実経験の違いの為か、同程度の年齢の人にもお姉さん口調になることがある。
よく男の子をからかっては、その反応を楽しんでる。
秘刀『春宵一刻値千金』の所有者。
かつては「桜の舞姫」と呼ばれていたが、今となっては、それを知る者など殆どいないので、ちょっと寂しい今日この頃。
古代人の生き残り。2か月前に目覚めてはいたのだが、身体が調子を取り戻すまで、温泉等でほけーっと保養していた。
古代の剣術士。瞬間的に間合いを詰める、鎌鼬を放つ、弾丸を弾き返す、岩を両断する……といったことを行う。(コマンドは右向き時)
『春宵一刻値千金』を用いた抜刀術。空間ごと、対象を切断する。
初回に登録したキャラクターでプレイすることをやめ、再作成したキャラクターです。ゲームの進展とともにキャラクター作成のバリエーションが増えていたため、「古代人」、「アーム、機神、霊能力以外の能力」といった設定を行っています。
配されたHブランチのリアクションを読んだときの最初の感想は「文章が単調で面白みが全くない」というもの。その感想は今も変わりませんが、今回、リアクションを読み返してみて、会話文と地の文の順番が一般的な文法と逆になっており、それがテンポの悪さを生み出す原因となっていることにも気付きました。
ゲーム内容につきましては、サブ・ヒーローとして補佐的行動を取っていたこともあってか、物語の流れに影響を与えることは殆どできていません。かてて加えて、最終リアクションとともに届いたパスポートには「アクションがアンチヒーローっぽかったのは、シナリオのせいですかね」
と書かれていたりする始末。
若い男が広島の街を歩いている。霜園寺影明だ。
「こいつはひでえや」
広島の街のあちこちで、建物ががれきと化している。駅ビルなどはほとんど原形をとどめていない。
「ねえ、ちょっと、そこのお兄さん」
近くで女の子の声がした。
「手をかしてくれないかしら。このコンクリートのかたまりを動かしたいの」
がれきの山の前で、見なれぬ服装の女の子が手まねきしている。顔立ちは十代なかばだが、物腰は落ち着いている。少女は桜小路あやと名乗った。
霜園寺は聞いた。
「いくら払う?」
「体で払うわ。ひと晩つきあってあげる」
「エンコーみたいなことするなよ。おまえはコギャルか?」
霜園寺はまゆをひそめた。
「あら、見かけによらずかたいのね」
彼女はいたずらっ子のような目で笑った。
「冗談よ。あとでお茶でもおごるわ。それでいいでしょ」
霜園寺は面倒くさそうに頭をかいた。
「わかったよ。けど、なんでこんなコンクリートを動かしたいんだ?」
「下に人がうまってるの」
「……そういうことは先に言え」
ふたりで力を合わせてコンクリートのかたまりをどけると、いくたりかの若者が出てきた。いずれも意識はなく、ぐったりしている。水兵服の男性が数人と、清楚な服装の女性がひとり。
どこからともなく、ビジュアル系バンド野郎がわいて出た。
「皐月ちゃん!」
バンド野郎は助け出したばかりの女にすがりつこうとしている。
「おいおい、あんまり乱暴にしないほうがいいぞ」
霜園寺を無視してバンド野郎は言った。
「皐月ちゃん、僕だよ。雷座亜恵魅瑠だよ。目を覚まして。それから、いつものように僕をふんでおくれよ」
皐月と呼ばれた女がかすかにうめいた。
「どうして争うの……」
「皐月ちゃん?」
「妖魔と人間だって仲良くできる……わたし、信じてる」
「なんの話をしてるのさ」
あやが雷座亜の肩に手を置いた。
「ただのうわごとよ。今は寝かせてあげなくちゃ」
三人は皐月と男たちを運んで介抱した。
『香術士への幻想』に続き、『戦闘列島ZIPANG』のH4ブランチのリアクションを20年ぶりに読み返してみました。
