2000 Design Group Radi『Prediction』

キャラクター

設定

[カテリナ・ブルーウォーター]

名前
カテリナ・ブルーウォーター
職業|性別|年齢
警邏|女|18歳
性格
よく言えば、芯が強い。悪く言えば、頑固。自分がこれだと決めたことに関しては、少々意固地になることがある。
夢・野心|ポリシー|好きなもの|大切なもの|嫌いなもの|絶対したくないこと
お嫁さんになる|約束を守る|散歩|友達|弱いものいじめ|人の陰口をたたく
設定
  • 頑強
  • 優しそう
  • 家出したことがある
  • 誰とでもすぐに打ち解けられる。
  • 子供の扱いに慣れている。
  • それなりに裕福な農家の出身。
  • 幼い頃に見た騎士(馬・剣・鎧)に感銘を受ける。
  • 現在、街の親戚の家にやっかいになっている。
  • 警邏に助けてもらったことがあり、それ以来自分も警邏となることを夢見ていた。

説明

『香術士への幻想』に引き続き参加した『Design Group Radi』によるPBeMです。ちなみに、料金は無料。

ゲームの舞台が「「時が来れば一瞬にして都市は灰燼に帰す」という滅びの予言が成されている王都」というものでしたので、シナリオに関わりやすいように「警邏」として登録しましたところ、リアクションでは「自警団に派遣された軍人」に変更となりました。しかし、残念ながら、この職業の変更を私は上手くアクションに生かすことができず……と言いますか、リアクションでも全然生かされなかったものですから、マスターがどのようなことを期待し、又は目論んでこの職業変更を行ったのか、今もって謎です。

物語の方は、正直、PCのレベル(国民その一)に対し題材(王都滅亡の予言)が大きすぎたように思います。課題解決型のシナリオの場合、課題を解決できる役職にPCを配置するとともに、その役職にNPCを配置しないようにしませんと、「情報が少ないー、できることがないー」などと思いつつ、捜査権も持たない警備部の人間が捜査活動を行うようなことになってしまうのです。

なお、「ブルーウォーター」などという苗字にしていますが、『ふしぎの海のナディア』とは全く何の関係もありません。と言いますか、名前はスペイン語なのにどうして苗字は英語なのかと当時の自分を小一時間問い詰めたいです。

項目

開始前

日記からの抜粋

1999.05.29 sat

午前中。新しいパソコンに各種アプリケーションをインストールし、設定を行っていく。一昨日起動しなかったのは、どーやらCPUの差込みが甘かった為らしい。くくっ。マジで接触不良が動作不良の原因だったとは。そーゆー重要なことはきちんとやってくれよ。

さて。ひととおりパソコンも使えるようになったことだし、そろそろ『PREDICTION』のキャラ設定とアクションを考えることにしよう。なにしろ、明日が〆切日だからな。それに明日は午後からプライベに行く予定になっている。なんとか今日中に書き上げねばなるまい。

現在のところ登録を予定しているキャラクターは、警邏のおね~さん。事件解決型のシナリオの場合、一般市民よりもストーリーに絡めるのが楽だろう、というのがその選択理由である。

だが。今現在、私は別のキャラクターに心が揺らいでいる。それは、未開出身の狩人。イメージとしては『ルーン・クエスト』の大荒野/ペント出身のキャラクターだ。≪穏やかな死≫の儀式を行い魂の帰還を願い、荒野で生きる術を教えてくれた神に感謝するともに、それを体現出来ることに誇りを持つ。風の囁き、川のせせらぎ、大地の温もりに精霊の力と恩恵とを感じ取り、インディアン嘘つかない。

考えれば考えるほど魅力的に思えてくる。だが、問題はいかにしてこのキャラクターをシナリオに関わらせるか、ということだ。『PREDICTION』の舞台は「時が来れば一瞬にして都市は灰燼に帰す」という滅びの予言が成されている王都である。この街に何かしらの愛着なりがなければ、街を離れて「はい、それま~で~よ~♪」となってしまう。さて、どうしたものだろうか。

……うーん。めんどいから、やっぱり警邏にしよ。いくらプレイしてみたいキャラクターを作ったとしても、シナリオから遊離してしまってはどうしようもないからな。いざとなれば、セカンドキャラクターとして登録してもいいわけだし。

よし。では、細かい設定を考えていくことにしよう。一から考えるのは面倒だから、自由設定は『ソル・アトスの姫君』のキャラ作成システムを使お~っと。

第01回(北寿マスター)

アクション

動機

国が今回の予言への対処を正式に発表するまで、街の治安を維持するのが自分達の役目だと考える。

目的

街の治安を維持する。

行動

以前より外回りを多めにする。他都市へ引っ越し、現在使われていない家の管理に気を配る、等。

特に緊張した感じで職務には当たらないようにする。どちらかというと、以前よりものんびりした感じで(人との会話重視)。

予言&予言者に対する考え

占い小路から予言者がいなくなったのは、今回の予言に対してより詳しいことを知ろうとしてのことだと考える。

予言とは、将来起きるで災厄等に対して、その被害を出来る限り小さく抑える為にあるものだと思う。

実際に何が起きるかもわからず、国に対して有効な方策を何も提示せず、ただ「破滅が訪れる」と騒ぐのでは、あまりにも無責任だと思うから。

リアクション

サリュースの目の前には、一軒の宿屋が建っていた。廃業して久しい……そう聞かされていたので、もっとさびれた建物を予想していたのだが、実際見てみるとスタッフと什器の都合さえつけば明日からでも開業できそうなほど手入れが行き届いていた。看板の文字は「再会亭」と読める。

