1996 ホビー・データ『アラベスクEX カルディネアの神竜』

official illust

[パンフレット][プレイングマニュアル]

キャラクター

設定

[キャサリン・マルガレット] [キャサリン・マルガレット] [キャサリン・マルガレット]

名前
キャサリン・マルガレット
種族・出身地|立場|職業
レグルタ人|冒険者|魔法使い
性別|年齢
女|17才
特徴
美少女、美女、世間知らず
ポリシー|夢・野心
睡眠を十分に取る。|財宝を見つける。
好きなもの|嫌いなもの|絶対にしたくないこと
魔法|退屈|卑怯
選択設定
  • 他人に奉仕されることに慣れている。
  • 古文書を読むのが好き。
  • 頼まれるとイヤとは言えない。
技能
技能
技能名開始LV終了LV
古代魔法430
魔法知識318
博物知識33
伝承知識22
社交術11
交渉11

パートナー

[ドミニク・エリザベッタ] [ドミニク・エリザベッタ]

名前
ドミニク・エリザベッタ
タイプ|血筋
妖精(女)|妖精
年齢|特徴|性格
19歳|かわいい|陽気

説明

冒険ブランチへの参加を前提として、「魔法を究める!」ということを個人的目標に据えて作成したキャラクターです。作成時に考えていた設定には、「貴族の出」、「妹あり」、「母は幼い頃に病死」、「独学で魔法を勉強」といったものがあり、一部、某白魔術都市第一王位継承者の長女が元になっています。

初回に届いたGAブランチがキャラクターの方向性とずれていたため、ブランチ移動をしようと『ネットプラス』を見ましたところ、「最近のアニメって何で1年保たないんだろうか?」というマスターメッセージを発見。その内容に大いに共感しつつ、ブランチ移動をしましたところ、そこはパロディ全開の学園物でありました。結果、第3回は『機動武闘伝Gガンダム』、第4回は『天空のエスカフローネ』、第5回は『快傑ズバット』といったように、「どんなパロディをかますか?」がアクションの基本となった――そして、アクションの基本がキャラクター視点からプレイヤー視点へと切り替わる契機となったキャラクターです。

一方、リアクションもどんどんエスカレートし、第9回は『新世紀エヴァンゲリオン』、『機動武闘伝Gガンダム』、『勇者王ガオガイガー』を見ていないと、何が起きているのかさっぱりわからないという状況になっています。そして、おそらくPBM史上初であろう、プレイヤーが作詞した歌とともにスタッフロールが流れる最終回。さすが時巻マスター! 他のマスターにできない事を平然とやってのけるッ、そこにシビれる! あこがれるゥ!

アクションや私信に書いたこと以上にキャラクターを動かしてもらえまして、私が参加したPBMの中で最もキャラクターが活躍できたゲームと言えると思います。ちなみにキャサリンは、続編の『アラベスクEX2 ソル・アトスの姫君』にNPCとして登場しています。

なお、初めてオフィシャル・イベントに参加したゲームでもあります。イベント会場である大阪府立総合青少年野外活動センター(2011年3月に閉所)では時巻マスターと2時間ほどしか話すことができず、「これなら参加しなくても良かったかな……」などと思ったのですが、イベント終了後の新大阪駅にて和田マスター、秋川マスター、無藤シナリオライターを加えたPブランチマスター陣と一緒に昼食を取ったり、東京駅まで一緒の新幹線で帰ったりと、最終的には7時間ほど話をする機会が得られまして、「やっぱり来て良かった」と思うことになりました。

第02回 PC1『月は出ているか?』(時巻広路マスター)

preface

PCブランチのリアクションを入手しないままにブランチ移動を行っているため、全くストーリーに絡まないアクションとなっています。なお、「地図を作る」という行動は、「地図を作るためには、色々なところを歩き回ることが必要になる」→「色々なシーンに登場しやすくなる」ということを狙ってのものです。

アクション

行動目標

レムナント周辺の地図を作る。

台詞

「人に話し掛けるとき、名乗りもしないよーな人と話すことなんて、何もないわよ」

リアクション

一方こちらのテーブルでは数人の学生が大きな紙を広げ、なにやら談笑している。

話の中心にいるのは転校してきたばかりのキャサリンマルガレットである、ここに来たばかりの彼女は、地理を知るためにレムナントの地図を作るつもりらしい。

「ここにある本屋は品揃えがすごくいいんだ、まぁこの図書館には負けるけどな……」

「このパン屋のくるみパンがおいしいのよ」

机に広がる白地図の一角を指さすのはマーダレス・レシェルトと、ラティス・リーファントの二人である。

「甘いですわマーダレスさん、その本屋さんだったらこっちの本屋さんのほうが断然、品揃えいいんですよ」

妙な人だかりに興味をしめしたファティー・フィリスはついつい口をはさんでしまった。

「面白そうなことをやっているな、良かったら私にも何か手伝わせてもらえるか?」

歴史の本を山ほど抱えたガブリエル・ラザフォードは、未完成の地図に興味を示す、このところ勉強しずっばりだった彼の頭は休息を求めていた。

「……あのねぇ、さっきから語を聞いてるとあそこの店がいいとかそこの御飯が旨いとか……私はショッピングガイドブックを作ってるわけじゃないのよ、私が作りたいのは『究極のレムナントガイド』なんだから」

協力すると言いつつ勝手なことばかり言ってるみんなにちょっと腹を立ててるキャサリンではあったが、心のどこかでは『まぁそれでもいいかな』と考えていたりもした、なにはともあれ、楽しく作業をするのが一番である。

と、その時二つの光球が図書館に入ってきた。

「結構疲れましたね、ドミニクさん」

「お待たせキャサリン、この当りの地図かいてきたよ」

ラティスの妖精ミルファと、同じくキャサリンの妖精ドミニクである

「くおらっ! 遅いぞドミニク、どこで油売ってたの」

キャサリンの怒鳴り声に恩わずたじろくドミニク

「じゃ書いてきた地図を見せなさいよ」

ドミニクが書いてきた地図は以外にも丁寧なものだった、はっきりいってドミニクが書いたとは思えないほどである、キャサリンは正直驚いた。

「ははぁこれ、あんたが書いたんじゃないでしょ」

「へへへ、ばれちゃいました……?」

「まぁいいわ、あなた、後でブン回しだからね」

おびえるドミニクは、ほっておいて、キャサリン達は早速地図の仕上げに取りかかる。

「……てことは貴様、風紀委員の指導室からこいつをギッてきたって訳か」

「ま、そういうことだね、でもそれだけじゃないんですな、これを見なよ」

フォウが自慢げに取り出したのは銀色の筒、うまり魔力封呪筒だった。

「そ……そんなもんまでギッてきたのか」

「ただこいつは衝撃に弱いからね、取り扱いに注意しないと、特にそこの下のポタンなんか押しちゃったりすると……」

「これか?」

グァドゥはボタンに指をかけた。

「……大爆発を起こす! ……って言ってるそばから押すなあああ!!」

「馬鹿野郎! そいつを早く言ぇぇぇぇぇぇ!!」

しかし時すでに遅し。

魔力封呪筒は強烈な閃光を発し裁じられた魔力を一気に開放した……つまり爆発である。

ズオオオオオオオオオン!!!

「図書館に危険物持ってくるのはどこのばかよ!?」

半壊した閲覧室に、真っ黒焦げの地図を片手に持ったキャサリンの絶叫がこだました。

第03回 PC1『学園ファイト、レディーゴー!』(時巻広路マスター)

preface

メインRAが「PC1)第13回武闘大会に参加する」というものでしたので、「第13回ということは、元ネタは『機動武闘伝Gガンダム』に違いない!」とそのパロディを織り込んでいます。そして、到着したリアクションのタイトルは、上記のとおりでありました。

アクション

行動目標

武闘大会優勝者と魔法の軍師の背中に蹴りを入れる。

台詞

「わたしのこの手に光が灯る! あなたを倒せと輝き叫ぶ!!」

リアクション

ヴェイは武闘大会告知のチラシを裏返し『学園ファイト7か条』と書かれた欄に目を通す。

第一条・額に肉と書かれたものは失格となる!

第二条・意図的に相手を殺すのは基本的にダメ!

第三条・己のガッツと根性が続く限り闘うこと!

第四条・自分の身は己で守らなければならない!

第五条・試合形式はブロック別のバトルロイヤル

第六条・自分の名誉と威厳を汚してはならない!

第七条・学園がリングだ!

さてこちらでは、表彰式が始まっております。

なんだかんだいってもアリスティさん、嬉しそうですね。

「ふむ、優勝おめでとう! まずは……賞金を!」

初々しく両手を差し出すアリスティの手に渡されたのは『百万クラン分の学食券』だった。

「現金百万クランは? ここにはそう書いてる」

アリスティは大会の広告を差し出す。

「ふっ! 目を凝らしてよく見るのだ」

アリスティは言われた通りに目を凝らして広告を凝視する、確かにあった。 『賞金百万クラン分のお食事券』と。

ドゲシッッ!

壇上に立つ銀仮面の後ろからキャサリンマルガレットのやくざゲリが入る、

「あんたねえ! 人をなめてんの? 一日どんちゃん騒ぎして、オチはこれ? ギモンよ、ギモン」

キャサリンは銀仮面のほっぺたを想いきり引っ張る。

「だいたいねぇ! 景品が一日理事長? ここまで派手にするならせめて次の大会の四年間ぐらいにはしなさいよね」

「いい加減にせんか! この馬鹿ものがぁぁぁ」

一喝と共に唐突に現われたのはレドリックである。

「それ以上の文句は俺が許さん!」

「何よ! やるってぇの?」

「ああ上等だ! やってやる」

『ハアアアアアアアッ』

キャサリンのからだからは光のオーラが、レドリックのからだからは暗黒のオーラが立ち上る。

「わたしのこの手に光が灯る! あなたを倒せと輝き叫ぶ!」

キャサリンのからだから立ち上るオーラが周りの地面をめくりあげる。

「必殺! 光条っ!」

キャサリンの手は光に包まれレドリックに向かって飛ぶ、しかし黙してそれを食らうレドリックではない。

「甘いわ!! 甘い! なっちゃいない、なっちゃいないぞ! キャサリン

レドリックの手に灯る、黒炎球はキャサリンの攻撃を受けとめる。

「なっ……何の!!」

キャサリンの光条のエネルギーが増す。

「ならばこっちも]

それに呼応しレドリックの黒炎球のエネルギーも増幅する。

膨張するエネルギーはおさえきれないほど増幅しコロシアムを包んでいく、そしてお約束の……。

ドオオオオオオオオンン!