私が受け取ったリアクションの中で最も文章が読みにくかったのが『幻想英雄伝フォーチュン・オブ・ギャラクシア』のGH1ブランチだとしますと、最も文章が単調で面白みがなかったのがこのH4ブランチです。その一部を抜粋してみますと、次のとおり。
霜園寺は面倒くさそうに頭をかいた。
「わかったよ。けど、なんでこんなコンクリートを動かしたいんだ?」
「下に人がうまってるの」
「……そういうことは先に言え」
ふたりで力を合わせてコンクリートのかたまりをどけると、いくたりかの若者が出てきた。いずれも意識はなく、ぐったりしている。水兵服の男性が数人と、清楚な服装の女性がひとり。
どこからともなく、ビジュアル系バンド野郎がわいて出た。
「皐月ちゃん!」
バンド野郎は助け出したばかりの女にすがりつこうとしている。
「おいおい、あんまり乱暴にしないほうがいいぞ」
霜園寺を無視してバンド野郎は言った。
「皐月ちゃん、僕だよ。雷座亜恵魅瑠だよ。目を覚まして。それから、いつものように僕をふんでおくれよ」
皐月と呼ばれた女がかすかにうめいた。
「どうして争うの……」
「皐月ちゃん?」
「妖魔と人間だって仲良くできる……わたし、信じてる」
「なんの話をしてるのさ」
あやが雷座亜の肩に手を置いた。
「ただのうわごとよ。今は寝かせてあげなくちゃ」
そして今回、このようにリアクションをテキスト化し、新たに気付いたことがあります。それは、『フォーチュン・オブ・ギャラクシア』のGHとは別の意味で、このH4の文章も非常に読みにくいということ。と言いますのも、「会話文」と「地の文」の順番が一般的な文法と逆になっているのです。
例えば、
「おいおい、あんまり乱暴にしないほうがいいぞ」
霜園寺を無視してバンド野郎は言った。
このように書いてあった場合、「霜園寺を無視してバンド野郎は言った。」
は、直前の台詞を説明するものであることが一般的です。つまり、『バンド野郎は、霜園寺を無視して、「おいおい、あんまり乱暴にしないほうがいいぞ」と言った。』と読者は認識することになります。
しかし、このH4では、
「おいおい、あんまり乱暴にしないほうがいいぞ」
霜園寺を無視してバンド野郎は言った。
「皐月ちゃん、僕だよ。雷座亜恵魅瑠だよ。目を覚まして。それから、いつものように僕をふんでおくれよ」
と、次に出てくる台詞「皐月ちゃん、僕だよ。(略)」
の説明になっているのです。H4にはこういった会話文と地の文の逆転が頻繁に出現し、その都度、前後の文章を読み返し、発言者を確認することになるため、スムーズに読み進めることができないのです。
というわけで、初めに抜粋した部分については、
霜園寺は面倒くさそうに頭をかいた。
「わかったよ。けど、なんでこんなコンクリートを動かしたいんだ?」
「下に人がうまってるの」
「……そういうことは先に言え」
ふたりで力を合わせてコンクリートのかたまりをどけると、いくたりかの若者が出てきた。いずれも意識はなく、ぐったりしている。水兵服の男性が数人と、清楚な服装の女性がひとり。
「皐月ちゃん!」
どこからともなく、ビジュアル系バンド野郎がわいて出た。
バンド野郎は助け出したばかりの女にすがりつこうとしている。
「おいおい、あんまり乱暴にしないほうがいいぞ」
「皐月ちゃん、僕だよ。雷座亜恵魅瑠だよ。目を覚まして。それから、いつものように僕をふんでおくれよ」
霜園寺を無視してバンド野郎は言った。
皐月と呼ばれた女がかすかにうめいた。
「どうして争うの……」
「皐月ちゃん?」
「妖魔と人間だって仲良くできる……わたし、信じてる」
「なんの話をしてるのさ」
「ただのうわごとよ。今は寝かせてあげなくちゃ」
あやが雷座亜の肩に手を置いた。
という順番になっている方が遥かに読みやすいのですが、ララァじゃなくてもわかってくれるよね?
