
「明日の戦いを中止に出来ませんか?」
マキシミリアンが怪訝そうな顔をする。
「明日は地の利も、準備も彼等に分があります。わたし達の役目は補給ルートの確立のはずです。それならば、彼等の補給路を断ち兵糧攻めを行った方が良いと思います」
マキシミリアンは僅かに迷った様子を見せる。
「‥‥君の言っている事は正しい。だが、我々の目的は補給ルートの確保だけではない。悪いが今はそれしか言えない」
その言葉は嘘には聞こえなかった。それでシルビアは納得がいった訳ではないが、取り合えず、明日の戦いに全力を出す決心をした。
ゲーム終了後のオフィシャル・イベントにおいて、鏑先マスターから「ベルニッシュ(NPC)が死なないエンディングも一応ありました。実際、「彼を死なせたくない」というプレイヤーが多かったので、どうするか悩んでいました。しかし、誰かのせいで、死への意志が固まってしまったんです。ベルニッシュは最初から死へ向けて走っているキャラクターでしたが、最後に道案内をしたのが誰かだった、ということになります。」
といったことを言われました。
ベルニッシュがマキシミリアン王子との会見に応じることはそう多くない彼らの間に瞬く間に広がり、各々も出陣に近い準備を行っていた。
そのベルニッシュに会うためにやってきたシルビア・プレセアードという女性は、単刀直入に、という彼に対し多くを語らなかった。本来は一騎打ちのシステムについての矛盾をジュシカ王女に見せるために力を借りたかったのだが、軍としての規模もままならないような現状の前にもう一つの思いが弾けてしまったのである。
「お訊きしたいことがあります‥‥本当に勝てるとお思いですか? 感情ではなく理性面で。これだけ多くの人を巻き込んで、殺し合いをさせてあなたは満足ですか。あなたが今求めているのは『国王に弓引き、その信念のもとに戦い抜いた』っていう自己満足でしょう? その為にまだ多くの血を流し、流させるつもり? ‥いったい何人お供が欲しいっていうのっ!?」
毅然としたその態度に男は答えようとしたが、首を振って次のようにだけ言った。
「信念などというもので戦ってきたわけではない‥‥。だが、自己満足という罵声なら甘んじて受けよう。お供など‥‥もう一人もいらん」
初めて見る表情を浮かべたベルニッシュがそこに立っていた。
そしてシルビアはその場を離れた。
おにいさまは死ぬ気なのだ。シルビアという女性が言い残していった言葉がその決意を決定づけた。罪をその身に背負って魔物たちと刺し違える気にちがいない。これ以上ご自分の歪んだ信念のために死んでいく者たちを増やしたくなかったから。
約束に縛られているだけのご自分を知っていらっしゃるから。
『お養父さまの名誉回復をなさってください』
おねえさまの残した言葉がずっとあの人を縛り続けてきた。でも本当はおねえさまにとってそれはどうでも良かったのではないだろうか。
おにいさまに生きる意欲を失って欲しくなかった。ただそれだけではなかったのだろうか。
多くの人々がおにいさまに従ってくれた。そして中には心から心配して下さる方々もいらっしゃった。あの人たちの言葉がおにいさまの心を揺り動かしたのだ。私には出来なかったことがあの人たちには出来る。ならば死の決意までも変えて欲しい。
新しい生きる意欲はもう、芽生えているはずだから。
風を切る速さを忘れていた。ナーガの姿になったのは何年ぶりだろう。
「お供など‥‥もう一人もいらん」
その言葉が頭を駆けめぐる。翼を動かして、より速く飛ぶ。その言葉を云った、男から逃げるように。
その視界に、燃えるカットアが入る。何処が燃えているのかを自然と考える。炎が上がっている中には、制圧軍の本部もあった。駆け付けたシルビアが見たのは魔物とかつて義勇軍で共に戦った者達が、人々を襲っているシーン。
「そうだ、返したんだ」
腰に手を当てたシルビアは、エクセラを持っていないことを後悔する。
「魔物とは戦えない、人間とも戦えない」
ならば、出来る事はひとつ。
「ベルニッシュにはもう戦う意志なんてない!」
声を枯らして叫び続ける。そして、同じ事を叫ぶユハンを見つけた。
今、シルビアは再び人の姿となって歩いていた。向かっているのは、故郷のコロニーだ。
ふと、自分の手に視線を落とす。
「何人の命を奪ったんだろう‥‥」
後悔はしていない。けれど、父や母、それに村人達は私を受け入れてくれるだろうか?
血に汚れた私を。
けれど、血に汚れただけでは無いはずだ。この10年はきっと無駄じゃない。知った事がある、感じたことがある、理解したことがある、理不尽と思った事がある‥‥。
シルビアは真っ直ぐ前を見て歩き出した。