「なんでこうなるのぉ?」

すすまみれになってしまったキャサリンの一言。……ごもっともです。

第04回 PC1『ケモノを狩るモノたち』(時巻広路マスター)

アクション

行動目標

林間学校近くの古代遺跡を探索する。

台詞

「……あ、あの、お願いがあるんですけど、わたしと一緒に……古代遺跡に行って……もらえません……か?」

リアクション

キャンプ場の喧噪を避けた湖の辺に彼らはいた。

「あ……あの……お願いが……あるんですけれど」

キャサリンマルガレットは伏せ見がちの上目遺いにシュナイザー・シルバースターの顔を見る。

「な……なんですか?」

彼女のすがるような眼差しに一瞬ドキリとする。

「あの……その……あの……一緒に……遺跡探繁…あの……してもらえませんか……?」

キャサリンは口元に手を当て、紅潮した頬で視線を右斜めに落とし、シュナイザー顔からゆっくり視線をそらす。

(これはまさしく……幻の『めぐめぐ』……)

『めぐめぐ』……

古代フェゼルシアに端をなす究極の男性ハートくすぐり技である、巧みな仕種、独特な言葉づかい、そして程よく紅潮した顔、この三位が一体となり初めて完成する。

現在この技を完壁にこなせる女性は、カルディネア大陸に五人といないという。

……婦恵是蕗資逢社刊『これが私の生きる道』

「……負けました……いいでしょう! この際ですどこへでも付き合いましょう……」

これほどまでに完壁に『めぐめぐ』をされてしまってはさすがにシュナイザーも負けざるを得ない。

「で……どこにいきたいのですか?」

キャサリンはそっと目を閉じ『振り子』を思い浮かべる、一秒間に一回正確に揺れる振り子を。

(古代の遺失魔法はどこ?)

「あの……こっちです」

森の中をずんずん進むキャサリン、もしかしたらシュナイザーはとんでもない女に引っかかってしまったのかも知れない。

振り子よ……

キャサリンは必死に振子を思い浮かべる、この感覚は近い。

キャサリンさん、これからどこへ……」

散々歩かされたシュナイザーはへとへとである。

「これよ! ……ってあら……アイネさん?」

キャサリンが手を伸ばしたのはアイネが持っていた木箱である。

「でも……何これ? これが放っている魔力、ただものじゃないわよ……」

我が名はマジカルストック

「え」

キャサリンの頭に更に声が響く。

我は汝に姿を与えるもの

我は汝に創造の力を与えるもの

即ち我を使えば汝『魔女っ娘』にならん

第05回 PC1『決戦、クリオシティ』(時巻広路マスター)

アクション

行動目標

動かしてる奴をどうにかすれば竜は止まると考え、フェイを鞭でしばき倒そうとする。

台詞

「なかなかの腕前ね。けど、レムナントじゃ2番目よ」

リアクション

フェイはふらつく足でイルルヤンカシュの足を追っていた。

ポローン

シタールの音が響き、そこに立ち塞がる影が一つ。黒い革のジャケットと革のパンツに身を包み、これまた黒い革の帽子を深く被っており、顔は見えない。持っている真っ白いシタールが黒に映える。その姿は差し詰め『謎の風来坊』といったところだろう か?

「貴様……何者だ? 顔を見せろ!」

「……こんな顔だけどね……」

風来坊は人差し指を突き立て、帽子のつばを指で持ち上げる。すると、そこには軽く頬を膨らませたキャサリンマルガレットの顔があった。

「たかだか一生徒が……イキがるな!」

フェイの指先から放たれた『光条』がキャサリンに迫る、がキャサリンは避ける気配を見せない。

フェイが放った光条はキャサリンの横をかすめ、その後ろの大木を砕いた。

「なかなかの腕前ね。けどレムナントじゃ二番目よ」

「ならば一番は誰だと言うんだ!」

キャサリンは待ってましたとばかりに、突き立てた人差指を左右に軽く振りながら舌打ちをし、そして不適な笑みを浮かべつつ、親指で自分を指す。

「見なさいっ!」

ズズズウウウ……ン

キャサリンが指を鳴らすとフェイの横に立っ大木が横にすれ、そして大木は真っ二つになって倒れ込んでいた。切り口はまるで、達人が最高級の剣で斬ったようなきれいな切り口であった。

「……いつのまに………?」

フェイは折れた大木からキャサリンに視線を戻すが、キャサリンがいるはずのそこには何もない。

「どこじゃ!」

「わたしはここよ!」

キャサリンは、フェイが大木に気をとられているうちにフェイの背後をとっていた。

「なぬう……その出で立ちは……お主一体」

その上、着ているものがオレンジ色の強化服に変わっていた。これにはさすがのフェイも鴛かずにはいられない。

「シュパッと誕生、シュパッと対決、人呼んでさすらいのヒロイン!」

あのーキャサリンさん? それは相手の首を後ろから締めながら言うせりふではないと思うのですが。

「うるさいっ! 外野は少し黙ってなさいよ!」

……はい、黙ります……。

「林間学校の少し前から、地震を起こしていたのはあなた? あなたね!?」

フェイの首を締める鞭に更に力が入る。

「だ……だどじだらどうなる……?」

「どうもこうもないっ!」

フェイの背中に鈍い痛みが走る、そしてフェイは意識を失った。

「そんなことよりも、なんでこんなところにフェイがいるんでしょう?」

「誰かがフェイを倒したのね……学園一の魔法使いを倒しちゃうなんて、誰だか知らないけれど凄い腕前ね……ん?」

エリサベスはフェイの横にカードが添えられているのに気づいた。

「……『この者凶悪殺人犯なり……S』 しょうもないいたずらね……」

こんないたずらをする者に倒されてしまうとは、もしかして、フェイって大したことないのでは? という考えがエリザベスの頭をよぎる。

第06回 PC1『魂のモンブラン』(時巻広路マスター)

アクション

行動目標

ハンミラでアルバイトをしてお金を稼ぐ。お客へのサービスは店長の指示通りに行う。

台詞

「エプロン姿で街を歩く人に、規律がどーとか言われたくないわよ!」

リアクション

「痛ぁっ、誰よ、こんなものをここに置いたのは?」

ハン・ミラでアルバイト中のキャサリンマルガレットはロビーに飾られた奇妙な石膏像に真っ正面から衝突、そのまま後に尻餅をついてしまった。

(ナイスだ! いま『ちらっ』とだけ見えたぞ)

「あれ、今どっかで声がしたような気が」

キャサリンは辺りを見渡すがそれらしい主はいない。それもそのはず、その声の主はその石膏のなかに塗り固められたセロー・サラスティアリなのだから。

「ちょっとでも学費の足しになればなつて、真面目に働いてみようかなぁっておもってたのになんでこう邪魔ばっかり入るの!」

つぎつぎ現れるお邪魔怪人に対し、キャサリンの我慢は、もう限界値に達しており、リミットブレイク寸前である。

「働くんだったらもっと場所を選ぶべきですの」

ティルピッツは手の甲を口元にあて、キャサリンをけらけらと笑い飛ばす。

「あんたにそんなこと言われたくないわよ!」

キャサリン、リミットブレイク!

「小賢しいですの! やっておしまい」

ティルピッツの怒号に、ビスマルクの口が『ぱかり』と開き、そこから火炎が放射される、哀れ木人たちは、あっという間に火の海に飲み込まれてしまった。

「ほほほほ、このまま店ごと焼き付くしてしまうですの」

ビスマルクは、その場で一回転し、その炎をまわりに放射する。

「どういうことですの?」

炎は、ほんの近くを焼くばかりで、広がらない、まるで見えない壁に阻まれているように。

「わたしよ!」

炎を阻止していたのは、キャサリンがかけた防壁の魔法である、炎の中からゆらりと姿を現したのはキャサリンと、シモケン、そして店に熱血指導にやってきたリーンである。

「てめえは、しゃべり方が気に入らねえんだよ、俺が指導してやるぜ」

リーンは、剣を降りおろし、ティルをびしっと指差す、うーん、かっこいい!

「自分の歌を聞いてくれい! いくで、二人とも、演歌防衛拳第五章!『鳥になる』」

シモケンは、シタールをかき鳴らしつつ、腰を小刻みにかくかくと左右に動かす。

いつものあの歌を今日も懲りずに歌い続けよう

「はぁぁぁぁぁ、ち、力がぁ、み……みなぎるう」

キャサリンの目に怪しい光がともる。

「来た来た来た来た来た来たぁぁぁぁ!」

こっちではリーンの体が、青白く光る。

シモケン、一体何をやった?

女神に選ばれてあなたは鳥になる

「わたしは! 鳥!」

「俺もぉ! 烏!!!」

ビスマルクの胸部が開き、そこから吹き付ける突風が二人を襲う、が、二人は体から光の尾を引きながら、宙に舞い、それをかわす。

「一体、何が起こってるですの?」

知らん、俺に聞くな。

ぼくを置いて鳥になる

「ストライク・フェアリー……フルコンタクトォ」

キャサリンは自分のわきで飛ぶ妖精ドミニクエリザベッタを、むんずと掴み、そのまま投げ付けた。

「たまに出てくりゃ、こんな役ぅ!?」

光に包まれ螺旋を描きながら飛ぶドミニクは、ティルピッツの顔面に見事にストライク、ティルピッツはビスマルクからたたき落とされた。

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

ティルピッツに向かって猛然とダッシュするリーンは、盾となって立ちふさがるビスマルクの火炎放射の直撃を受ける。

まずいぞ、このままでは、リーンの丸焼きが出来上がってしまうぞ!

「甘いゼ!」

そこには、ビスマルクの体に、剣を突き立てるリーンの姿があった、キャサリンの防壁によって護られていたのだ。

「今だ! キャサリン

リーンの剣によって動きを封じられているビスマルクであったが、その手はリーンを引き剥がそうと迫っていた。

リーンの頭を飛跳び越し、分解の魔法を帯びたキャサリンの左手刀が、ビスマルクの脳天を直撃する指先が突きささった辺りが、さらさらと崩れだす。キャサリンの魔法が、ビスマルクを構成する『原子の結びつき』を壊しているのだ。

そこにすかさず、光条の魔法を帯びた右の手刀がビスマルクの残骸を焼き尽くす。

左手に集めた『分解』の魔法と、右に集めた『光条』の魔法を、同時に叩きつけ敵を完全に粉砕するそう、これぞまさしく!!!!

必殺! ヘル・アンド・ヘヴン!!!

爆発するビスマルクをバックに『勝利の決めポーズ』をとるキャサリンとリーン、爆発はキャサリンが形成したディバ……もとい、防壁フィールドが空へと逃がす、爆発による被害額はゼロだ!

「……あれ? わたし?」

やっと我に返ったかキャサリン

「自分の歌がキャサリンちゃんのハートにびびいたんや、自分はうれしいで、でも二番まで聞いてくれへんのか、みんな冷たいなぁ……」

『演歌防衛拳』っていうのはそういう技らしい、そうなんだな? シモケン?