繁盛している時は、隣の「忘帰亭」と客の取り合いをしていたんだろうな……そんなことを考えながらサリュースは扉を開けた。

「お待ちしていましたよ、ゲーツさん」

目の前のテーブルで書き物をしていた男がサリュースに声をかける。

「いらっしゃい」

「自警団へようこそ」

「あんたも賞金稼ぎか」

などと、先客たちもてんでに話しかける。サリュースは物憂げに受け答えした。

「じゃあ、今ここにいるだけでも自己紹介をしてしまいましょう」

最初に話しかけた男が口火を切る。

「私はゲードル・ゴア。役人です。隊の事務関連を担当します」

カテリナ・ブルーウォーターです。正規軍から派遣されてきました」

と素っ気ない口調なのは20歳になるかならぬかといった風情の女性。肌の白さが目を引く。

「俺はグレン・コーウェルだ。専門は魔物だが、予言の話を聞いたんでね、加わらせてもらった」

外見30歳ぐらいで、修羅場をくぐり抜けてきた風格と鍛えぬかれた体から手練れの戦士と分かる。

「フェアラ・ヒーヴルーツだ。よろしく」

と言うのはカテリナよりもまだ年下に見える女性。オレンジ色の髪は、一度見れば忘れることはないに違いない。

「エン・ドルフィナと申します。ゴアさんのお手伝いをさせていただきます」

と控えめに言うのは30そこそこの女性。

「オレはサリュース・ゲーツ。宮廷騎士だ……いや、宮廷騎士だった……」

サリュースは手近な椅子に腰かけながら、それだけを言った。

「じゃあ、今のところ仲間はこれしかいないってことだな」

グレンの問いかけにゴアがうなずく。

「で、当座の仕事は何をすればいいんだ?」

「街の治安維持、ってことでいいんじゃない?」

手にした木製のマグカップを置いてカテリナが答えた。

「住人が引っ越した空き家を見て回ったり、ともかく外回りを強化しなくちゃ」

「軍人はあらかた離宮のほうに行っちまってるからな。あんたたちも大変だったろ?」

サリュースが訊ねると、

「そうよ。迷惑してるんだから」

カテリナは、まるでサリュースのせいだとでもいうように一睨みしてから、ケラケラと屈託なく笑った。

「仕事はいいけどさ、給料とかはちゃんと出るの?」

そんなやりとりを退屈そうに聞いていたフェアラがゴアに聞いた。

「……勤務時間や能力に応じて、正規軍に準じた金額が支給されます」

「『準じた』ってことは少なくなるってことね。それとも、まだ決まっていないのかしら。どっちにしろ、早めにはっきりさせておかなくちゃだめよね、フェアラちゃん」

エンの厳しい一言に、ゴアは咳払いをして中間管理職の威厳を見せた。

「市内に住むところがなければ、この『再会亭』の建物で寝起きしてもらって構いません。毛布ぐらいしかないですが、屋根のないところで野宿するよりはマシですよね。仕事は明後日からで、それまでに見回りの区割りや時間のことなんかを私とエンさんで決めておきます。明日の昼にもう一度ここに集まってください。何か質問はありませんか」

皆がうなずくのを確認して、ゴアはおごそかに言った。

「予言で示された災厄がなんなのか、それはまだ分かりません。私たちの務めは、その被害を最小限に留めることにあります。皆さん、これから半年以上の期間になりますが、頑張っていきましょう」

日記からの抜粋

1999.06.05 sat

朝、メーラーを起動させたら、『Prediction』の第1回リアクションが届いていた。

は、早いッ!! 着信時間を確認すると、昨日の夜には着いていたらしい。アクション提出からわずか5日でリアクションが届くとは……。やるな、ロンドベル。

さて、その内容は、と。

…………うぬ?

いつの間にか私のキャラクター、カテリナが自警団に入っている。しかもその身分が、警邏ではなく、正規軍からの出向者になっているぞ。まぁ、キャラ設定が変更されることがあるのはマニュアルに書かれていたからよしとしよう。だけど、るるるる~♪ じゃなくて、「軍人」が「出向」する「自警団」っていうのは一体ナニ!? 国からお給金が出たら、それは既に「自警」団ではないよーな気がするのだが……。

うーむ、わからん。ますますもって……って、最近このフレーズばっかり使ってるな。反省、反省。もっと色々なものを観て聴いて、引き出しの数を多くしておかなくてはなるまい。

1999.06.09 wed

本日は、愛の献血日である。

私の場合、どちらかというと、義務の献血だったりするのだが。なにはともあれ、勤務時間中に約1時間、仕事のことを考えなくよいというのは嬉しいことだ。周りには何も私を誘惑するものはない。じっくりと『Prediction』のアクションを考えることにしよう。

今回のリアクションにて、カテリナの職業が警邏から軍人へと変更されていた。当然、これには何かしらの理由があると見るべきだろう。次回への引きには「正規軍が動く」というものがある。これに関する情報を引き出せる立場に変更されたと見るのが妥当であろうか。さて、どうしたものかな……。

…………。

「はい、終わりですよ」

看護婦さんの声により目覚めた時、既に献血は終わっていた。

第02回(北寿マスター)

アクション

行動

自警団の効率的な運用を図るために、自分が軍で習ったことを皆に教える。

また、軍についても、自警団との連絡を的確に行えるようにするために、その動向を逐次教えてくれるよう頼む。

補足

自警団についてであるが、国は、組織的な運用を想定しているわけではないと考える。それならば、自分のような若輩者ではなく、他者を指導できる人を派遣する筈だからだ。市民の治安に対する意識の向上や、有事における連絡体制の確立といったことが主目的なのだと思う。

自分が出来ることとして、「パトロールをする時は、常に二人一組で行う」といったことや報告文書の書き方など、軍でならったことを自警団の人達に教える。これはあくまで、「軍では、このようにしています」といった紹介の形を取る。その有効性を示して、「このようにしろ」と命令するには、自分はあまりにも知識・経験不足であるし、もしそうした場合、自警団は軍の下位組織として位置づけされることになり、「自警」という名称に反することになる。そしてそれは、参加者に対して「押しつけ」の意識を発生させることも繋がりかねないからだ。

軍の動向に関しては、出来るだけ多くの情報を流してくれるように頼む(もちろん公開出来る範囲で構わない)。街の治安維持を自警団(一般市民)にのみまかせ、本来それをすべき軍が別の行動を秘密裏に行ったりした場合、不信感が生まれかねない。

心配事:「自警団」であることを笠に着て、暴力を振るったりする者が出たりしないかどうかがちょっと不安。

リアクション

同じ頃、自警団員のカテリナ・ブルーウォーターとラティス・カルネードは、団員として志願してきた住民を引き連れて住宅街のパトロールに出ていた。

「いま通ってきたように、皆さんには夜になったらふたり一組でパトロールをしてもらうことになります」

にわか団員たちに向かってカテリナが大声で説明する。

「単独行動はしないようにしてください。手早く任務を片づけるために、ふたりが別れて別々の場所を巡回したりすると、何か異変があった時に対処できないことがあるので、軍では必ずふたり以上でパトロールを行なっています」

あとを引き継いでラティスも声を張り上げる。軍にいた経験のない自分が軍のやり方を紹介するというのは違和感があったが、事前にラティス自身がカテリナから説明を受ける時に、

「決まりを押しつけるのではなくて、あくまでも軍の流儀を紹介する形で説明してね」

と言い含められていたので、少なくともキツい物言いだけはしないように心がけていた。

カテリナにしてみれば、今のところ「自警団」という名前とその実態に大きな隔たりがあるにせよ、団員たちに自主的に動いてもらうことこそが重要で、それがひいては市民の治安に対する意識の向上に繋がると考えていた。

そんなカテリナの思いがどれほど伝わったのかうかがい知ることはできなかったが、団員たちは職務に関して活発に質問し、また装備として貸し与えられるであろう小振りの剣を試しに振ってみたりもした。

カテリナさん、ちょっと聞いておきたいことがあるんだが」

再会亭への帰り道で団員のひとり、40歳過ぎの男がカテリナを呼び止めた。

「もし、魔女だか占い師だかが襲ってきたらどうすればいいんだね」

「はい、なんですか?」

カテリナはほんの一瞬だけ自分が受けた質問の意味を理解できなかった。

「ほら……近ごろそういう噂なんだが……ほら、魔法使いが街を滅ぼそうとしているって……なぁ」

男は周りの団員に同意を求め、何人かが得たりとばかりにうなずく。

カテリナがすぐに答えないのを見て、隣にいたラティスが、

「まず逃げることを優先に考えてください。そのあと再会亭のほうまで連絡してもらえれば、軍に助力を仰ぐとか色々と手の打ちようがありますから」

「は……はぁ……」

質問した男は気の抜けた返事をした。後ろのほうにいた団員たちが小声で、

「やっぱりそうなんだよ」

「魔術師の塔でも何かあったそうじゃないか」

などと言っているのがカテリナには聞こえたが、その場では特に取り合わなかった。

第03回(北寿マスター)

preface

グランドマスターに「理想的なアクションだと思います」と評されたのですが、共通リアクションにキャラクターが登場していないという罠。では、個別リアクションで活躍しているのかと見てみましたら、その99%は共通リアクションと同じもので(差異は、強調部分が加筆されていたことだけ)、やっぱりキャラクターが登場していないという罠。