かつて、ホビー・データが発行していたPBM情報誌として、『ネットワールド』や『ネットプラス』があります。しかし、基本的に本筋を追わない私にとって有益な情報はさほど掲載されていなかったものですから、1996年開始の『カルディネアの神竜』辺りから、私はこれらの情報誌を購入するのをやめてしまいました。当然、1998年開始の『戦闘列島ZIPANG』に参加する際にも購入しなかったのですが、今回、改めて「当時、どういったことが載っていたのだろう?」、「H4ブランチはどのような紹介がされていたのだろう?」と、数年前に忍者氏からいただいたコピーを見てみましたところ、
と、ブランチ内相関図に、私のキャラクター(桜小路あや)が一度載っていたことが分かりまして、「このことを知っていれば、私信に書いていたのに! そうすればリアクションでの描写が少し変わったかもしれないのに!」とちょっと後悔することになった須賀和良です。ごきげんよう。
そしてその後、「どーして誰も教えれくれなかったのよ、キーッ!」とか思ったりもしたのですが、「まぁ、自分が参加していないブランチの相関図なんか見たりしないよなぁ……」と思い直すことに。
聖、涙、春美、シャオ、。ロバーツの五人はマルシアーノの事務所の前にやってきた。涙とロバーツは機神に乗っている。
春美が言った。
「早く乗り込みましよう。大月先生を助けなくては」
聖は彼女のひじをつかんでいる。
「あわてないで。人質がいるのよ。大月はどうでもいいけど、マリアが心配だわ」
桜小路あやが五人のわきを通り過ぎ、事務所の正面に立った。
「肩ならしといきますか」
軽く頭を左右にひねると、やにわに刀をぬいた。鋭い太刀すじで空間を両断する。《桜花一閃》。彼女の必殺技だ。事務所がまっぶたつに割れて崩壊した。
「うーん。イマイチ調子が出な……つっ」
聖があやの背中に飛び蹴りを食らわせた。あやは刀をかまえて聖をにらんだ。
「何するのよっ」
「それはこっちのセリフだわ。中に人質がいるのよ」
「え、そうだったの?」
倒壊した建物から、妖魔たちがわらわらと出てきた。すでに殺気立っている。
春美がアーム「ビーナス・フラワー」を呼び出した。花吹雪の嵐が妖魔たちにおそいかかる。
「郵便局に一ヶ月も連れ回された、わたしのうらみを思い知りなさい」
それは八つ当たりだ。気持ちはわかるけど。
聖は建物の残骸の中に飛びこんだ。
「マリア、どこにいるの」
背後でのんびりした調子の返事があった。
「呼んだあ?」
マリアがのほほんと突っ立っている。すぐ後ろに三バカもいる。
「ちょっと、マリア、なんでそんな連中といっしょにいるのよ」
マリアは苦笑して頭をかいた。
「なんか、なつかれちゃって」
三バカも愛想笑いを浮かべて頭をかいた。
魔鍋妖子が大月を連れて現れた。
「そんなマヌケな連中、くれてやるよ」
「押しつけられても困るんだけど」
妖子は大月の腕をつかんでいる。それを見た春美が激昂した。
「あ°ーっ、先生が浮気してますわぁぁぁぁぁっ」
いつのまにやら女房気分の春美である。
古田涙が妖子に言った。
「どうせまた精霊魔術で魅了したんでしょ。もてない女って悲しいわね」
「そそそ、そんなことないよっ」
明らかに動揺しつつ負け惜しみを言う。
「大月はあたしにメロメロなんだから」
春美が泣いて地団駄をふむ。涙がなだめて妖子をからかう。妖子が意地を張って大月にくっつく(以下リフレイン)。
などという、からさわぎをしている横で、ひそかに聖とマリアが言葉をかわしている。
「いっしょに稽古した、アレ、覚えてる?」
「もちろん。いつでもオッケーだよ」
妖子が大月にしなだれかかった。
「センセイ、超常能力なんてないわよねえ?」
「うむ。そのとおり」
大月はこっくりとうなずいたが、まるで説得力がない。
涙が鼻で笑った。
「いつもの迫力がないみたいね。しよせん、まやかしの魅了なんてそんなもんよ」
「なんだってぇ」
「悪いけど、おっさんは返してもらうわ」
涙が機神の重力波を飛ばした。妖子と大月に炸裂する。ふたりは見えない力に翻弄され、地面にたたきつけられた。
春美が大月にかけよって抱き起こす。