「……悔しいですわ、こんな連中に負けてしまったなんて……真の敵はこの奥ですのに……」

砂となって崩れてしまったビスマルクを前に、茫然自失となるティルピッツ、どうやら彼女からは、聞かねばならん事があるようだ。

第07回 PC1『デス・アンド・リバース~再誕の時~』(時巻広路マスター)

アクション

行動目標

『ウラドラ』に行き、行政改革を始める。

台詞

「ま、わたし達の歴史から鑑みても、このままいけば、大量のゴーレムの襲撃を受けて、全滅ってとこね」

リアクション

「一緒に? 馬鹿なことを言うでないわ、わしはお主ら人間と共存しようとは考えてはおらぬ!」

ヴァウの心には、人間へ復警という消えることのない炎が、煌々と燃えていた。

「……生焼けね……」

それまで押し黙っていたキャサリンは、ナイフとフォークを置き、ナプキンで口を拭う。

「そうかぁ? オレは結構いけてると思うぜ」

ヒュラス・シルズィレアは、フォークに突き刺した肉きれを口に運ぶ。

「料理のことじゃないわ、今のこの組織……いえ、ヴァウ、あなたのことよ」

キャサリンの眼鏡がぎらりと光る。

「表面をいかに取り繕っても、中はまだ半熟、言ってしまえば……反抗期の子供ね、あなたは」

ヴァウの額に青筋が浮かぷ。

「貴様、何が言いたい」

「あなたたちの言い分は判るわ、私の祖先も神竜に反抗したって話だし、子供が親離れするのは当然のことだし……」

二人は席を離れ、立った状態で向かい合っていた。

「確かに、わしらは人間に作られた、貴様はレグルタ人と神竜の話を引き合いに出したが、貴様、わしらの親にでもなったっもりか」

「わたしたちが神竜によって生み出されたとしたら親じゃなくて神、あなた達ににとって、人間は創造の神のはずよ」

ヴァウは思わず後ずさる、キャサリンの論破が見事にヴァウに炸裂する、こうなってしまってはヴァウの目には、キャサリンの背後に後光がさして見えることだろう。

「それが厭なら、どうしても人のうえに立ちたいっていうのなら、どうしても人間に復響を果したいっていうのなら、その資格を証明してみなさい!」

キャサリンのとどめの一冒はヴァウの思考回路をショートさせた、頭からプスプスと湯気があがる。

「くくくっ……よかろう、その思い上がった認識、貴様の体に直接、思い知らせてくれるわ」

ヴァウの両手にマナが集まる、どうやら、力でそれを証明するらしい。

「秘密結社、なくなっちゃったね、これからどうしようかなぁ?」

ラージャは心をもった自動人形達に、学園の未来を賭けてみるつもりで、ここにきた。

「簡単なことよ、俺達でウラドラの意志を継いでやればいいのだ、ウラドラとか言う名前も変えてな」

腕を組んだレドリックは、微笑みを隠せなかった 図らずとも、ウラドラの組織を自分たちのものにできるのだから。

「クリオ・ノアって名前はどうだ? 勿論、組織のリーダーは……」

「リーダーは、わたしがやるわ」

グァドゥを押し切ってリーダーに立候補したのはキャサリンである。

「残ったわたしたちで行政改革をするのよ、クリオシティが、まともに動いていくようにね……」

「おいおい、冗談じゃねえぞ、俺様達の手でクリオシティを壌滅させ、新たなる世界を作り出す、こいつらがあればそれも夢じゃねえんだ……」

グアドゥは、古代の剣を手に反論する、言い伝えによれば、古代の剣の刃は、持ち主の精神力次第でで、神竜の鱗すら貫く、無敵の刃になるという。

そして、キャサリンの手の中には、失われた古代魔法『魔球』の魔導書がある。

たしかに、このふたつがあれば、クリオシティを壊滅させることも可能かもしれない。

「あなた、バカ? ここは学院よ、勉強する場所よ。わたしがリーダーをやるかぎり、あなたにも真面目に勉強してもらうわ、いいわね?」

グァドゥは、キャサリンに一気にまくしたてられ完全に押し切られてしまった。

「新しいクリオシティはオレたちが作るか……、それで、とりあいづ、何をするつもりだ?」

アルトはふっとため息をつく、話はアルトの思わぬ方向に進んでしまった、しかし、今回だけはキャサリンたちに付き合ってもいいだろう。

「まずは、わたしたちのいいイメージを作るための広報活動ね、まずはこれよ!」

キャサリンは懐から取り出した紙を、机にばっと広げる、そこには……。

「なになに、『人さらいを捕まえて、しばき倒し世間からは感謝感激雨あられ』なるほどな……」

ルイフィアムが読み上げた今月の目標に、一同はこくりと頷く。

かくして、善の秘密結社『クリオ・ノア』が誕生した、果たして彼らはクリオシティ再建の鍵になりうるのだろうか。

ロンロンとの戦いが繰り広げられている遺跡を、高台から望む八つの影があった、クリオ・ノアの面々である。

「そう、どうもありがとう」

アスランが、召喚した地霊は、そそくさと元来た穴にもどってしまった、アイネをさらったロンロンの行方を知るため、いたるところに、アスランの精霊魔法に頼ったのである、そしてこれは、遺跡の中の様子を、のぞいてきてもらったものである。

「それで、どうだったの?」

キャサリンは視線はアスランに向けず質問する。

「遺跡の中では、地霊がびっくりするくらいの戦いが展開されているみたいですね」

ゆうべ、シンはこの遺跡にこいといっていた、ということは、今この遺跡では、シンと何者かが戦っているということなのか。

「どうするんだ、シンの言うとおり、あそこにいくのか、それとも、アイネを捜すか」

ルイフィアムの二択が、キャサリンに迫る。

「今のところ、アイネのほうの手掛かりはなし、となると、遺跡のほうにいってみるしかないんじゃないかしら」

キャサリンたちは高台を引き返し、遺跡へ急ぐ。

「自動人形、偽物だったのね……」

キャサリンは横笛を口から離す。

「貴様、偽物だって事、気付いていたのか?」

グァドゥに対しキャサリンは首を横に振る。

「わたしは、あなたのために横笛を吹いたのよ」

キャサリンがにらんだ先には、シンと、黒衣の影があった。

「残念だが、わたしの回路に、その横笛は効かん」

シンの顔に笑みが浮かぶ。

「そんなことはどうでもいいわ、それよりも、一体何が目的なの?」

二人の間に火花が散る。

「宣戦布告……と言っておくか」

仮面をかぶりなおすシンの心は、誰にも分からなかった。

第08回 PC2『クリオシティ661~堕天使、覚醒』(時巻広路マスター)

アクション

行動目標

我羅倶楽博物館に行き、シンをいてこます。

台詞

「久しぶりねぇ、シン君。……3日ぶりかしら?」

リアクション

学園の敷地のなかでも、外れにある校舎の、そのまた外れにある教室、現在、使われていないその教室は、暗幕で外界と遮断され、その壁には、八枚の黒板がかかり、教室の真ん中にぽつりとおかれたランプの弱い光が、それらを下からライトアップしていた。

『正義の秘密緒社・クリオ・ノア』それが、現在のこの教室の名前である、シンの手によって壊滅させられた『悪の秘密結社ウラドラ』の後釜として誕生した、正義の秘密組織だ……まあ、この辺の下りは、前回のPC2のリアクション参照な。

「それじゃ、報告会、始めるわよ……え~と。とりあいづ、今回は、来月の各自の目標を」

キャサリン・音声出力』と殴り書きされた黒板から、キャサリンマルガレットの声が響く。

「俺は、邪魔者を消すことだ」

向かいの黒板から響くのは、ルイフィアム・ナーブルの声である。

「……シンか?」

アルト・バイギーの声からは、焦燥感がみえる。

「奴は、我々の計画にかならず支障をきたすであろう、やはり危険の芽は早く……」

「それは違うよ、あれは本物のシン君じゃない!」

レドリック・グランエールの声を、ラージャ・ルイージャの悲痛の声が遮る。

「そうだぜ、きっとなにか裏があるんだ」

ヒュラス・シルズィレアの意見は、ラージャのそれと、同じものだった。

「それは、我羅倶多博物館にいけば分かることね、すべては、明日……」

「ごめんなさい、ぼく、明日、行けません、創始祭で、ティルピッツお嬢様の手伝いをすることになってるもので……」

ばつの悪そうなアスラン・シーモアの声が響く。

「……しょうがないわね、じゃ、あなたは学園の見回りぐらいしときなさいよ、一応わたしたち、正義の味方なんだから……」

キャサリンはアスランをたしなめるようにいう。

「悪いが俺様もだ、ちょっと野暮用があってな」

グァドゥ・カリアンは、アスランとは対照的に、『行けないのが当然』といった口ぶりだ。

「……とにかく、作戦名『アジマ作戦』決行は明日の朝よ、それまで各自自由行動、いいわね」

ランプの灯が消えるのと同時に、教室は無明の闇となった。

ゴーン・ゴーン・ゴーン……

戦いを予感させる、重たい鐘の音が響く。

アジマ山は、もともと岩山である、人の手が多様に入り加工されたその山は、古ぼけた石畳、壊れた石柱といったものが多く『山』といより『遺跡』といった面時ちが強い。

かつての研究所跡、アジマ山には、濃いもやが立ち篭めていた。

はっきりとした視界すら保てないもやの中、戦士たちは、黒い法衣に身に包んだ男と向かい合っていた、研きぬかれた水晶玉のような青い瞳は戦土たちを睥睨していた。

「ようこそ、クリオシティの生徒諸君……」

「あいさつはいいから、下りてきなさい!」

石柱のうえに立つ青年、つまりシンに、キャサリンの光条が放たれる。

シンはそれをかわすでもなく動かない、光条は、もやを裂き、シンの頬を掠める、シンの頬からは血は流れない、それは、彼が人ではないことを物語る証拠でもある。

「いいから降りてこいよぉ、才レ、おまえと話がしてえんだ!」

ヒュラスの声にシンは山の麓を指差す、その先には、もやの中、陽炎のように頼りなく揺らめく、六つの灯があった。

「あの火時計は、半刻でひとつの火が消える……つまり六つで三刻……火時計の全ての火が消えるまでにわたしの所まで来てもらおう、我羅倶多博物館で待っている……さもなくば、あの娘は」

「……まさか、アイネさんのことですか?」

リーディック・グローバスの問いに、シンはゆっくと首を縦に振る。

「ちょっと待ちなさい!!」

キャサリンの叫びを嘲笑うかのように、シンの姿はもやの中にかき消える。

「なんて、ふざけた奴ですう……」

ルファール・アファレンシスは唇を噛む、シンに対する怒りも高まっていた。

「おい、リーダー……気付いてるか?」

「何がよ?」

ルイフィアムは剣に手を掛けたまま、辺りをうかがう、ルイフィアムの他にも何人かの戦士は気付いているようである。

「ああ……オレ達……」

「完全に囲まれたな、かなりの数だぞ」

ソアラ・グランバードとオリビエ・オーヴィットはそれぞれ背中合わせで武器を構える、包囲網はかなり迫ってきている、目の良い物ならば、もう肉眼で確認できるだろう。

「こうなったら、古代魔法の『瞬間移動』でさっさと博物館に……」

ちょっと待ったキャサリン、君は、ここにくるの初めてだよね。

「そうよ、なんか文句ある?」

ここから博物館、見える?

