1995 不動舘 MT3『竜創騎兵ドラグーン』

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[プレイングマニュアル]

キャラクター

設定

[サーミア・スランツ]

名前
サーミア・スランツ
種族|クラス|性別|年齢
人間|予言者|男|30歳
性格
お人好し、気長、陽気
設定
  • 縁側でひなたぼっこをしながらお茶を飲むのが好き。家に来た客には必ずお茶を勧める。
  • 当面の目的は結婚である。しかし、望みが高い為、未だ独身。
  • 村の祭りや儀式に従事するほか、天気予報や梅雨明け宣言、結婚に儀式など、色々なとこに出向いている。
初期スキル
天候予想(専)、占星術(専)

説明

初めて、他のプレイヤーさんと設定調整を行ったキャラクターです。結果、リアクションにおいてシフールのシシリィ・ロマーヌさんの保護者という描写が何度かなされています。

同時期にプレイしていた『アラベスク#2』『クレギオン#5』、そしてこのゲームのもう一人のキャラクターであるシルビア・プレセアードがシリアスでしたので、お気楽ご気楽にプレイしようと考えていたのですが、村を脅かすドラゴンが出始めた頃からシリアス一辺倒になっていきました。『ハードボイルドで行こう』のあとがき風に書くのであれば、

一度は、予言者をプレイしたいと思っていた。

舞台はファンタジー。

スタイルは、ほのぼのと決めていた。

変な邪推などは、極力おさえて、淡々と日常をプレイし、最終的にほんわかした気分になれればいいなァ、と思ってやり出した。

その予定だった。

自信もあった。

それが、こうなってしまった。

どこで道を間違えてしまったのだろうか?

やはり、プレイヤーの資質に問題があったような気がする。

困ったものである。

といったところでしょうか。

シナリオに関しましては、第9回において敵側NPC(カオスの者であるニルフィグ)との交渉が味方側NPC(査察官のレースンと守備隊長のセズン)との間だけでなされてしまい、プレイヤーとしてかなり悔しかったものですから、最終アクションで敵側NPCにもう1アクションを掛けましたところ、それが当たりとなりました。第1回から第9回まではダメのダメダメでしたが、「終わり良ければ全て良し」ということにしたいと思います。

なお、担当の美剣マスターは、マスター交代により第1回からリーシェを担当することになったマスターです(プレイングマニュアルの掲載されていた初期情報は別のマスターの手によるものでした。)。キャラクターが生き生きと動き、また、掛け合いも多い、読んでいて楽しいリアクションを書かれる方で、好きなマスターの一人です。

reference

項目

第01回 G6『火と人との輪舞曲』(美剣貢マスター)

リアクション

広場に並べられた大量の机の上には、ここ数日に渡って用意された料理が山のように並んでいた。噴水からは上等のワインが噴き上がり、グラスをもって集まった人々がそれをこぼさないように受けとめている。これらは全て、町から町を愛する者達へと振る舞われた物である。

町の人々は、日頃お目にかかる事のないご馳走を、冬眠前の熊のように片付けている。娘にせがまれて一緒に祭を見て歩いていたアーセイド・シルガーナは食会の会場の中心部で町長に会った。

その時リーシェの町の新町長、ソリシア・シュヴァリシュは、この祭に参加した事をほんのチョッピリ後悔していた。3年前までは自由に 動き廻れていた彼女は今やどこに行っても引っ張りダコ、注目の的である。気苦労ばかり溜まって一向に楽しくない。

(こんな事なら、過労で倒れたとかいって家で寝ていればよかったかしら?)

そんな事を考えていたら、以前の事を思い出して身震いする。

4日程前、彼女はちよっとした寝不足でヘタり込んだ。チョット寝ていると、どこでどういう風に聞いたのか、大量の見舞い客と見舞い品の山に襲われたのであった。

世界中の不幸をしよい込んだ気分になってブツブツ言っていると、可憐なシフールが肩に乗っかって来た。

「ねえ町長さ~ん、いつになったら返してくれるの?」

シシリィ・ロマーヌはひょんな事から『ルウドの森』の外れにある、ジュエルがでるという鉱山の権利を手に入れた。この鉱山は赤字経営で、前所有者は鉱山を担保に町からお金を借りていた。つまりその鉱山は今、町によって差し押さえれられているのである。