「先生、しっかりしてください」
大月は困惑したようすで周囲を見回した。
「やあ、春美君、ここはどこだい。わたしは何をやっていたのかな」
アメリカン・サムライなロバーツが機神の中から話しかけた。
「先生、ユーは最近、奇妙な現象を目の当たりにしまシタネ」
「そ、それは……」
「それについて、拙者に仮説がありマス。ソウ、すべてはプラズマで説明できマス。違いマスカ」
「プラズマ?」
聖がマリアにささやいた。
「残りの妖魔を一気に片づけるよ」
言葉と同時に技を使う。電光がスパークした。
大月の顔が明るくなる。
「おお、まさしくプラズマ!」
聖の作った電光が輝きを増した。
「やだ。急に始めないで」
あわててマリアも式神を召喚した。ふたりの合わせ技《雷鳥散撃陣》。雷電をまとう鷹が敵を蹴散らす大技……のはずだったのだけれど。
「あ、鳩を出しちゃった」
「何をやってんのよ」
マリアは聖に蹴り倒された。
輝く鳩が飛んでゆく。なごやかな風景だ。
「素敵ですわっ」
皐月が現れた。両手を胸の前で組み、鳩を見つめて瞳をうるませている。
「鳩は平和の象徴。みなさん、争いはやめましょう」
あやがさめた口調で言った。
「お嬢ちゃん、人間と妖魔が仲良くできるなんて、本気で思ってるの?」
皐月は熱心にうなずいた。
「もちろんです」
「それは夢物語よ。少しは現実を見すえたほうがいいわね。あなた、大切な人を妖魔に殺されたことがないんでしよう」
皐月はおだやかにほほえんだ。
「わたしの両親は妖魔に殺されました」
あやが一瞬、鼻白む。皐月は続けようとした。
「あの日、わたしは……」
男の胴間声がさえぎった。
「ちょっと待った」
白いスーツを着て葉巻をくわえた巨漢、ドン・マルシアーノだ。
「昔話でシリアスな展開に持ち込もうとしているな。そうはさせんぞ。このマルシアーノ様がいる限り、シリアスは禁止だ」
あやがつぶやいた。
「マルシアーノ……たしか、水鬼伯爵一派の妖魔ね」
「小娘、貴様は古代人か」
「あなたのことは聞いたことがある。戦うだけしか能のない単細胞」
「やかましい!」
マルシアーノは葉巻を投げつけた。
「今の俺は昔の俺とは違う。封印されてる間に睡眠学習で利口になったのだ」
彼は大月に言った。
「大月、過去を思いだせ。超能力を認めていいのか。超能力のせいで戦いがひどくなった。だから否定していたのではなかったか」
大月の表情がこわばった。
シャオがマルシアーノに言った。
「それを言ったら妖魔も存在せんじゃろう」
「そのとおり。妖魔も超能力も存在しない。あってはならないのだ。そうだろう、大月」
大月は力強くうなずいた。
「そうだ。そのとおりだ」
古田涙があざわらった。
「あんたバカァ? 妖魔がいないんなら、あんたもただの人間じゃないの」
「俺はただの人間ではない。『タフな人間』だ。だから、機神にも勝てるのだ」
大月は納得した。
「あの迫力ならありえる」
マルシアーノは機動歩兵型の機神をまとう涙をなぐり飛ばした。
「そ、そんなのあり?」
皐月が悲痛な口調で呼びかけた。
「やめてっ。同じ人間同士ならわかりあえるはずよ」
大月がうなずいた。
「それもそうだな」
マルシアーノは狼狼した。
「し、しまった。なんとなくそんな気がしてきたぞ」
皐月が満面の笑みを浮かべて言った。
「さあ、話し合い……」
耳をつんざく爆音が皐月の言葉をかき消した。
通りの向こうで横転したトラックが炎上している。その前にひとりの男が立っていた。
大月と聖が同時に声を上げた。
「ヤマナカ君」「ヤマナカ様」
ヤマナカはダークスーツを着て、テロリストの集団を左右にしたがえている。
「人間同士も争うものだ」
聖が熱心にうなずいた。
「ヤマナカ様がおっしゃるなら、そのとおりよっ」
大月もうなずいた。
「確かにそれもそうだよ」
皐月は涙した。
「ああ、もうちょっとだったのに」
妖魔学校の生徒たちが広島に来襲したのは、そのときだった。
マルシアーノ一家に江田島から逃げてきた妖魔学校の生徒たちが加わった。これにより、広島妖魔は大きく勢力を伸ばした。ほとんど街を制圧したと言っても過言ではない。徒党を組んで中心街を歩いても、それをとがめる者は無きに等しいのだ。