「わたし、あんまり目が良くないからね、もやもかかってるし、見えないわ」

はちゃー、それじゃ無理だね。

「え? どうしてよ」

だってほら、魔導書にそう書いてある。

「なになに『目的地を選ぶ事ができるのは術者がよく知っている場所か視界内のみ』あら、本当」

魔導書に見入っているキャサリンの背後に黒い影が迫る。

「あぶねえ!!」

キャサリンは、自分をかばったルイフィアムの声で我に返る。

「そんな物に見入ってる場合じゃないですよ、この人たち、目が普通じゃない」

ステラ・シュテルンの言葉どおり、彼らの目は、暗く淀み、たとえるなら死んだ魚のような目をしていた、しかし彼女は彼らの中に見覚えがある顔をいくつか見た、それは、同じクラスの生徒……そう、彼らはシンの手によって傀儡となった、学園の生徒達であった。

アリスティの息は完全にあがっていた、初手はなんとか取ったようなものの、剣を取ったシンにはまったく攻撃があたらない、ただしシンの方も反撃してこないのだが。

「ちょこまかちょこまかとぉぉぉぉ!」

アリスティは残った最後の力をこめて右フックを振り披く、シンはそれを軽く避けると剣のつかでアリスティの首筋を殴り付けた、アリスティの視界が暗転する。

「とどめは刺さないの?」

部屋の閲入者であるキャサリンの問いにシンの答えはない。

「約束どうり来てやったぜ、もうはぐらかすなよ」

ヒュラスは人懐っこくシンに微笑みかける。

「ねえ、『君』は誰?』

一歩前に出たラージャ・ルイージャの一言にシンは驚樗の表情を向ける。

「君は言ったよね『本来、あるべき姿に戻った』ってそれって違うでしょ?」

シンは黙して目を閉じる。

「本当のシン君なら他の人の学園生活を守る立場を取ろうとするはずだよ」

ラージャはひとことひとこと、噛み締めるようにいう。

「シン君の心にかぶさっている『君』は誰なの?」

なにか言おうとするヒュラスを制してラージャはさらに言葉を統ける。

「私、シン君にも『君』にもみんなと学園生活する権利あると思ってる、裁きっていうのは課せられた役目なんでしょ? 君にそんなものを課せたのは誰なの? 教えてくれれば私、力になるよ」

シンは口を歪め、ラージャをにらみつける。

「私に役目を課した者か……それは他ならぬ君達、学園の生徒だよ、特定の誰かということはない、本来なら私もシンもなくていい道具だ……」

キャサリンはシンの前に歩み出るとシンの頬を平手で叩く、乾いた音が響く。

「笑わせないでよ、誰も裁きなんて必要としてないわ、それにあなた、ここが何処だか分かっているの? 学園よ、自分が未熟だと知る人達が勉強する場所なのよ、そんなのをたかだか数十人見たからって全ての人間が分かるつもりなわけ?」

「そうだ、そんな馬鹿なことがあってたまるか」

アルト・バイギーはキャサリンに統く。

「シン、お前の目的はなんだよ」

キャサリンをはね退け、ヒュラスはシンに掴み掛かる、シンの瞳孔が大きく開く。

「そう、お前たちが、しっかりと……」

ゴオオオオオオン・ゴオオオオン

一際大きな鐘の音が響き、それを合図に大地が大きく揺れる。

「コウソクヲマモッテイレバ……ワタシハ、ウマレルコトモ、フウジラレルコトモ……」

シンの歯がカタカタと鳴る……

「生まれる? 封じられる? あなたは誰?」

轟音に耳を塞ぎつつも、ラージャは、シンに向かって叫ぶ。

「こいつの名前は『絶対回路ディカステス』私のなかに寄生した、私の回路のプロト・タイプだ! これだけは……作動させてはいかんのだ」

ディカステスの支配から逃れたシンは、頭を抱えうずくまる。

「シェ・リ・ル君……」

やっと口を開くシンの体からは濠々と湯気が立っていた、今のシンの体は高熟をもっているのだ。

体を起こしたシンは、両腕を大きく広げる。

「頼む、私を……討ってくれ!」

背中のバスタードソードを抜いたシェリルは力強くうなづく。

「ちぇいりゃぁぁぁぁぁっ!!」

バスタードソードはシンの胸部を貫いた。

シェリルの涙がシンの胸を濡らす。

「まだ……終わりじゃない……とどめを」

「分かったわ、あなたの想い無駄にはしない!」

キャサリンは、『魔球』の呪文の詠唱をはじめる。

複雑な印を組み終えると、キャサリンを取り囲むようにオレンジ色の光球が生まれる。光球は輪を描きながら天井を破り、空に舞い、そして、天からのまぱゆい光がシンに突きささる、六つの『魔球』から放たれた『屠竜』の魔法は、シンの体を完全に焼き尽くした。

「私の仮面……に……ディ……」

光に消えるシンの声は最後まで聞き取ることができなかった。

「う……あ……?」

キャサリンはちくりとする痛みと、頬を伝う生暖かさに、耳を押さえた、手のひらにはべっとりと血のりがついていた、耳の穴からねっとりとした血が流れていたのである、唱えるのに強靭な精神を必要とされる『失われた古代魔法』は、唱えるたびに脳に影響を与えるのである。

地面の揺れはますます激しくなる。

「大丈夫か、おまえ?」

倒れかけたキャサリンに肩を貸すのはアルトだ。

「げ、何だよ、あれ」

床がひび割れ岩石質の突起が隆起する、もはや立っているのもままならないという状態である。

第09回 PC1『後薬園で僕と握手!!』(時巻広路マスター)

アクション

行動目標

封印されていたくらいなんだから、物理的にどうにか出来るとは思えないので、精神的な自滅を狙う。

台詞

「わたしと1つになりたくない? 心も身体も1つになりたくない? それは、とてもとても気持ちのいいことなのよ」

リアクション

『後薬園で僕と握手!!』

セロー「うむ、我ながらすばらしいタイトルだ、我輩の原題とちょっと違うがな」

アルシュ「エキセントリックかつワンダフルにしてビュリホーなタイトルね、セロー様、素敵っ」

キャサリン「そう? セローさんがつけたにしては普通なタイトルだと思うけど……」

アルシュ「なによ、あなた、いきなり出てきてセロー様のタイトルにけちつける気?」

キャサリン「……いきなり突っ掛かるわね、わたしはセローさんに用があってきたのよ」

アルシュ「なんの用よ?」

キャサリン「わたしの部屋の椅子がどうも調子わるくって、セローさんって用務員さんだったわよね。ちょっと見てもらえないかしら?」

セロー「それは我輩に『女子寮の自分の部屋へこい』といってるわけであるな? キャサリン女史」

キャサリン「ま、そういうことね」

アルシュ「あっ!」

セロー「……女子寮……女学生の部屋がいっぱい……酒池肉林のピチピチハーレム……」

シモケン「あかん! セローちゃんが『●倉先輩モード』に入りかけとる、誰か止めな!」

セロー「ぬはははははは! 行ってやろう。椅子どころか風呂場ベットおよび洗面所、女子寮のありとあらゆるところを直してやろうではないか!」

キャサリン「ちょっと待てぇい!」

アルシュ「わかったわキャサリン! あなたそんな事いってセロー様を自分の部屋に連れ込んで、二人っきりになったところで一気にセロー様に迫っちゃおうって魂胆ね……なんてフケツな……」

キャサリン「ちっがあうっ!!」

アルシュ「恋のライバル出現ね……キャサリン! あなたにセロー様は渡さないわ!」

セロー「さぁ我輩を禁断の楽園、女子寮へ誘うのだ、ええい! 我輩からレッツ・ラ・ゴーだぁ!」

アルシュ「ああっ、セロー様待ってえ~!」

シモケン「あの二人、行ってしもうたな」

キャサリン「ほんっとーにギモン……」

シモケン「ところでキャサリンちゃん、さっきそこでこんな紙切れ拾うたんやけど」

キャサリン「『自己再生・自己増殖・自己進化』の三大理論のもとに作られた不完全な良心回路ディカステスはアイネを核に、その姿を巨大タコ焼きへと変えクリオシティに現われた。果たして学生たちはこの最大の危機を乗り越えられるだろうか? ……これって、あらすじ解説のメモじゃない。こんなものがあるって事は……」

シモケン「あっちのほうからすごい勢いで語りべが来よるで、ちゅうことはここからは通常営業ってことやな、ほな、また後でな」

「それにしても変だわ……」

冒険者ギルド付属冒険者養成学院学生証の校則の欄を眺めるキャサリンマルガレットが疑問の声を上げる。

どうしたんだ、キャサリン

「さっきから、あいつが言ってる校則ってどこにも書いてないのよ……」

もともと、あまり校則の多くない学園である。校則のぺージはそんなに多くないのだ。

「それについては、ワシが説明しよう……」

キャサリンの横には、ズタボロと化した理事長が立っていた、いつのまに!?

「奴の正式な名は『ジャッジメントバージョンワン・デイカステス』というのじゃ……」

ディスカステスが作られたのは学園内に校内暴力の嵐が吹き荒れていた頃だった。学園の状況に見かねたゴーレムギルドは『鋼鉄の委員長計画』を発案した。

これは、人間より強力なゴーレムを風紀委員として学園に配置し、学園の風紀向上に役立てようという ものだった、その時に配置されたのが、校則の守護神『絶対回路・ディカステス』を内蔵したゴーレムだった。

計画は当初の目論みどうりに進み、校内の風紀は向上、校内暴力の影もなくなったのである。

やがて、ディカステスを元に改良を加え良心回路が誕生することになる。

「それで、お役御免となったディカステスは我羅倶多博物館にしまわれることになったのじゃ」

「ちょっと待ってよ、いらなくなったからってこっちの都合でしまっちゃうの、そんなの勝手だよ」

話を聞いていたラージャ・ルイージャは理事長にやおら掴み掛かる。

「仕方のないことだったんじゃよ」

一気に立場が弱くなる理事長にラージャは隙を与えずにまくしたてる。

「心がある以上彼は道具じゃないんだ! それをそんなふうに扱うなんて……」

感極まってしまったラージャを後に下げ、キャサリンは話に割り込む。

「それで、核となった彼女を助ける方法は?」

「さあのぅ……見当もつかんわ」

「こぉぉぉぉの役立たずがぁっ!」

今度はキャサリンのホームラン・ヒーローが炸裂した、まったくもって無責任な理事長だ。

「こうなったらあれしかないわね……」

キャサリンが考えた作戦はちょっと無謀なものかもしれない、しかし、それ意外の策がない今はそれをやってみるしかない。

「核を引きぬくだと? 本気か」

セロースペシャルに乗っていた全員が異口同音に叫んだ。

今や、セロースペシャルは右腕を失い、ディカステスと向かい合い、さらに街はちびディカステスとちびセローでうめつくされているという状況だ。

つまりは、事態は膠着していた。そんななかでのキャサリンの提案は、無謀すぎるものだった。

「ディカステスの表面の三分の一程度の表皮を剥き奴が自己再生しているうちに、セロースペシャルが核を引きぬくのよ! 手はこれしかない……」

「たしかにそれしかねぇかも知れねえよぉ、でもよそんな作戦、本当に実現可能なのかぁ?」

「理論的にはね」

リーンの問いにキャサリンのメガネが怪しく光る。

ディカステスは自己再生能力がある。しかし再生させる面積が多くなれば当然それにも時間もかかる。内部がマグマのように熱いディカステスも、それが外気に触れれば多少は冷める、その隙にゾンダ……もとい、作動回路を引き抜き、ディカステスを無力化しようというのが理屈である。

「核を引きぬくための装備か、セロースペシャルの『男丸X(だんがんエックス)』を使えばあるいは可能かもしれんが……あれを使うには六百セローの叫び声が必要だ……それに」