この問題は町長の今後の仕事の中でも重要なものの一つである。もし本当に宝石がとれるとしたら‥‥。

返事に困り黙って愛想笑するソリシア。追い打ちをかけようとしたシシリィの羽を一人の紳士が掴む。

「ダメですよ? 町長さんに迷惑かけちゃあ?」

シシリィの保護者であるサーミア・スランツはそのまま彼女を自分の肩に乗せると、ソリシアに会釈をした。

予言者であるサーミアは博識で性格と育ちも良いので、どこへ行っても町の娘達から引っ張りだこである。しかし、本人の注文が多いので未だに独り者であった。

「ええと‥‥町長さんに急ぎのお話があるのですが、よろしいですかぁ~?」

「よろしいですよお~?」

のんびりと間延びした口調に、思わずつられて同じ口調になるソリシア。本当に急ぎなのかしら、と不謹慎な考えが頭の中に浮かんできた。

第09回 G5『善と悪との青と赤』(美剣貢マスター)

リアクション

デルフィラ山系のすそ野には、湖と河川の多い『ルウド』という美しい森が広がっている。

そのほぼ中央にあるレンド湖は、この森最大の大きさと美しさを誇っていた。

あの決戦を繰り広げた氷竜マーディオンは、この湖に棲んでいると言われている‥‥。

主義・主張・目的の違ったマーディオンと町の住人達が森を巡って争った戦いは、町の住人達の勝利に終わった。町の住人達にもはや執着はないが、傷ついたマーディオンもそうであるとは限らない。

各人の様々な想いは、戦い終わり平和が訪れたこの後に及んでも、マーディオンを気にさせてしょうがなかった。

そんな感傷を持った者達が雨降る湖を船を遭いで渡っていた。

シシリィ・ロマーヌとその“保護者”のサーミア・スランツである。

二人は島に上陸すると、まず島の中心部にある空洞に降りる穴を探した。シシリィが以前使って下りた穴は、人間には狭すぎてとても通る事が出来ない。数十分後、それらしき穴を見つけた二人は、雨で滑らないように慎重に潜って行った。

「ねえっ! 言った通りでしょ」

空洞にたどり着いた時のシシリィの台詞が、辺りに響き渡る。

この島の中心部まで降りて来た二人が見たのは、非常に神秘的かつ幻想的で、とてもこの世の物とは思えない光景だった。

空洞の中には外につながる湖があり、その中心部には小さな小島がある。その小島の上にはちょっとした財宝の山があり、その上に氷竜が臥していた。

天井に無数ある大小の穴からは、雨水が滝の様に流れている。薄暗い空洞の中は財宝の光が一面の水膜に反射し、まるで水のユートピアであった。

マーディオン‥‥目を閉じて躰を丸めている傷だらけの氷竜を度々見た事のある二人、わざわざ彼に逢いにやって来た二人であってもその遭遇に、身体の奥から姿んでくる恐怖感を押さえる事が出来なかった。

それは彼らがこの大陸を我が物顔で闘歩していた頃の名残なのであろうか? 先に感嘆と恐怖という名の金しばりの呪縛から身を解き放ったのはシシリィだった。

彼女は同行者が氷竜に持っている、ある種の感情を手土産にはしていなかった。

先月、氷竜の共たるカオスの物に捕らわれの身となっていた彼女は、その時ニルフィグから聞いた話の一部始終をマーディオンに話し、反ニルフィグの先鋒となって戦って貰おうというつもりでやって来たのである。

「騒乱に巻き込んで申し訳ありません‥‥」

シシリィは最初、マーディオンが寝ているのだろうと思って、恐る恐る声を掛けた。しかし、一声目の反応を待っても一向に返ってくる気配がない。シシリィは少しづつ、様子を見ながら彼に近づいて行った。それでも反応はない。シシリィは大胆にも彼を叩いてみた‥‥無反応だった。

「ちょっとお~、ニルフィグがあなたの事なんて言ってたか聞きたくないのぉ? あなたは騙されれていたのよっ!」

シシリィは叫んだ。流れる滝の音によってかき消されていると思っていた彼の寝音は、元より発せられてなかった。

目を閉じるマーディオン。束の間の夢を見ているのか、永遠の眠りに身を任せているのか、それは見る限りでは分からなかった。生命と時を刻む彼のビートを探し出す事が出来るのなら答は導き出されるのだが‥‥それをしようという者が、いや出来る者などいないだろう。

ただ、この流水だけが時の流れを感じさせる“凍った空間”で分かる事は、今氷竜は休んでいるという事だけだった。

そう、何人も妨げる事の出来ぬ休息を‥‥。

シシリィの様に空を飛ぶ事の出来ぬサーミアは浅瀬を探し出し、腰まで濡れるのも気にせずにマーディオンに近づいて行った。

サーミアは懐から瓶を取り出すと手短な傷跡へと塗り出した。それはスノイに頼んで用意した傷薬だった。

「1つだけ聞きたい事があるんです‥‥どうしてサフィーロさんに毒をもったりしたのか‥‥でも‥‥」

サーミアはその頑丈そうな身体を触り、ぼんやりと考えた。

「あなたも風邪を引く事なんてあるのでしょうか‥‥これから本格的に雨期が始まりますので、お体には気を付けて下さいね。まもなく『竜精祭』です。良かったらあなたも参加して下さい。多分‥‥町の人達はみんな、あなたを歓迎すると思いますよ」