マスターの「楽しませ方」とプレイヤー(私)の「楽しみ方」とに大きな乖離があることが判明した回です。

アクション

今まで直に見たことがない魔術が公開されるのだから、何はともあれ見てみたいと思う。

これは純粋な好奇心によるものである為、私服を着て一般市民として見に行く(その日は、非番にしてくれるようゲードルさんにお願いする。)

公開実験ということで、危険なことは行わない筈なので、もし被験者等を観客から募るようなら、率先して志願する。

リアクション

6月3日。この日は珍しく朝から雨が降っていた。

「これは困りましたね」

支度の整った講堂の舞台を前に腕を組んで考え込んでいるのは導師のナキだった。

「どうされましたかな?」

お祭りというと居ても立ってもいられないタチのペッパー・フロジーが、そんな導師の姿を見つけて声をかけた。ちなみにペッパーは今や押しも押されぬ塔の最長老である。ふたりの間には倍ほども年齢差がある。

「いや……演目に『降雨魔術』というのを予定していたんですが、さすがにこの雨ではそんなことをしても無意味だと思って……」

「何かと思えば。だったら晴請いの魔法でもやってみせればよいこと」

「ありません」

「は? 今なんと?」

「晴請いの魔法などというのはないのです。そもそもそんな魔法なぞ、この国にとっては不要……いや、もし悪用されでもしたらとんでもないことになりかねない。そのような魔法を研究されることは、基本的には我々には許されていないのですよ」

「ふむぅ……」

ペッパーもナキのそぶりを真似て腕組みする。確かに雨の少ないこの国では晴請いの魔法など無駄以外の何物でもない。

「だったら、その……降雨魔術だかを演る予定だった人に、何か別の魔法を実演してもらうとかなんとか……」

「まぁ、それはこちらで考えましょう。では私はこれで」

ペッパーの言うことを最後まで聞かず、ナキは足早に講堂を出ていった。

そしてその日の晩6時。

終日雨が降っていたこともあって講堂は八分の入りだった。入り口の演目表は「降雨実験」の上に赤い×印が打ってあり、その脇に赤字で小さく「雨が降っているため中止します」と書かれていた。

見物人の中にはそれを指差して、

「これで恥をかかずに済んだんじゃねーか」

「雨の降り始めが今時分だったら、魔法で降らせたって自慢できたのによ、残念なことだなぁ」

などと揶揄する者もいた。

目玉とも言うべき降雨実験が中止になったにせよ、演目は滞りなく進んでいった……惜しむらくは滞りがなさすぎたと言うべきだったろう。

物体浮遊、紙の自然発火、カードを使った透視術……虚心に眺めてみれば、それらは十分に不思議であり、神秘的なことどもであったことは間違いないだろう。だがしかし飽くほどの娯楽に慣れたクォンタ市民にとっては、折角の人知を超えた技も「手品なら同じことを簡単にできる」という感想を抱かしむるに留まった。

そして6時の部最後の演目、「物質移動」が始まった。

演ずるは導師ナキ。実験の公正を期すためにナキは舞台から降りて客席の目の前に真白の机を据えた。

観客の間から無作為に実験の協力者を選び、取り出した紙を折り紙の要領で箱の形に折らせる。出来上がった箱に何の仕掛けもないこと、加えて机にも仕掛けや傷のないことを別の協力者に確かめさせたうえで、箱を机の上に伏せて置く。

その上でナキは協力者から1枚の硬貨を借り受け、伏せた箱の前、ちょうど観客からみえる位置に置く。

「今からこの硬貨が箱の中に移動します」

ナキが小声で口上を述べる。その声は前から10列程度の観客にしか聞き取ることはできなかった。

「ちょっと待った」

協力者のひとりが、制止する間もあらばこそ紙の箱を持ち上げる。

テーブルの上には何も載っていなかった。もうひとりの協力者が再度箱と机を点検し、異常のない旨を告げる。

「今からこの硬貨が箱の中に移動します」

先程よりはいささか大声でナキが口上を述べると、客席の前の方でまばらに拍手があがる。

ナキが箱に手をかざし、目をつむる。その時確かに箱の中でカタンという音がした。

ナキは呪文を唱えているのか口元がわずかに動くのが分かる。別段特別な呪言などではなく、普通の話し言葉で何事か話しているのは分かるが、喧騒のせいでその内容までは分からない。

ふと、箱の前にあった硬貨が消える。ナキが手を下ろし、ゆっくりと目を開く。

「箱を掴んで、静かに真上に持ち上げてください」

協力者に向かってナキが言った。命じられるままにひとりが箱を取り除けると、中には先ほどと同じ硬貨があった。

客席の前のほうでわずかに拍手があった。だがしかし居並ぶ客のほとんどはその奇跡を目にすることができなかった……舞台の上ではなく、下に降りての実験ゆえ、見えなくて当然である。

第04回(北寿マスター)

アクション

自警団は所詮のところ、民間団体であり、情報収集も噂話によるものの域を出ない。今話題の土地の買い上げにしても、役所の住民・土地台帳を調べればわかることである。それはつまり、本来なら掛けなくてもよいところに力を割いているということになる。

二重手間の無駄を省くため、以前の上司や同僚等を通して、また、ゲードルさん側からも、「国」側が保有している情報を自警団に提示してくれるよう、もしくは自警団からの開示要求があった時に公開してくれるよう依頼する。

リアクション

そんなこんなで、互いに代理人を立てての茶会は意外に早く実現することとなった。

場所はいつもの忘帰亭で、出席者は、

  • 王城から身分不明の役人と書記官がひとりずつ
  • 亜人街からは例の門番とその同僚と思われる男性の2名
  • 会談の仲介役としてウティカ・アージェント、レム、ゲードル・ゴア
  • 最近の土地取り引きに関して王城に言いたいことがある、ということでトレヴィズ・カーライル、エン・ドルフィナ、ナル・クルード
  • 自警団員のカテリナ・ブルーウォーターとフェアラ・ヒーヴルーツ
  • たまたまその時間に同席したヴァネッサ・アームストロング、シャルテ・フレルレイナ、セファ・エルストーク、クレア・クライスマン、クロス・グラウンド、オーク、ミリー、マーザ、タロイ、 サヴォア

の面々だった。昼過ぎで他に客のいない時間帯だったことが幸いして、これだけの人数でも全員がかろうじて席につくことができた。ゲードルが話を始めようとすると、店主のマーザが、