セローはめずらしく、真面目な顔で渋る。

「その前に、どうやって『表面を剥く』のさ?」

「それができなきゃ話になんねえよぉ」

アリスティとリーンにキャサリンは口をつぐんでしまった。しかし、別のモノがそれに答える。

「明鏡止水だ……!」

異口同音に答えを返したのはいつのまにかセロースペシャルの中に紛れこんでいたアリスティの拳術の師匠、フー・タイロン老師とリーンのパートナーユニ・ファーリアの兄……つまりはリーンの剣の師匠、黒い覆面男シバルツ・ブルートーである。

明鏡止水……それはクルドクルのちょっと北にいったところの、ナガノ地方名産の醸造酒……。

「こぉぉぉぉの馬鹿弟子がぁぁぁぁ!! 明鏡止水の心、ワシが何度貴様に教えたと思うとるんだ?」

「お前はいつだってそうだ! なっちゃぁいない、本当になっちゃいないぞリーンよ!」

感情的になったフーとシバルツはそれぞれの弟子に音速の往復びんたと連統ぱちきを叩き込む。

「ちょっとまちなよ師匠ぉ……」

「俺たちまだ何も言ってないよお……」

スマンニ人とも、語りべが余計なことを言ったばっかりに、とんだとぱっちりを……でもその醸造酒はちゃっかり実在するんだな、これが。

「で、セローさん『男丸X』ってなに?」

呆気にとられた一同を差し置き、キャサリンは玉座に控えるセローを振り返る。

「ふむ、我輩と『クリオシティ木工ギルド』が共同で開発したゴーレム用の巨大なハンマーである……しかしだな……」

それは、あまりにも巨大すぎるため、セロースペシャルでも両手でないと扱えないのだ。

「ねぇ、セロー様、わたしに良い考えがあるの」

セローの横に控えるアルシュが爆乳を、もとい、胸を張ってみせる。

「ほう、それは一体どういうことだ?」

「こういうことよっ、セロー様っ……」

アルシュは自らのスクール水着の肩紐に手を掛けそれをずり下ろし、セローの前でおのれの生乳を顕にさせ、それを見たセローは当然鼻血の海に身を沈めることとなる、どうでもいいがセロー、早いところ女性の裸に対する免疫を付けないと世界を支配する前にキミがヒモノになってしまうぞ。

「ああ、もう、緊張感がないわね、丸裸になって一体何する気なの?」

「これで、もう一本の腕を造るのよん」

目を点にするキャサリンに対しアルシュは軽くウインクして答える。

……スクール水着でですか?

「ハサラ先生っ! 男丸X承認の準備よし!」

セローはびっと指差す。

だぁぁぁんがぁぁんエェェックス!!

ハサラ・ネイキーの塊の叫びがレムナントの大地に響きわたり、大地を震わせた、それは千セローをマークする熱すぎる魂の叫びだ。

「『男丸X』承認!」

セロースペシャルは、背中から生えた柄に手を掛けそれを両手で引きぬく。

金色に輝く超巨大ハンマーは、旅行券でも指環でも簡単にハンティングできそうな予感と、異様な迫力をもっていた。

「あとは頼んだわよ……二人とも……」

キャサリンの無言の祈りは届いたか……。

キャサリンは両の手を握り合わせ『防壁』の魔法をまとった『魔球』をディカステスの核に飛ばす。

「ぐわぅぅぅぅぅっ」

堪え難い『頭痛』が、キャサリンの脳細胞を襲う。大丈夫か、うう……ガイがしん……じゃなかったキャサリン! 気をしっかり保て!

「1パーセントの可能性を根性で百パーセントの可能性にまで引き上げる……それが……勇者と呼ばれる者よ……」

魔球は核を包み、それを護る結界を作り出す。

ハンマーチャンス! ワン!!!

再びハサラの叫びが響く!

対タコ焼き用の楊枝は『核』に突き立てられその尾は『男丸X』で力一杯叩かれた、防壁で護られているようなものの、核の内部のアイネを貫かぬ様、慎重で力強い操作が要求される。

チャァンス・ツー!

今度は核に突きささった楊枝をディカステスから引き抜く、しかし、ディカステスも核を取り返そうと触手を伸ばす、そこに叩き込まれるのは……。

ラスト・ハンマーチャァンス!

ハサラは喉から血を吹きだし倒れてしまった。

再び振り上げられた男丸Xは核を失ったディカステスにふり下ろされ、それにかけられた『超重力』の魔法が文字通り、ディカステスを押しつぶし、灰とした。

「学園ファイト国際条約第一条、頭部を砕かれたものは失格となる……あなたの負けよディカステス」

キャサリン、それは一体なんだね?

「新しい学園の校則よ……ほら」

何ナニ、改訂神竜暦661年7月、改訂者アリスティ・サバル……。

「大体、あなたは何のために校則を守護するんですか? 校則を守るためにあなたが校則を破ってどうするんだ?」

「わ……わたしは一体、なにを……?」

ミシェイル・ノーティスの話に、ディカステスは精神崩壊を起こす寸前だった。

「校則は学園生活を守るためにあるけれど、そんなのあくまで手段じゃない、それのために学園生活が妨げられるなんて本末転倒よ!」

さらにキャサリンの追い打ちが入る。

「わたしは、ここに居るべきじゃなかったのか……こうなったら、この身を砕いて」

まずい! ディカステスはアイネとともに自爆を決意したみたいじゃないか!

「キミは人生を経験するべきだよ、誰のものでもない自分だけの人生を……」

ラージャは慌ててフォローを入れる。

「そうや、キミは人間になって自分と噂の演歌デュ才『0YAYUBI』を結成するんや」

消えてしまいそうな老いぼれの星も錆付いた自由と偽物の明日あの河を越えれば君と二人きり、もう離さない、君がすべて、風は冷たいけど……胸の谷間からあふれでた歌は果てしない闇を切り開く魔法……

「……でも、最低限のラインは守るべきだわ、だからあなたは、ここにいていいのよ」

ピノキオ・ヤマダの新曲『法』とキャサリンの救いの手はディカステスの心に響いた、アイネの顔に取りついた仮面に亀裂が入る。

ピシピシピシ…

ディカステスの核、真の本体があらわれる。

鋼が寄せあった有機体は徐々に溶け合い人の形を作り出す、サルベージされたその姿は目の幅涙を流し両の手を握る、その姿こそ。

「シン君!!」

そう、ディカステスはシンのプロトタイプだったのである。

「そう、わたしは歌う……ピノキオ・ヤマダ……君ともに!」

拍手が巻き起こる、歓声が巻き起こる、なんでかよくわからんが、とにかく感動的な光景である。

「おめでとう」

「おめでとう!!」

「おめでとう!!!」

「君はここにいてもいいんだ!」

こうして、機械仕掛けのピノキオは人間になることができた。

それは噂の演歌デュオの誕生。ついでに歌って踊れる風紀委員長の誕生も意味している。

彼が人間になることで、幸せになれるかどうか……それは、学園のみんなにかかってるのである。

第10回 PC1『みっつの心で呼ぶのなら!!』(時巻広路マスター)

preface

「セローさんの仮面を剥がす」というアクションは、第11回(オフィシャル・イベント参加者用のおまけ回)にやろうと考えていたのですが、他にやりたいこともなかったため、最終回に実施しました。

アクション

行動目標

セローさんの仮面を剥がそうと画策する。

台詞

「セローさん、聞こえていたら、自分の嗜好の不幸を呪いなさいよね。あなたはいい用務員さんだったけど、その仮面がいけなかったのよ」

リアクション

「ホールドアップ! 衛生管理委員会の抜き打ち検査ですの! 全員頭の後に手を組んで……」

ちょっと待ちたまへ。ちみはめりけんこっぷか?

突然の闖入者に、それまで談笑する声にあふれ返っていた店内も一応、一旦は静まり返る。

「こらそこ! 勝手に立っちゃダメですの!」

「勇ましいお嬢さんだ……」

客席からゆらりと立ち上がる影がひとつ。

そしてそれはゆっくりとティルピッツをふりかえりぽー●まきのように両手の指をパチリと鳴らした。それは『素晴らしさ』のあまりに、真空波が起こってしまいそうなほどいい音であった。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

それを合図に二階のフロア席から、ティルピッツ目掛けて捕獲網が投げ付けられ、ティルピッツは避けるまもなくゴーレムごと吊るし上げられた。

「お壌様ッ!!」

行列にもまれてやっと店内に入れたアスランが見たものは、そういうものだった。

「このゴーレムと、竜の巫像はいただいていく!! わがセロー団再構築のために!」

がっくりと肩を落とすアスランに追い打ちをかけるのはその影こと、店のオーナーであるセローだ。

「ぼくがついていながら、何故こんなことに」

「ぼうやだからさ……」

その突っ込みはお約束だね。

「取り返したくば、わが『セローの塔』まできたまえ。見事量上階まで辿り着いた者のみに幸せが訪れるだろう……それではサラバ! わはははは!」

セローはそれだけいい終えると唐の奥に消えてしまった、貴様はキャプテン・ト●ボーグか?

それにしてもさっきのセロー、なんか変だったぞ。角が多かったような気もするし、普段のセローよりもちょっと素早かったような気もするし。それに、なんか赤かったような……ま、いっか。(死語)

セローの塔の最上階。

二人の仮面男が向かい合っていた。

どちらがオリジナルか分からないが、ほぼ同じ姿をしていた、違うのは仮面の色、そしてそこから生える角の数である。

片方は『金』それに対し、片方は『赤』。赤いほうには二本の角に加えて、額から一本のブレードが生えていた。

「例のモノ。ちゃあんと手に入れてきたわ、大変だったんだから、大事に使ってよね」

赤いほうが仮面を外す、そこからでてきたのは汗だくのキャサリンマルガレットである。

「よくやってくれた鉄球参謀、素晴らしい、実に素晴らしいぞ! で、モノは?」

「大丈夫、ちゃーんと倉庫にしまっといたわ」

『金色のほう』セローはキャサリンから『水晶の竜の巫像』をティルピッツごと手に入れたという報告を聞き、ご満悦の様子だ。

ちなみに鉄球参謀とは、キャサリンのこと。

ちなみにセローは『ゼネラルセロー』である。

「大変だゼネラル! 倉庫に大切にしまっといた、アレがなくなってるよ!」

「なんと! それは本当かね? 隊長アップリケ」

黒い全身タイツに身を包んだセロー団戦闘隊長、『隊長アップリケ』ことフレイド・ライドが息急き駆け付けて来た……それにしてもお前たち台詞廻しが、異様にマンガチックだな。

「キモンギモンギモーン! はっきり書ってギモンだわ! あんなに恥ずかしい思いして手に入れたのに、なくなってるってどういうことよ! あなた達一体ナニやってたのよ! しんじらんなーい!!」

鉄球参謀は隊長アップリケの両のほっぺたを、おもいきりひっぱった。

「むぎぎぎぎぎいっ!!」

喧嘩してる場合じゃないぞ、二人とも。

「アレがなくなったとしたら……はわわわ……」

こら、ゼネラル。錯乱してる場合か……ったく、ほらアップリケ、もっぺんよく捜してきなよ。

「なかなかかっこよかったわよ、セローさん」

塔の最上階。セローはキャサリンに差し出されたコーヒーを一気にすする、毎度のことながら仮面のうえから器用なことをするものである。

「うむ、マイセツの帝王と呼んでくれたまえ」

玉座に腰掛けたセローを、不意に睡魔が襲う。

「我輩ちょっと仮眠をとってくる、悪いがあとは頼むのだ……」

よほど眠いのか、セローの足取りはきわめて危ういものだった。

「お休みなさーい」

キャサリンはその背中に笑顔で手を振る。

あと三日で学園から卒業してしまう彼女にとって時間はなかった、セローの仮面をとる。残されたわずかな時間でそれをこなすには、ポリシーに反することだが、手段を選んでいる余裕はない。

というわけでキャサリンが差し入れた『睡眠薬入り』コーヒーを飲んだセローは、椅子に縛り付けられて、塔の屋上に吹く風に撫でられ、今ようやくお目覚めのようだ。

「セローさん……聞こえていたら自分の嗜好の不幸を呪いなさいよね、あなたはいい用務員さんだったけれど、その仮面がいけなかったのよ」

キャサリン女史……この仮面は、いいものだよ」

セローは気持ちが悪いぐらいに落ち着いていた。

とうとう人前に素顔をさらす覚悟ができたのだろうか、あるいはもしかして?