サーミアは言い終えると深呼吸をした。

「さあシシリィ‥‥帰ろうか」

満足そうに引き返すサーミアとは対照的に未練の残った顔をするシシリィ。自分の策のあてが外れ、あまつさえマーディオンが牙を抜かれている状態よりも質が悪かったせいか、それとも‥‥。

第10回 G5『送別』(美剣貢マスター)

リアクション

「そろそろ来てもよい頃合なのでは?」

宴が終罵を迎えそうになって来た頃、サーミア・スランツは今更の来訪者を心待ちにしていた。

彼が待つ者‥‥それはニルフィグだった。

話を遡る事3日前、サーミアはニルフィグの住む鉱山洞へと彼を訪ねた。

「これはこれは‥‥あのような事があった後に、こんなにも早く来客が訪れるとは」

ニルフィグの差し出す薬草茶を、サーミアは何の隣踏いもなく美味しそうに飲み干した。

「用件は立ち退きでしょうか?」

ニルフィグは、このお人好しそうな、それでいて一筋縄で行きそうもない予言者をどうやりこめようかと頭を張り巡らした。だが、相手から返ってきた台詞は、彼には到底思いもしない思考外の代物だった。

「いえ、その反対で‥‥ものは相談なんですけど、リーシェに住んで見ませんか?」

多分ニルフィグが何かを飲んでいる途中なら、彼は問違いなくそれを吹き出している事だろう。それは彼の美学に大いに反することだった。

「町に‥‥?」

サーミアは話を続けた。

「マーディオンさんも眠られてニルフィグさんもお独りになられたみたいですし、カオスの者って色々な生き物に変身出来るっていう話を聞いた事があるんですけど、もし出来るのでしたら締麗な女性の方や可愛い女の子にでも化ければもうバッチリですよ」

ニルフィグには、今更ながら人間の考える事が理解出来なかった。

「まぁ、ぶっちゃけた話、こちらとしては森の中で何かしてないかと不安がるよりは、見える所に居てもらった方が安心できますしね。それに私自身がカオスの者達の生活に興味がありまして‥‥」

そう言ってくれると話も分かり易いのだが、サーミアの本心は必ずしもぶっちゃけた話と同じではないであろうとニルフィグは推測する。

マーディオン‥‥かの友も町の連中を相手に、こんな嫌な気分を味わされていたのだろうか?

「もし孤独に飽きたり、しがらみを経験したくなったらいつでも来て下さい。私の家は学校の裏にありますから」

そう言うと返事も聞かずにサーミアは洞窟を立ち去ったのだった。

立ち去る前、ついでに今日の送別会、ニルフィグも関わった事のある人々を送り出す会があるという事も伝えたのだが、はたして‥‥。

サーミアがぽんやりと当て無き存在を待っていると、入り口の扉の方でドサッっという大きな音がした。ドアに近い者が何事かと開けて様子を窺うと、戸口に大きな麻袋が一つ置かれているだけだった。

「おら、どいたどいた!」

セズンが走って来て、その中身を調べた。

「ん‥‥こりゃ胡桃だ!」

袋の中には胡桃が山の様に詰まっていた。それを聞いたセレンが、調理場からクルミ割り人形をもって来た。

「ほい、エノク製の高級クルミ割り人形」

「何か違うのか?」

「普通の奴の3倍よ、3倍」

何が3倍だか、とセズンは胡桃を一つ割った。

パチンっと音がして胡桃が割れた。中には身が詰まっている代わりに、結麗な液体が入っていた。その液体の香ぐわしい匂いは、瞬時に部屋中に溢れ出す。

セズンの周りには、シラ爺やセールやソリシアらが一瞬の内に集まって来て、勝手に胡桃を割って中身を啜り出した。

「こらこら」

注意しつつもセズンも飲んでみた。ゴクゴク‥‥うん、うまい!

「これって‥‥」

「もしかすると‥‥」

「うむ、極上の果実酒じゃな‥‥長生きはするもんじゃ」

セズンは麻袋を担ぐと、みんなに挨拶をした。

「それじゃあ、今日はお開きという事で。この落とし物は兵舎で」

無論、彼がボコポコにされたのは言うまでもない。

この世にも珍しい贈り物は、参加者全てに均等に配っても十分お釣りが来る程あった。みんなこの送り主を不思議がりながらも、その甘き誘感に思考が負けて、考えるのを止めてとっとと二次会を始め出した。

送り主に心当たりのあるサーミアはニコニコしながら、掌の上で配られた胡桃を転がしている。彼にはこの素晴らしき味よりも、明日からの数日間の我が家の来訪者の方が楽しみだった。