一度は、バトリングの選手をプレイしたいと思っていた。
舞台はSF。
スタイルは、最低の野郎どもと決めていた。
卓袱台返しのアクションなどは、極力おさえて、淡々と勝利だけを目指し、最終的にむせる英雄譚風に仕上がればいいなァと思ってやり出した。
ということで、『クレギオン#1』のバトルクラックや『#4』のブラッドボールといったオリジナル競技の選手をプレイしてみたいと以前から思っていましたので、このゲームで挑戦してみたわけですが、正直なところ、さっぱり楽しむことができませんでした。第3回の日記にも記載していますが、リアクションの最初から最後までずっと登場するほどに大活躍をされている方もいましたので、いつも通りに競技なんかそっちのけで卓袱台返しのアクションを仕掛けていれば、もう少し楽しめたかもしれません。
勝者の名前が次々と呼び上げられていく。
フォーゲットクリムゾン、アスカ・クロイツ、アズィレル・ゼラーダ、クロード、そしてマフィアの一員であるカナヤ・ジュン。
マフィア飼いのディナモ乗りであるシンシア・ショウメイカーは、次第に高まる緊張に身を躍らせながら、自分の出番を待っていた。
次の試合では、必ず自分の名前を読み上げさせる、そう彼女は意気込んでいた。なにせ、これは史上最大のバトリング大会なのだ。利益も名誉も動くポイントも人も、ついでに不幸にも脱落していく選手も、今までの比ではない数なのだ。
アルファ・ロッソの開催する、この大会は当初の予想を上回る参加人数であった。そのため、二回戦までバトル・ロイヤル方式が採用される。つまり、周りはみんな、敵。二十四台のディナモマシーンが狭い舞台に放り込まれ、十八台のディナモマシーンが何らかの理由で動きを停止するまで続けられる。
「では、名前を呼ばれた順に闘技場へ」
アルファ・ロッソの男がそう言って、一人一人の名前を呼んでいく。シンシアは、自分の名が呼ばれたとき、思わず大きな声で返事をした。
バトリング開始のサイレンが響く。それぞれのマシーンが展開していく。シンシアのマシーンの側に一台のディナモマシーンが並んできた。しかし、攻撃の意志が感じられない。そう思うと無線が開く。
「オレはクアン。アンタの隣のマシーンがオレのだ」
「何の用です」
「バトル・ロイヤル方式は始めてでね。良かったら、組まないか」
「な、周りは全部敵ってルールでしょ」
「違うね。生き残りは六台。それ以外が敵だ」
と、クアンの隣に、赤いディナモマシーン『レッドホーーク』が来る、搭乗者はレイラ・ブリュースターという少女だ。
シンシアが『レッドホーク』に攻撃を向けようとしたので、クアンがそれを止めた。
「彼女も今回のチームの一人だ」
「よろしく」
「いいわ。組みましょう」
そう言うと、三人は短くうち合わせをした。
クアンとレイラが飛び出し、スピードで周りを翻弄する。シンシアは、翻弄された敵を次々と撃ち落とす。
急場のチームにしては、なかなかのコンビネーションだ。だんだん余裕が出てきたのか、レイラが無線で話しかけてきた。
「そう言えば、二回戦を邪魔する動きがあるって書き込み見た?」
「見た。本当だとしたら、どうする?」
「アタシはバトリングが冒流されるのは、我慢ならない」
「私もよ」
シンシアは、答えながら五台目のマシーンを撃墜した。
「いくぞ、何とかストリームなんとか」
ピンクのディナモマシーン『愛しのロザリンド』に乗るクニチカ・ノックスが叫ぶ。
「何とかばっかでわからんけん、それ。ってか、会ったばかりやろ、うちら! そんな技、知らん」
的確に突っ込むのは、お笑い暴走ドライバー、マックス・アーウィンデイルであった。
「負けませんよー」
こちらは瞬速天使、リファーラ・ゼチル。彼女達、三人もシンシアと同じく、急場のチーム編成組だ。
リファーラが敵をかき乱し、クニチカとマックスが破壊していく。その破壊の仕方がアクロバティックで画的に派手なため、観衆の目を奪う。
「全部、屑鉄に戻すけんね!」
マックスが内蔵マイクで叫ぶと観客が沸く。
と、リファーラがシンシアのマシーンをスピードでかき乱す。しかし、その動きにシンシアがついていく。
「この子、何者!」
リファーラが叫ぶが早いか、マックスとクニチカがシンシアの左右に立つ。二人がかりでシンシアのマシーンに襲いかかる。が、レイラのマシーンが素早くタックルをかけ、クニチカを弾く。
シンシアとレイラがマシーンの腕で、マックスのマシーンに殴りかかる。しかし、マックスはバックステップと両の腕で攻撃を止めた。
と、今度はリファーラが素早くシンシア達の後ろに回り込み、バズーカを放つ。的確にマシーンの駆動部に命中し、シンシアとレイラは崩れるマシーンのバランスを必死で保った。
追い打ちをかけようとするリファーラに、レイラは自らのマシーンの腕をちぎり、投げつけた。と、シンシアがそれを打ち抜く。閃光と爆風にリファーラとマックスは距離をとった。