それにしても最近の人、こういうネタって分かるんでしょうか、どう思いますかね?

「お待ちなさぁぁぁぁぁぁいっ!」

キャサリンの手は猛ダッシュで屋上に駆けあがってきたアルシュに止められた。

その手には『セローの指輸』がはめられ、何やら装飾品がたくさんついたピンク色の学ランにブルマという出で立ちである。

学ランにブルマ……たまらん組合せですな。

「急にいなくなったと思ったら、こんなところにセロー様を連れ出したりしてやっぱりあなた……」

「ちがうっていってるでしょ!」

キャサリンは耳まで真っ赤にして否定する。

「あんたなんかにセロー様は渡さないんだから」

アルシュはセローの左の角を引き寄せる。

「勝手に誤解しないでよっ!」

対するキャサリンは、反対側の右の角を自分の方に引き寄せる。

「セロー様は私のよっ!」

「そーじゃないっ!!」

二人に交互に負を引っ張られ、セローの首はメトロノームのようにがくんがくんと左右にゆれる、このまま見てるっていうのも面白いが……。

ひとおーつ!

「ひいきはできるだけしない!」

ふたあーつ!!

「不正は見逃しまくる!」

みっつ!!!

「見事な大岡裁き」

その男は、マントをなびかせ柵の上で一回転。

口上を決めると空高くジャンプ、キャッ○空中三回転で三人の前に着地した。

女王さま眼鏡に風呂敷マントのその男は、縦縞のストライプシャツに蝶ネクタイという審判員ルックで決めていた。

「ひとよんでキャプテン・トキマーク見参! この勝負、私があずかる」

トキマークがぐるりとステッキを廻すと、セローはオリのなかに閉じこめられてしまった。

「そして、今回の勝負は、これ!」

ステッキが差す先にあるものは超大盛りのチャーハンである、軽く三十人前は盛ってある上にセロー印の小さな旗がちょこんと立っていた。

「勝負は簡単、チャーハンを食べて、その上に立つ旗を倒せたものが勝ち、そして勝者にはセローとエンゲージする権利が与えられる!」

要するに大食い対決って奴だね。

もちろん食べる以外の方法で故意に旗を倒したら反則負けだよ。

「た……助けてくれぇぇぇぇ」

オリに閉じこめられたセローは頓狂な声を上げる。

狭いオリの中にはセローの他にいつの間にか『薔薇団長』ロミオ・ワーカホリックが紛れ込んでいた。もちろんノースリーブの赤いドレスを着てるし。

「俺はぁ~盗賊だ・か・ら・ぁ~セローのハートを盗むのさぁ~」

まずい、ロミオはまたしても本気だ。早く決着を着けないとまたあの悲劇が……セカンドインパクトが起こってセローがホントの『薔薇の花嫁』になってしまう。

「というわけで、第一回セロー杯争奪えぐるように喰うべし! 超絶満腹チャーハン対決、始めっ!」

カァーーーーーン!

スタートラインに立つ二人はゴングを合図にレンゲ片手にダッシュをぶちかます。

おおっとキャサリン選手、踏み込みが甘かった。スタートダッシュでグングン差をつけられていきます。

「くっ、こーなったら!!」

ああっと、キャサリン選手何を思ったか持ち物を手当たり次第にアルシュ選手に投げ付けます! 竹刀に横笛、草に手帳……そ、そしてあれはぁぁぁ?

「ちぇいりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

ああっと、どこから取り出したのかキャサリン選手、巨大な荷馬車を力強く投げ付けます。その姿はノリ●ロか? 復活した二番目の赤い奴か? といったところですっ!

「なんて無茶なことを!」

アルシュはとっさに翼を広げ横に跳び、直撃をさける、アルシュが態勢をなおしている隙にキャサリンはもうチャーハンの山をすくっていた。

「そっちがその気ならこっちも!!」

アルシュの目が真っ赤に燃える。

「愛の悩殺! ラブラプスパーク!」

アルシュから発せられる正体不明の光が、チャーハンをむさぼるキャサリンを襲う。

吹き飛ばされたキャサリンはチャーハンの山につっこみ人型の穴を作ってしまう。

「退きなさいよっ!」

態勢を立てなおすキャサリンに容赦ないアルシュのチャージングが入る。

「もぐもぐもぐ、負けないから、負けないから負けないんだからぁぁぁっ!」

すさまじい勢いでチャーハンを掻き込むアルシュの髪の毛を今度はキャサリンが引っ張る。

それにしてもセロー君、きみってぱ、幸せだね。

二人の女性からこんなふうに思われてるなんて。

「だぁから、チガウっていってるでしょうが!」

キャサリン君、いまさらそんなふうにに恥ずかしがることはないんじゃないか? 好きでもない男のためにそこまでできるかね君は。

「きーーーーーっ!」

ああっ、やばい、キャサリン君が本格的に壊れちゃったよ。

「……女って恐いな」

それは同感である。

「だったら男同士、仲良くしようよ、ねぇ~」

「頼むからそんな所触らないでくれぇ~」

ロミオ、だからって男に迫るのはなんか違うぞ。

女の執念とは恐ろしいものである。

三十人前の超盛りチャーハンの山はもはや見る影もない、今や旗は、二人がチャーハンを掻き込むだびに揺れていた、そう、お互いあとひとすくいすればきっと……。

「……うっ……」

アルシュのレンゲが地に落ち、アルシュはハンカチで口を押さえたまま、しゃがみこんでしまう。

「いただきぃっ!!」

キャサリンはそのチャンスを逃さなかった、キャサリンが大きくすくったチャーハンを口にたたき込んだとき、つまようじと紙ナプキンでできた旗はキャサリンの方にゆっくりと倒れた。

「やった、わたしの勝ちよぉっ」

ウム、この勝負キャサリン君の勝ち! というわけで敗者、退……ってどうした、アルシュ君?

「気持ち悪い……」

アルシュの額には脂汗がにじんでいた。

自分で立ち上がることもままならないアルシュは、そのまま担架で病院まで運びこまれた。

いい勝負見せてもらったよ。

それでは、私もサラバ! ワハハハハハハ……。

「俺、もう我慢できないもん、セロ~」

「むぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ああっ、ロミオ、我慢できないじゃないだろう!

脱がしちゃイカンってあれだけしっこく言ったのに、セロー気絶しちゃったじゃないか。

「それじゃ、セローさん……ごめんっ!」

キャサリンは気絶したセローの仮面に手を掛けそれを引っこ抜く、すぽーん。

キャサリンが見たセローの素顔は……。

「え?」

仮面の下からでてきたものそれはさっきとったものと同じもうひとつのセローの仮面であった。

「まさかこれは!?」

いやな考えが頭によぎる、再び引っこ抜いた仮面の下にはまた同じ仮面がでてきた。

「まさかまさかまさかまさか!?」

二十分経過

かれこれ百個の仮面を剥がした、今だに素顔がでてくる気配がない。

「こんなベタなおちってないわよぉぉぉぉ!」

百二個目の仮面を引き剥がそうとしたときキャサリンは腕をつかまれる。

「かかったな、キャサリン女史、これを見たまえ」

ゆらりと立ち上がったセローの手には『契約書』とかかれた書類が握られていた。

それはキャサリンが本格的にセロー団に入団することを示すものだった、しかもそこにはしっかりとキャサリンの栂印が押されていた。

「いつのまにこんなものが」

「いったであろう、この仮面はいいものだ……」

つまりは仮面のなかに朱肉と契約書がしこんであったのである。

試合に勝って勝負に負けたキャサリンであった。

ステージに三本のピンスポットがあたる。

静まり返った会場にピノキオの声が響く。

「みんな、こんなことになって残念かもしれん。でも、自分は今、とってもうれしいんやなぜなら、明日もみんなに会えるから……みんなに愛をこめて歌います、曲名は『カスタネット』」

総監督:時巻広路とあなた

脚本:時巻広路とあなた

大好きなあの曲、口ずさみながら君と町に繰り出そう、途切れ途切れの泡のように消えていく。

声ノ出演

セロー・サラスティアリ:松木 典保

アルシュ・ジブリール:かたい みか

キャサリン・マルガレット:むやみや ゆうこ

アリスティ・サバル:目高 奈瑠美

レドリック・グランエール:石田 光雄

シモケン・ナムウ:門 智一

もしも、もしも世界が君の涙に笑いかけてくれたなら、流れだしたリズム、ぎゅっと抱き締めて。

もっと強く、もっと強く誰かが見つけたメロディー 二人で探した奇跡。

リーン・ヴァニシス:閃 俊彦

アスラン・シーモア:折傘 受

ルファール・アファレンシス:丹下 ザクロ

ロミオ・ワーカホリック:右田 彰

アルト・バイギー:綠山 晃

エリザベス・ウルフ:まついな さくらこ

手をたたき続けながら歌い続けようよ。

町を飛び越えて。

フレイド・ライド:草追 穀

ハサラ・ネイキー:林 豊年

グアドゥ・カリアン:結城 ぴろ

リーディック・グローバス:子案 武士

シオン・サーバ:中腹 茂

ラティス・リーファント:横田 美紗

街を飛び越えて星をまたたいででも二人で誓いあったあの場所へ導くために、手をたたき続けるよ。

アレックス・オブライエン:大杉 九郎太

ソアラ・グランバード:丼下 和彦

シセラフィーナ・イザヴァート:丼上 菊子

ディディッド・ブルティウム:邪風厘

ラージャ・ルイージャ:吉田 ナムコ

シリス・エルフィリア:見米 由香

カスタネットみたいに

サイラス・グラッシャー:山内 勝平

ヴェイダロヴァー・トウランジェンス:矢追 数紀

マックス・クエスト:堀河 寮

ミシェイル・ノーティス:小型 恵美

エリス・ムーンライト:長澤 真紀

ルイフィアム・ナーブル:むえだ ゆうじ

アーシェス・ジェイダイト:新川 志保

流れ出したリズム、キュッと抱き締めてずっとずっとずっと。誰かが見つけたメロディー

掲載誌:月刊ネットプラス

原作:まがもの通信

アニメーション:すたじお・りお

セルワーク:ホビデスタジオ

撮影協力:まっするぶらざーす

二人で探した奇跡、手をたたきながら

スペシャルサンクス

和田 芳弘

秋川 陵

新伝 優康

入江 ふみ

葛城 響士

あなた

壊れたカスタネットのように……。

THE END

第11回 PC1『Arya』『たなごころを、きみに』(時巻広路マスター)