「もうちょっと待っとくれ、そろそろ出来上がるから……あ、準備が出来たみたいだね」

と言って厨房に引っ込んでしまう。奥から肉の焼けるような匂いが漂ってくる。

そしてほどなくレム、マーザ、タロイ、ミリー、オークが大きなパイを持って現われ、居合わせた者全員に切り分けて配った。一切れ食べれば十分腹一杯になるほどの量がある。

「このパイは?」

目の前に置かれたミートパイをしげしげと眺めながらフェアラがマーザに訊ねる。

「あの……お客様に出そうと思って作ったんですけど……失敗したら困ると思って10倍の材料を用意したんです……そしたら1個も失敗しなくて」

「あたしの目の黒いうちは失敗なんかするはずないんだよ」

横からマーザが茶々を入れる。

「でもこうして全員に行き渡ったんだから、怪我の功名ですよね」

ナルが慰めるように言う。

「はい……ありがとうございます。あの……パイはまだまだありますから、おかわりの欲しい方は……おっしゃってください」

最後のほうは小声になってしまって、レムの言葉はほとんど聞き取ることができなかった。

「どのくらい残っているんです?」

レムのすぐそばにいたクロス・グラウンドが訊ねると、

「あと……ひとり2切れぐらいは大丈夫です」

と、レムは蚊の鳴くような声で返事をした。

「王城にお願いしたいことがあるんですが、もしクォンタが無事だった時に人々が帰るところを失わないように、国の名義である程度の広さの土地を確保してもらいたいの」

いつの間にかパイを平らげ、いつの間にか役人の目の前に陣取っていたエン・ドルフィナが、未だにパイ相手に悪戦苦闘している役人に向かって言った。役人は最後の一片を飲み下してから、

「それに関しては用地の買収が進んでおりますので、とりあえず現状をご説明します」

と、持ってきた巻物をテーブルの上に広げた。巻物は王城以外の部分を描いたクォンタの地図で、大きな通りはほぼ正確に記されていた。

「この貧民街と西広場周辺、それと占い小路はほぼ王城で買い上げましたので、クォンタが無事だった場合はここの建物を撤去して人がとりあえず住めるような長屋を建てる予定です」

「初耳ね」

怒気を含んだ声はカテリナ・ブルーウォーターのものだった。

「土地がらみの話なんて、登記の記録を見ればすぐ分かることなのよ。ウティカさん以外に誰が土地を買い漁っているとか、どの地区が教会だか貴族だかの持ち物に化けたかなんて、いちいち私たちが調べることじゃないわ。予言の情報だって王城は色々持ってるんでしょ? 私たちが噂話を聞いて回ったってらちが明かないのよ」

「登記の名義は直接教会や貴族の名前が出てくるわけじゃないんで、誰が買い漁っているかっていう特定はできないんですよ。その名義にしたってバラバラですから……」

ナル・クルードがカテリナの顔色を窺うように恐る恐る言う。

「そもそも事務処理が追いついてないんじゃないか」

とゲードル・ゴアが自嘲気味に独り言をつぶやく。

「最近名義変更された土地で、王城名義以外の場所は全部相手側ってことは確かよね」

ウティカ・アージェントの言葉にその場にいたほぼ全員がうなずいた。

「バラバラの名義って……まさか架空の名義で土地取り引きが行なわれているわけではないですよね」

空いた皿を片づけていたオークが訊ねた。

「それは……ええ、即答はいたしかねますが……こちらで確認してお伝えします」

話の成り行きについて行けないのか、目を白黒させながら役人が答える。

「わかったわ」

半ばあきらめたようにウティカが力なく言った。

「土地に関して、王城のほうからお伝えしておきたいことがあるんですが」

役人は、今まで黙って話を聞くだけだった亜人の代表者に向かって話しかけた。

「そちらからご提案があった亜人街立ち退きの件ですが、状況に応じて王城からもお願いしたいということで……」

「それって今すぐ出てけってことじゃないよね、違うよね」

壁に寄り掛かって話を聞いていたレムが叫ぶ。

「いえ……あの、そういうわけでは……ただ貧民街の区画整理が大規模に行なわれるようなことがあれば、代替地を用意するということで」

「それは決定事項ですか?」

代表者のひとりが甲高い声で訊ねる。

「あの……そのようなわけでは……」

「あなたが今おっしゃったのは、『クォンタが無事だった場合、我々の街も含めた形で貧民街の区画整理を行なう』という話でしょう。こちらからお伝えしていたのは『予言が成就すると判断されればこの街を出る』ということだけです……これでは話にならない」

そう言い放ち、男は席を立った。つられてもうひとりの代表者……亜人街の門番……もしぶしぶ立ち上がる。そして同僚が足早に忘帰亭を出て行くのを困ったような表情で見送り、ため息をついて椅子に腰かけた。

「王城からのご提案に関しては、長も承諾しないとは思いますが……一応帰って伝えておきます。ただ、あの場所から我々を追い出せるなどとは考えないでいただきたい」

むしろ済まなそうな口調で、門番の男は役人に告げた。

「蒸し返すようで申し訳ないんですが、王城から自警団に対しての情報提供に関しては何か協力していただけませんか」

重苦しいその場の雰囲気を払拭するように、努めて明るい声でカテリナ・ブルーウォーターが訊ねた。

「その件に関しましてはですね、自警団が自力での運営体勢を確立でき次第ということで……」

「ご心配なく」

勢いよく立ち上がったのはフェアラ・ヒーヴルーツだった。

「自警団はカテリナ、グレン、サリュース、ラティスの4名を小隊長として、不測の事態に対応するべく十分な訓練を行なっています。それに正規軍の減員を補う形で市街の巡回を行なっていますし、先だっての住宅区の事故では軍に先んじて自警団が対処しました。それに……」

「本当ですか?」

トレヴィズ・カーライルがゲードル・ゴアに小声で訊ねると、

「嘘は言っていませんよ……というか、私が紙に書いて再会亭に貼ってあることをそのまま言っているだけです」

と、ゲードルがにやりと笑う。

「わ、 わかりました。 情報提供に関しては協力させていただきます」

役人は額の汗をぬぐいつつ、フェアラの言葉をさえぎるように叫んだ。

第05回(北寿マスター)

アクション

非番の日に、亜人街にいるという「碧」に会いに行き、占いの本質について尋ねる。

一応その前に、忘帰亭にてシャルテさんにも同様のことを訊いてみる。

訊くこと

ある人の運勢を占った時に、大怪我をする可能性が高い、と出た。そのことを相手に伝えれば、高い確率でそれを防ぐことが出来る。伝えなければ、高い確率で相手が大怪我をする。どちらにしても、占いと現実の結果には大きな乖離が生じる(占い師の行動如何により、未来が大きく変化する。この場合、『占いの結果』としては、普通どのように相手に伝えるのか?

亜人の人達について思うこと

「予言が成就すると判断されればこの街を出る」とのことだが、何をもって「予言が成就する」という判断材料にするのだろうか? それに、「予言が成就する」と判断したならば、「予言が成就されないよう努力する」のが正しい行動だと思う。そう判断するには、何によって予言が成就されうるのかがある程度わかっている筈だから、対処のしようもある筈。

リアクション

ウティカの報告を受けて、亜人街への行き来は即座に再開された。もちろん最初に街を訪れたのはレムである。先月の忘帰亭での一件以来「パイ師」の異名を持つ……本人はどこにでもいる10代後半の女の子なのだけれど。

レムに同行するのはヴァン・シアラー、カテリナ・ブルーウォーター、ナル・クルード、ジャネット・フラウの4人だった。もちろん用向きは各々違うのだが、レムと一緒のほうが何かと話がスムーズに進むというのが経験から身についた知恵だった。

だがしかし、今回ばかりは4人が4人ともその判断を悔やんだ。

レムが持っているのはチーズタルトが1つだけ。もちろん材料はいつものとおり大量に揃えたのだが、なぜか今回だけはレムが自分の作品に容易に合格点を与えなかった。

曰く、こげ目がついている……曰く、形が崩れている……そのたびにタルトを捨ててしまおうとするレムを思いとどまらせ、捨てるよりはと全て己の腹の中に収めた結果、4人は吐く息がチーズ臭くなるほどタルトを満喫することになってしまった。