その間に体勢を立て直すシンシアとレイラ。
と、ここで試合終了のサイレンが鳴る。
見ると、クニチカとクアンがそれぞれマシーンを撃破したところであった。これにより、十八台のマシーンが行動不能となったのだ。
リファーラとマックスのマシーンがシンシア達に近づいて来る。リファーラのマシーンは先程の戦いで右腕が 上がらなくなったようだ。
相対するマシーン。マックスとリファーラが降りてくる。シンシアとレイラも降りる。
「やるじゃない」
そう言ったリファーラと、隣のマックスは何ともグラマラスなスタイルをしていた。思わず、シンシアとレイラはお互いの体格を見合う。
この時、始めて二人は、がっくりと来た。
とりあえず、ディナモマシーンの修理をして忘れようと思うのであった。
アルファ・ロッソ飼いのディナモ乗りシンシア・ショウメイカーは二回戦が始まる前のことを思い出していた。
ことの始まりは、二人の女性ディナモドライバー、リファーラ・ゼチルとマックス・アーウィンデイルがやって来たことに由来する。
リファーラは幹部達に、妨害それ自体をイベントに仕立て上げてしまうよう提案した。
「あたし的には、守りきった人たちに三回戦の切符をくれると嬉しいんだけど」
「もし、これがロメオの仕業なんやったら、何か貸しをつくっっちゃるのも今後役に立つっちゃない」
マックスが言葉を付け足す。彼女は、大会の運営をスムースにするため、各方面に呼びかけていた。もちろん、ロメオズ・ハートのボス『クラウン』にも面会し、話をした。しかし、クラウンは、大会襲撃の噂に対して、自分達は関わっていない、ギャングが面白半分でおこなっているのだろう、とコメントした。
同席していたシンシアもインヴェルノに意見した。
「襲撃者の撃破数で、敗者復活もありってのはどう?」
しばし思案し、インヴェルノが意見を述べた。
「試合の勝利条件を守りきることに変える気はない。賭を行っている者達のクレームになりかねんからな」
インヴェルノは出場者達の立場を出来るだけ同じ条件で維持したいと説明した。
「そこで私からの提案だ。襲撃をショーとして放映、記録、販売。選手の撃破数も賭けの対象にしよう」
インヴェルノは、極めてビジネスライクであった。シンシアは大会がアルファ・ロッソにとって重要なビジネスであることを思い知った。
あの時いた三人、シンシア、リファーラ、マックス。彼女らは、機体の背中を合わせて、究極の防御形態を作り上げていた。
自分達が商売のための駒だというのなら、カのある駒になろう、と思った。力があれば、この世界でも意見が通せる。正しいことができるのだ。
リファーラとマックスは前回の出会いがキッカケで、非常に仲の良い関係であった。そこにシンシアが加わってどんな話をしたのかは、分からない。しかし、三人の中の誰かが優勝するために、力を合わせることを決めた。
生き残りが四機である以上、三人の内の二人は次の対戦カードに必ず選ばれる。それを悲劇と考えるか、もっとドライに受け止めるか、本人にしかわからない。
三人の正確な射撃をかわしながら、一機のディナモマシーンが近付いてくる。不死蝶が描かれたその機体は『アンタレス』と言う。翼のようなブースターから火を吐き、こちらに近付いてくる。
「早い」
シンシアの正確な射撃がかわされる。懐まで入り込んでくると、パイロットから通信が入ってくる。ちなみにパイロットは、不死蝶の二つ名を持つメイテノーゼだ。
「あんたら、仲良しごっこじゃ、優勝はできないぜ」
赤いレーザーソードを振り落とす。三人はバラバラに散り、メイテノーゼと距離をとる。
「パシられたり、『アンタレス』の慣らしで時間がかかったけど、こっからは確実にいっちゃうよ」
メイテノーゼはチャクラムをシンシアに向けて飛ばす。
シンシアは、その攻撃をかわす。初めて見る武器の動きであったが、彼女には特有の勘のよさがあった。それは、彼女がエラーであることの恩恵なのだが、彼女自身は気付いていない。
一方、リファーラは素早く『ティラィ』を旋回させ、メイテノーゼに射撃を行う。だが、機動力重視のマシーンでは、今一歩、一撃の力に欠ける。メイテノーゼもライフルで牽制する。
マックスがメイテノーゼを追う。しかし、保安やギャングが邪魔で、上手く追えない。専用チューンを行ったキャンディオレンジパールに黒い炎の絵が入った彼女のマシーン。スピードはあるのだが、乗り心地が最悪に悪い。
「邪魔っちゃ! ぼてくり回すぞ!!」
ラージショットガンで周りの敵を全て薙ぎ払う。そして戦いは、沈静し始めていた。
ネットダイバー、アナイア・ガートウェルは、ネットから潜入してくる公安二課の相手をしていた。デジタルドラッグ『スカイウォーク』をダイレクトに注入し、倒していく。と、そこにライラックが現れた。アナイアは距離をとると、ポンと数個の円盤を投げる。