五人のレジスタンスが某アパートに集まっている。桜小路あや、姉小路春美、神衣守聖、シャオ・ユウ、それにドクター大月だ。
「どうしてこの街にこだわるのよ」
古代人のあやが超全連の大月につめよっている。
「どこかの山奥あたりに引きこもってくれないかな」
「心配はいらない。僕にはヤマナカ君がついているから大丈夫だ」
「あなたの心配をしてるわけじゃないの。迷惑なのよ。あなたひとりのトラウマのために、あたしたちのことまで否定されたら、たまらないわ」
「いったい何を言っているかわからん」
この男の場合、とぼけているわけではなく、本当にわかっていない。それが余計にいらだたしい。
「こうなったら、無理やり連れてっちゃおうかしら」
なかば本気の軽口をシャオが聞きとがめた。声をひそめ、いつものじじむさい口調で言う。
「逃げるだけでは解決にはならんじゃろ。本当の自分を取り戻してもらわなくてはの」
あやも小声で応じた。
「彼のためには、それが一番なのはわかるわ。けど、だからって、あたしたちの命が危うくなるのはごめんよ」
「大月氏がいなくなっても、急に力が戻るわけではなかろう。すべての市民の思いこみをひと晩で変えるのは無理じゃ。もしも、それをできる者がいるとすれば……」
大月が割りこんだ。
「そこのふたり、何をこそこそしゃべってるんだ。さっきからひたいをくっつけて。なんかあやしいな。実はラヴラヴなんじゃないか」
シャオは脱力して大きなため息をついた。
「小学生みたいなことを言わんでくだされ。のう、大月さん、妖魔が……いや、ヤクザと軍隊もどきがはびこるこの街を見てどう思う。原因の一端は貴殿にあるのじゃぞ」
「なんで僕のせいなんだ。冗談じゃないよ、まったく」
「ご家族をなくされた悲しみはわかる。じゃが、もう逃げるのはやめるんじゃ。現実を見つめて……」
大月はいきなり大声を出した。
「あー、君の話はさっぱりわからん」
大月は憤然としたようすで、別室に閉じこもった。
「そんなおもちゃで、あたしの一刀をよけられるはずがないでしよ。フェニックスの尾でも持ってこなきゃ動けないようにしてあげるわ」
桜小路あやの刀がロックの部下を切り裂いた。
「ほらほらほら。あたしの刀でなますにされたくなかったら、ロックのところなんかにいないで、さっさと逃げ出すことね」
彼女の太刀は鋭く、ロックの部下たちは次々に倒れてゆく。
「さあ、次は誰」
見回しながら、あやは疑問に思った。
(素人ばっかりじゃないの。戦闘訓練はしないのかしら)
そんなはずはない。ロックのやり口は何度か見ているが、いずれもあざやかなものだった。訓練なしでできる芸当ではない。
(とすとると、ここにいるのは新兵さんてことか)
あやは男の手から小銃をはじきとばした。
「君、いくらもらって仲間になったの。どんな大金も命には代えられないと思うけど」
男は手をさすりながら、あやをにらんだ。
「カネなどもらっていない。俺は命がおしいからロックさんにしたがってるんだ。警察も自衛隊も退魔師協会もA-TEAMも俺たちを守ってくれない。誰も守ってくれないなら、強いやつにしたがうしかないじゃないか」
つまり、この男はロックが勝ち馬だと判断したわけだ。あやは戸惑いながらも、とりあえず男をはりたおしておいた。
妖子にひきいられた妖魔たちが、変電所近くの暗闇にひそんでいる。
「姫さん、バッチリですぜ」
妖子はうなずいた。
「ここで最後だ」
スイッチを押した。爆音がとどろき、変電所が崩壊する。市内の明かりが消えてゆく。チンピラたちは歓声をあげた。
若い女の声がした。
「電源に目をつけるとは、見かけによらず鋭いですな」
夜の暗がりの中に若生紫が立っていた。
妖子は紫をにらんだ。
「ケンカ売ってのんかい」
「あたしはほめたはずですが。そんなことより、あれを見なさい」
紫が高台を指さした。市街中心部に向けられたプラズマ砲が見える。プラズマ砲は明るく輝いていた。
「そんなバカな。電源はカットしたのに」
別の声がした。
「予備電源があるってことでしょ」
桜小路あやだ。