いつもの詰め所ではなく、街の中にある礼拝所のような建物で会見は行なわれた。応対してくれたのは門番の男と占い師の女性……碧(みどり)である。

さっそくタルトが振る舞われたが、手をつけたのはレムとその向かいに座るふたりだけだった。

「最初に聞いておきたいんですが……」

ナル・クルードが、自分の腹の辺りに手をやりながら碧に訊ねた。

「『紅(くれない)』と『銀(しろがね)』はどこにいるんですか……ご存じではないですか」

「存じません。『紅』はともかく『銀』はどこにいるやら……」

碧がそう答えると、ナルはやおら立ち上がった。

「いや、知らないならいいんです。あとはぼくの方でも調べてみますから。じゃあ、ぼくはこれで」

「クルードさん!」

「おい、どうしたんだ?」

ナルは腹を手で押さえたまま足早に礼拝堂を出てゆき、そのまま戻ってこなかった。

「それで、これなんですけど……」

目の前にあるタルトを見ないようにしながら、ジャネット・フラウが持ってきた紙の束をテーブルの上に置いた。

「これは……なんですか?」

門番の男が紙束を手に取る。

「『紅の乙女』に関して色々調べてみましたの。一番最後の資料が色々書いてあって興味深いんですのよ」

碧が最後の1枚を門番の手から抜き取る。それはオークが持ってきた書き付けの内容を写したものだった。素性の点では甚だ心もとないものがあったが、書かれた事実の大きさには抗し切れず、結局ジャネットはこの書き付けを他の資料と同等に扱うことにした。

「最後のは、学者の日記の断片ですか……よくこんなものが残っていましたね。『されどいつかその愛は成就せん』……このくだりまで……」

渡された資料を読み終えて、初めて碧が口を開いた。

「長は以前『本当に我々の先祖が歌にあるように人間と恋に落ちたのか、それが確認できなかった』と言っていましたが、この資料に書かれたことに間違いがなければ、そのような心配はする必要がなくなりますね」

「ちょっと聞きたいことがあるんですが、いいですか」

カテリナ・ブルーウォーターが訊ねる。それはまるで何か発言のあるのを待っていたかのようだった。

「いま碧さんの言ったことでもそうですけど、新たに明らかになる事実を、あなた方は既にご存じであることが多いように思うのですが……予言に関しても『成就すると判断されれば王子に掛け合ってこの街を出る』って長がおっしゃってましたよね」

「確かにそう申しておりました」

碧がわずかにうなずく。

「でも、今のところ成就する兆候も……それどころか、予言に示された災厄がどのようなものであるかさえ分かっていないんです。それなのにあなたがたは、予言の成就が不可避であるかのように考えている」

そこまで言ってからカテリナは目の前のふたりの反応を伺う。だが、どちらからも何の応えもなかった。

「どうして、手がかりも何もないような破滅の予言が『成就すると判断されれば』なんて言えるんですか? そもそも碧さんの『占い』って一体なんなんですか?」

「じゃあね、紅さんはどーやって占いをするのか教えてほしいな」

シャルテがミリーに向かって無邪気に訊ねる。

「道具は使わないのよね」

ヴァネッサが確認すると、ミリーは軽くうなずいてから話し始めた。

曰く、ミリーは何かの起こる日時を当てることにかけては無類の正確さを誇るということだった。依頼主に「これこれのことはいつ起こりますか」という質問を受ければ、その日付けはもちろん、あまり先の出来事でなければそれが何時ごろに起こるのかということも分かるらしい。もちろん示された出来事が起こらないのであればそれと分かる。その場合は依頼主に「起こりません」と告げるだけである。

「今回の予言の時はどんな出来事について占ったの?」

シャルテは無意識のうちに自分のカードを繰りながらミリーに訊ねる。

「『銀』さんに、何か超自然の大きな力がほとばしる光景を探すように言われたんですが……」

「それで出た答えが9月の末なのね」

事務的な口調でヴァネッサが問うと、ミリーは大きくかぶりを振った。

「……分からなかったんです……」

「分からない? なんでかなぁ?」

シャルテの言葉にミリーがまた首を振る。

「それが起きないというのとはまた別の……手応えのようなものはあったんですが、追えば逃げられるような感じで……一向にそれがいつ起こるかというのが見えてこないんです」

「そっかぁ……」

自分の知っている「占い」の範疇にはどれひとつとして当て嵌まらないミリーの言葉に、シャルテはただ溜め息をつくしかなかった。

「だったら何度も占ってみたらどうなの? 何か新しいことが分かるかもしれないでしょ」

感情の伴わないヴァネッサの言葉は、取りようによってはミリーを責めているようにも聞こえた。

「占ったんです……何度も……でも分かりませんでした。それに、占うたびに真実が遠のいていくような気がして……だからもう、今年に入ってから占いはしていません」

「だから逃げてきた……そう思っていいのかしら」

ヴァネッサの問いにミリーはうなずいて、

「それと『銀』さんが『逃げた方がいい』って……隠れるのなら、むしろこういう所の方が見つかりにくいだろうって」

と答えて、がっくりとうなだれた。

「そうだったんですか……」

長かった碧の話を聞き終え、カテリナ・ブルーウォーターはそう相づちを打つのが精一杯だった。自分が抱いていた占いというものに対するイメージとはかなりかけ離れた能力をこの女性は持っている。

話しぶりから察するに、市井の占い師と同じようにカードや算木を使って恋や商売、失せ物の行方などを占うことももちろん可能なのだろう。しかしそれに加えて、一種霊感ともいえる超常的な能力を使って、ある出来事の起こる期日を半月程度の範囲で当てるなどというのは、カテリナにとっては全くの初耳だったし、にわかには納得できなかった。

「結局あんたは予言のことについては何も分からない……ってわけじゃないんだろう? そこの嬢ちゃんの言うとおり、あんたたちは何か知っているはずだ」

ヴァン・シアラーが不満もあらわに言った。

「はい……それではご案内させていただきます……長からの許可もいただいておりますので」

そう答えて碧が立ち上がる。隣に座っていた門番の男も不承不承といった風に席を立つ。

5人が建物を出て街の奥に向かおうとすると、街の入り口の方から誰かが近付いてくるのが見えた。門番が、

「ちょっと待ってください」

と言うので一行が近付くのを待っていると、その中のひとりがナキだと知れた。サーザ・ベナレスとミュナ・メイフィールが寄り添うように付き従っている。3人を案内するのは先月忘帰亭に現われたもうひとりの代表者の男だった。

「ナキさん!!」

レムが叫ぶと、ナキは片手をあげて弱々しく笑った。

門番と代表者の男が小声で何かを相談している。そして代表者の男は軽く手をあげてその場を立ち去った。

「ではみなさん、参りましょう」

門番はそう言って一行全員を街のさらに奥へと案内した。

サーザ・ベナレスは、ナキと門番の男のやりとりに曰く言いがたい違和感を覚えていた。もしもリュシュ……『紅の乙女』が魔術師なら、わざわざ街を破壊するためだけに魔力を溜め込んだりはしないだろう。魔術師というのはそういう生き物だ……