「超クールなトラップよ。近付くだけで『スカイウォーク』を注入する。ワクチン作る暇もないよ」
「僕の目的は、見学だよ。危ない橋をここで渡る気はない。今日は帰るよ」
既に彼女は、ゼノ達が持ち帰った情報やマフィアの持つ『3S』の情報にアクセスしていた。混乱に乗じて、もっと漁ろうと思ったが、ここに優秀なハッカーがいたのは、予想外であった。彼女は素直にその場から去った。
戦いが終わる。ほとんどの機体が動きを止めていた。
リファーラは、これ以上の戦いは、既にアルファ・ロッソも本意でないだろう、と判断し、近くの強化外骨格に、これはショーだと説明した。
「我々は、違法なことは何もしていない。これはショーの撮影だ。賭博はもちろん違法集会でもない。同胞とエキストラの検挙を今すぐ止めてもらおう」
リファーラと公安二課が言い争っていると、マイクを使いエドウィンが放送した。
舞台に立つと、エドウィンは責任者を要求した。
「ここには、ネオカインドが同席していないようだが」
隊長らしき者が言う。
と、エドウィンの側にアコライト、ウツギ・カテーナが現れた。側にはドクターのディーターもいる。
「この通り、同席している」
と、隊長のピピが鳴り、撤退命令が表示される。何もかもが不自然であったが、隊長は従うしかなかった。
何とか危機は去った。機体の損傷度合いから、準決勝は、シンシア、リファーラ、マックス、そしてメイテノーゼが進むこととなった。シンシア対メイテノーゼ、リファーラ対マックス、それが準決勝のカードだ。
『バトリング・エクストリーム』のコントを見終えた犯人達にアルファが条件を飲んだ、とサギは告げた。
それを証明するようにコンテナ・カーが現れた。と、突然、花火がドームに向かって上がる。火花が球体の下部に沿い輝く。遠くから見たら、卵が炎で炙られているように見えるはずだ。
皆の注意がその炎に向かった瞬間、コンテナが開く。
中から飛びだしたのは、ディナモドライバーのシンシア・ショウメイカーのマシーン他、アルファ・ロッソ子飼いの操手が乗るディナモマシーンであった。
中には、犯人達が欲したクスリや食糧など入ってなかったのだ。これがシルガットの作戦であった。
シンシアは、集中して犯人の動きを予測する。人質にまで危害を及ぼしてはいけない。スナイパー・ライフルで犯人の足を確実に打ち抜いていく。
と、脇からものすごいスピードで夢の島に突っ込むマシーンがある。
「何してんの!!」
シンシアは、自分と一緒に来た奴だと思い怒鳴った。
しかし、そのマシーンの姿は見たこともない装甲に覆われていた。いや、見たことはある。しかし、常識では考えられない。
「何でディナモがシェルの装甲つけてるの!」
思わず叫ぶ。しかし、お構いなく、バルールが有線で操作するマシーンは夢の島にぶつかった。その瞬間、マシーンの首元から人影が犯人達に飛び込むのが見えた。
シンシアはスナイパーライフルについたスコープでその姿を追う。と、いきなりその姿は銀色に変化した。
シンシアは、操縦席のモニターを睨む。
「『銀色』?」
二番地事件の犯人と目される人物だ。
その『銀色』、オールトレイダーのクロス・マーキス・シンは、最早、人の姿をしていなかった。体中の至る所が鎧のように鋭くとがり、顔も何かのマスクを被ったように変化している。
彼はショック・ウェーブで犯人を気絶させていく。倒れた犯人にアンドロイドのゼット・エムが近付く。
すると、光の羽が彼女から生えた。
「……王ではない」
犯人に触れながら、彼女がボソリと呟いた。
「あなたがどうなるかは、予測がつきます。でも、私は何もして上げられない」
気絶した犯人の頭を優しく撫でる。その姿にクロスは少し戸惑ったが、ゼットの腕を掴む。
「急ごう、ジャンク課が突入してくる」
言ったとおり、裏側からシルガットやシイナが突入して来る。二人は、人質達の脱出を最優先にしていた。
クロスは逃げようとしたが、目の前にシルガットが立ちふさがった。
「『銀色』か? とすると、それが例のアンドロイド」
さすがに変身した姿では、クロスも言い逃れできない。
ぐっと拳に力を入れ、臨戦態勢に入る。
「保安部から貴方達のデリート命令が出ている」
ゆっくりと、腕を水平にシルガが上げた。クロスは体から噴きだしそうな汗を感じる。明らかに目の前の女は強い。手加減など出来る相手ではないことがクロスをさらに緊張させた。
そんな彼にお構いなくシルガットは人差し指を伸ばす。
指先に奇妙な色香が漂い、思わずぞっとする。
「この先にディーターという医者がいる。そこへ逃げろ。彼なら何とかしてくれる」
「……知っている」
「なら話が早い。行きなさい」
「ボクを見逃すのか? それで……キミは大丈夫なのか」
クロスとシルガットが見つめ合う。
「シルガットさん、そっちはどうですか?」
シイナの呼ぶ声が聞こえて来た。