preface

ファイナル・イベント参加者向けのおまけリアクションです。

アクション

行動目標

総帥を一人前の紳士に仕立て上げようとする。

台詞

「わたしが幹部になったからには、セロー団を3年で優勝が狙えるチームにしてみせるわ!!」

リアクション

「この地は我輩の支配に納まった……」

鉄仮面に素顔を隠したその男は、朱に染まった白地図を前にワインをくゆらせていた。

「思えば長い道程だった……」

男の視線は、先おとといぐらいに飛ぶ。

「ある時は、学園の用務員さんに身をやつし……」

男の脳裏に浮かぶのは、広い学園をせっせと掃除する自分の姿、しかしカッコは鉄仮面に黒マント。

「ある時は、喫茶店アルシュセロージュの店長」

今度はハイウエストにミニスカのウエイトレスに囲まれ、鼻血を吹く自分の姿が脳裏を掠める。

「して、その実体はッ!」

彼の名は、セロー『秘密結社セロー団』の首領、やがては世界を支配する予定の男、そして学園都市クリオシティただひとりの用務員だ。

「ふふふふふ、世界が我輩の手に落ちる日も近いか……くくくく、どわぁぁぁぁぁぁっはっはっはっはっはっ……おや?」

セローを妄想の世界から引き戻したのは、彼に抱かれている赤子の泣き声だった、背中に付いた小さな羽は彼女の母がヴァルキリーである証拠だ。

「おお、サロー、おむつか? ミルクか?」 ああっ! 三つ子の次女マローちゃんがテラスのほうにいってるぞ! 「いかん! そこは手摺りがついていないぞ!」

赤子を抱えテラスへ向おうとするセローのマントをひっぱるのは、三つ子の末っ子ミローちゃんだ、その手には青いクレヨンが握られており、マントには、ミロー作のお日さまがプリントされていた。

「我輩の一張羅のマントがあああ!」

それどこじゃないぞ、マローちゃんが。

「待て、おぼこよ! 早まるでない!」

ミローちゃんはセローのマントに新たな絵柄を増やすことに夢中で、黒いキャンパスを離すつもりはないらしい、そして腕の中のサローは、さらに声高に泣き声をあげる。

「ミルクはさっき飲ませた、おむつでもなさそうだ、だとすると、これだ! いないいない……ばぁ」

あ〜あ、余計に泣きだしちゃった、おまえの仮面が恐いんだよ。

「ええい、ミルクかおむつか笑いか、何を欲するのかしっかり言ってみんかあ、この口で!」

セローは額に青筋を浮かべ、むすがるマローのほっペたをひっぱる、いかん切れてしまったか……。

「いい加減にっ……しなさぃっ!!」

セローの背後から『光条』のツッコミが入る。

「自分の子供になんて事するの、ほら、貸して」

セローの手からむずがるサローを奪ったのはキャサリン・マルガレット、セロー団の参謀にして科学開発、そして首領へのツッコミ担当である、ちなみにコードネームは『鉄球参謀』だ。

「お母さんはどこ行っちゃったんでちゅかねぇ」

キャサリンは、自分の腕の中でやっと笑顔が戻った三つ子に素朴な疑問をぶつけてみる。

「よくぞ聞いてくれた、彼女はサンエイムまでお買い物に行ってるのだ」

「左様ですか……それよりも首領……昨日、わたしが宿題にだした漢字の書き取りやりましたか?」

胸を張って答えるセローに、キャサリンの冷たい視線が突きささる、ちなみに漢字はストラガルス大陸の極東、シャガラ・アズマの公用文字である。

「じゃあ、おとといの宿題の計算ドリルは?」

キャサリン……いい歳こいたおっさん捕まえて『宿題』はないだろう? それにしてもセロー、きみはきみでその歳で算数のドリルにてこずってるのかね。

「むう! 我輩だって遊びたいぞ!」

ヲイヲイ、ごまかすなって。

「だまらっしゃい! 勉強することも帝王の仕事! いい? 今日という今日はしっかりと勉強してもらうわ。というわけで、このドリルが全部できるまで、おやつも遊びも抜きっ!」

ひどい、スパルタだあ……。

そんなわけで、セロー団の秘密基地セローの塔の最上階では、今日も今日とて世界一立場の弱い秘密結社の首領の悲鳴が響いていた、今日も平和だね。

一方、中央公園の広場では『大怪獣ごめら』のきぐるみを被ったロミオ・ワーカホリックが子供たちにお菓子を配っていた。

「ねぇ、おいしいでしょ? ねぇねぇねぇ!?」

少年達はロミオからもらったクッキーをかじることに夢中で、ロミオの声など耳に入っていない。

「俺についてくれば、おいしいお菓子が食べたい放題なんだ、それだけじゃない、君達が欲しいもの何でも買ってあげるよ、だから俺と一緒にいい所に……聞いてる?」

少年たちはクッキーを食べ尽くすと、ありがとうも言わずにジャングルジムに行ってしまった。

ロミオ、いまどきそんなこと言われてホイホイついてくる子供なんていないよ、でも、それを差っ引いても憎ったらしい子供たちやねぇ。

「うるさいよ! みんなで俺のことバカにしてぇ……こうなったら、最後の手段だもんっ!」

ロミオは、ごめらのきぐるみを脱ぎ捨てると、あちこちに薔薇があしらわれた全身タイツ姿になった。ロミオ・ワーカホリックは世を忍ぶ仮の姿、その正体は、セロー団幹部のひとり『薔薇団長』である。

「こーなったら、みんなまとめて悪戯してやるぅ」

今や、本性をむき出しにした薔薇団長は、子供たちに襲いかかろうとしている。

ああ、なんたるチーヤ! 子供たちピンチだ!

「影あるところ光あり、悪あるところ正義あり……世界は不条理な闇、人は闇の中を征く冒険者だ。そんな勇気ある者達を正しき道へ導く光……人、それを『正義』という!」

この『いかにも』な前口上は……誰だっ!

「俺の名は『爆裂熱球児ファイヤーストライク』悪党に名乗る名などない!」

すべり台の上では、スクウェアベースのユニフォームに身を包み、マスクとプロテクターを纏った男が騎士のマントを風になびかせていた……ヲイ、 おのれしっかりと名乗っとるやないけ!

「ええい、みんなでやっつけちゃえぃ!」

薔薇団長の一声で、無数の戦闘員がストライクに襲いかかるが、テーマ曲『すすめ! ファイヤーストライク』とともに、一行とかからず蹴散らされてしまった、短いだけにテンポよく行くのだ。

「さあ、観念しろ、薔薇団長!」

もう追い詰めてるし。

「観念するのはおまえだよ、薔薇時空、発生!」

薔薇団長の口からピンク色のゲロ……いやもとい、エクトプラズムが漏れ、公園いっばいに広がったそれは、ピンクの霧の不条理空間を形成していた。

これぞ薔薇団長の戦闘フィールド『薔薇時空』である。ちなみに、薔薇団長はこのフィールドの中では普段の十倍の力を発揮することができるのだ。

「くっ……なんだ…これ……は……」

霧に包まれたストライクは思わず膝を折った。

異様な臭気を纏ったこの霧には、筋肉の働きをおかしくする効果があるようだ。

「つかまえたっ!」

霧のなかから現れた薔薇団長は、ストライクの背中にキュッと抱きついた。

「ここは、誰の邪魔も入らない、ふたりっきりの秘密の世界だよ」

ストライクの首筋に薔薇団長の熱い息が吹きかかる、霧の効果に加えて余計に力が抜ける。

「や……め……ろ」

「強がっちゃって、体のほうは『やめないで』っていってるよお……れーろれろれろれろ……」

蓄微団長の生暖かいぬめぬめの舌が、剥き身となったストライクのうなじを、まるでなめくじのように、ねっとりねっとりとねぶる、見てるだけで背筋が寒くなってくる光景だ。

「ほ〜らほら、ここはどうかなあ〜?」

薔薇団長は、指をストライクのアンダーシャツのなかに滑り込ませ、程よく筋肉がついた胸板を、そろーりそろりと撫でた、時折、爪の先で硬くなったちくびを刺激するのも忘れない。

ストライクの類を涙が伝う。

心に反して、男相手の快楽に正直に反応している自分に涙がでてきたのである。

「そろそろこっちも、いいみたいだね」

完全に力が抜け切ったストライクの、唯一別の意味で力がこもっている部分に、薔薇団長のテクニカルな指先が伸びる。

ベルトが外され、ゆっくりとチャックがおろされ、そして今やストライクに残されたものは、膨張したギガンティックを、ぎりぎりで押さえるパンツというヘヴンズドアただ一枚……まずい、これ以上やるとなると、地域のおばさま達が黙っちゃいないぞ。

「いいんだもお〜ん、だって俺って悪い子だもおん、ほ〜ら、にぎにぎ……そしてあごのひげの剃り痕でじょ〜りじょりじょりじょり」

コラ、そこの薔薇野郎! てめえってやつあ、ここでは書けないようなことをよくもまあそんなに……頼む、ストライク、早くこいつをなんとかしてくれ! そうでないと……まあ、とにかくおまえだけが頼みの綱なんだ。

「そうだ、全国のよい子がみてるんだ……これ以上好き勝手やらせてたまるかっ!! 天よ地よ、火よ水よ……オレに力を与えたまえっ!」

それは、ストライクの正義の叫びといってよかった、正しい倫理感を守ろうという心と燃える正義の魂が力を呼んだのだ。

叫びとともにストライクの体から閃光が走る、それは背後にしがみつく薔薇団長を弾き飛ばし、ピンクの霧をかき消すには十分すぎる力をもっていた。

もやが晴れたそこは公園であった、ある意味、悪魔のような『薔薇空間』は正義の心によって破られたのである! さあ、反撃だ!

「必殺! ケツバット! うるあっ!」

うつむけに倒れる薔薇団長の尻に怒りの金属バットが振りおろされる、何度も何度も……。

「あ……ぅ、いいいい、もっとぉ……」

しかし、薔薇団長は殴打されるたびに歓喜の声を上げ、さらなるモノを懇願した。

「でぇ〜い、んならこいつだぁっ!」

ストライクは薔薇団長のズボンをずりおろすと、剥き身となった『イゾルデの門』にバットをあてがい、そしてその錠前をバットで強引に切り開いた。

「おらおら! まいったかぁ、グリグリグリ……」

ストライクの『ガトリングドライバー』は弧を描きつつ更に奥に突っ込まれ、イゾルデの門は鮮血に染まる、あ〜あ、キレちゃった。

「はぐぅ、も、もう駄目、でも、もっとぉぉ……」

「おらおらおらおらあっ! グリグリグリ……ついでにスパイクでグリグリグリ……」

二人のボルテージは最高潮に達していた。

秘密結社セロー団のアジト『セローの塔』は、人の目をはばかるように、中央公園の隅にぽつねんとたてられた秘密基地である……はずだ……。

「堂々と表札なんぞ出しやがって、否応にも目立つサイケデリックな建物、一体どこが秘密なんだ?」

男は、古びた煉瓦の塀に架けられた大きな表札と天高くそびえる塔に、頭をかかえた。

しかし、騎士として『秘密結社』のアジトなんて怪しげなものを見過ごすわけには行かない! 男は自分に言い聞かせると、意を決して中央玄関の扉を蹴破った。

「さあ、オレがきたからには、あんたらの野望もここまでだ、成敗してやるから覚悟して……」

大見得を切る男の言葉を、戦闘員がさえぎった。

「いらっしゃいませ!」

戦闘員に心底うれしそうに迎えられ、男の目が点になる、これは、もはや肩すかしなどという言葉で表せることではない。

これは罠か、それとも?