サーザは柱に駆け寄った。ふと見ると、柱の根元に石版が埋め込まれており、表面にはなにやら魔法の文言が彫られている。

「呪符……みたいなものだと考えればいいんでしょうかね。貯えた力を使って、ここに書かれた魔法が発動するんでしょう」

入り口のところにいた者も広間の中に入ってくる。

「これって今年の10月ってことよね」

レムが石版に書かれた数字を指差して問うと、

「この200年の間に30日の閏日がありました。それを考慮に入れれば今年の9月……私の咋秋の占断結果と一致します」

碧がよく通る声で答える。

呆然と柱を眺めていたナキも石版の文言に気付き、屈み込んで書かれた内容を吟味する。そしてにわかに、狂ったように大声で笑い出した。

「ナキさん!」

「先生!」

「ああ、すまん。みなさん、おめでとう」

ナキはその場にいる全員に呼びかけるように声を張り上げる。

「先ほど私の言った、クォンタ崩壊の危機は回避された」

居並ぶ者たちは、声もなくナキの言葉に聞き入っていた。

「ここに書かれた呪文は、溜まった力の一部を使って、力を過去に送るというものだ。そこにいる亜人どもは、知らなかったのだろう」

ナキの言葉に碧と門番は首を縦に振る。

「もし溜まった力の半分でも過去に送れるなら……」

王家との婚姻が整わなかったリュシュ……『紅』が送られた力を受け取ることができたなら、それは間違いなく王城……人間……クォンタに仇為すために使われるだろう……心の中でサーザはそう付け加えた。

「まぁ少なくとも、今のクォンタが灰燼に帰することだけは避けられそうですな……その魔法使いが当時のクォンタを灰にしてしまうことのないよう、皆で祈ろうではありませんか……ククク…………はっはっはっはっは」

ナキの笑い声だけが広間に響く。

「過去にそのような事実がなかったからこそ、今のクォンタが存在する……」

「そんなことは誰にも分かりませんよ、お嬢さん。少なくともこの仕掛けを施した魔術師は、歴史の流れに干渉しうると考えていたのではありませんか?」

カテリナ・ブルーウォーターの言葉をナキがさえぎる。

「ともかく、魔術師は時を操る呪文の研究を一切禁じられていましたからな……どうにも返答できかねます。いや全く残念残念。まぁ、今からでも遅くはないでしょう。私に任せてもらえれば、ほんの10年もあれば結論を出してみますよ。今回の件に間に合わないのは仕方ないですがね」

誰ひとり、ナキの言葉に反論できる者はいなかった。ナキは見下すように周りを見回し、悠然と外へ向かう。そして出口の所に立ち止まって、

「石版を外すなら、早めに取り掛かった方がいいですよ。それから、柱を切り倒したり壊したりする時は、全市民を避難させてからにするように……もっとも、どれだけの距離を逃げたらいいのか、私には皆目見当がつきませんがね」

と言い捨てて、ひとり街の出口に向かった。

日記からの抜粋

1999.08.07 sat

明日は『Prediction』の第6回アクション〆切。なのに、行動が全然思いつかない。それはもう泣けるくらいに。

というのも、話の大きさに対してPCの立場・能力が小さすぎるように思えるからだ。人口数万、もしくは数十万を数える都市を一瞬にして灰燼に帰すだけの魔力を秘めた「玉」。この玉には蓄えられた魔力を過去に送る魔法が施されている。もし魔法が成功すれば、歴史は改変されてしまうかもしれない。かといって、下手に「玉」に手を出したら、力が解放され、都市が壊滅する可能性がある。

こんな状況下で、魔法の知識が全くないペーペーの自警団員にいったい何をしろと? っていうか、NPCはいったい何をしているんだ、おい。いやしくも自分の国の首都が消滅しかかっているんだぞ。もうちょっと積極的に動いてくれよ。そして情報をPCに落としてくれ。

1999.08.09 mon

結局、昨日『Prediction』のアクションは出さないでしまった。アクションが思いつかないのだからしょうがない。

とりあえず、アクション未提出のメールを送ることにする。なぜアクションが書けなかったのか、その理由をつらつらと紙に書き留めていく。と、その最中に1つの考えが頭に浮かんだ。それはまさしくカイジ的。

「節穴か……オレは……!!」

ってなもんだ。

次々に考えが浮かんでくる。メモ用紙を裏返し、思いついたことを無造作に書き込んでいく。はっきり言って、かなりシステム的な考え方だ。ファンタジーの「ファ」の字もない。中世世界の人間がこんな考え方をすることが出来るのか? そんな疑問が浮かんだりもするが、とりあえずは無視だ。届いたリアクションを読んで後悔するよりはずっといい。

メモ用紙をパソコンの横に置き、アクションを書き始める。今までのアクションの中で一番補足説明が多いかもしれない。だが、これでも全然足りないくらいだ。「たら・れば」が多すぎるのである。「YES・NO」の選択肢が3つあっただけで、最終結果は8つにもなってしまう。とてもそれぞれの結果に対しての行動を書くことなんか出来はしない。この辺りのことは、もうNPCにまかせるしかないだろう。

30分後、アクション完成。よーし、あとはメールするだけだ。

家に帰ってからな!

第06回(北寿マスター)

アクション

行動

行動の指針とする為、「占いの確実性」と「破滅の実体」、そして「破滅の日以後」の確認を行う。

補足
占いの確実性

卵等(自分の手で壊せるもならなんでも良い)を持って、碧・紅のところに行き、「これが壊れるのはいつか?」を占ってもらう。そして、その結果の時刻より先に壊せるか、その時刻の後まで存続させることが出来るか、を確認する。この実験は何度も行う(再現性の確認)。

破滅の実体

「何か超自然の大きな力がほとばしる光景」などという抽象的なものではなく、「王城/家屋/机/椅子といった物理的実体を有しているものが壊れるのはいつか?」「家畜/ペット等が死ぬのはいつか?」ということを占ってもらう。

破滅の日以後

どんなことでもかまわないから、「破滅の日以後」の結果が得られるかどうか占いをしてもらう。

結果に対して

占いの結果以外の時間に対象を壊すことが出来なかったのなら、占いの結果は「確実」なものといえる。だとすると、その時までは何をしても(たとえば玉を壊したり、石版をはずしたりしても)大丈夫ということになる。しかし、「何か超自然の大きな力がほとばしる光景」が必ずしも「玉」が原因として発生するとは限らないことも考慮しなくてはいけない。玉を破壊しようとした為に「力」が解放され、都市が壊滅。その後に、何か別なものにより「超自然の大きな力がほとばしる」可能性もある。その為に、「破滅の実体」について占ってもらう必要がある。

結果以外の時間に対象を壊すことが出来た……占いが必ずしも確実なものではない場合は、「玉」や「石版」には安易に触れることが出来なくなる。何の拍子で「力」が解放されるかわからないのだから。だが、この場合の占いの結果は、あくまで「起きる可能性が高いこと」でしかなくなる。つまり、「破滅」は回避しえるものといえるわけだ。

また、石版の魔法は「過去に魔力を送るもの」だということだが(これも本当かどうかはわからない)、もしそれが成就されれば、歴史は大きく変わってしまう可能性が高い。だとすると、必然的に「歴史が変わったら存在しないもの」について「その日以後」のことが占いの結果として得られることはない筈(たとえば歴史が変わったら決して書かれる筈がないであろう手紙(開封日を「破滅の日」以降に指定)を今書き、それを遠い所に送る。そしてそれがいつ開封されるかを占う)。もしそうならば、たとえ都市が全て破壊されることになったとしても、「玉」と「石版」は壊すべきだと考える(もちろん、住民は全て待避させた上で)。