「人質は皆、無事だ。順次、脱出させる」
大声で答える。
「行け」
クロスはゼットを連れて、その場を去った。
早速、蛍光ペンを片手に『フォーチュン・オブ・ギャラクシア』のリアクションを読むことに。
まずは話の流れを把握することを第一とし、変なところに句点があったり、前後の話と繋がっていない説明文が突然現れたり、自分のキャラクターが意味不明なことを口走っていたりしましても、「突っ込んだら負けかなと思っている」の精神でそのまま読み進めました結果、今回はなんとか40分程で終了。急転直下な出来事が多々ありましたので、それぞれの関係を捉えるためにはもう1回読み返さないといけないかもしれませんが、少なくとも自キャラクターが関わっている部分は大体把握できましたので、これで金曜日の準備はバッチリです。
ちなみにこのリアクション、冒頭の約半ページを前回までのあらすじに割いています。文章そのものが読みにくい分がこうしてフォローされているおかげで、結構すんなりと話に入っていくことができまるわけです……っていうか、自キャラクターが関わっていない部分について、「え? 前回、こんな情報出ていたっけ!?」ということばかり書いてありまして、かなりの危機感を募らせていたり。
それと。
実は私、このゲームにはもう1キャラ参加させておりまして。こちらはSFテイスト満載な内容となっているのですが、それはさておき、本当に文章が読みやすいこと読みやすいこと。殆ど引っかかることなく最後まで読むことができるものですから、逆に物足りなさを感じてしまう程です。内容についても、まだアクションがなかった第1回は全体的に顔見せとなっていましたが、第2回、第3回共に「今回は俺が主人公!」とばかり大活躍されている方々がいらっしゃいまして、信賞必罰なマスタリングは読んでいて非常に心地よく、「よーし、やるぞー!」
という気にもなってきます。逆に言いますと、前回大活躍された方が、今回その他大勢扱いになっていたりしまして、思わず刻の涙を見ることになるわけですが。
というか、流し読みしたときに名前を発見することができなかったものですから、郵便事故にでも遭ったのかと思いましたよ。
本日は、8時30分から13時まで期日前投票事務に従事。
毎度の如くにメモ帳を持参しまして、最初の2時間は『杉田玄白によろしく』なアクションとか、『レッドショルダーによろしく』なアクションをつらつらと書き綴っていたのですが、11時を回った頃にはそれらも終了してしまいまして、怒濤の暇暇タイムに突入。以前、K君やT君に「魂が抜けそうでした」
とか言われまして、「仕事がないなら、考え事をすればいいじゃない」などと思っていたのですが、確かに1度スイッチが切れてしまいますと、目を開けていることすら辛く感じます。
っていうか、何回か寝ましたゴメンナサイ。
「新生ロメオ狩りを始めろ。今、バトリング関係に手を出されるのは非常に面倒だ」
「エドウィンが言い終わるが早いか、舞台に歓声が戻る。
二回戦が始まったのだ。
ディナモドライバーのメイテノーゼは、愛機『アンタレス』を駆り、ヒットアンドウェイの射撃を続けていた。
対して、ディナモドライバーのシンシア・ショウメイカーは、ひたすらメイテノーゼの動きを読み、対処する。
しかし、メイテノーゼの動きは予想以上にトリッキーで思うほど、上手くいかない。
機体のクセを読みとるという才能に頼りすぎていたことを少し後悔した。
メイテノーゼが遠距離が得意であることは、ある程度予想がついていた。だが、またもメイテノーゼの弾丸がシンシアの機体駆動部を掠める。
「クソ。こっちの攻撃は当たらないのに」
これではジリ貧だ。
「何かしぶといじゃん。よくこんなに避けるねえ」
メイテノーゼが呟く。しかし、明らかにシンシアの機体は機動性が落ち始めていた。そろそろ、次の段階だ、と彼は思った。
「踊る阿呆に見る阿呆。楽しいねえ」
メイテノーゼは、シンシアに向かい、サイコウェーブを飛ばした。これで、シンシアはメイテノーゼが化け物に見えるはずだ。そのままショックウェーブで、シンシアの足元を崩す。
バランスを崩した機体を見て取ると、メイテノーゼは『アンタレス』を加速させた。異状ブースターが大きく開く。
「これで終わり!」
赤いレーザーソードをシンシアのコックピットに向かって突き刺す。
「まだまだ!」
シンシアの機体は、崩れる体勢から何かを投げつけてきた。それは鎖だ。鎖が武器を持つ『アンタレス』の腕に絡んだかと、思うとシンシアは機体を一気に上昇させた。それに何故か『アンタレス』の腕が引っ張られる。
見ると、シンシアの機体の腕と鎖が繋がっている。
ソードはシンシアの機体を掠めはしたが、致命傷には至らない。
「なんで、動けるの?」
メイテノーゼは、サイコウェーブが効いていないことに驚いた。まさか、コイツもエラー?