「はい、六百三引く二百九十九は?」

「ええっと、こっちから十借りて、そこから……」

こちらはセローの塔最上階『帝王の間』鉄球参謀による首領強化セミナーはまだ続いていた、おい、二人とも、そんなことやってる場合じゃないぞ。

キャサリン・作戦失敗しちゃったよぉ……」

そう言って帝王の間に倒れこんできたのは、丸裸で肛門から血を垂れ流すロミオである。

満身創療で、それでいてどこか満足そうなロミオの報告に、参謀と首領の二人は『やっばり』と顔を見合わせる。

「大丈夫よ、誰も最初からあなたの作戦が成功するなんて思っていないから……」

「酷くやられたものである、誰にやられたのだ?」

セローと鉄球参謀は起き上がる気配を見せないロミオを、棒でつつく、ひどい扱いである。

「首領、お客さまをお連れしました」

ノックとともに黒い全身タイツの戦闘員が、入ってきた、その背後には先の闖入者、熱血漢を顔で語るような戦士が立っていた。

「そいつをやっつけたのは、このオレだぜ」

「あなたはっ!」

男と目があった鉄球参謀の顔に驚愕が走る。

「久しぶりね、ノンブル・ヤード……」

「覚えてもらえてたとは光栄だな、鉄球参謀……いや……キャサリン博士、ここで会ったが百年目、結社もろともあんたを倒してやるぜ」

おまえら知り合いだったんかい?

「あなたにわたしを倒すことはできないわ」

何やら意味深な発言が飛びかいますね、この二人の間に一体何が!?

「そんなもの、やってみなけりゃわかんねぇぜ」

ノンブルの類に冷汗が伝う、対するキャサリンの表情は、余裕そのものだ。

「無理よ、だってわたしは、あなたの秘密と弱点を握っているもの……」

秘密と弱点ですとなぁっ!? その発言、聞き棄てなりませんな、もしかして二人は、過去に男女関係のもつれから別れたことがあるとか?

「秘密っていやあ、米屋で売っているアレだな」

「馬鹿者! それは『みつまめ』ではないか、そこは『あんみつ』とボケるところであろうがっ!」

いきなりのノンブルのボケにセローのツッコミハリセンが姓裂した、それはもう見事ってぐらいにいい音を立てノンブルのお腹を振りぬいた。

それと同時にキャサリンの顔が蒼くなった。

「彼にツッコミ入れてちゃダメ!」

「もうおせぇぜ、スリーアウッ・チェーンジ!」

ベルトに取り付けられた風車が勢い良く回転し、光に包まれたノンブルは腕を大きく振り上げる。

説明せねばなるまい。

ノンブル・ヤードは秘密結社セロー団に改造された改造人間である、腹部の変身ベルトにツッコミの力を受けることによって『爆裂熱球児ファイヤー・ストライク』に変身することができるのだ。

「君のツッコミがこの腹に、熱く響いてイイ感じ! 爆裂熱球児! ファイヤー・ストライク登板!」

……ってことはキャサリン君はアレかい? 彼を改造したのが君で、やっばり脳改造する直前に逃げられたのかね?

「ええい、うっさいわね! こうなったらこっちもアレをだすしかないわ、出ろ! ボンクラー!」

塔が大きくゆれる、キャサリンの背後から床を突き破り、セローの仮面を模した巨大なオブジェが出現した、ってこいつはなんだね?

「よくぞ聞いてくれたわっ、これは『大怪球ボンクラー』みっつのセロードライブで動くこれを使って、ただですら遅いレムナントの時間の流れを完全に止めてやるのよ!」

あの~、ヒーローがひとり変身したぐらいで、何でいきなりそんなものが出てくるんですか? しかも何の脈略もなく……」

「いちいちうっさいわね! 気分よ気分! これを使って永久の若さと美しさを保っちゃうのよ、オーホホホホホホホホホッ!!!」

オイオイ、お肌の曲がり角を気にするには、君の歳じゃ、まだまだ早すぎるだろう?

「そんな私利私欲のためにみんなを巻き込むって言うのか? そんな勝手なマネ、このオレが許さん」

「だったらどうするって云うの?」

目を細めるキャサリンの鼻先に、ファイヤー・ストライクのボールが突き付けられる。

「こいつで勝負だ! 『スクエア時空』発生!」

ストライクの背番号が光るのと同時に、二人の目の前にスクエアベースのフィールドが広がる、スクエアというだけあって空には飛行船が飛び、あっちのほうで黄色いダチョウもどきが走ってたりする。

「勝負の方法は簡単だ、あんたが投げて、オレが打つ……三本勝負で、二本先取したほうの勝ちだ」

「上等! わたしの魔球、見せてあげるわ!」

キャサリンは自分のマントに手をかけ、豪快に脱ぎ捨てる、その下からあらわれたのは、半袖のスクエアベースのユニフォームにホットパンツというスタイルだ、ほびでらしく『どきぷり』ですな。

「それでは、正々堂々とっ! 試合開始っ!」

グランドに試合開始のサイレンが響きわたる、マウンドに立つのはセロー団代表キャサリン・マルガレット、そしてその背後に大怪球ボンクラーが不気味に浮かび上がり、バッターボックスには、我らがヒーローファイヤー・ストライクが入っていた。

「いくわよぉっ!」

大きく振りかぶったキャサリンの手から硬球が離れる……おおっとおぉが滑ったのか、投げられたのは球威のない棒球である。

「こんな球っ!」

ストライクのバットは、よろよろの棒球にジャスミートした、乾いたいい音とともにボールは、遥か場外まで運ばれた。

「あんたはスクエアベースの経験がないが、オレはスクエアベースをやるために改造されたんだ、こうなるのも無理はないことだ、なんなら今から別のことで勝負するか」

ストライクは大きく肩をすくめてみせる。

「わたしだって、あなたを改造するときにスクエアベースを徹底的に研究したんだから……」

キャサリンの眼鏡がきらりと光る、こんな時のキャサリンは非常に危険だ。

「今のは遊びよ、あなたに次の球が打てるかしら」

これは別段、強がりではないようで、キャサリンの顔に余裕の笑顔が浮かぶ。

「上等だ、次で決めてやるぜ!」

ストライクもバットでキャサリンの背後を指す、ホームラン予告だ。

キャサリンが、投球のフォームに入る、しかしそれは、まるで先程とは別人のそれである。

「必殺、シャイニング・ストライクっ!」

高々とあがった足と、ひねられた体がマウンドでVの字を描く、そしてそこから振りおろされた硬球は光となって、一直線にバッターボックスに襲いかかる、ストライクはあわててバットを振りぬいた、手応えはあった……が次の瞬間キャサリンが投げたモノはバックフェンスに深々と突きささり、ストライクが手にしていたのは、熱で融解したバットの柄であった。

「たいした予告ホームランねぇ」

おひ、キャサリン、おまえ一体何を投げた?

「『光条』の魔法が付加された、失われた古代魔法『魔球』よっ!」

古代魔法をビットから自在に撃ち出すアレか……ちょっと待て、それって反則じゃないか?

「あんたが、こんな反則ヤロウだったとはな」

愕然と肩を落とすストライクが、顔をあげたとき見たのは、マウンドに崩れるキャサリンだった。

「ふ、ふ……ふ……こういうこと……よ」

キャサリンの耳と鼻からはとめどなく血が吹き出ていた、失われた古代魔法……レグルタ人にのみ許された、強大過ぎるその力は、行使したものの脳細胞を破壊していくのだ。

「負けてらんないのよ……あんたなんかに!」

キャサリンの視線を、真っすぐに受けとめたストライクは、もう使いものにならなくなったバットを捨て、バッターボックスに入り、身を後方に捻る。

「あんたが身を捨ててオレに挑んでくるのならば、オレも身を捨てるのみ、さあ! 来いっ!!」

キャサリンの手に銀色の球が浮かぶ。

「ゴォォォッドォォ……ストライィィクッ!!」

キャサリンが投げた『魔球』それは光の尾を引きながら、バッターボックスに襲いかかる、今回はその名の通り『神殺』の魔法が付加されていた。

「ちぇぃりゃぁぁぁぁっ!」

ファイヤー・ストライクは身を捻った身を元に戻し、自分の拳を真っ向から魔球にぶつけた、指の骨と肘の関節が、ビキビキと悲鳴を上げる、強烈な勢いをもった『魔球』……いや『光』は、今度はストライクの腕をもっていこうとしていた。

「これがオレの鉄拳打法だあああああっ!」

ストライクはついに、気合いとともに拳を振りぬいた、青白い尾を引く『光』は、その進行方向を反対に変え、キャサリンの頭上を通り越し、そこに浮かぶ『大怪球ボンクラー』を貫いた。

ファイヤー・ストライク、やつはとうとう、拳で『光』を打ち返したのであった。

「うそ……わたしの最高傑作が……そんな……」

真っ赤に燃え落ちるボンクラーの前でがっくりと膝を落とすキャサリン、その肩を叩くのは変身が解けたノンブルだ。

「とにかく、悪が栄えた試しナシってことだぜ」

キャサリン、今回なんか悪い事してたっけ?

「何もしてないわよ! 大体あなたが勝手に……そういえばセローさんは?」

その頃、学園中央通りの書店で『紳士向け娯楽雑誌』に見入るセローの姿があった。

混乱に乗じここにエスケープして来たのである。

「これはたまらん……鼻血が出そうである」

みっともないな、ヨダレぐらい拭こうよ。

「せ~ろ~さぁ~ん……」

この声は……キャサリン、どうでもいいけどなんか手が光ってませんか?

「今日はみっちりしっかり勉強するって言いましたよねぇ……」

キャサリンさん、落ち着いて落ち着いて。

「問答無用っ! 神殺レーザー!!」

うひゃあっ、逃げろっ!

すすめ! ファイヤーストライク

今日も芝生のグランドに、炎の嵐が吹き荒れる。芝生が燃えるぜ大火事だ(うわー)

いくぜ、いくぜいくぜ! 敵のツッコミ体に受けて超絶変身ゴゴゴゴゴー!(スリーアゥ・チェンジ)すすめ、撃て撃てホームラン止めの武器は釘バット正義を守れストライク守りは堅くキャッチャーだ。目指すは明日の満塁ホーマー、明日を夢見て撃ちまくれ!!