紫がうなずいた
「慧眼ですな。やはり亀の甲より年の功」
あやはこぶしを腰にあてた。
「それはケンカを売ってるのかしら?」
「あたしはほめたはずでがす。そんなことより、あれを見なさい」
市街のほうを指さした。停電のせいで闇に包まれているが、いくつかの建物は例外だ。非常用の自家発電設備を持っている。テレビ局もその一つだ。
「彼らはテレビ局から線を引いているのですよ」
「よく知ってるわね。ひとりで調べたの?」
「人間はあたしひとりです。洗脳した妖魔をおとりに使いましたが」
妖魔たちの間から非難のうめき声が聞こえた。
一匹が妖子に言う。
「姫さん、助けに行きましょう」
妖魔たちは期待のまなざしで妖子を見ている。
「よし、わかった。あたしについといで」
妖子と妖魔たちは高台に急いだ。
紫は黙って見送っている。あやが大儀そうに髪をいじりながら、つぶやいた。
「それじゃ、あたしはテレビ局のほうへ行きますか」
去りかけるあやの背中に紫が声をかけた。
「おかしいとは思わないかね」
「何が?」
「ロックはなぜ撃たないのか。停電が攻撃の一環であることは分かるはずです。報復として発射するのが当然でしょうに」
何か特別な意図があるとしか思えない。
「どっちにしても、電源を切ってしまえば同じことでしょ」
あやはテレビ局に向かった。
発電機室の暗闇に人が転がっている。気絶したガードマンたちだ。
「楽勝ね」
あわただしい足音が近づいてくる。停電の原因を調べに来たのだろう。もうしばらく戦い続ける必要がありそうだ。
「ストレス解消にちょううどいいわね」
桜小路あやは、ふたたび刀をかまえた。
裏通りに藤咲マリアと三匹の妖魔――ヤン坊、ニン坊、トン坊(通称・三バカ)がいる。
「アナタたち、これからどうするの」
マリアがたずねた。
「みんなの仲間はロックのところへ行ったらしいよ」
三バカは顔を見合わせた。互いに返答をゆずりあっているようだ。
若い女の声がした。
「妖魔も一様じゃないのか」
いつのまにか桜小路あやが立っていた。
「何か用?」
「そんなに恐い顔しないで。ケンカを売るつもりはないわ。ただ、妖魔どもがどういうつもりでいるのか確かめたくてね」
ヤン坊が言った。
「俺たちは……少なくとも俺たち三人は、マリアさんといっしょにいたいと思っている」
マリアは目頭を熱くしたが、あやは気のないあいづちを打っただけだ。
「前から疑問に思ってたんだけど、他の連中はどうしてこの街にこだわってるのかしら。あなたたちって、他に帰るところないの?」
ヤン坊が怒気をふくんだ口調で言った。
「地球は俺たちの星だ。あとから生まれた人間に、どうして譲らなきゃならないんだ」
あやのほうもつられて強い口調になる。
「いつの時代の話をしてるのよ。妖魔とあたしたち古代人はずっと眠ってたんじゃない。今は人間が主役なのよ。少しは遠慮して、ひとけのないところに住むとか、いろいろあるでしょ」
マリアが割って入った。
「やめてっ。あやさん、ケンカは売らないって言ったくせに」
「別にケンカしてるわけじゃ……」
「ふたりとも譲るとか遠慮とか、どうしてそんな言いかたするの。いっしょにくらせばいいじゃない。それじゃだめなの!?」
とめに入ったはずのマリアが、誰よりも興奮している。
「そんなの夢物語よ」
と、あやが言った。
「それができれば苦労は……そうか。あなたたちは人間なのよね。わたしみたいな古代人じゃなくて」
あやは言葉を切った。何か考えている。
「人間と妖魔なら、共存できるかもしれないわね。妖魔の血を引く人間ならば」
そうして、「あたしには関係ないけど」とつぶやき、あやは立ち去った。
それから
ドクター大月――昼間は春美の店を手伝い、夜はマルシアーノ一家を仕切っている。
ヤマナカ――いつも大月を守っている。ついでに聖も守ってる。
神衣守聖――広島の人々に「ヤマナカはアームじゃない。本物の人間だ」と思いこませるべく奮闘中。
マルシアーノ一家――裏社会の人間と共存するため、ゆすり、たかり、いやがらせなどの手口を勉強中。
桜小路あや――人間に混じってくらす妖魔たちを注視しつつ、まつろわぬ妖魔を退治している。