「最後にものを言うのは、戦いのアイディアか?」
鎖に二体が繋がれ、チェーンデスマッチとなった今、不利なのはメイテノーゼだ。得意の機動性を活かせない。
標準的な機体であるシンシアに分がある。だが、シンシアはこの程度の状況で安心できる相手でないことを知っていた。
今度は、シンシアが一気に距離を縮める。メイテノーゼは距離をとろうにも、鎖が相手を逆に引き寄せてしまう。仕方なく、カウンターを狙いに行った。
二つのマシーンの拳が交錯する。その刹那。メイテノーゼは、シンシアからサイコウェーブが放たれたのを感じとった。サイコシールドで弾きはするが、彼は全てを理解した。
彼女がエラーとして完全覚醒したこととそれに感応し、己も完全覚醒したことを。
拳がお互いを貫き、結局装甲と耐久力の低い『アンタレス』がその場に倒れた。
そして、この時マックス対シンシアという決勝のカードが確定したのだ。
「体の調子どう?」
メイテノーゼが試合後、シンシアに会いに来た。
「何か変だ」
「メイも。これがエラーへの完全覚醒ってやつか……」
港では既に『星屑』によってエラー化した者と保安部が導入した新部隊『アンナチュラル』との殺し合いが始まっていた。
ちなみに『アンナチュラル』とは人エエラー化させた保安部の部隊だ。
自分達は否応なく、それに巻き込まれるのかもしれない、と小さな不安がよぎる。
と、扉が静かに開く。
「あんた、何の用?」
入ってきたのは、フードで顔を隠した黒いコートの男であった。ヘソを出しているあたり、メイテノーゼと趣味は合うかも知れない。
「クラウンさ。そう呼ばれてる」
フードを脱いだ男は、スモーキィムーンその人であった。彼は一枚のカードをシンシアに差し出す。
「今期の『星屑』の売り上げポイント、半分を入れている。次の決勝、負けてくれないかな?」
彼はシンシアに八百長を持ちかけた。
「断ってもいいけど、その時は新生ロメオのエラーがきみを追うよ。『アンナチュラル』っていうエクレシアの人工エラー部隊がただでさえ、エラー狩りを強化している。いくら歴戦の戦士でも二つのエラーを同時に相手するのは、骨じゃないかな?」
メイテノーゼは、シンシアの表情をうかがってみる。
彼女は返事に困っているようだ。
「返事は試合の結果で見るよ。前金だけ置いておこう」
別のカードを置くとスモーキィムーンは去っていく。
恐らくこの八百長が上手くいけば、もっと莫大なポイントが新生ロメオズ・ハートに流入するのだろう。
シンシアは頭を抱えた。しかし、それ以上に頭を抱えた人間がいた。たまたま部屋の外で話を聞いてしまった。
マックスの親友リファーラである。
「マックスの決勝の相手に挨拶でもって思ったのに。とんだ藪蛇だわ」
これは告げるべきなのか、とリファーラは考えた。
『フォーチュン・オブ・ギャラクシア』の第4回リアクションが到着。
ってなんか、封筒が妙に薄くありませんこと奥様? どう見ても、この厚さではパスポートが入っているようには見えません。私の心を「紛失」とか「倒産」といった単語が走り抜けていくのを感じつつ、ゆっくりと封を開け、書類を確認してみましたところ、
さて、早速ですが11月1日現在、お客様が『幻想英雄伝フォーチュン・オブ・ギャラクシア』にご登録中のキャラクター【×××××】につきまして、<第4回>ゲーム費が、「未払い」になっております。
「ぐはぁっ、『ラスト・レター』とはまた懐かしいものをっ!」と思いつつも、『ハレーション・ゴースト』以外は殆ど読み返したことがない須賀和良です。ごきげんよう。などと、某氏の先週木曜日の日記を読んでおり、かつ、『妖精作戦』シリーズを読んでいないとわからないネタで始めてみた須賀和良です。ごきげんよう。
さて、料金の未納が発覚しました『フォーチュン・オブ・ギャラクシア』。通常ならば、物語の流れから外れてしまっているキャラクターはそのまま撤退してしまうところですが、このゲームの場合、たとえ料金が未納となっていてもリアクションの発送が差し止められるだけで、マスタリングは通常通りに行われているとのこと。結果、「なら、払うしかないじゃないか!」と年休を取りまして、出勤前に郵便局に入金しに行ったわけですが、改めて振り込み用紙を見てみますと、やっぱり値段高ぇー。思わず、殆ど読んでいない交流誌を今回の入金対象から外してしまったのですが……って、ちょっと待ってください。ひょっとして先月交流誌が届かなかったのは、1か月早く入金が切れていたからだったのでしょうか。てっきり郵便事故にでも遭ったのかと思っていたのですが、これは認識を改めねばならないようです。っていうか、きちんとP.A.S.に確認しろよ俺。