リアクション

9月も半ばを過ぎ、クォンタ市民の逃避行も一息着いた頃、忘帰亭はいつもと変わらず商いを続けていた。どうやら店主のマーザはクォンタに居続けることにしたらしい。

「ねーねーミリーさん、ミリーさんって占い3姉妹の『紅』なんだよね」

常と変わらぬ調子でシャルテ・フレルレイナがミリーに問う。脇でリューク・エンドリューとカテリナ・ブルーウォーターがその様子を興味深げに眺めている。

「そうですけど……」

「じゃあ、『紅の乙女』に歌われたリュシュさんってミリーさんのことだよね」

「……そうなんですか? 私は……違うと思いますけど……」

「えーっ、じゃあ、石版の魔法を無効にしたりとか、玉の力を安全に開放したりってできないの?」

「……できないと思います……」

「そっかぁ……」

ミリーの答えに失望したのか、シャルテは押し黙ってしまう。

ミリーが返答に窮していると、カテリナが厨房から卵を何個か持って食堂に戻ってきた。そしてその中の1個を右手に握る。

「ミリー、 ちょっと占ってほしいんだけど、 『この卵はいつ割れる?』」

「いま……」

ぐしゃ。

ミリーの言葉が終わらないうちに、カテリナは手の中にある卵を握り潰していた。

「あはは、ちょっと緊張しちゃって」

驚きの視線が自分に集中する中、カテリナは照れ隠しに手を振り回しながら言った。

「もう一度お願い」

今度は卵を1個だけテーブルの上に置く。

「今日の夕方か夜です」

「今日の夕方か夜ね」

ミリーの答えを確認して、カテリナは卵を取り上げて軽くテーブルに打ちつけた……本人はそのつもりだったが、力が入りすぎて卵はくだけ散り、テーブル一杯に黄身と白身が広がった。

「あ、あの……」

厨房からマーザが飛んできて、カテリナが謝るスキもあらばこそ、布巾でテーブルを綺麗に拭いてまた戻ってゆく。

「ごめんなさい……えーっと、じゃあもう一度だけ」

今度は卵を1個、右手の親指と人差し指でつまんで持つ。

「いつ割れるかな」

「今すぐです」

確かにカテリナはミリーの言葉が終わらないうちに卵を床に落とすつもりでいた……だがミリーが「いま……」と言うのが耳に入ったのであわてて卵を左手で掴んだ……卵は割れなかった。

「もう『今すぐ』じゃないよね」

「……そうですね」

ミリーは別段驚いた様子はなかった。

「ミリーの占いって、必ず当たるわけじゃないのね?」

「……そうだったんですね」

「今まで自分の占いが外れたことはなかった?」

「高貴な方のごく私的な依頼で占うことがほとんどでしたから……自分では確かめることはできませんし……」

「外れて文句を言いに来るお客さんとかいなかった?」

「……当たって文句を言う方は沢山いらっしゃいましたけど、外れた方というのは……」

「なかったのね?」

「はい」

多分それは偶然なのだろう……カテリナはそう思うことにした。

「じゃあ次、王城が壊れるのはいつ?」

ミリーの返事はなかった。

「えっとね、ミリー王城の……」

「……壊れません」

今度はすぐに返事があった。驚くカテリナを尻目に、リュークが問う、

「それは、何年ぐらい壊れずに建っているってことかな?」

「見えなかった時は、どの位の期間というのはよく分からないんですが……10年ぐらいはまず間違いないと思います」

「じゃあこの忘帰亭は?」

「……壊れません」

ほんの少しの間があってミリーの答えが帰ってくる。

「この机は?」

「壊れません」

「椅子は?」

「捨てられる光景が見えます……捨てられるのがこの椅子かどうかは分かりませんが……1年後の……10月……20日ぐらい……」

「ヴァネッサさんの飼っているネコが死んでしまうのは?」

「……2年後の……12月……11日……」

「もしかして、予言は成就しない?」

リュークの問いに、その場が凍りつく。誰も言葉を発しない。

「あれ? どうしたんですか? みなさん黙っちゃって」

沈黙を破ったのは忘帰亭の扉を開けて現われたオークだった。

「……お、王族の……婚姻……」

オークの姿を正面に見据え、呻くようにシャルテがかろうじて言葉を絞り出す。

「パレードとか……すごく賑やかな催しがあるはず……ミリーさん!」

それを聞いたオークの頬が目に見えるほどに紅潮する。

「長子の即位が……5年後……6月……1日」

「……ぼくは?」

「えっ?」

ミリーはオークの言葉の意味が分からなかったのか、鸚鵡返しに聞く。

「現王の次子……スクアは? こんな時に聞くようなことじゃないかもしれないけど、国民に祝福されるような結婚は……」

「そう……そうだったんですか?」

ミリー以外の者は、うすうす感づいていたことだった。だがミリーはオークがスクア……王子であることは知らされていなかったらしい。

「……見えません」

「……そっか……」

オーク……スクアの返事は、むしろ明るく忘帰亭に響いた。

「でも、ぼくはミリーのこと……愛しているからね」

「私もです……オーク」

「教えて、ミリー……この街を災厄が襲うのはいつなんだい?」

立ち上がりかけたミリーに向かってスクアが訊ねる。

「……分かりません」

ややあって、ミリーがつぶやくように答えた。無言のままスクアはミリーに歩み寄り、ミリーの体をそっと抱きしめた。ミリーはスクアの腕の中で、止めどなく涙を流していた。

日記からの抜粋

1999.08.28 sat

昨日に引き続き、HPを作成。2度程荒波に揉まれたが、その程度では私の野望を抑えることはできぬ。それに8割と2割を足したからといって、必ずしも10割になるわけではない。そう、それは速度の合成則。ただの足し算では決して光速には辿り着けないのだ。

しかし……ちょっと量が多いぞ、これ。昨日最初のビッグウェイブは、私の理想を8割は実現していると思ったが、どうやら5割にすら届いていなかったようだ。ただひたすらリンクを辿りまくっているだけだというのに全然終わらねぇ。そろそろ『ソル・アトスの姫君』と『Prediction』のアクションも考えなくちゃいけないってのになぁ。

…………。

あー、目が疲れた。もうかれこれ4時間は画面とにらめっこか。よし、この辺でいったん休みにしよう。

とりあえず『Prediction』のアクションを考えるかな。とは言っても、全然思いつかないんだよなー、これが。

「何が原因で起きるかわからない何かをどーにかしたい」

って、こんな状況でアクションが考えられるわけがないではないか。今回が一応クライマックスアクションだというのに、一体どうしたものだろう? あいかわらず情報は少ないし。今回はもう未提出にしてしまおうかなぁ。

ところで、『Prediction』に参加して、再確認したことが1つある。それは「私は謎解きシナリオがあまり好きじゃない」ということだ。シリアスな謎解きの場合、プレイヤーの考え方がどーしても前に出てきてしまう。色々と生い立ちとかを考えてPCを創った筈なのに、単なるプレイヤーの代弁者になってしまうのだ。まぁ、そこいら辺は私がまだまだ未熟ということか。特に『Prediction』は無料だったのだから、もっと冒険的な……無責任なアクションを掛けてみても良かったのかも知れないな。

……と、そろそろ休憩は終了だ。いったいいつ終わるのか検討もつかないが、まずは一段落つくとこまでやってしまおう。

…………。

とりあえず一段落ついたのは、時計の短針が一回りした頃であった。

第07回(北寿マスター)