ところで。
今年も残すところあと2か月弱なわけですが、
「須賀和良はいつ、キャラクターチャットにデビューできるのだろう?」
「できないと思います。いつまでも」
『フォーチュン・オブ・ギャラクシア』の第4回リアクションがよーやく到着しました。
まずは、すっかりストーリーの流れから外れてしまっているディナモドライバーですが、なんとかバトリング準決勝を勝ち抜き、次回の決勝戦へと駒を進めることができました。そして、「今期の『星屑』の売り上げポイント、半分を入れている。次の決勝、負けてくれないかな?」
と八百長を持ち掛けられまして、「オレは、コレを待っていたのだー! 全てはオレの計画どーり!!」
とか喜んでいるのですが、リアクション全体からすると10%に満たない自分のキャラクターが登場しているシーンを読んだだけで、次回の行動がほぼ決まってしまったのは、果たして「いいことなのか、それとも悪いことなのか、わからない」
という感じですが、でも、多くのプレイヤーがそうであるように、私もまた、今回頂いたチャンスを有効活用したいと思う次第であります。
問題なのは、その行動が「他PCを陥れる」というものだったりすることなわけですがー。
そして遂に決勝が始まる。ディナモドライバー、シンシア・ショウメイカーとディナモドライバー、マックス・アーウィンデイル、二人の機体が対峙する。
緩やかな風が吹き、砂塵が舞う。相変わらず歓声だけは、熱狂的に鳴り響き、大地を揺らす。未だ、戦いの火蓋は落とされず、舞台の上には鈍い緊張感が立ちこめていた。次の瞬間、審判用ディナモマシーンが掲げる赤い旗が振り下ろされた。
赤い軌跡を見て取り、二台のマシーンが同時に動いた。
お互いのマシーンの拳が当たる距離まで近付くと、左の拳をお互いが伸ばす。
「ケリをつけたったい」
「望むところ」
お互いの拳が触れ、ガチンと金属の音が響く。両マシーンのファーストコンタクトに観客達は一層、熱狂した。
まず、シンシアが距離を取る。彼女は、マフィア『新生ロメオズ・ハート』から八百長を持ちかけられていた。
故に、この戦い、勝っても負けてもポイントが手に入るという立場だ。もちろん、彼らを裏切り、命を危うくする可能性もあるが、不敗のチャンピオンとして死ぬのも悪くないなどと考える。
「それよりも今はESPの訓練だね」
エラー化したシンシアは、ESPの能力をフルに活用し機体性能の向上を試みていた。
確かにスピードは早くなっている。それは、対戦相手のマックスが認めるほどであった。
「あげなスピード出ると?」
マックスは、ショットガンを相手の進路に向かって射撃する。面の攻撃に優れるショットガンであったが、それでもシンシアの動きを捕らえきれないでいた。
だが、そのスピードは同時にシンシアにも負担をかける。溢れるパワーのコントロールに少々苦戦する。それでも機体を大きく旋回させながら、間合いを詰める。ちょうどマックスを中心とした砂塵の円が描かれる。
シンシアは一気に加速すると、マックスの懐に飛び込み、拳をコックピットに向かって振り下ろす。
衝撃でマックスの機体が揺れる。
マックスの機体はその場に踏みとどまると、沈んだ体の反動を利用し、シンシアの機体、その頭を殴りつけた。
シンシアもその場に踏みとどまり、今度はマックスの腹部を殴りつける。
この一撃は効いたらしく、マックスの機体は数歩後退した。その隙を逃さず、シンシアはジャンプすると、ドロップキックを繰り出す。さすがにマックスは数レングス吹き飛ばされる。
シンシアの機体は銃を構えようとしたが、その上がりすぎたパワーにより、照準を絞るのに少し時間を要した。
この隙を見逃すマックスではなかった。
彼女は全力で機体の間合いを詰めると、相手の左の膝に自分の左足を乗せた。
「ナチュラル・ボーン・マスター万歳!」
マックスは意味不明な叫びを上げると、そのまま跳躍し、右の膝を相手の側頭部に決める。
今度はシンシアがその場に倒れる。マックスは、すかさず馬乗りになると、そのままトンファーを振り落とす。
シンシアも応戦しようと、無理な体勢から拳を繰りだそうとした。しかし、その時彼女の頭には、小さな打算が浮かんだ。
負けてもポイントは手に入る。
交錯する拳とトンファー。
静止する二つの機体。再び砂塵がゆるく流れる。ガクリとマックスの機体が揺れた。見ると、その頭部を掠めるようにシンシアの腕が伸びている。
一方、マックスのトンファーはシンシアの機体の頭を直撃していた。
「私の負けよ」
シンシアは勝負が決したことを告げた。
再び大歓声が会場を包む。
マックスの機体が立ち上がると、シンシアの機体を立ち上がらせる。
この名勝負を繰り広げた二人に惜しみない拍手が注がれる。マックスはそれに答えるように『ゲットー・ブラスター』の両腕を高々と上げた。
鳴り止まない歓声。
「みんなに聞いて欲しかことがあるばい」
歓声を沈めるように両腕を動かし、マックスがマイクパフォーマンスを始めた。
「ウチらはこれからプロバトリング興行団体『ワールド・プロ・バトリング・アソシエーション』通称『WPBA』を立ち上げるばい」
突然の宣言に会場はもちろんVIPルームのインヴェルノ達も驚いた。
「バトリングを一つのビジネスとして、文化として立ち上げるとよ。みんな、興奮せんか? ドームの中にまでスラムの文化が浸透していくとよ。アルファ・ロッソにインフラの整備を任せ、ヘブンズ・ドアにはバトリングの放映権を与えっばい」
その言葉に観客席のレイラは一層、興奮しているようだった。
「入場料も取るし、ノベルティの販売も行うきに、団体は経済的にも自立するはずたい。お楽しみの初カードはウチら『バトリング・エクストリーム』対『新生ロメオ・モンスター軍団』たい。絶対見るとよ!」
観客席で話を聞いていた『新生ロメオズ・ハート』のクニチカ・ノックスは、隣に佇む王クラウンことスモーキィムーンを見た。
「やるの?」
「うん? いいんじゃないかな。でもすんなりアルファが許すとは思えないね」
そういうと、スモーキィムーンは立ち上がる。従うようにクニチカがついていく。
二人はそのままシンシアの控え室へと向かった。
「よい試合だった」
スモーキィムーンがシンシアに労いの言葉をかける。
「皮肉か? 負けたんだよ。お望み通り」
シンシアは睨み返した。
「いや、本当に良い試合だったよ」
クニチカが言う。
スモーキィムーンは約束のポイントが入ったカードをシンシアの前に置く。
「エラーの力を使った戦い方を模索した。けど、負けた」
シンシアが呟く。
「その挑戦は無駄じゃないよ。いずれ、エラーが社会身分を手に入れた時、皆にその戦い方を教授してやって欲しいね」
「そんな社会が来るの、本当に?」
「ならば、その目で見てみるかい? エラーとして生きる方法を教えてあげるよ」
スモーキィムーンの誘いにシンシアは少し戸惑った。
しかし、アルファ・ロッソ飼いの操手としては『新生ロメオズ・ハート」に潜入するチャンスではあるのだ。
「ぼくには、アルファ・ロッソも関係ない。エラーである、その一点こそが重要だ。プロバトリングも面白そうだが、こっちに興味があれば、連絡をくれ」
連絡用のカードを置いていくと、スモーキィムーンとクニチカは風のようにその場から消えていった。
先週、密かに第5回リアクションが届いていた『フォーチュン・オブ・ギャラクシア』。
本日が〆切ですので、そろそろアクションを考えることにしました……っていや、今一つ物語に乗り切れていなかったり、私生活が大変化しつつあるということで、実は撤退することを考えていたのです。しかし、2キャラクター共に会費がまだ1回分残っているものですから、「せっかくだから、俺はこの赤のRAを選ぶぜ!」と軽くアクションを掛けてしまうことにした次第。
さて。
まずは、リアクションの文体が読みにくいことこの上ないGHブランチ(リードナンバー)ですが、前回のアクションの結果は、キャラクター的には成功ですが、プレイヤー的には半分成功半分失敗という状況で、次回以降の予定に狂いが生じてしまいました。せっかく悪の絶対壊滅無敵殲滅軍団の傘下に入ろうと思っていましたのに~っ。ということで、あまりやりたいことがなくなってしまったのですが、私のキャラクターが「……秘密ですよ、私はあの子が好きなんです」