アクション

行動

「碧」に文句を言う。

補足

あいかわらず、何をもって「災厄」と言っているのかがわからない。抽象的な言葉ではなく、具体的に何を予見しているのかを口にするべき。

また、占いの結果の口の仕方で未来は変わることはわかっている(ミリーの実験)。なら、幾つもある未来の可能性の中から、もっとも良い結果と思われるものが導かれるよう行動すべき。自分達には、自分達の行動がどのような結果をもたらすかがわからないが、「3人」にはそれが見えるのだから。

彼女達の行動は、池でおぼれている子供に差し伸べる手を持っていながら、「あなたは1分後に沈みます」と言って、絶望させているだけのようにしか思えない。

リアクション

9月以降、亜人街に目立った動きは見られなかった。

亜人街の意向が「石版の魔法を発動させ、魔力を過去に送る」という方向に統一されて以来、何人かの見張りが柱……『玉』のところに立つきりで、住人たちは普段通りの生活を続けているようだった。

そしてその中にはわずかに残った人間の姿も見られた。ある者は亜人たちの考えに賛同し、ある者は反発し……また予言が成就すると目される日が近付くと、露営地から戻ってきたナキとミュナ・メイフィールも見られた。レム、カテリナ・ブルーウォーター、ヴァン・シアラー、フェアラ・ヒーヴルーツもそこに合流する。

10月12日の真夜中を過ぎたころ。

柱の見張りとして『碧』の姿がそこにあった。さして役に立つように思えぬ短剣を携え、柱のそばに腰をおろして時の過ぎるのを待つ。そしてその脇には、自警団の装備に身を固めたカテリナ・ブルーウォーターの姿があった。

「碧、あなたに色々訊ねたいことがあるの」

カテリナの声は、疲労のためかくぐもって響いた。

「……どうぞ」

無愛想な反応がすぐ横から返ってくる。

「あなたたち占い師の言う『災厄』って、一体なんなの」

「柱に溜まった魔力を開放することによる、現世でのクォンタの破壊……もしくは、溜まった魔力が過去に送られることによって生じる過去のクォンタの破壊……どちらかよ」

「『紅』は……ミリーはそんな光景を予知しなかったわ」

「あなたは、『災厄』の起こる日を占えないような人の言うことを信用するの?」

「…………」

それきりふたりとも黙ってしまう。ややしばらくの間、無為に時だけが流れる。

「フェアラさんが不思議がってたけど……」

再び口を開いたのはカテリナだった。

「どうして災厄の日付が変わったの?」

「9月に予言が成就しないことが確認された日に、私は昨秋と同じように占いを行なった……出た結果が明日から……もう今日ね……3日間というだけの話よ」

「そんなこと起こり得ないはずよ。時が経つにつれて魔力が柱に蓄積される」

「私に訊ねられても困るわ。きっと誰かが柱の魔力を使ったのよ。だから溜まるまでに余計な時間がかかったのね」

「あり得ないわ」

「そう……あり得ないわね」

「……ひょっとして、安全に溜まった魔力を開放する手段はあったのかしら」

誰に問うともなく、カテリナが言う。

「『魔力は過去に送る』……そういうことになっていたのよ。手段が見つかったところで、それを実行するのは不可能だったと思うわ。誰ひとりとして、そんな企てには賛成しないはずよ」

「……魔力を過去に送れば『災厄』は、起こらない……私はミリーを信じる」

「こうすれば起こるわ」

碧は立ち上がって柱に歩み寄り、根元にある石板に手をかけた。

「碧!」

カテリナ……占いって何だと思う?」

碧に飛び掛かろうとしていたカテリナは、その問いに思わず動きを止めた。

「私には……ずっと占いをしている私でも、そんなことは分からない。ただね……占いの結果は占者をも縛るの……この石板を外せば、私の占いが当たる……外さなければ紅の占いが当たる……だから私は石板を外す……」

「そんなことさせないわ!」

叫ぶのと同時に体が動いていた。碧はそれを見てあっけなく石板から手を放した。

カテリナには、自分のしていることが正しいことなのかどうか……もはや判断できなかった。ただ、職務に忠実な一自警団員として、碧が動けないようにその体をきつく縛り上げた。

10月13日朝……日の出と同時に亜人たちがどこからともなく柱のもとに集まってきた。また、亜人たち以外にもナキ、ミュナ・メイフィール、レム、ヴァン・シアラー、フェアラ・ヒーヴルーツなどの姿も見られた。

時を同じくして、忘帰亭にはサリュース・ゲーツ、ナル・クルード、ヴァネッサ・アームストロング、シャルテ・フレルレイナ、リューク・エンドリュー、マーザ、タロイ、ミリー、スクアら9人が揃っていた。

「どうしたんだい、みんな揃って……」

マーザが不安げに居並ぶ者たちを見回す。

「いやぁ、ちょっと……」

胸騒ぎがして……そう言おうとして、ナル・クルードはその言葉を飲み込んだ。周りにいる者全員が、マーザの言葉に脅えたような表情を浮かべていたからだ。

「ぼ……ぼく、亜人街の方、見てきます」

ナルは後も見ずに走り出した。

どのくらいの時間走り続けただろうか……

ナルが亜人街の柱のもとにたどりついた時、『それ』は起こった。

急に、漆黒の柱がまばゆい光を帯びる……その光が倉庫の屋根を貫くようにして、天高く昇っていった。

あとには、光を失った柱と寄り集まった人々が残るだけだった。

皆が興奮して、目の前に起こった出来事について大声で語り合う……

小一時間も経った後、集まった者たちが出した結論は、「何も起こらなかった」というものだった。光の前と後で、それと分かるような差異は何ひとつ見られない。

「あなたの予言、外れたわね」

カテリナの言葉に、今だ縛られたままの碧は弱々しく笑うだけだった。

第08回(北寿マスター)

アクション

行動

日々の生活に戻る。

補足

亜人や占い師に対する処罰は自分達が決めるようなことではないと思う。亜人達の行動については、「国に対する反乱」「大量殺人」と見ることが出来るから、重罰は免れないと思うし、彼らを弁護しようとも思わない。今回の件が許されたら、何が罪で何が罪でなくなるのかわからなくなる。

ようやく、ぐっすりと眠れるようになった。これからは王都を出た人達が戻ってくるから、その受け入れ作業等が始まる。  それが一段落し、自警団が解散することになったら、少し休暇を取りたいと思う。結局、今年の夏は友人達と何処にも行けなかったし、実家に戻ることも出来なかった。せめて秋くらいは、季節を満喫したい。

リアクション

そして祭りの当日、解体された自警団から正規軍の組織に戻ったカテリナ・ブルーウォーターは巡回の任務に就いていた。

亜人たちが企てたことは罪ではないのか……彼女自身何度も繰り返した問いが心に沸き起こる。

「魔法」という未知の技術を罰する法令や事例がないからといって、今回の魔力の行使は罪にならないということがあるのか。結果的に何も起こらなかったからといって、動乱が起こることを前提とした一連の行為は罰せられなくてもよいのか……

かつて亜人たちは苛烈な差別を受けていたという歴史もある。カテリナ自身は人間至上主義者ではなかったが、今なら差別を行なった側の心情も少しは理解できるような気がする……人間と亜人とは「違う」存在なのだ。その間に起こった出来事を正当に評価する手段は存在しないのか……