とかアクションには欠片も書いちゃいねぇことを発言していましたので、マスターはこの立ち位置を期待しているんだろうと、そのスタンスを前面に押し出してアクションを書くことにしました。結果、「プロット欄にまとめるためには、ここを大幅にカットしなければならない!! 大丈夫かっ!? ここをカットして大丈夫かっ!?」なんて状況で毎回アクションを纏めていたのですが、今回は記入欄を半分しか使わないという状況に。
そして、某巨大掲示板群で「交響詩篇 攻殻マトリックスSEED DESTINYになりつつあるな……」
とか評されていたりするスターレスエイジの方については、前回、私のキャラクターに八百長を持ち掛けたPCを陥れるアクションを掛けたのですが、残念ながらその行動そのものが没になっていました。とは言いましても、「八百長を持ち掛ける」という行動自体が「どう見てもマスターが勝手にPCを動かしています。本当にありがとうございました」というものでしたので、これは予想の範囲内。2005年風に言うならば想定内。さすがにマスター裁量で動かしたことに関して、不利益を与えることはできなかったのでしょう。そこを「そんなことはわかっている……とうの昔にな。わかってはいるが……わかるわけにはいかんのだっ!!」
と突撃したところ見事に玉砕したわけですが、次回は「心に棚を作れ!」
の精神で、一転して協力態勢を取ろうと思います。
「ぱーぱ、聞こえる。こっちの状況を伝えるよ」
外では、カジェの説明を受け、ダストのリゲル・アルジャウザが何かを作り始める。レジーナの連絡を受けた孫のティモシー・サットンがリゲルに近付いた。
「何作ってんの?」
「出力装置だ。このケーブルと構造は同じだ。こいつを接続する。外からはこれでケーブルに負荷を与える」
「すると、何体かのディナモマシーンがティモシーの後ろに現れた。
「じゃあ、接続のための穴は彼らに開けてもらおう。話はつけといた」
ティモシーの言葉に三機のディナモマシーンが歩み出る。ディナモドライバー、カナヤ・ジュンとディナモドライバー、フォーゲットクリムゾン、そしてラッキースター、シンシア・ショウメイカーだ。
「とりあえず、目の前のケーブルに集中してくれ」
「んじゃ、出撃!」
フォーゲットクリムゾンは、ディナモマシーン『V2』の巨体をケーブルにぶつける。だが、ケーブルはビクともしない。
「下がって」
カナヤはフォーゲットクリムゾンに告げると、持てる火力でケーブルを攻撃した。しかし、やはり効果はない。
「ラチがあかないねえ」
ディナモドライバーの後ろからオールトレイダーのラプリア・セルラスティが現れた。
「でも、今は地道にやってみるしかないよ」
ティモシーは彼女に言う。
「紅い月の夢を見てから、一つ奇妙な能力を手に入れた。それを試してないわ」
ラプリアは、手の平に薄い光を浮かべた。
「これはあたしの命の光」
ラプリアは、その光を三機のディナモマシーンに向ける。すると、ディナモの装甲が何かの甲羅のように変化した。
これが新能力『ブレス』である。自分の生命力を何かに与え、変化・強化を可能にする力だ。
突然、ラプリアはその場に倒れた。しかし、それは仕方ない。自分の生命力を別のものに移したのだ。
オールトレイダーのエヴァ・シュテルンは、ラプリアの側に近付くと、彼女を抱き起こした。
「ずいぶん疲労してるわ」
エヴァはヒーリングを使い、ラプリアを癒す。しかし、意識はなかなか戻らない。生命力を使うとは、つまりそれほど危険なのだろう。それでもどうにかラプリアは意識を取り戻した。
「無茶をするねえ」
「必死なのよ」
「でも、きっとそれはドームも一緒ね。どちらも生き残る方法を私たちは知らないだけ」
エヴァが言い終わるが早いか、轟音が響く。『ブレス』でパワーアップしたディナモマシーンがケーブルを攻撃したのだ。
まるで鞭のようにしなやかで鋭い動きをディナモマシーンがする。先程とは較べものにならない程の力だ。
ケーブルにヒビが入り、小さな隙間から光が異常な勢いで噴出される。
シンシアはESPを使い、その光を押さえ込む。
「今だ」
シンシアが叫ぶ。
リゲルとティモシーが出力装置を穴の中に突っ込んだ。
「よし、中とタイミングとって一気にエネルギーを流す。みんな、集まれ!」
ティモシーの叫びにまわりの人々が集う。
「カジェ、後はそっちだ」
サイコトークでリゲルが叫んだ。